あんずさんのレビュー一覧
投稿者:あんず
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紙の本今ここにいるぼくらは
2005/10/29 00:22
過去と未来をつなぐものに思いを馳せる
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
川端作品は、「The.S.O.U.P.」に続いて、二作目。
同じ人が書いたとは思えないくらい、異なる色をした作品でした。
「今ここにいるぼくらは」の主人公は、小学生の博士(ひろし)。
ある時は一年生で、ある時は五年生〜といった七つの短編が、本書に収まっている。
時期がばらばらに並んでいるのだが、不思議と異和感なく、読むことができる。
友人のサンペイ君と池の主を釣り、妹と山でオニババに出会い、宇宙人とUFOに関わる〜などなど、ひとつひとつの話が面白く、読者を同じ時間・同じ場所に運んでいく。
本を読みながら、子どものころに感じた、さまざまな不安や孤独がよみがえってくる。
そして、そこから今日につながってくる時間に思いを馳せる。
”いつかきみが出会うものと、ぼくがこれまでに出会ったもの。それらは、つながっているような気がする。すべての川を束ねる海まで下らなくても、ぼくたちは同じ水脈の中にいるんだからね。”という文中の言葉と、タイトルがまたつながる。
今ここにいるぼくらは、かつて、博士だった。
そう、言えるかも。
紙の本ポーの話
2005/10/22 11:25
ポーのつぐない
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
いしいしんじの作品を読むのは、「ぶらんこ乗り」「麦ふみクーツェ」に続いて、本書が三作め。今度は、どんな話なのか〜期待を込めて435ページの本を開く。泥の川から、「ポーの話」が始まる。
川をさかのぼった街はずれの浅瀬では、毎日、うなぎ女が漁をするために現れる。うなぎ女たちは、手探りでうなぎを捕り暮らしている。
ある日、ひとりのうなぎ女が見慣れない獲物を生け捕りにした。でこぼことした不恰好なかたまりは、赤ん坊で、その赤ん坊こそが、この話の主人公のポーである。
ポーは、うなぎ女たちを母として成長する。
そして、街に行き、メリーゴーランドや「ひまし油」と出会い、母たちとは別の世界へ踏み込んでいく。
ポーは、盗みを始める。眠れなくなる。これは、罪悪感なのか。考え込むポーに、メリーゴーランドは、彼自身の「つぐない」を示す。
ある日、街に、五百年ぶりの豪雨がやってくる。土砂降りは、街を壊滅状態にし、ポーを新たな場所へ誘う。ポーは「天気売り」とともに、川をながれていく。
そして、「ポーの話」は、第二章、第三章へ続く〜
〜いしいワールド全開の物語。文章を読むスピードに、頭がついていかず、何度も物語の中で迷子になりながら、やっと、読み終えることができました。
心に残った台詞があります。物語の終盤、もうろうとしていく頭の中で
「つぐない」を思うポー。そのポーに「いきているうちがつぐないです。ふかいふかいそこで、まちがえないようにいきていくのが、ほんとのつぐないですよ」と語りかける女人形。この台詞の中に、作者の想いを感じることができます。
ポーが、どうなったのか?それは、本を読んで確かめてくださいね。
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