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  3. TYANAさんのレビュー一覧

TYANAさんのレビュー一覧

投稿者:TYANA

18 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本九死に一生ハンター稼業

2006/06/15 00:06

ステフの元気な近況報告

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ステファニー・プラムもの、第9作(クリスマス特別編を除いて)、3年ぶりの長編。
相変わらず元気なステファニー、危険な香りのする凄腕のレンジャーとも仕事を共にしながら、公式には別れた?ジョー・モレリとけっこう良い関係だったりして。ほんのちょっと大人になった気配もあるのが読みどころかも知れません。

ステファニーは「私が愛したリボルバー」で登場した時、バツイチで30歳。タイトルに似合わず、拳銃は大嫌い。失業したため、やむなく従兄がやっているバウンティハンターの仕事に就いたのでした。バウンティハンターとは保釈された後に出頭せず逃亡した容疑者の逮捕を請け負うもので、俗に言う賞金稼ぎ。相手は小物大物の違いはあれど、犯罪者なのだから、騒動が巻き起こるわけです。
今回の事件は失踪したインド人青年を探すうちに、ステファニー自身に不気味な脅迫状が届き、命の危険にさらされながらラスヴェガスまで追っていく。
新人のシリアスな作品だったら、すごく怖いところだけど〜かなりコミカルなこのシリーズの場合、強運のステファニーの命に別状があるわけはないので安心してスリルを味わえます。
ルーラとコニーとの珍道中ぶり、レンジャーのごつい仲間達のとんでもない苦労を楽しめます。レンジャー、奇特な男ですね。
むしろ波乱が少なかったなぁ…という読後感は、ステフの家族や恋愛関係にそれほどの急転がなかったせい。
笑える所は満載、十分に楽しめましたよ〜。

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どこへ着て行こうかな?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

別冊NHKおしゃれ工房。
これから時々は着物を着てみたいと思っている方に。どんな時にどんな着物を着るのか、具体的なイメージをつかみやすい本だと思います。
つむぎや小紋を街で着ている姿の写真から始まり、帯の合わせ例、つむぎの着方と展開します。
着つけ指導は石田節子、市田ひろみ、森田空美、山下悦子とさすがNHK。
着物の種類、たたみ方、着物の時の基本的なへアメーク、よそゆき浴衣の着方など、実用的な知識が一通り載っています。
着つけは、デイリーというなら、もっと簡単な方法を載せても良いと思うんですが…
帯結びは、一重太鼓を結ばずに折り上げるやり方が便利そう!です。

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紙の本手紙と秘密

2006/08/18 01:49

アメリカの小さな町で60年前の真夏に起こった事件を少女が見つめていた

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

女性ジャーナリストとして成功して既に高齢になったグレッチェンの所に、故郷から一通の手紙が舞い込みます。少女時代の事件を思い出させる手紙が…
時は第二次世界大戦中の1944年夏、オクラホマの田舎町。
男性が出征して人手不足になったため、13歳のグレッチェンは少女新聞記者として働き始めました。祖母のレストランは街道沿いで一番の美味しいものを食べさせる店でしたが、ドイツ訛りのある祖母はもう客の相手はしなくなっていた…
女性達はぱりっとした木綿のワンピースに身を包み、ノーマン・ロックウェルの絵を思い出すような雰囲気。
ありありと目に浮かぶようなリアリティがありながら、その光景はノスタルジックでどこか切ない…
幼馴染みのバーブの母フェイが殺され、軍から休暇で戻っていたバーブの父が指名手配されるという事態に。
しかも、フェイが不倫していたためという噂が広まります。絵の才能があり良い教師だったフェイの実像を描こうとグレッチェンは勇気をふるって記事にしますが、ふしだら女の肩を持ったと白い目で見られることになってしまいます。
バーブとその父を懸命に気遣うグレッチェンでしたが…
純真な少女が初めて直面するシーンを生き生きと伝え、その場にいるような臨場感。
意外な事件の顛末、ほろ苦いその後までを描いて、色々な所に目配りの行き届いた展開に説得力があり、作者の落ち着いた人柄を感じさせます。
ハートはコージー系のミステリを書いてきた作家ですが、この作品はコージー系にとどまりません。ミステリファンなら真相はわかっちゃうと思いますが〜謎解きが重点ではないので、だんだんとわかっていく経過も意味があるのです。
ミステリファンでなくとも小説が好きなら読める質とレベルでしょう。

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紙の本シェイクスピアを盗め!

2006/06/08 00:02

少年が見たシェイクスピア一座

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エリザベス一世の時代のイギリス。
少年ウィッジは孤児院から引き取られ、速記を発明した博士に仕込まれて、シェイクスピアの戯曲を盗み取ろうという悪巧みに巻き込まれます。
著作権が確立していない当時、出版される前の戯曲を他の劇場でも舞台にかけることが出来れば、大きな儲けに繋がる!そんな時代だったんですねえ。
ウィッジを金で買った雇い主に脅されて、仕方なく劇場の周りをうろちょろするうちに、意外な成り行きで役者仲間に加わったウィッジが、しだいに自分の居場所を得ていく…
シェイクスピア本人を含めて実在人物が登場、劇場の裏側が子供の視点で面白く描かれています。
ヤングアダルト向けでやや軽めですが読みやすく、「恋に落ちたシェイクスピア」を思わせるエピソードもあって、時代色が良く出ています。
続編もあるそうなので楽しみ!

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紙の本松居一代の超整理・収納術

2006/06/08 00:27

いらない物を捨てて、ラッキーを手に入れよう

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

片づけ関係の本をあれこれ見たうちで、一番紙面が明るく、軽やかな感じだったので〜これにしました。
あんまり詳しく書いてあっても、気分が悪くなってしまうことがあるんでねえ…
そしたら、これは当たりでした!
若い時にいろいろ物をため込んでいた頃から、何度かのきっかけがあって整理上手になっていった様子が面白おかしく語られています。
それに、今の夫君の部屋に最初に行ってガックリした事やら、その後だんだんと説得して捨て上手な夫にまで仕込んでいったこと…
具体的な整理術についても一通り載っています。
そんなに詳しくはありませんが、カラフルな写真の引き出しの中などの実例は自宅のもので、こんなだったら楽しいなあ〜という気分を誘ってくれます。
一番のポイントは、本当に好きでよく使う物には持ち主の愛がこもっている、ということ。
逆にあまり好きじゃない物や使いにくい物、忘れている物、嫌な思い出がある物などは〜いつまでも持っていると、運気を下げるということ!
だから、そういう物を手放せば、幸運が巡ってくる。
ホントに捨てるのが下手なんですが、これで、使い勝手が悪い物をいくつか捨てる決心がつきました。
置き場に困っていた小物や出番のない靴やバッグなど、さっそく処分しましたよ〜。

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紙の本つきのふね

2006/11/05 02:35

心が壊れやすい人にはそれでも生きていけるだけの力もある、そう言い切れる人からの手紙とは…多くの人に読んで貰いたい作品です。

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

直木賞を受賞して話題になっている森絵都、これが良かったという記憶があったので、再読してみました。
2000年を前にノストラダムスの大予言で世界が終わるかも知れないなんていう話をしている時期の物語。
そ、そういえば…98年頃というのはけっこう話題になっていたものです。
中学生のさくらは進路調査に「不明」と書いて、担任に呼び出しを食らう。
大親友だった梨利と口をきかなくなって40日以上過ぎ、クラスでも浮いてしまったさくらは、今日も智さんのアパートに寄っていく。
大人の男性の部屋にいたのを梨利のおっかけを自称する勝田君に見つかってしまうが、勝田もすぐ智さんに懐いて顔を出すようになる。
スーパーで万引きをして、さくらだけが捕まったあの日、出会ったのが智さん。
24歳の智さんは穏やかで、傍にいると居心地が良いのだが、全人類を救うノアの箱舟のような宇宙船のデザインを一人で考え出すと止まらず、しだいに壊れていく…
さくらと勝田は必死で智さんを何とかこちら側へ引き留めようとあれこれ頑張るのです。
梨利を裏切ったと苦しむさくら、万引きのグループに残っている梨利も違う風に苦しんでいたのでした。あの年頃では友達と気まずくなるのは確かに世界が終わるほどのことですよね…
万引きそのものが悪いとは最後まで自覚していないらしい少女達や、ここまで色々なことが起きているのにいっこうに気づいていない主人公の家族など、ありそうで苦笑いさせられます。
中学生でもわかりやすい書き方で、大人でも読める内容です。
かなり痛い部分まで入り込みながら、人間の生命力への信頼を漂わせ、弾力のある展開のあちこちにセーフティネットが張られている、暖かみのある物語。
良い本ですよ。

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紙の本中原淳一きもの読本

2008/10/05 23:15

レトロでポップな昭和の着物、可愛いってこういうこと?

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

面白い本を見つけました。
中原淳一が自ら主宰していた雑誌「それいゆ」などで着物について書いた文章やイラストをまとめたもの。
昭和30~45年ぐらいの文章が主体です。
イラストは昭和12年頃のものからあり、その当時だと夢二の美人画風。
30年代にはいるとパッチリお目々に光が宿り、まつ毛がすごく丁寧に描かれています。少女漫画の元祖なのね!

着物の着つけが出来ない人が増えて、30年後にはどうなるのだろうといった話から始まるんですが、今がその時代!?
一般的には自然に着れる人は減ったけど、いっそエキゾチックというか、新たなブームも起きていますよね。

昭和40年頃の絵は体型も顔立ちも洋風で、9頭身で肩が張り、細長い首は半襟から突き出しぎみ、襟合わせは妙に深くて脇に回っているし、帯は明らかに上下より細いウエストに巻かれていて、補正無し!?
オードリー・ヘプバーンが着物を着ているようで、ちょっと不思議…
当時ならではのモダンな美しさを求めた結果なのでしょうか?

自分で考案した髪型のアレンジなどの絵がまた、ものすごくたくさん。
こだわりが色々あって、浴衣は素足のほうがいい、間違っても扇子ではなく団扇を持つことだそうです。

全体にポップな色遣いで可愛らしく、夢があります。
縞や水玉の着物もあって、ポップな着物を提唱する豆千代さんと共通する所もあるのが面白いですね。

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紙の本真珠の耳飾りの少女

2006/05/28 16:35

真珠のような少女の思い

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

オランダの画家フェルメールの有名な作品を巡って、そのモデルとなった少女がフェルメールの信頼した召使いであったという設定で描かれた物語。
17世紀半ば、少女フリートは父が失業したため、デルフトの街の反対側の家に奉公に出ることになります。
既に名のある画家とはいえ、寡作でやや気むずかしいフェルメールの家の内情は決して楽ではなく、数少ない召使いの仕事も重労働。
親元を離れて心細い思いをしながら、フリートはけなげに働き、すくすくと成長していきます。アトリエの片づけを丁寧にしたことから次第に信頼を得て、遠い存在だった旦那様に絵の具の混ぜ方を教わり、数年後には助手を務めるまでになるのでした。
芸術を介しての共感はほのかな恋も含み…
やや派手なフェルメールの妻と締まり屋のその母、大勢の子供達と女中達が縦に長い運河沿いの家に同居しているので、フリートを見つめる女達の視線は息詰まるよう。
フェルメールは実際に妻や召使いをモデルにしたらしい絵を多く残していますが、この絵はちょっと異色で、飾り気のない割に生き生きとして印象が強い。こちらを見る視線の素直さに画家との関係を想像したくなるものがあります。
ありありと描写される実直な暮らしの人間くさい有様と、芸術へかけるひたむきな激しさがしみじみと胸に広がります。
この絵そのもののような忘れられない小説でした。

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にぎやかな21世紀からベル・エポックな19世紀へ、タイム・トラベルは猫と犬を連れて〜恋と歴史のすれ違い!?

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

コニー・ウィリスのチャーミングな大傑作。タイムトラベル物なので、ジャンル的にはSFでしょうか。
科学的で難しいというようなことは全然ないので、面白い小説を読みたい人ならどなたでも、オススメですよ〜。
「消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」という副題が示すように〜歴史ミステリに近い内容。
「犬は勘定に入れません」というタイトルは「ボートの三人男」の副題だったもの。あちらでは有名なユーモア小説で、犬も一緒にボートに乗ってテムズ川下りをするわけですが、三人というのに犬は入ってない、という意味。犬は言うまでもなく、というニュアンスのようです。
21世紀、近未来のオックスフォードから時間旅行へ旅立つ若き研究者ネッドとヴェリティが主人公。
つまり、中世へのタイムトラベルを描いて荘厳なまでの迫力のあった「ドゥームズデイ・ブック」と舞台設定は同じです。
今回は主な行き先が19世紀の平和な時代で、恋愛の要素も強く、楽しめる仕上がりになっています。
この話の中では時間旅行は十分可能になっているけど、費用がかかるのでスポンサー無しでは成り立たない、何ともせちがらいものとなっているんですね。
ネッドとヴェリティは、スポンサーの好き勝手な要請にしたがって何度も行き来を繰り返します。時差ボケならぬ時間旅行ボケという症状に悩まされながら、歴史に誤った影響を与えないように奮闘することになるのです。
タイムトラベルの影響で出会う人が出会わなかったら、記録されていた結婚はどうなってしまうのか??
そして、ネッド自身と美しいヴェリティの恋は…
未来では絶滅種となってしまった猫を巡っての物語でもあります。
テムズ川下りの風景は美しいのですが、猫と犬を連れてでは、そりゃあ大変でしょう!?
プリンセス・アージュマンドというたいそうな名前の猫にネッドは思い切り振り回されます。この猫が後書きで「性格の悪い猫」と表現されているけど、猫としてはごく自然にふるまっているだけで性格は悪いってほどじゃないのも〜猫好きには笑えます。
旅の道連れのブルドッグも言うまでもなく活躍、良い味出してますよ〜。

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紙の本スイート・ホーム殺人事件

2006/08/05 03:05

最高に楽しい〜3人の子供達が探偵役で大活躍のミステリ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

クレイグ・ライスの傑作ユーモア・ミステリ。
3人の我が子をモデルに描いた、子供が主人公で探偵役の唯一の作品。
愛情がこもっていて、楽しさにあふれ、読むと元気が出てきます。
カーステアズ家の3姉弟の隣の家で銃声が…!
いばりやの夫人が殺されて、殺人事件の重要証人となった3人は大張り切り。
ミステリ作家の母さんが事件を解決すれば、ご本がもっと売れて、こんなに忙しくなくなるかも知れないと期待します。
ところが母親は関心を示さないので、子供達だけでなんとか解決しようと知恵を絞ります。同時にハンサムなビル警部との縁結びまで…!
14歳のダイナはお姉さんらしく面倒見の良い健全型、12歳のエイプリルは頭の切れるおしゃまな美少女、10歳で末っ子のアーチーはいつもどこか汚れているやんちゃ坊主で実はお金持ち、姉たちにこき使われるとぼやきながらも仲が良い。
アーチーの悪ガキ仲間の活躍も捜査を攪乱させて笑わせてくれます。
近所の大人の様子も案外、子供達には丸見えで、子供と思って偉そうに或いは無防備に対する事で現れる人柄におかしみがあります。
いかにも怪しげに登場するにぎやかな人物も映画を見るような面白さ。
どなたにもお薦めしたい大好きな本です。
古風な翻訳が内容にピッタリ、今となってはレトロで、新鮮でした!

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紙の本エヴァが目ざめるとき

2008/10/05 22:45

未来世界の無気力な人類を救うのは?孤独な少女エヴァの夢見たことは…

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

知る人ぞ知る?イギリスの実力派ピーター・ディッキンソンの不思議な読後感の残る傑作です。
少女の視点で描かれているので、読みやすいと思います。

長い黒髪で青い目の快活な美少女エヴァ。
ある日事故に遭い、9ヶ月も昏睡状態に…目覚めた時には、最先端の医療技術で彼女の記憶は違う身体に入っていた…!

人類は既に生命力を失いかけている時代。
人々は超高層ビルに住み、テレビの進化したような立体映像を一日中見るだけの生活になりはてているという設定。
野生動物はほとんど死に絶え、チンパンジーだけが人類に近いからと保護されて研究対象になっているのです。
エヴァの父親は、ここの研究所の博士。
小さい頃からチンパンジーと遊んでいたエヴァは、チンパンジーの肉体に宿る太古の記憶や本能と融合しながら、たった一人の存在として生きていくことになります。

両親の戸惑い、特に母親の愛と悲しみは複雑でリアルです。自分の娘が見た目はチンパンジーになってしまったのですから!
興味本位にアイドル的な扱いをするマスコミとの葛藤と苦しみが続きます。
しかし、違う世界の人々との出会いがあり、やがて研究所のチンパンジーたちとの付き合い方も変化する様子が何とも面白く描かれていきます。
利発な少女の素直な発想や、折々に発揮する勇気に感服!

生きるとは何か、自然とは、個性とは…
結末は荘厳なまでに味わい深く、じわっと残るものがあります。

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紙の本逃れの森の魔女

2006/11/12 01:32

魔法使いのおばあさんが一人森の奥に住んでいた理由は…せつなく胸を打つ、独創的な物語

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

森の奥の小屋に住む生まれつき醜い女性が主人公。
実は「ヘンゼルとグレーテル」の再話なのですが、子供向けのメルヘンではなく、魔法使いのお婆さんはなぜ魔女になってしまったかという物語。
本来は優しい母親で、一人で育てている娘を可愛がり、産婆としても有能でしたが、とても貧しかったのです。
悪魔払いもする治療師にならないかという誘いを受けて、自分とは違って美しい娘にもっと何か買ってやりたい気持ちのあまり、しだいに危険な領域に踏み込んで行きます。
考えてみれば、産婆というのはとても重い役割を担う仕事ですよね。
医学も発達していない死亡率の高い時代に、頼りにされているだけに、プレッシャーも相当あったことでしょう。
魔女として摘発を受け、ついには変身してからくも逃げ延びるが、悪魔のささやきと闘い続ける孤独な暮らしとなってしまう。その辺の生々しさ、残してきた娘に災いが及ぶことを恐れて思い浮かべることさえもやめようとする切なさ…
そこへ現れるのがヘンゼルとグレーテル!
意外な発想と感動的な展開で胸を打ちます。
魔女の内面を描いた作品は珍しいでしょう。
それほど長い作品ではないのですが、この独創性とこくのある文章が素晴らしい。薄い絵本を開いたら、入念に描き込まれた油絵が出てきたような、ずっしり重い手応えがあります。
忘れられない作品になりました。

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紙の本秘密の手紙0から10

2006/10/17 03:08

大人も読める児童文学としてオススメ〜すべてが動き出す時、親も救われるのです

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

10歳の少年エルネストは祖母と二人暮らし。
テレビもない質素な家で、家政婦が作って置いていく決まり切ったものを食べ、半年ごとに仕立屋の作る服を着て、時代から取り残されたように暮らしています。
淡々と描写される特異な環境にまず引き込まれました。
母親はエルネストを産み落としてすぐ亡くなり、父親はそのショックからか出奔して行方不明、それまでに祖母は夫をはじめ全ての家族を亡くしていて、もう子供を育てる気力が残っていなかったという痛ましさ。
意図的な虐待というわけではないのですが、子供が育つにふさわしい環境でないので、はらはらさせられます。
そういう生活しか知らないエルネストはいたって真面目で大人しく、一番気になっていたのは、閉じこもりがちの祖母が部屋で読んでいる古い手紙でした。
ある日、ヴィクトワールという少女が転校してきて、じつは美少年のエルネストに一目惚れ。
何と14人兄弟という大家族で育った物怖じしない少女は、つぎつぎに彼の前に扉を開けていきます。
虐待でなかった証拠に、エルネストは素直に育っていて、全てを新鮮に受け止めます。
エルネストがお祖母さんをレストランでの食事に誘い出すことに成功するあたりは、ほのぼのさせられました。
そして、写真でしか知らなかった父親が意外に近くで生きていることを知ったエルネストはショックを受けますが、勇気を奮い起こし…
前半の白黒の静止画のように固まった状況から、一気に事態が動いていく様が心地よく、楽しく笑わせて貰いながら、じわじわと暖かい気持ちになります。
毎日わが子を思い続けた父親の思いも、戦地からの手紙を大事にしていた祖母の思いも救われていくのです。
作者はアメリカ生まれでフランス在住。
フランス児童文学大賞はじめ、16もの賞に輝いたというだけのことはある、魅力的な作品です。

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紙の本名画とファッション

2006/06/23 18:21

名画のあらわす当時の最新流行に魅せられる

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

有名な画家の絵を取り上げ、当時の流行と理想を結晶させた絵のポイントをわかりやすく説明してくれています。
ルネサンス風の妖艶なユディトの絵に始まり、権威づけのために宝石をちりばめた重そうな衣装を着たエリザベス女王、美的センスで宮廷を支配したポンパドゥール夫人や、有名な白いドレスのエリザベート皇后、「スワンの恋」のモデルになった洗練された伯爵、セーラー服を流行させた王子の肖像、といった何とも優美なラインナップ。
マネの描くバルコニーに佇む人たちや、ルノワールの描くダンスパーティーなども、当時の最新流行を描いているわけですね。
ほかにカジュアルファッションの走り、子供服の変遷、日本趣味の影響など、面白い観点から取り上げた章があります。
着物は19世紀ヨーロッパでは、前あきの開放的なものとして驚きをもって受け取られたんですね。ドレスの上に羽織った肖像なども面白いです。
ぱらぱらと眺めているだけでも楽しいですが、歴史物の本を読む時に、その頃どんな格好で何に関心を抱いて暮らしていたのかという参考にもなると思います。
サイズはA5で6ミリほどの厚さですが〜内容は濃く、60点を超すカラー写真がぎっしりで印刷も良いので、ゴージャスな気分を味わえますよ。

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カレーソーセージは密かな恋の香り

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

カレーソーセージというのはドイツではよくある庶民的な屋台料理だそうです。ソーセージを切って炒め、ケチャップにカレー粉を混ぜて絡めたもの。レーナが作るシーンでは本当に美味しそう!
ことの起こりは第二次大戦末期、ハンブルク。子供達も巣立ち、夫が出征したまま他の女性に走ったため、一人暮らしだったレーナは、空襲の夜に出会った若い海軍兵曹ブレーマーが死地に赴くと知ってアパートに案内します。
そのまま匿って、密かな同棲生活に…
物のない時代に、工夫を凝らして蟹スープなどのご馳走に似せた料理をふるまうレーナ。二人だけの空間で、カレーを初めて食べた思い出を語るブレーマー。
脱走兵は捕まれば銃殺なので、隠れているしかなくなったものの、まもなく連合軍が上陸。しかし、レーナは彼を引き留めたくて、それを言えない。実は彼にも秘密があり…
複雑な状況がすんなりこちらの胸に飛び込んでくる書き方でテンポ良く読ませ、文句なしに充実した時間を過ごせました。
何よりも、たくましいおかみさんのレーナが魅力的。
戦後の物々交換を上手くやってのけるあたりの展開も、すごく面白いのです。そして、思いがけない偶然から生まれるカレーソーセージ!
既に敗色の濃い時期に生きる市井の人々がありありと描かれ、ナチスへの密告をする近所の人もいる一方で、反骨精神のあるコックの行動などもおみごと。
特殊な状況下での恋も納得のいく展開で、結末にほのぼのとした余韻を残す、味わい深い物語です。

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