サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 小林育子さんのレビュー一覧

小林育子さんのレビュー一覧

投稿者:小林育子

20 件中 16 件~ 20 件を表示

世界的指揮者とノーベル賞作家の考える教育とは

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 小澤征爾と大江健三郎の接点は、ともに1935年生まれという点だ。昨年6月にはともにハーバード大学の名誉博士号を授与されている。もちろん、こんなニュースを知らなくとも、世界的指揮者とノーベル賞作家という肩書きを知らない人はいないだろう。
 本著では、音楽と文学を軸に、両氏がこれまでの人生でどうその芸術に関わってきたかが対談形式で書かれている。単純にビッグな識者の文化論として読めるのだけれど、今や60代になったお2人だからこそ語られるであろう「教育」に関するやり取りが興味深い。
 
 小澤征爾は現役指揮者としてだけではなく、若い音楽家たちを育てることにも仕事の軸を置いている。とはいえ、オーケストラで演奏する一人の演奏家を育てるだけでも、費やす時間やお金は相当なものになるという。音楽塾の教え子があるとき、「私はものすごく勉強したけれど、将来、音楽で食べていけるのだろうか」と小澤さんに質問したそうだ。彼は、「僕らには、あなたたちがいい音楽家、あるいはオーケストラのメンバーとなったら食えるという夢を実現するような状態をつくる責任がある」と答えたという。

 もちろん残された時間は十分ではない。でも、本著を読むときれいごとではなく、若い人たちへの責任をもって小澤さんは生涯、教え続けるだろうなという気迫を感じる。この強い想いの根源には、音楽のスタンダードは西洋だけのものではない、日本人の音楽も世界のスタンダードたりうるべきだという小澤さん自身の強い願いがある。

 そしていい教師に教えられる若い人たちに求められるのは、「よい生徒」であることと、大江さんがつなぐ。大江流「よい生徒」とはもちろん、イエスマンではなく「自立している個」を持つ人ということだ。国家や社会が自由を与えず、若い人の「個」をつぶしてしまうような制度を持っていたら、この先、もしかしたら日本はまたも「鎖国」の時代に入るかもしれないとまで大江さんは語る。これはまた、学校や家庭のあり方まで考えさせられる発言だ。

 音楽であれ文学であれ、芸術は一部の人のものにすぎないという風潮が、日本人にはあるように思う。しかし、この対談を読むと、芸術は人を育てるし、生きる力にもなるし、よい意味での師弟関係を築くための土台にもなると感じる。底の深い一冊だ。

★小林育子のコラム「どんぐりの森」一覧へ

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

何度も読み返したくなる「魔法」の子育て本

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる」「守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ」「子どもはみんな、違うんだ」…。洪水のようにあふれる子育て情報のなかで、こんな言葉は何度も耳にしている、わかっているのよと思っている親たちにこそ贈りたい一冊だ。

 子どもは親の言動を見て育つ、子どもの成長の速度や個性はひとり一人違う。昔から言い古されてきたメッセージかもしれないけれど、この『子どもが育つ魔法の言葉 for the Heart』には子育て中の親に持って欲しい心構えが、実にシンプルにさらりと書かれている。詩のようにそこここに散りばめられている親への一言は、押し付けがましくなく、理屈ではなく、ストンと胸に落ちる。

 そうそう、もしかしたら、大の大人の私だって「認めてもらいたい」「励まして欲しい」「広い心で接して欲しい」、そんな感情を持っているはず。子どもだったら、なおさらそう。わかりやすい言葉で書かれている子育ての基本を読むと、愛されて肯定されてという土壌が、人間の豊かな育ちの根源なんだなあということに思い至る。

 もちろん、わかっていても実行できないからこそ、子育て中の親はイライラする。忙しい毎日のなかで、子どもにゆっくり寄り添えなんて理想的なことやってられないよ! と思うときだってある。でも、そんなときにこそ、本棚からさっと抜き出し手にとってペラペラとめくるのがお勧め。忘れていた子育ての「大切なこと」を思い出させてくれる。

 たとえば「どんなことでもいいのです。毎日必ず子どもを誉めてあげてください。「大好きよ」と言ってあげてください」というフレーズ。何度も聞いている言葉かもしれないけれど、パラリとめくってこのフレーズだけが目に飛び込んでくると、どんなに忙しくても子どものことに想いが飛ぶ。

 たくさんの「子どもにこうしてあげたらいい」という言葉が詰まっているから、たったひとつでも実行できたら、あなたはいいママ・いいパパになったに違いない!今日できなくても、明日にはなにかひとつ。

 これから出産するプレ・ママに、乳幼児を抱えて悪戦苦闘している親たちに、思春期の子どもにてこづっている親たちに。プレゼントとしてもお勧め。

(連載コラム「どんぐりの家」より→?aid=&tpl=dir/01/01051100_0020_bn.tpl>バックナンバー)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

パンツを洗わない男たちよ!ささいなことを見くびるな!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

田嶋陽子さんが参議院議員になった。やったね!「これからの6年間、懸案だった事項をひとつひとつ解決に結びつけていきたい」と満面の笑みで語る田嶋さんに、テレビの前で思わず大声でエールを送りたくなった。いや、ホント…!

『だから、女は「男」をあてにしない』は、デイリースポーツに1991年から96年までに連載されたコラムを再構成したもの。セクハラ、恋愛、結婚、家事分担などに対する真正面からの意見はもちろん、洗剤のCM、女性の服装、映画のワンシーンなどちょっとしたディテールにほのみえる性差別表現にも、田嶋流のコメントが鋭くついている。

かつての「田嶋陽子批判」でよく聞かれたセリフが、「おれたち差別なんてしてないよ、それってあなたの思い込みでしょ!」「あなたが勝手にそう思ってるだけで、世の中のオンナのヒトはそうは思ってないよ」ってセリフ。まずは、今でもこう思っている男たちに、この本のご一読を進めたい。性差別は「思い込み」ではなく現実にあるということを、データも駆使してしっかり書き込まれているから。
そうそう、「私は差別されたことなんてありません。今は男女平等でしょ。差別って言う人はオンナだからって甘えてるんだと思う。努力して能力を磨けばオンナだって認められます」と、言ってるあなた! 意欲は買うけど読みは甘いんだなあ。田嶋さんの常々言っていることは、「男」が悪いではなく「男中心システム」が悪い、である。システムが変わらない限り、意欲や能力だけですべては乗り切れない。それでも頑張ってしまう痛々しい「女」の姿もこの本には書かれているから、意欲あるあなたにもぜひ読んで欲しい。

この本には、「パンツを洗わない男たちへ」のメッセージもある。このフレーズは選挙運動のさなか、田嶋さんの演説の中にもあったように思う。そんなささいなことに目くじら立てんなよ、と反論したい人もいるだろう。でも、これを見くびってはいけない。「パンツぐらい」「食事の支度ぐらい」が「いやあ共働きなんだから、あなたの給料ぐらい安くたっていいでしょ」「ダンナさんいるんだから、仕事辞めて親の介護ぐらいしてくれたっていいでしょ」になり、つまるところ「あなた、オンナなんだから人生適当でいいよ」につながっていく。

「そんなささいなことを!と非難する前に、なぜ、人がそこに差別を感じたのか考えてほしい」と本著で田嶋さんは言っている。ささいなことに鈍感な男たちも、ひと昔前までは生き延びることができた。でも、これからは目覚めた女たちにポイ捨てされないとも限らない。
(小林育子 ライター 2001.8.2)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本「自分の木」の下で

2001/07/16 00:36

学ぶこと、生きることが子供たちに伝わる

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「なぜ子供は学校に行かねばならないのか」という問いに、格調高い答えを期待して手に取ったのが、大江健三郎のこの一冊。
 期待通りの本である。小学校高学年から中・高校生ぐらいの子供に向けて、学ぶことや生きることについて語りかけるように書かれている。でも、子供だけではもったいない! 大人にもぜひ。大人なら心静かに自分の生き方を振り返る、読んだ後にそんな気持ちにさせられる。

 空想癖があり読書好きだった著者の子ども時代、父親や母親からなにを学んだか、学校生活の思い出など、エピソードは個人的なことに求めているけれど、単なる回想録ではない。戦争体験や、障害を持つ息子を育ててきた経緯、小説家としての観察眼から、ひとつひとつのエピソードに、子供たちへのメッセージが込められている。
 一言で言うなら「人間としての誇りを持ち、自分を大切に生きなさい」ということだろうか。そしてその生き方を支えるために、学校教育もある。これがまた、大江健三郎らしい。まず、子供を一個の人間として信頼しているのである。

 こういったメッセージについて、「荒れる子供たち」の現状を憂える人々から未熟な子供に誇りなんてあるか、子供の人格を認めたうえでなんて理想論すぎるという批判がときとしてある。著者はそれを承知で「でも私は言い続けたい」と、本著のなかで強調している。
 そうそう、つまりこの本には、「学校へ行かねばならない理由」として損得だの、人生の成功・失敗だのということは書かれていないのである。ましてや、私たち凡人がつい答えてしまうような「とにかく行っておけば、将来後悔しない」とか「行くのが当たり前じゃないか」なんて答えはどこにも見当たらないのである。だからある意味、格調高い。

 私がこの本からひろった子どもたちに贈りたい言葉は「取り返しのつかないことは子供にはない」。そして、親としてささやかな励ましとして受取った言葉は「ある時間、待ってみてください」。この2つのフレーズは、著者のある思い出とともに語られている。追い詰められたと思う場面が、親子ともども多いのがいまの学校かもしれない。そのとき、この言葉は強い支えになるはずだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

「元気」な女に期待されるこれだけのこと

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 女は「パワー」と「セックス」と「パンと薔薇」を求めてきた。それを声高に語っても許されるのが21世紀。いや、もうそれらをあなたは手にしている?
 かつて「飛んでる女」という流行語を生み出した小説『飛ぶのが怖い』(邦訳1976)の作者、エリカ・ジョングの最新エッセイ集である。といっても、「飛んでる女」という言葉自体を20代、30代の人たちは知らないかも。男より元気がいいのが女でしょ、もうさんざん飛び回ってるし。
 でも、本当に「元気」なのという問いかけが、実はエリカ・ジョングの中にある。パワーすなわち権力を手中にした代表的な女性といえば、いまやニューヨーク州の上院議員となったヒラリー・クリントン。しかし、エリカ・ジョングはこの本でヒラリーはパワーを得るために周囲からさんざん過酷な期待をされたと分析している。
過酷な期待とは、こんなこと。「美しく、ひそかに利口に、人前では和合し、泣くのは一人のときに、そして金持ちになり、決して攻撃的な様子は見せるな。夫が我慢して欲しいということは受け入れ、でもあなたはアイデンティティを失わないで」。ヒラリーが髪型から態度までカメレオンのように変貌を遂げた理由は、この期待に沿うためだったと。 
 つまりこういうことだ。女ならもちろん美しくガツガツしないで、敵はつくらず誰からも好かれるようにリーダーシップをとって、経済的にも自立しなくちゃ。もちろん、夫や恋人の要求は受け入れて当然だけど、知的なあなたなら自己主張もきちんとしなくちゃ、ね!これができて初めて「パワーを持つ成功した女」になれるのよ。

続きはこちらでお読み下さい

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

20 件中 16 件~ 20 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。