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kumataroさんのレビュー一覧

投稿者:kumataro

531 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

管理の本

29人中、29人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人生がときめく片づけの魔法 近藤麻理恵 サンマーク出版

 あとがきから読み始めました。片づけしすぎて病院に搬送されましたから始まります。ほほえみました。自己紹介記事もすごい。幼稚園のときから片づけているそうです。
 タイトルにある「ときめき」は、その物に触れたとき気持ちがときめくかになります。ときめかなければ捨てる対象です。その部分を読みながら物=人とも読み取れました。ときめかなければ交流を絶つことになります。相手は異性であったり同性であったりもします。また、捨てる=忘れるとも受け取りました。
 もったいないと言われて育った世代です。なかなか捨てられません。食べ物も食べ残しができません。この本では、片づけたあとでも散らかる人を片付けの世界でのリバウンドと呼びます。助言を読んでいると捨て過ぎのような気もします。手紙や葉書、お守りは捨てにくい。
 出だしからしばらくは、旧来からの整理整頓の格言とか手法を否定する記述になります。納得することばかりです。片づけは最初に1回、以降は元々あったところに戻す。それで終了は、画期的です。良書です。
 物に声をかける。物に手をあてる。作者は優しい人です。巫女(みこ)さんの経験が後半の精神論につながっていきます。片づけに関して、経験に裏打ちされた自信にあふれています。文章は読みやすく、わかりやすい。何かをあるいはだれかを管理することは難しい。この本は「管理」のノウハウ本でした。

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紙の本

極端にならない。

23人中、23人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

年収200万円からの貯金生活宣言 正しいお金の使い方編 横山光昭 ディスカヴァー・トゥエンティワン

 同著者の「年収200万円からの貯金生活」の次に発行された姉妹版になります。この2冊に貯金を始めとした金銭管理と借金への対応などが、おおまかに網羅(もうら)されています。この本の柱は、お金はなんたらかんたらと意識しながらお金とつきあっていくこととなっています。
 わたしの場合50年間かけて、進学、就職、結婚、子育て、住宅購入とひとつずつ済ませてきて、残るは老後です。この本の老後に備える助言は役立ちます。もう冒険はできない年齢になりました。八方美人のようにだれにでもいい顔はできませんし、こどもたちに金銭を頼ることもできません。夫婦で協力していくことも必要です。若い頃のように体がぴちぴちで元気でもありません。生活を変化させながら老化に備えます。
 この本では、クレジットカード、携帯電話、車に関する戒め(いましめ)があります。わたしはそこに「宝くじは当たらない」を付け加えます。これまでにたくさん買って、たくさん損をしました。買わなきゃ当たらないと主張していましたが、買っても当たりません。当選番号の発表日までは、当たったら何に使おうかと楽しみはふくらみました。夢を買うと自分を納得させましたが、はずれるとむなしい。やはりお金は働いて稼ぐものという基本に戻るのです。
 タダほど高いものはない。ポイントや安売りの誘惑に勝つ。この本の特徴は極端ではないことです。1か月の支出円グラフに、数パーセントの浪費部分があってもいい。わたしも無駄を徹底的に削ることはできないと思うのです。心の平穏を維持するための必要な無駄もあるのです。「欲しい」の自制心では、自分なりに欲しいものが4つあったら、優先順位を決めて、ふたつを買おうという意識が生まれました。全部買うとか、全部買わないとか、両極端では、凡人の心はもちません。
 お金を使わない日をつくる。思い出してみれば、独身時代はお金に窮(きゅう)していて、お金を使わない日曜日がままありました。財布を1日何回開くかとか、お金持ちでも借金に追われているとか、この本を読んで、新しい気づきやお金って何だろうと考えさせられることがありました。

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紙の本

紙の本楽しく遊ぶ学ぶふしぎの図鑑

2011/07/22 19:41

この社会は不思議なことだらけ

19人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ふしぎの図鑑 小学館

 幼児には、「なぜ」とか「どうして」とか親を質問攻めにする時期がある。親は、はじめはまともに答えているが、だんだんめんどうくさくなり、そのうち答えに窮するようになり、ちゃんとした答をせずに、はぐらかすようになる。こどもは親への不信感を募らせるようで募らせない。質問して答えてのやりとりである会話で相互間の愛情を確認して安心する。答えの中身が正しいとか正しくないとかは二の次である。こどもはやがて、なぜの追求をしなくなる。追求すると生活にゆきづまる。なぜを考えない大人になって、世の中の流れに流されてゆくようでもあり、流れにのってゆくようでもあるという生活を送る。そして一生を終える。なぜの追求を続けた人はしあわせになる人もいるし、そうでない人もいる。
 広く浅く、こどもの興味に応える本です。あとは、その子どもさんの個性で、他の本で、狭く深い世界に導く入門書です。写真・イラストによる情報が豊富です。シートン動物記を読んで、動物園の飼育係を目指す人もいるだろうし、ファーブル昆虫記を読んで、虫博士を目指す人もいるでしょう。
 本を読んだら今度は本物を見ましょう。なかなか本物を見ることはできません。わたしは、50歳近くになって初めて青森県八甲田山で樹氷を見ました。その美しさに感動しました。トビウオの長距離ジャンプは中学生のときに見ました。その人のおかれている環境によって、簡単に見ることができるものとそうではないものがあります。この国では昔、こどもたちのまわりには自然がいっぱいありました。今の子どもたちは生まれたたときから人工的な物に囲まれています。不幸な気がします。自分で何かを創造する前に、その物が存在しています。おじさんが子どもの頃、科学が発展して、未来はすばらしい社会になるとだれもが期待していました。生活用品は便利になりました。でも人間は暗算が苦手になりました。手で紙に文字を書く習慣が少なくなりました。本を読まなくなりました。歩くことさえおっくうになり、エレベーターやエスカレーターがないと不満を漏らすようになりました。いつでもどこでもだれかになにかをしてもらうことばかりを考えるようになりました。
 経済の成長で、この社会から貧困は減少する。生活保護をもらう人はほとんどいなくなると予測しました。でも、逆でした。そのへんの「なぜ」の答えをおじさんは今、考えています。

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紙の本

紙の本忘れられた日本人

2009/03/14 11:23

昔の日本人の生活ぶり

20人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

忘れられた日本人 宮本常一(つねいち) 岩波文庫

 作者は民俗学者で小学校の先生だったそうです。昭和56年に亡くなっていますが、本は48刷まで発行され続けています。
 もう60年ぐらい前の日本各地の生活について、古老から聞いた話が綴られています。地域の決め事は全員が賛成するまで延々と何日もかけて話し合われるとか、こどもをもらったりもらわれたりとか、おおらかな男女の関係とか、興味深いものです。
 現代人が知らない日本人のかつての姿があります。進歩の影で、退化していくものがある。退化によって、人間という生物は滅んでいく。現代人に対する警告でしょうか。

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紙の本

紙の本秘密

2008/11/12 22:46

娘をもつ既婚者親父が読むとジンとくる物語です。

20人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

秘密 東野圭吾 文春文庫

 私がこの本を読み終えたのちしばらくして、著者は2006年1月に直木賞受賞作家となりました。本作品は1998年のものです。バス事故発生による暗い雰囲気で物語は始まりますが、すぐに霊がのり移るというコミカルな展開につながります。
 前半部分は読むことがつらかった。理由のひとつめは作家の生活が文章ににじみでてくることでした。生活がしみったれているのです。俗っぽい。丁寧な文章描写なのですが、わざわざ詳細を読ませる必要も無いだろうにと感じる内容の塊(かたまり)です。ふたつめは、主人公男性が私と同世代であることもあり夫婦の会話や営みが現実的過ぎて、自分自身の生活と重なり、読んでいてリラックスできないのです。
 憑依(ひょうい、霊がのりうつる)という設定は珍しいものではありません。映画「ゴースト・ニューヨークの灯」「転校生」NHKドラマ「ちょっと待って神様」などが浮かびました。類似の設定で本作品の場合に、作者はどんなメッセージを送るのかということが興味の焦点でした。
 ラストまでの400ページを読み終えた者だけに感動が訪れます。私は最終章に近づくにつれて、オチは読めたなと推測しました。しかし、結論は異なるものでした。マラソンのゴールをした者だけにプレゼントされるもの、それは何が秘密であるかという種明かしです。悲しくも心温まるラブストーリーでした。感服です。

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紙の本

紙の本ツレがうつになりまして。

2009/05/24 16:30

ツレとは「旦那」でした。

29人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ツレがうつになりまして。 細川貂々(ほそかわてんてん) 幻冬舎

 「ツレ」というのは名古屋弁では「友人」を指し、それゆえ、友人がうつ病になったものと思い込んで本を購入しました。しかし、ツレとは友人ではなくて配偶者でした。また、この本は漫画です。この本の場合のツレはご主人になります。
 人間誰しもうつ病にかかる要因はもっていると思います。わたし自身も25年ぐらい前、20代半ばの頃に、仕事と共働きゆえの乳児の保育園送迎などのストレスで、胸を圧迫される苦しみを味わいました。脂汗(あずらあせ)も出ました。結局、うつ病になる前に内臓を壊してしまい、3か月間ほど入院しました。
 その後も何度か、おもに仕事のストレスから心がつぶれそうになりましたが、年齢を重ねるにつれて神経が太くなり、今では、もう死ぬまでうつ病にはならないだろうという過信のようなものがあります。
 この漫画の場合のご主人は、うつ病になりやすい典型的なタイプなのでしょう。わたしが知るところのうつ病になった知人たちは、まじめでおとなしい、神経質で几帳面、線が細い、頑固で融通がきかないところなどがあり、そういった方々が、うつ病になって家から出ることができなくなります。
 そのようなときに、夫や妻はどう対応すればいいのか。職場にはうつ病になった人を気の毒だとかばってくれる人はなかなかいません。なぜなら、その人の仕事を残った人たちで処理していかなければならない負担があるからです。また、うつ病の方は、責任転嫁をして自己防衛を図る傾向があり、そのような話を聞かされるといい気持ちがしません。
 なぜ、うつ病になるのか。わたしなりに考えてみました。自分の能力以上の仕事量・仕事の質、これを人づきあいとか親戚づきあいに置き換えてもいいでしょう、それらを処理していこうと無理をし続けたときに、心身の限界がきて、体が動かなくなると考えています。うつ病になる前に、がんばりすぎてはいけないのです。自分の能力を過大評価せずに、この程度のものと過小評価して、余力を残しながら働いたり、生活したりすればよいと思います。それから世間の目(評価)を気にしないこと。周囲に迷惑をかけない程度に自分は自分のやり方を通させていただく。嫌なことは小さな声でもいいから嫌ですという意思表示をする。プライドは捨てて、できないことはできませんと率直に説明する。他人の顔色をうかがわない。どう思われてもいいと開き直る。
 あとはなかなかそういう境遇には至れませんが、お金がたくさんあるといい。お金はいい薬になります。そのほかに思いつくことは、場違いな場所には行かない。自分にとって心地よい場所を見つけて、そこで働くとか過ごすとかする。
 さて、この本にある健康なほうの作者は、どうすればよいのでしょう。わたしにはその答えが見えてきません。共倒れの危機をはらんでいます。

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紙の本

罪悪感から解放されました。

18人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

母が重くてたまらない 信田さよ子(のぶた) 春秋社

 読みやすい本です。読み終えるまでに1日かかりません。読み始めで、作者の意見に同感します。こどもにとって親は重荷です。こどもに自分の面倒をみてもらうことを期待しないでほしい。こどもにあれこれ干渉しないでほしい。何か趣味でももって、こどものこと以外に没頭して欲しい。こどもは、親が思うような進路をたどってはくれません。こどもの人生はこどもの人生であり、親の人生ではないのです。
 本に書かれてあることは、表面に出てこないだけで、どこの家庭にでもあることなのでしょう。こどもに重くのしかかってくる母親は暇なのでしょう。働けばいいのにと思いました。主婦は実はひきこもりという解釈は新鮮でした。
 わたしは高校生の頃、日記に「人間はめんどくさい生き物だ。」と記したことを思い出しました。わたしは自分のこどもが所帯をもったら、こどもに招待された場合以外は、こどもの家には行かないつもりです。困りごとを相談されたら協力はしますが、こどもから頼まれない限り干渉はしません。三世代で旅行なんて絶対に行きません。世間が見ればしあわせそうでも当事者にとっては大変な苦痛なのです。乳幼児もその親も疲れています。休みの日は、自宅でゆっくり静かに静養がしたいのです。
 自分のことは自分でやる。こどもに依存しない。親に依存しない。親も子も自立する。わたしはこの本を読んで、慰められました。今まで親孝行とは反対のことをしてきたのですが、それでいながらいつも、罪悪感で苦しんでいました。しかしそれは間違っていなかったことをこの本は示してくれました。

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紙の本

紙の本十歳のきみへ 九十五歳のわたしから

2008/07/21 09:58

経験の伝授

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

十歳のきみへ 日野原重明 冨山房インターナショナル

 10歳のこどもさんに向けて書いてあります。10歳のこどもには難しいのではないかと読み始めましたが、読み進むにつれて大丈夫だという考えに変わりました。寿命は与えられた「時間」という器で、自分がその器を埋めていくという理屈はわかりやすいものです。95歳という年齢がすごすぎて何も反論できません。よく読めば、普通の人権感覚をもっておられる方です。人間が生き続けていくためには、挫折の時期が必要とかピンチのときこそチャンスというのは、年齢を重ねてふりかることによって誰しもが気づかされることです。作者のメッセージは、失意にある10歳のこどもたちへの励ましです。作者自身もまた、周囲の人たちによって支えられてきた人です。残念ながら、こどもたちが、「うれしい、ほこらしい、きはずかしい」という感情をもつ回数が少なくなってきています。生活環境が昔とは一変しました。
 作者の努力によって、成人病が生活習慣病と名称が変わり、音楽療法が認められるようになったことは興味深い。作者には激しさと頑固さがあります。封建的な考えに対抗していく姿には説得力があります。
 経済困窮話では、「がばいばあちゃん」島田洋七著を思い出しました。作者から「慈しみ(いつくしみ)と優しさ」が伝わってきます。後半は神父のお言葉をいただいているようでした。
 平和な世界をつくるために相手を「許す」という行為はとてもむつかしい。よくいえば、自分のことでせいいっぱい、悪く言えば無関心な日本人が蔓延(まんえん)しています。そばで事件や事故が発生して、人が倒れていても関係者以外は知らぬ顔で自分のやることをやる、あるいは、そこにその病人やけが人は存在すらしていないという扱いをする。日本人の性質は変わりました。
 作者はシュヴァイツアー博士の影響を受けました。こどもはだれかの影響を受けてそのだれかのような大人になっていきます。だれをお手本にするのかは、出会いできまっていくのでしょう。

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紙の本

破綻(はたん)しないために

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

年収200万円からの貯金生活宣言 横山光昭 ディスカバー

 読者の対象は、カードローン・キャッシングの中毒者、同様に携帯電話の中毒者だと感じました。カードというものは、翌々月に口座から落ちると思っていましたが、即時に落ちるデビッドカードの存在をこの本で知りました。ダイエット本と似ています。問題点を数値化して、改善していくのです。本は女性向けの面もあります。
 お金の管理ができない人は人生の管理もできないと書中にあります。若い頃のひとり暮らしは、貯金が貯まりません。収入が少ないうえに住居費がかかります。車は持てません。作者は、糖尿病であることを書中で明かし、暴飲暴食の自業自得であったと反省しています。この本は、作者本人の失敗に基づいて成り立っている理論です。
 書中では、嗜好品(しこうひん、酒・たばこ・コーヒーなど)の制限が登場します。制限を求められても応え(こたえ)られない人もいます。生活していくために必要な息抜きです。そっとしておいてほしい。
 忙しい人は、お金で「時間」を買うことがあります。使ったお金よりももっと多くのお金を稼ぐためです。
 50歳を過ぎると医者通いが増えます。医療費のことも頭に入れておかなければなりません。この本では、「生命保険」が無駄のひとつに挙(あ)がっています。若い頃、病院に10年以上行ったことがなくて、毎月給料から天引きされる保険料に不満をもっていました。ところが、思いがけない病気にかかって3か月ぐらい入院したことがあります。それまでに納めた保険料以上に費用がかかりました。健康保険から医療費が支払われました。加えて生命保険からも給付金が出て納めた保険料の大半が戻ってきました。そもそも保険というものはそういうものだとそのときわかりました。
 うつ病にならないためにお金を使うということがあります。「予防」です。自分に対する投資とか気晴らしです。書中では、飲み会代の交際費で記されています。
 セールスの甘い言葉には要注意です。おだてられていい気になって、必要のないものにお金を出してはいけません。自分の家計簿がつけられない人には、組織の予算や経理の仕事は向きません。親族や同僚・上司からの借金要請を断るのは難しい。難しいけれど、貸したお金は返ってきません。前もってどうするのか覚悟を決めておいた方がいい。この本の220ページに書かれているとおり、あなたは試されているのです。

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紙の本

立ち直る。

14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

記憶喪失だったぼくが見た世界 坪倉優介 朝日文庫

 衝撃的な内容です。18才の著者は、雨の中、原付バイクを運転中に駐車中のトラックに衝突する。10日間意識不明となったあと息を吹き返す。大声で叫んで暴れて、病室のベッドにくくりつけられたあと数日して、急におとなしくなる。意識が戻った彼は、自分がだれなのかわからない。家族に会っても相手が何者かわからない。18年間の記憶が消えている。字は読めない。物の名称も覚えていない。現象の意味を理解できない。実話です。最後まで、記憶はほとんど戻りません。
 命の再生を語る物語です。周囲から奇異な目で見られるのが嫌で、だれにも会いたくない。親からみれば生きているだけでもありがたい。本人は、生き返るんじゃなかったと言う。本人の行動は異常です。母親の涙は尽きない。弟、妹はとまどう。父親の厳しくも適切な教育があり、作者は在籍していた芸術系大学を留年しながらも卒業し、運転免許取得後、車中泊で新潟から北海道までひとり旅をしています。そして、ひとり暮らしに挑戦しています。お米をお湯でといだ話には笑いました。就職を経て、着物の染物作家として自立されています。海外での学習歴もあります。「絵があってよかった」というひとことにはほろりときました。初期の作品では、たくさんの足跡も鳥も人間を表し、そこにひとつだけ反対の方向を向いている足跡や鳥の絵があります。反対を向いているのは著者自身の姿であり著者の孤独を表しています。
 交通事故後の様子は、認知症の年寄りのようでもあり、知的障害者のようでもあります。列車の中の描写は知的障害者の行動と思考の説明を表しているようで障害者の気持ちがよく伝わってきました。ひらがなをようやく覚え、漢字の存在を知る。失った能力と引き換えに鋭い感性が与えられます。わからないことを徹底的に追求します。観察力が向上します。
 自然が心を慰めてくれます。樹木や草木を素材にして布を染める職業に就かれました。退院後、人生をもう一度最初から始める。一日一日を過ごすことによって過去が形成される。その過去が増えるごとにだんだん心が落ち着いていきます。この本は子育ての本でもあります。今年読んでよかった1冊になりました。

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紙の本

紙の本阪急電車

2011/04/29 09:48

お勧めします。

15人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

阪急電車 有川浩 幻冬舎文庫

 阪急電車には、乗車したことがあると思うのですが、身近ではありません。また、車で移動するようになってからは、鉄道を利用することがなくなりました。電車通勤の苦痛は覚えています。さまざまなわずらわしい乗客がいてストレスのもとになっていました。ところが、この物語は痛快です。でも、最終的には、この物語は現実には起こらない「夢」です。だけど、「夢」だからいいのです。今年読んで良かった1冊になりました。お勧めします。読んで後悔しません。読み終えると別の人格になれそうな魔法があります。
 鉄道駅を巡るお話ですので、わたしが読みながら感じたことを駅を回るように順番に巡ってみます。征志さん、27歳ぐらい。図書館へ行きます。文章は読みやすくてわかりやすい。上手です。最初の章はわずか11ページで終わってしまいました。1話完結なのか、連作なのか気になります。11ページの短さが、とてもいい。
 ホテルから出てきたのが翔子さん27歳ぐらい。前章とつながりました。上手(うま)い。人間、引き際が大切です。ひと駅ごとが章になっています。ひと駅ごと読み終えるたびに次の章を読む楽しみが湧いてきます。ミサとカツヤのカップルは不均衡です。知的水準が並んでいない。ミサは、自分を守るために判断と決心をしなければならない。
 ラブロマンスがひと組ずつ順番に登場してきます。圭一くんと美帆さん、同じ大学の学生さんですが、昔聞いたチェリッシュの歌を思い出しました。タイトルは覚えていません。あなたと初めて会ったのは確かお好み焼き屋の2階なのです。好青年と素朴なお嬢さんです。
 作者の立場に立ってみる。物語の構成において、選択肢が多岐に渡ります。完成作品以外のパターンもあったでしょう。ミサとカツヤは別れるようで別れないと予想しました。腐れ縁です。ネタバレになるので小説の中の結果はここには書きません。その後の展開もなかなか良かった。作者さん、なかなかやるね。すべての章に「平和」な雰囲気がただよっていました。

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紙の本

支えあう夫婦

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ゲゲゲの女房 武良布枝(むらぬのえ) 実業之日本社

 ゲゲゲの鬼太郎を書いた水木しげるさんの奥さんなので、ゲゲゲの女房です。昭和7年生まれの方なので、わたしの親の世代です。
 ご主人の漫画家水木しげるさんは、最初から成功者だと思っていましたが、この本を読むと、ずいぶん違っていました。おふたりは、極貧生活を経験されています。わたしは去年、青森市にある縄文時代の遺跡である三内丸山(さんないまるやま)遺跡を見学してきました。その縄文時代の生活と水木さんご夫婦の新婚生活が重なるのです。食べるものとか、料理法は縄文時代も水木さんの新婚時代も同じです。案外人間の生活ってそれほど進歩していないのかもしれない。また、東北弁と島根県の安来地方の方言は似ている気がします。映画「砂の器(うつわ)」にも、そんな場面がありました。本書中の記述から、安来節とか三味線話は、青森のじょんがら節とか、津軽三味線を思い浮かばせてくれます。
 冒頭のページにある、ふるさと島根県を言い表した「小さいながらも高い文化をもつ地域」という言葉が気に入りました。そういった地域が日本のあちこちにあるけれど脚光は浴びていません。
 初期の頃のまんが作品は、しろうとである奥さんとの合作である点は、ほほえましい。水木氏は、左腕がない障害をもつ人とは知りませんでした。それを承知で結婚した奥さんは、ご主人をやさしく支えてくれます。相手がどんな人かもわからずに早々と見合い結婚をして、ご主人が、そこそこの収入がある人だと思っていたらだまされていて、それでもふたりで夢を追いかけて、最後に夢がかなう。にもかかわらず、24時間仕事続きの毎日になってしまい、それはそれでまた悩みになっていく。
 これは、生きる勇気が湧いてくる手記です。まんがへの夢を捨てない水木氏の執念と、そんな夫を捨てない奥さんに学ぶべきものがあります。

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紙の本

そっとしておいてください。

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

無縁社会 NHK取材班 文藝春秋

 漫画「星守る犬」の世界です。人口の半分ぐらいの人たちはひとり暮らしをしているような実感があります。この本のテーマは、「頼ったり頼られたり、迷惑をかけたり、かけられたり」しながら、つながりを保ってゆきましょうというものです。でも、頼る人は頼るばかりで、頼られる人は頼られるばかりになってしまったから、無縁社会ができあがったとわたしは考えているのです。本書では、許しあうというキーワードが使われていますが、許せなくなったのです。
 複数の記者による連作です。前半部はドキュメンタリータッチで、情に流されています。問題提起はするものの、解決策の提示はありません。なにをしたいのかがわかりません。親族が支援したけれど、どうにもならなかったのです。ファイティングポーズの死体、座したままの死体。手を合わせることしかできません。異父兄弟、異母兄弟、世の中にはいろいろな親族形態があります。触れてほしくないことです。複雑な家庭環境にある人は多い。自分の責任ではないところでリスクを負って生まれることもあります。連帯保証人になる。信じた者に裏切られて転落していく人がいます。人を簡単に信じてはいけない。中国のことを書いた本に、中国人は血縁関係がある人でも信じないとありました。一見冷たいようで、真実を得ています。この世は、ゼニカネの世界です。
 記者たちは、亡くなった方たちの生い立ちを執拗に調べあげるけれど、やめたほうがいい。相手をみじめにさせます。立ち入ってはいけない世界です。自らが周囲との交流を絶ったから孤独になったのです。人は口では寂しいと言いつつ、孤独の気楽さを知っています。ひとりに慣れた人は排他的になります。
 昔ながらの3世代同居の暮らしは無理です。近居でもつらいものがある。下の世代にすれば、頼られても応えられない。未婚、離婚、子どもなしとあります。離婚後、母子家庭となり、その後、老いた母親とおとなの息子ふたり暮らしの家へ同居前提で嫁ぐ女性はなかなかいません。
 親子でもきょうだいでも歳をとると何年も会わなくなります。健康上の理由であったり、遠方であれば金銭が理由であったりします。
 ひとりになった人は、ぬいぐるみや動物をこどもと思う。病院で死ぬのも、自宅で死ぬのも死ぬときはひとりです。高齢者夫婦になれば、お互いが別々の病院や施設に入院・入所したりして、死に目に会えないこともあります。入院や入所がこの世でのお別れになることもあります。いくつになっても悩みは尽きない。

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紙の本

紙の本コンビニのレジから見た日本人

2008/10/14 23:18

日本人の嫌なところが見える。

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コンビニのレジから見た日本人 竹内稔 商業界

 もう大人になった息子がまだ高校1年生のときにコンビニでアルバイトをしていたことがあります。初日に、たばこの銘柄がわからなくて中年男性サラリーマンに怒鳴りつけられたと言って帰ってきました。15歳のこどもに煙草の銘柄がわかるわけがないだろと思いつつも心の中では(怒鳴られてこい)と子を修行に出す思いでした。
 息子の話では、若い人からお年寄りまで、 孤独な人が多い。話し相手がコンビニの店員しかいない。すぐにかっとなって切れる(激怒する)人が多い。とくに サラリーマンの男性がイライラしている。コンビニの店員は何でもやってくれると勘違いしている。もう 辞めようかと何度も思うけれど、よく来るおばあさんが「辞めたらいかんよ」と声をかけてくれるので それなら続けてみようという気持ちになる。中国人女性の店員さんに囲まれながら、彼女たちのバワー あふれる勧誘接客に圧倒される。そのバイト修行はなんとか、受験勉強を始めるまでの1年間続きました。社会勉強をさせていただきありがとうございました。
 さて、本の感想です。 わたしもずいぶん以前に接客業をしていたときは、お客さまは「ケダモノ」だと感じていました。 欲とわがままの固まりです。いいかげんな人も多い。お金を払ってもらえない。物を買っても、サービスの提供を受けても、支払いをしない人が世の中にはたくさんいます。お金がないわけではなくて、最初から払う気がないのです。超えてはいけない一線(いっせん)を平気で超えてきます。自分がトラブルメーカーになっていることを自分で理解できない。この本を読んでいるとお客さんに対して強い怒りが湧いてきます。
 お札や硬貨は丁寧に扱うものということをだれも教えてくれないのでしょう。無意識にお金をカウンターに、ほおりなげる人が 多いそうです。豊かでなくてもいいからストレスの少ない社会になってほしい。 加えて、うそをつく人が多い。それから店員さんを自動販売機と思っている。原因は、マニュアル型 の接客なのでしょう。いらっしゃませ、ありがとうございましたの繰り返しは機械を相手にしているようで、わたしは評価していません。良くもないし悪くもありません。ロボットみたいです。だからお客も無言で物を買うのです。
 ごみ箱に家庭ごみを突っ込んでいく人、コンビニのごみ箱だけではありません。駅や公園などどこでも です。トイレを借りるのは当たり前、汚しても知らんふり。以前外国へ行ったときに、喫茶コーナーが あるパン屋さんでトイレを借りようとしたら、ぶっそうだからと鍵を渡されてびっくりしました。襲われないように 気をつけてくださいとも言われました。この本を読んで、それは、防犯のためではなく、トイレを使って欲しくないから そうしているのではないかと思いました。
 日本は接客サービスが過剰です。お客さまは神さまではなくて人間です。店員も人間です。売る人間も買う人間も平等です。上も下もありません。
 155ページにある男性と女性の役割に関する宣言はGoodです。
 読み続けていくとむなしくなってくる本ですが、最後にはすっきりしました。そんな殺伐とした日本社会でも誠実なお客さんはいるのです。

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紙の本

紙の本白夜行

2008/08/30 21:58

基本的人権の尊重

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白夜行 東野圭吾 集英社文庫

 遅ればせながら854ページという分厚い文庫を読み始めました。私はドラマを見ていません。妻とこどもたちは見ていました。私は音楽を何度か耳にし、映像をたまに目にしていただけです。内容は知りません。本を読んでいて思ったのです。原作とドラマは話の運びが違うみたい。
 さて本の感想です。桐原亮司、唐沢雪穂のふたりは、人間の姿をしていますが、人間ではありません。目には見えない気体のようなもの。そう、怨念とか憎悪とか、ねたみ、嫉妬、殺意、欲望、企み。そう、人間の精神、魂なのです。ふたりの登場人物は作品のなかでは、目には見えません。
 読み終えて、ただ悲しい。854ページのうちの827ページまでは、作者の企て(くわだて)です。作者は、亮司であり、雪穂であります。作者が登場人物のふたりにのりうつっています。ラストシーンに至るまでの直前の文章の固まりには、背筋がヒャー、ヒャーとします。快感です。
 犯罪は犯罪者だけではなく周囲の人間をも壊していく。同作者著「手紙」のメッセージです。この本は、日本犯罪史の集大成という形態をとっています。
 この本が訴えたいことは、基本的人権の尊重を犯す者に対する抗議と受け取りました。

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