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白みそさんのレビュー一覧

投稿者:白みそ

32 件中 1 件~ 15 件を表示

アンカーコズミカ英和辞典

2010/01/10 12:38

辞書はちゃんと引くもんです

21人中、21人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

英語の学習をしていると、いろんなアドバイスをされる。中には正反対のアドバイスが主張されることもある。その中でも代表的なものが、「英文を読むときには、なるべく辞書は引かないようにした方が良い。」という主張と「辞書を引けばひくほど英語が上達する。」という主張だろう。

前者の主張の趣旨は、単語にこだわらずに文章を読むことによって文脈を推理する力が習得できるということにあるのだろうが、あきらかに舌足らずな主張である。英語は基本語彙と文脈推理力でなんとかなるほど貧困な言語ではない。英文の正確な理解のためには、徹底して辞書を引くことが必要だ。
英文を一段落あるいは一章といったある程度の長さごとに辞書なしで読み進めて一応の意味を考えてみた後、もういちど基本語彙も含めて徹底して辞書を引いて精読するようにすれば、文脈推理の力も精読をする力もつくのであって、辞書を引くなということを言いっぱなしにするのは無責任というものだろう。

最近、世間ではかなり人気の高い英語教材の中の、アメリカではリアリティーTVと呼ばれる分野の番組が最近人気だという内容の文章の中で、ある番組を紹介したのような文に出くわした。
Individuals strive to survive in the wild, dealing with the elements of a hostile environment for over a month while competing against one another in a variety of situations for rewards and advantages in the game.

この文章についての和訳が次のようなもの。
「人々が野生の中で1カ月あまりの間、厳しい環境における様々な要素に立ち向かいつつ生き残ろうと奮闘します。」
"the elements"を「様々な要素」と訳しているところが明らかな誤訳である。
"the elements"に自然力あるいは風雨などの悪天候という意味があることは、まともな辞書なら必ず記載されている。
英語教材の執筆者であれば一定以上の英語力を有するはずであるが、そういう人でさえ、辞書をまじめに引かなければこんな間違いをするのだ。

ところでこの「アンカーコズミカ英和辞典」、編集主幹である山岸勝栄氏はまえがきで次のように述べている。
「本書を編纂するにあたって、私は、英語と表裏一体を成す文化(中略)との”不可分性”を追究し、・・・・」
そこで、文化の不可分性の追究を編集方針とする本辞典の"element"の項目を見てみることにしよう。

冒頭に「プロフィール」という欄が設けられ、次のような記述がなされている。
「<事物の構成要素>が基本義.元来、古代の自然哲学者が万物を構成していると考えた四大元素(血・水・火・風)の一つの意味で用いられたが、今日では古風.この意味が近代になって「元素」(2)となり、より一般的な「要素、成分」(1)になった。「自然力、風雨」(4)も元の意味から派生したものである.」
この辞書で"element"の項目を一度でも引いたことがあれば、"the elements"を「様々な要素」などと訳すような間違いは犯しようがないほど丁寧な記述である。

結論 辞書はちゃんと引きましょう。

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英文法解説 改訂3版

2009/10/13 05:02

受験というしばりをぬきにして評価すべき本格的文法書

18人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

受験生にとって、高校時代という限られた時間のなかで文法書を通読するのがいいのかどうかは悩ましい問題である。とくに本書のような本格的な文法書を通読することはあまりお勧めできない。通読するにしても、せいぜい「総合英語Forest」レベルの文法書にしておくのが無難であろう。英文法以外にも勉強すべきことはたくさんあるのだ。

となると、受験生が使用するとすれば、リファレンスとして辞書的に使用することになるが、それならば「ロイヤル英文法」の方が検索性に優れているように思う。内容的にも、初歩的な文法知識を有することを前提とした本書より、「ロイヤル英文法」の方が受験生向きと言える。

だが、受験生向きでないということだけでこの本を評価するべきではないだろう。ブッキッシュで多少古くはあるが良質の例文と、ため息がでるほど見事な和訳。東大名誉教授で翻訳家でもある行方昭夫が「英文快読術」の中で推薦しているだけのことはある。

英語を理解する能力と英文和訳の能力はそれぞれ別の能力である。英語を理解するために本書を読む必要性はそれほど高くはないが、英文和訳という面からは、本書のように質の高い英文と和訳が集められている本は、なかなか見当たらない。1953年の初版発行以来、読者に愛され続けた理由もその点にあると思う。

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テーマ別英単語ACADEMIC 〈中級〉01 人文・社会科学編

2010/02/26 03:52

かなりの出来栄え

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最近になって、文脈の中で英単語を理解することの重要性が再確認されるようになったのか、一定の長さの文章を読ませることによってボキャブラリーの増強をはかる単語集が相次いで出版されている。

そのような英単語集の中での「テーマ別英単語ACADEMIC」シリーズは、学術的な文章を読むための基本的な語彙を中心に収録している。
ただし、学術的といってもそれほど専門的な語彙が集められているわけではなく、新聞や雑誌、テレビドラマなどでも目にしたり耳にすることのある語彙ばかりである。
とはいっても、大学受験レベルではあまり必要のない用語も多く、日常会話やビジネス英語中心のTOEICの傾向からも少しずれている。対象とする読者はTOEFL受験者、これから英文の専門書を読もうとする大学生や大学院受験生、学術的な英文の書籍を読むことに興味がある社会人といったところだろう。

収録語彙以外の主要な特徴としては次のような点があげられる。
1 英文が類書より充実している。類書と比較してかなり長い文章が収録されており、読みごたえがある。一般社会人向けやジュニア向けに専門家が書いた入門書レベルの文章と考えてもらえばよい。アカデミックな文章であるから、論理構成がしっかりしていて、語彙の面を除けば読みやすい文章である。
2 英文の前に各分野についての要領のいい背景知識解説がある。
3 単語については、連語(コロケーション)の形で収録されている。
4 収録された英文をナチュラルスピードで朗読したCDが付属する。

本書を一読して、かなり完成度が高いと感じた。
訳文は、類書と比較してかなり正確でこなれている。世の中には和訳を軽視する人もいるが、英文に正確な和訳が付され、英文の意味を正確にイメージできることの学習効果は計り知れないものがあると思う。
少し残念なのは、英文に付されている語句と構文の解説が最小限度であること。一つの文章につき1ページから2ページを割いて解説があれば、ほとんど完璧な英語教材になったであろう。
とはいえ、星5つの価値は十分にある。




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街道をゆく 新装版 1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか

2009/07/14 03:53

道を描くということ

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「僕の前に 道はない 僕の後ろに 道は出来る」
高村光太郎の詩の一節であるが、この詩ほど道というものの本質を鋭く言い当てたものはないだろう。空間と時間のほかに、人間という存在を欠いては、道は存在しえないのだ。

この巻に収められた「湖西のみち」からスタートする司馬遼太郎の紀行文は、その後、日本国内にとどまらずアメリカやモンゴルにまで及ぶことになる。

司馬は、街道という空間を現在往来する人々に目をやるだけではない。過去にその街道を往来したであろう人々の姿や息遣いをその場で感じ取ろうとする。
道という存在に人間が不可欠の要素である以上、それは歴史小説家である司馬にとって街道を描くために不可欠の作業だったのであろう。

昭和47年に始まり司馬の死により終了したこの紀行文の描く街道をすべて自分の脚でたどってみたいというのは、おそらくかなわないであろう私の夢である。

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竜馬がゆく 新装版 1

2009/05/09 03:45

竜馬像の原型

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ある小説の登場前後で、歴史上の人物の評価が一変することがまれにある。
例えば、吉川英治が宮本武蔵を描かなければ「五輪の書」が現在のように広く読まれることはなかったであろう。吉川英治が描いた武蔵は、現代の日本人が描く武蔵像そのものであるといっても言い過ぎではない。
坂本竜馬についても、同じことが言える。司馬遼太郎が描く竜馬は現代の日本人の竜馬像そのものといえるだろう。
だが、どれだけ史料を渉猟しても、小説である以上、それは作者が創作した世界であり、その小説が優れたものであればあるほど、作者の創造力がその世界に巧みに組み込まれているものなのだ。
司馬遼太郎が描く竜馬は魅力的である。もちろん、竜馬がもともと魅力的な人物でなければ司馬が小説の主人公に選ぶことはなかったであろうが、史料の中に埋もれかけ、教科書や百科事典の中にしか記されない人物になりかねなかった人物をこれほど生きいきした姿で描く司馬遼太郎の想像力は驚嘆に値する。
多くの読者が、小説であると知りながら、司馬の描く竜馬が坂本竜馬そのものであるという感覚にとらわれるのは、史料という縦糸と自己の創造力という横糸を巧みに織りあげた作者の力量ゆえであろう。
司馬は吉川の作り上げた武蔵像に挑戦するように「真説 宮本武蔵」を著した。司馬の作り上げた竜馬像に挑戦し成功する小説家は現れるであろうか。

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英文法総覧 改訂版

2011/11/03 07:39

学校で英文法が教えられていた頃

11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

世間では、学校文法は何かと批判の対象になることが多い。
だが、私にはそもそも学校文法がどういうものか具体的にはわからない。
英語教師たちの頭の中には確固としたイメージがあるのかも知れない。
だが、わたしの高校時代にはとうに英文法など授業ではまともに教えられていなかったのだ。
それなのに教えられる側に学校文法のイメージなど湧くわけない。
おそらく、現在、世間一般が抱く学校文法のイメージなどというのは、実は受験参考書によって形作られた”受験文法”なのではないか?

現在では、私が高校生だった頃に比べて、さらに英文法にさかれる授業時間は減少しているようである。
そんな状態で、学校の授業だけで文法に強くなれという方が無理な注文だろう。
「日本人は文法に強いが英会話はできない」などという俗説が未だに世間では通用しているらしい。
だが、そんなのは大昔のはなしである。

本書の初版は高校の英文法の教科書とその教員用指導書をもとに作られたそうだ。
高校で英文法を科目として教えなくなったのを契機に、加筆をした上で一般書籍として出版されたらしい。
皮肉な言い方をすれば、学校文法が咲かせた最後の徒花ということもできる。

もとが高校の教科書であるだけに、本書で取り扱われる文法事項は基本的なところに限られ(ただし、改訂により、情報構造についても章を設けてある)、例文も平易である。
だが、その解説は平易さを保ちながらも変形文法(生成文法)の知見も随所に取り入れられ、英文法の表面的なルールの背後にひそむ原理まで遡ろうとする、水準の高いものである。

成り立ちから言えば、この本に書かれていることこそ学校文法そのものと言ってもいいはずだが、本書の内容は、おそらく、世間一般が抱いている学校文法のイメージからはかけ離れたところにあるはずだ。

もともとが受験用の本ではないから、練習問題などは付属していない。解説も、わかりやすいとは言ってももともと教師向けなのだから、受験生には不必要な部分が多い。だから、受験参考書として使用するのには向かないかも知れない。
だが、知的好奇心を満たしてくれる、数少ない英文法書の一つであることは間違いない。

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アクセスアンカー英和辞典

2009/05/13 02:03

できのよい小型学習用英和辞典

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この辞書の見出し語数は約1万500語しかありません。総語彙数も約2万4,000語にしか過ぎません。また、収録された語についても、重要な語義しかのせていません。しかし、情報量が限定されていることは、この辞書の長所でもあります。

この辞書が本来想定している読者層は高校生でしょう。そのため、例文の多くは高校教科書から引用されいます。また、サイズのわりに語法などの情報も充実していて、レイアウトもみやすくなっています。

一般的に高校生用に推薦されることの多いのは学習用の中型英和辞典でしょう。最近は電子辞書を使う高校生も多いようですが、それらの多くには学習用の中型辞書の代表であるジーニアス英和辞典が搭載されていることが多いようです。
しかし、これらの辞書を使いこなしている高校生がどれだけいるでしょう。
中型辞書の語彙数は6万から10万程度だと思いますが、一般の高校生にとっては情報が多すぎ、自分で情報を取捨選択できない場合が多いと思います。

ここに面白い数字が二つあります。
一つめは、高校卒業程度の英語力を持つ人の総語彙数です。わずか2,500程度だそうです。この辞書の見出し語数にはるかに及びません。
二つ目は、アメリカの大学へ留学して本場の授業についてゆくために最低限必要な語彙数で、ある学者の推測によると1万程度は必要だということです。この辞書の見出し語数と大してかわりません。

もちろん、単純な数字の比較に過ぎません。また、英語で読書をする場合、語彙数が足りないのもたしかです。ただ、高校生にとっては、厳選された情報だけが記載されていることは大きなメリットです。また、英語をマスターしたい社会人にとっては、できのよい単語・熟語・例文集としても使えるでしょう。

現在(2009年5月13日)、巷では「東大発《たった280語》で単語力強化!」などというお気楽なコピーで「東大英単」という本が話題のようですが、たった280語ではどうにもならないことは確かです。この辞書で勉強し、しっかりアンカー(いかり)を下ろして東大ブランドに流されないようにしましょう。

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新英文読解法 本格的な読解力を確実に

2011/03/22 07:34

知らざるを知る

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の中原道喜氏は原仙作著「英文標準問題精講」の補訂者としても有名だが、自身も数多くの英語参考書を著している。
英文読解・英文解釈の分野に限っても「基礎英文問題精講」、「マスター英文解釈」など、評価の高い著作が多数ある。

英文読解・英文解釈の分野では、伊藤和夫以降、著者独自の体系による英文解釈法を前面に押し出すものも少なくないが、中原道喜氏の著作の特徴は、正統的な英文法に則った堅実な解説であり。それは本書でも変わらない。

本書で特筆すべきは、PART1の前におかれた「読解力基礎テスト」であろう。
見慣れた単語が使用されている英文ばかりだが、強固な基礎力がないと正確に理解することが難しい文章が集められている。
自分では英語が得意だとうぬぼれている人の多くが、その鼻をへし折られることだろう。

その後、文法事項ごとに分類された短文を取り上げるPART1、それよりやや長い文章のPART2,長文を扱うPART3と続く。
本帯に「必読テーマの多様な英文 環境も情報もテロも」とあるとおり、取り上げられる文章は多様な分野から選ばれている。

最初に読者に基礎力の重要性を自覚させたうえで学習を進めていく本書は、中級者や上級者を自認する英語学習者に是非お勧めしたい。
「知らざるを知らずと為す是知るなり」と論語にあるとおり、知らない事は知らないと自覚することが、本当の知るということにつながるのだから。

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堕落論

2009/06/28 01:46

堕ちることへの自覚

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

敗戦直後、安吾は「生きよ、堕ちよ。」と日本人に呼びかけた。
自らの堕落に自覚的であった日本人は戦後めざましい復興を遂げることになる。

現代の知識人はしきりに「品格」を叫び、政治家は「美しい日本」「とてつもない日本」などという空疎なスローガンを国民に対し繰り返す。
日本人は自らの堕落に対し無自覚となり、日本の国際的地位は低下し、繁栄も失われつつある。

自らの堕落に無自覚であることほど品格に欠け、醜いことはない。
それにひきかえ、安吾の「堕落論」は今でも美しい。

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書く英語 第2次改訂版 基礎編

2009/05/05 04:01

英語を書くことに対するハードルを下げてくれる名著

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

非常に初歩的なレベルから始まり、途中でいきなりむずかしくなることもなく、着実に中学校レベルの文法で自分の文章をかけるようになる。説明もわかりやすく、練習問題が豊富である。
中学校レベルといってもばかにしてはいけない。日本人で中学校レベルの文法を駆使して英語を書ける人は案外少ないのだ。たとえば、英語でEメールをする場合、専門的な分野の話題は別として、文法的に中学校レベルで足りなくなることはあまりないと思う。
文法的な説明に厳密さを欠いた部分もある。改訂されたとはいえ古さを感じさせる部分もある。それでも星5つにするのは、著者の指示通りに練習問題をこなせば、確実に英語で文章が書けるようになるからである。
この本の価値は読んでいるだけではわからない。ぜひ著者の指示通りに練習問題に取り組んでほしい。そうすれば、名著と呼ぶにふさわしい本であることが理解できるだろう。

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新自修英作文 復刻版

2011/06/17 07:47

古さを感じさせない

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

遠い昔、受験時代の記憶を辿ると、英作文の勉強をした覚えがない。
もちろん大学入試には英作文も出題されていたが、英作文で得点することは一切あきらめていた。
英文和訳問題の比重が高く、英作文の得点配分がわずかしかなかった時代のことである。
もちろん真面目な受験生はそんな横着はしていなかったが、私やその周囲には、そんな怠け者の受験生がうようよいた。
それでもそれなりの大学に合格できたのだから幸せな時代である。

時は移り、コミュニケーション重視が叫ばれ、センター試験の英語でリスニングまで出題される時代となった。英文和訳の得点配分は低くなり、和文英訳はおろか、大学によっては自由英作文まで出題されているらしい。
いくら怠け者でも、それなりの大学に合格しようと思う者は、英作文の勉強をせざるをえなくなった。受験生にとっては不幸な時代としか言いようがない。

何が不幸かといって、中学・高校の英語の授業でまともに英文法を教えなくなっているにもかかわらず、大学入試で文法的に正しい英文を書くことを要求されているのである。これを不幸と言わずして何というのだろう。

いや、受験生はまだ幸せである。不幸なのは入試の採点者である。
まともな英作文ができる受験生など一握りしかいないのに、大学は定員を満たすために一定以上の合格者を出さないとならない。英語らしきものが書いてある訳の分からない答案でも、ある程度の得点をつけて合格者を捏造しなければ国から助成金を打ち切られ、大学経営が立ちゆかない。
採点者こそいい迷惑である。おなじ訳の分からないことが書いてある答案を採点するにしても、受験生にとって母語である日本語で書かれた答案は、大部分は一応日本語として成立しているのに対し、英作文の答案の大部分は、英語らしきものとしか表現のできないシロモノである。採点者の感じるストレスにおいて大いなる違いがあるだろう。
しかもそのような答案を大量に毎年のように採点しなければならないのである。他人事とはいえ、同情せざるを得ない。

ところで、この「新自修英作文」は、「新々英文解釈研究」、「新自修英文典」とともに復刻された古い参考書である。
いずれも名著らしいが、私の受験時代には既にあまり流行らなくなっていたのだろう。いずれも復刻されるまでその存在を知らなかった。
実際に読んでみたところ、いずれもしっかりとした内容であるが、他の二つはさすがに古めかしさを感じざるをえなかった。
ところが、「新自修英作文」は、装丁や活字印刷に古さを感じさせるが、内容にはあまり古さを感じさせない。

3部構成で、第1部が文法編、第2部が文体編、第3部が事項別・慣用文例集である。
この構成が素晴らしい。

文法編の冒頭には基本文例集がおかれる。これは佐々木高政の「和文英訳の修業」と同様、とにかく和訳をみたらスラスラと英文が出てくるまで徹底して覚えるための文例で、約200あるが、歯ごたえがありすぎるほどある「和文英訳の修業」の暗唱用例文とは異なり、本当の「基本」文例集である。

「和文英訳の修業」などは例文の暗唱で力尽きる人がほとんどであるが、本書の基本文例なら、そこそこやる気のある受験生なら簡単に暗記できそうである。
中にはこんな文例は簡単すぎて役にたたないということをいう人がいるかも知れない。しかし、英文の基本的な型をマスターするのが目的なのだから、これでいいのだ。

これだけの文章を暗記し、その上、日本語訳を見ただけで反射的に口したり書いたりできるようになり、その上で文法事項を確認していけば、英語の基本的な型が自ずと身につく。
その上で最後に置かれた事項別・慣用文例集まで辿りつければ大学入試の英作文など怖くはないはずだ。
例えそこまで辿りつかなくても、第1部の文法編まで終えることができれば、入試でもある程度戦えるはずだし、受験生全員がそこまで勉強してくれたなら、入試の採点者のストレスはかなり軽減されるはずだ。

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オックスフォード英語類語活用辞典

2011/01/03 05:53

英語学習者用類語辞典の決定版

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

英和辞典をいくら見ていても、英単語や英熟語の意味の正確な理解はできないとよく言われる。英語学習者が英英辞典の使用を勧められる理由でもある。
そして、そういった理由からロングマン現代英英辞典やオックスフォード現代英英辞典を推薦する人が多い。

たしかに、これらの辞書は収録語数も多いし、類義語の使い分けにも一定の配慮がなされている、すぐれた万能選手である。
しかし、英単語の意味やニュアンスを正確に理解するためのツールとしてであれば、一般的な英英辞典ではなく(もちろんそれと併せての方がいいが)、英語学習者向けの類語辞典を使用することも考えてよいのではないか。

日本語と英語では、単語の意味する範囲が一対一では対応しないとよく言われるが、実際は一対一で対応する単語も多いのだ。
明治維新以降、外国語の概念を表現するための造語が数多く作られた。それらの造語には、英単語と一対一の対応関係があるものが多い。
そういった造語は、実は英和辞典で調べようが英英辞典で調べようが、単語の理解度にそれほどの差は出ない。

それらの造語は、おもに専門分野で用いられることが多い。
逆に考えれば、基礎的あるいは日常的な単語ほど、一対一の対応関係にないということになる。
そうだとすれば、英語学習者にとって必要なのは、収録語数が多い一般的な学習者用英英辞典よりも、基礎的、日常的な単語の使い分けが理解できる学習者用類語辞典であるという考え方も成り立つはずである。

本書は、17000を超える語が意味ごとに2000を越える項目に分類され、詳しく解説がなされているので類義語の使い分けが一目で理解しやすくなっている。
17000語といえば少ないように思う人もいるかもしれないが、専門家はともかく、一般的な英語学習者にとっては、本当に英英辞典を見て理解する必要がある語というのは、あるいはこれくらいなのかも知れない。

類書として、ロングマンEssential Activator英英辞典があり、これもよい辞書だ。
しかし、語の定義の正確さについてはやはりロングマンよりオックスフォードに軍配があがるし、情報の整理の仕方もこちらの方がすぐれているように思う。

学習者用英英辞典の影に隠れて目立たない学習者用類語辞典だが、こんなに便利なツールを使わない手はない。

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英語再入門 読む・書く・聞く・話す

2010/03/14 10:36

正攻法の英語学習法

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の一人柴田徹士は旧制の中等学校卒(現在でいう高校卒)の学歴ながら、高検(高等学校教員試験検定)に合格し、のちに大阪大学教授となった経歴の持主。アンカー英和辞典(スーパーアンカー英和辞典の前身)の編集主幹としても知られる。
もう一人の著者藤井治彦は柴田の大阪大学時代の教え子で、自身も大阪大学文学部教授を務めた。
本書は、弟子の藤井が柴田に英語の学習法について質問する形で進められる。

対談形式の本はわかりやすいものの、概して内容が薄くなりがちである。しかし、この本については、内容が薄いなどということはない。それどころか、英語学習法に関する本でこれほど内容の濃密な本を私は読んだことはない。

最初に、「初めにー英語には特殊な学習法があるか」と題する項目で、柴田は言う。
「英語の能率的な学び方なんぞ現実にはない。あるのは非能率的な学び方だけだ、ということです。その非能率的な学び方の方が世間では多い。だから、みんな苦労して、結局、成績があがらないのです。」
なんて正直で誠実な言葉なんだろう。

次に、「英語体験の回顧」と題して柴田自身の英語体験が語られる。
中学卒業後、家業の「うすあげ製造卸業」を手伝いながら高検に合格した際の勉強方法も紹介されている。

その後、具体的な英語学習法が語られるのだが、内容はあくまで正攻法。まったく奇をてらうところはない。
柴田は言う。
「なるべく苦労するな。」「楽しめ、そして手間だけはかけよ。」

話題は発音にまで及ぶ。
[f]、[l]、[r]などの発音について日本人が苦手とすることはたびたび語られるが、柴田は[n]の発音に関しても、次のように言う。
「たとえば、日本語の「ん」の発音です。「ん」に四種類の発音があることを知らない人が大部分でしょうね。」「これがはっきりわかっていないと、英語の"nonsense"の発音は正しくできない。」「日本人でこの[n]が正しく発音できる人は少ないでしょう。」

そして話題は精読と多読に及び、最後には実際の英文を読みながら話が進められるのである。散文と詩が一つずつ取り上げられるのだが、英語学習法に関する本で詩が取り上げられることは、他の本ではまずありえない。

柴田の英語に関する造詣の深さもさることながら、藤井の聞き手としての力量も並大抵ではない。ここまで内容の濃い対談ができるものかと感心する。

「英語『再』入門」と題されているとおり、完全な初心者を対象とする本ではない。わかりやすい本ではあるが、特に後半部分は内容的に高度な部分もあり、初心者には理解がむずかしいだろう。むしろある程度の英語力のある人にとって有益である。ぜひ一読することをお勧めする。

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100の超基本名詞で広がる英語コロケーション2500 これがネイティブ発想!

2010/06/19 19:10

名詞を中心として英単語のネットワークを作る

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

単語と単語のよく使われる組み合わせのことをコロケーションという。
コロケーションは何も英語に限った話ではなく、日本語でも将棋の駒は「指す」というのに対し、碁石は「打つ」というに、単語と単語が強く結び付く例は多く存在する。

英語を学習するうえでコロケーションの習得が重要であることはかなり昔から意識されていた。
たとえば1933年に出版された齋藤秀三郎の「熟語本位英和中辞典」にしても、「熟語」という表現を用いてはいるが、その中には、数多くのコロケーションが含まれている。
齋藤は次のように述べている。
"Words are nothing in themselves, and everything in combination."

しかし、受験英語の世界でコロケーションの重要性が認識されはじめたのはかなり最近になってである。おそらく、清水かつぞー著の「英単語ピーナツほどおいしいものはない」が出版されたのが大きな転換点であろう。

この変化の背景には、同じ時期に、大学入試が英文読解中心から大きく転換し、英作文が重視されるようになったことがあると考えられる。

英文読解では、問題として自然な英文が与えられているのだから受験生があえてコロケーションを意識するまでもない。

これに対して英作文では、受験生が自分で英文を作成しなければならない。基本的な文例を暗唱し、文法的に間違いのない文章を書けば合格ラインには達するだろうが、コロケーションを意識した学習をしているのとそうでないのとでは、英文の質や解答速度に大きな影響が出るであろう。

「英単語ピーナツ」以降、コロケーションを意識した単語集は数多く出版されているが、本書ほどしっかりしたコンセプトに基づきコロケーションを整理した単語集は存在しない。

本書の特徴は、基本的な名詞を中心にコロケーションを整理していることである。
「言語は動詞ではなく”名詞”を中心として広がっていく」というのが著者の主張である。

「ちょっと考えてみてください。あなたは、日本語で、ある「名詞」(コーヒーとかサッカーとか)に "ついて" 話すことはいくらでもできますね。
しかし、「飲む」とか「蹴る」とかの「動詞」に "ついて" 話すことはあまりできないでしょう。」
言われてみればあたりまえの話である。

受験生の気持ちからすれば、出題される頻度順に整理されていない本書は敬遠されるかもしれない。しかし、冷静に考えてみれば、自分の知っている単語のみで組み立てる英作文において出題頻度などはあまり意味をもたないものである。
「出る順」という発想自体が、入試が英文読解中心であった時代の遺物なのかも知れない。

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箱根の坂 新装版 上

2010/01/20 04:44

戦国時代の幕開け

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

北条早雲については、近年研究が進んでおり、史実はこの小説の設定とはかなり異なっているらしい。

早雲の生年は永享4年(1432年)とされてきたが、どうやら康正2年(1456年)のようで、これならば今川家に身を寄せたのが32歳である。また、申次衆、奉公衆をつとめた室町幕府の高級官僚であったことがほぼ確実になっている。戦国時代の幕開けとして象徴的な事件である伊豆討入りについても、中央の政治状況と連動した生臭いものであったようだ。

だが、そんなことは気にせずにこの小説を楽しむべきだろう。
足利義視に仕える一方、鞍作りの内職をして生計を立てていた人間が、50歳をこえて裸同然で今川家に身を寄せ、ついには箱根の坂を越えて関東の地に覇をとなえるに至る。
戦国時代の口火を切り、旧体制を破壊しながら理想の政治を追求するこの小説における早雲の姿は、閉そくした政治状況にある現在、より一層まぶしく感じられる。

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