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ジュンク堂書店 書店員レビュー一覧

ジュンク堂書店 書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

私は幽霊を見ない 藤野可織 (著)

私は幽霊を見ない

あげられなかった「声」たち

藤野可織さんのエッセイ集です。幽霊に対する実話怪談というよりは、霊感0の藤野さんが、どうにかして幽霊に触れたい、話を聞きたい、と四苦八苦する内容になっています。
エピソードのなかで秀逸なのは「ビデオがいつでも、途中で止まってしまう男」の話。ランボーもラピュタも、すべて家のビデオは途中、登場人物のアップで終わるため、男の人は映画館で「ジュラシック・パーク」を観ようとします。しかし、そこに現れたのはサム・ニールの顔のアップ・そう、映画館でさえも彼を阻んだのです。このような、霊?そうじゃない?のようなエピソードのオンパレードです。
藤野さんは幽霊のことを「生きているときにあげられなかった声」といった意味で表現しています。日常を生きる私たちも言いたいことはたくさんある、でも、あげられない声がある、だから幽霊を追い求めるのだと。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ (ポプラ文庫ピュアフル)標野 凪 (著)

終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ(ポプラ文庫ピュアフル)

ほっと一息

福岡薬院の裏通りにあるカフェ「文月」は「こつまみ」(小さく盛られたおつまみたち)をつまみながら、本が読めて手紙が書ける、というコンセプトのお店で、毎月23日の「ふみの日」には便箋と封筒が用意されている。
おっとりとした雰囲気の店主と店の雰囲気に惹かれて人々はたずねてくるが、営業はなんと三日月から満月の間まで。つまり月の半分ほどしか営業していないという不思議なお店だ。
なかなか自分のイメージ通りに仕事がすすまない悩めるデザイナーや、TODOリスト通りに人生を歩みたい女性、地元の出版社で働きながら「物語のちから」を信じている男性や、年老いたやや過干渉な母と、その関係が疎ましかった娘など、文月をたずねてくる人たちは職業も性別も年齢もばらばらだが、共通点があるとすれば「まじめな性格」であるということだろうか。
がんばって、がんばって、まじめに生活を営もうとしている人が本当に疲れてしまったとき、「元気なお店」は少し敷居が高い。
相手ががんばっていれば、自分それにがんばって向き合わないといけなくなってしまう、そういうきまじめさがある人達にこそ、この場所は心地よいにちがいない。
文月の店主は多くを語らず、とにかく押しつけがましくない。
この物語はフィクションだが、福岡薬院をたずねてみれば、おいしい食事と飲み物を提供し絶妙な距離で接してくれる「文月」がそこで待っていてくれるのではないか?そんな気持ちにさせてくれる1冊だ。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

神前酔狂宴 古谷田奈月 (著)

神前酔狂宴

自分も神前結婚式だった

神社の結婚披露宴会場が物語の舞台だが、神や金や愛、そして家族を巻き込む様はどこか社会の縮図のようにうつる。そこで働く主人公の浜野は、日々執り行われる「茶番」を見事にサポートし自らを演じきる。それは狂気にも似た働きぶりで、少し怖くなるぐらいである。
しかし、ある客の奇妙な要求をキッカケに浜野に変化が。それは読んでからのお楽しみとして、読後感はどこか開放的。結局閉塞感や生きづらさをもたらしているのは、無知からくる偏見が要因のひとつなのかもしれない。

書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|ロフト名古屋店

菌は語る ミクロの開拓者たちの生きざまと知性 星野保 (著)

菌は語る ミクロの開拓者たちの生きざまと知性

まさに型破りな菌類解説書

前著(『菌世界紀行ー誰も知らないキノコを追って』岩波書店)で、抱腹絶倒の「菌道中」を披露した著者。
今回も前著に違わず、文章の面白さが冴えわたっている。
その上で、いっぷう変わってはいるが菌類解説書としての記述は確立されている。

解説としては他の微生物との比較によって菌類とは何かを知ることから始まり、寒さを好む菌類について広く記される。
中でも著者の愛してやまない雪腐病菌類と極地の菌類については、ページ数・語りの熱量共に並々ならぬ気合が感じられる。

一般的に雪腐病菌は耳慣れない菌類だ。菌類の中でもマイナーであるだろう。
しかし、著者が郷土資料や古文書記録を辿る事により発見した、地域やそこに生きる人との関わりは興味深い。雪腐との戦いの歴史が存在したという事実が、私にとっては奇しくも雪腐病菌を身近に感じさせることとなった。

このように本書は、最初から最後まで読み手を飽きさせない工夫がされている。
注釈も詳細で内容も面白く読み飛ばすのがもったいないので、余すところなく読む事をおすすめしたい。
付録部分では「菌リンガル」という架空の翻訳機を用いた著者と菌との妄想トークが炸裂しているので、必読だ。
知らず知らずの内に星野ワールドに魅入られてしまうことは間違いないので、覚悟して読んでいただきたい。

ジュンク堂書店ロフト名古屋店 理工書担当中村

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン (著)

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

ショーウィンドーのような人生

この短編集を読んだ時とにかくびっくりしました。著者の実人生に基づいているとされる登場人物(少女だったり、お嬢様だったり、主婦だったりするのですが)たちはみな過酷な環境にある人が多く、どこか人生にあきらめを抱いているような記述が多いのですが、なぜか宝石がいっぱい詰まった箱とか、花屋の店先に立って、良い香りのするショーウィンドーを眺めているような気持ちになるのです。

とにかくアルコール中毒に関する記述があまりにも多くて、あらら、と思いましたが、そんなさなかにあっても、ショーウィンドーのキラキラは続いていました。翻訳の岸本佐知子さんも言及されていましたが、それこそがルシア・ベルリンの紡ぐ、圧倒的な文章の強さだと思います。

『沈黙』という短編が一番好きです。学校ではいじめられ、母にも信じてもらえず、話せなくなる少女。やっとできた友達と、彼女は話せるようになりますが、小さな誤解が原因でまた沈黙の時間は訪れるようになります。優しくしてくれた叔父とも、ショックな出来事の末、別れてしまいます。「もし誰かのことを難く思ったら、その人のために祈ることだ」「それきり彼と口をきかなかったかどうか、思い出せない/わたしは彼のために祈った」

ベルリンの話し言葉は、別段美しい装飾を使っているわけではないのに、詩情に溢れています。創作の秘密を「事実を変容させる」と、彼女は言っています。その変容について、ずっと考えています。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ストーリー・オブ・マイ・キャリア 「赤毛のアン」が生まれるまで L.M.モンゴメリ (著)

ストーリー・オブ・マイ・キャリア 「赤毛のアン」が生まれるまで

ぺしゃんこにならない

赤毛のアンの作者、モンゴメリが婦人誌に連載していたエッセイなどをまとめたものです。彼女自身の作家になった道のりと、新婚旅行の様子などがつづられています。
モンゴメリが文学に触れたのはまだ九歳の時。トムソンの「四季」という本をずっと読んでいたモンゴメリは、「郵便証明書」の紙の切れ端のうらに、まねして「秋」という詩を書きます。当時は紙が貴重なものだったのです。父親に披露して「詩にきこえないな」と言われたけれど、「詩」が書けることに気付いたモンゴメリは、たくさんの「詩」を書きます。まさに、赤毛のアンそのものです。
モンゴメリは言います。「赤毛のアンの作者、モンゴメリが婦人誌に連載していたエッセイなどをまとめたものです。彼女自身の作家になった道のりと、新婚旅行の様子などがつづられています。
モンゴメリが文学に触れたのはまだ九歳の時。トムソンの「四季」という本をずっと読んでいたモンゴメリは、「郵便証明書」の紙の切れ端のうらに、まねして「秋」という詩を書きます。当時は紙が貴重なものだったのです。父親に披露して「詩にきこえないな」と言われたけれど、「詩」が書けることに気付いたモンゴメリは、たくさんの「詩」を書きます。まさに、赤毛のアンそのものです。
モンゴメリは言います。「心底書くことが好きなら、実際、ぺしゃんこになれるものではないのです」
今、何かを書こうとする人、何かを成し遂げようとする人、すべてに読んでほしい本です。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

抽斗のなかの海 朝吹真理子 (著)

抽斗のなかの海

甘い詩

朝吹真理子さんのエッセイ集なのですが、「ちいさいころ、鉱物を口に入れていた」「へそのごまを取り、腹痛になる」などの日常のエピソードが多く、あまりにも彼女のイメージとかけ離れているような気がして、驚きました。
しかし、そんな朝吹さんも、朝吹さんだったとわかりました。朝吹さんは、西脇順三郎の詩を読むと、口の中が甘くなってゆく、と、言います。ア行を使った詩は、甘いと。文学が目だけで楽しむものではなく、五感をフルに利用して楽しむものだということを、身をもって体現しておられます。
うわの空は、生活の中で最も重視すべきものだと、朝吹さんは言います。うわの空の時間は、朝吹家のなかで、「書く」ことを考えるための時間。甘みも、異物も、おそらくうわの空の時間から生まれたものなのかもしれません。しばらく、本を閉じてうわの空の時間を作ろうと思いました。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

小説 天気の子 (角川文庫) (角川文庫)新海 誠 (著)

小説 天気の子 (角川文庫)(角川文庫)

相互に補完し合う2つのメディア

この『天気の子』という作品の第二印象(映画を観て小説を読み終わった後の印象)は、どういった視点で見るかによって、解釈がまるで異なってくる作品だな、ということでした。

本作は、映画『天気の子』を、新海誠監督自身の手で小説化したものです。

当然ながら物語自体は映画と同一であり、小説と映画、どちらか一方だけでも十分に楽しめる作品として仕上がっています。
では、映画を見た方はこの小説を読む必要がないかと言えばそうではありません。小説を読むことで、この作品をさらに楽しむことが出来るからです。

新海監督の映画は、美麗な映像や物語に連動する音楽というのが、非常に重要な要素となっています。また、登場人物たちの表情も非常に細かく、その時その時の感情が伝わってきます。
一方でそれは、その人物が今一体どういうふうに考えているのかを、言葉として明確にはしないということでもあります。この場面のこの人は、どうしてこういう行動に至ったか。その理由を知ることで、映画で見た時とはまた違った視点で楽しむことができます。また、映画を観てちょっと疑問に思っていたことが、小説ではしっかりフォローされていたりと、映画を補完するという意味でもおすすめです。

ストーリー・映像・音楽の合わせ技で一気にKOしてくる映画版。登場人物の心理面など、物語の着実な積み重ねで判定勝ちしてくる小説版。個人的な意見ではありますが、このように感じました。

映画版を気に入られた方や、映画版にひっかかりが残っている方には強くお勧めいたします。また、映画の前に読んでしまったとしても、小説と映画、どちらも楽しめる作品となっていますので、気になられた方はぜひご一読くださいませ。

書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|ロフト名古屋店

キリン解剖記 郡司 芽久 (著)

キリン解剖記

キリンとともに生きる

本書は、著者がキリンに出会ってキリン愛に目覚め、解剖学者になるまでを記した10年の軌跡だ。

キリンが死んだと連絡が入れば、どんな時でも駆けつけ、キリンの首と一人で対峙する。解剖の描写は決してグロテスクではなく、事実のままに克明に記されている。
だからこそ、著者の当時の心理状態に自然と引き寄せられ、私もいつの間にかキリンの面白さの虜になってしまった。

研究テーマであるキリンの8番目の「首の骨」を発見するまでの過程には、研究者の葛藤、喜びが凝縮している。研究者を志す人にはぜひ読んでいただきたい。
また、研究ではなくとも何かを好きで夢中に頑張っている人も、「好き」を極めた著者の姿にはきっと励まされることだろう。

ジュンク堂書店ロフト名古屋店 理工書担当 中村

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

いくつになっても トシヨリ生活の愉しみ 中野翠 (著)

いくつになっても トシヨリ生活の愉しみ

人生の大先輩に続け。

年末に出るコラム集を楽しみにされている方は多いはず。私もそう、ですが。今回は、老後をいかに過ごすか?中野流指南書です。書店には、老後についての本(実用書からおしゃれなエッセイまで多種多様)があふれている。そして、売れている。定年後の自由時間、愉しく自分らしく過ごしたいですよね。ここには、中野さんおすすめの映画、ファッションや実践していること、やいたいことがあれこれ紹介されています。インチキ手芸(笑)メール句会など、気軽に始められそう。無理をせず、自分のできる範囲で愉しむためのヒントがたくさんです。しかし、中野さん、70代とは思えず、パワフルでこちらが、元気をもらいました。さすがです。そして、ちょっとうれしいおまけあり。装丁が南伸坊さん。カバーと扉に南タカコさん(伸坊ハハ)の手芸作品が載っています。(何て、素敵な親子共演なんでしょう)この本に花を添えています。ぜひ、ご覧下さい。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

農ガール、農ライフ (祥伝社文庫)垣谷美雨 (著)

農ガール、農ライフ(祥伝社文庫)

どん底からのスタートです

『老後の資金がありません』『うちの子が結婚しないので』『七十歳死亡法案、可決』など、垣谷美雨作品は、我々が目をつぶることが難しいほどに身近な結婚難や老後などの社会問題をテーマにしている。
今回の物語、『農ガール、農ライフ』の主人公は両親に先立たれ、就職先は倒産し、そして派遣先にも派遣切りにあったその日に6年間もつきあい同棲したパートナーに別れを告げられた32歳の女性である。
仕事を失ったばかりか、拠り所にあった相手からの強烈な三行半発言は読者であるこちらまでよろけてしまいそうになるほど、まさに泣きっ面に蜂という状況だが、その負の連鎖はなかなか止まらなかった。
同棲解消のため家を出なければならないのに、派遣切りにあい安定した収入がない主人公は、家を借りることもままならない。
いたって堅実に生きてきたはずの彼女が、あわや家さえ失おうとしている状況にこちらまで震えてしまうのは、これが今の時代だれがそうなってもおかしくない、特別ではないことなのだという現実を突きつけられるからだろう。
どん底に落ちた彼女が一筋の光を見出したのは、とあるドキュメンタリーで女性が一人で農業を営む様子をみたからだった。
喜びもあれば、理不尽なことに腹を立てることもある。ままらないことばかりで、生きていくことは本当に苦しい。
その中で、けして仕事をやめなかった女性、専業主婦から有名ブロガーになった女性、子供にランドセルを買ってやりたいと婚活に励むシングルマザーなど考え方が全くことなる人々に出会い関わっていくことで、彼女の人生は少しずつ動き始めていく。
自分と異なる存在が自らをより落ち込ませることもあれば、おもってもいなかったような道を示してくれることもあるからおもしろい。
どん底から、全く知らない農業という世界へ飛びこみ、一歩一歩真面目に生きていこうとする主人公を応援せずにはいられない。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

待ち遠しい 柴崎友香 (著)

待ち遠しい

カーディガンのやわらかさ、こわさ

多くの色が作品に登場する印象のある柴崎友香さんですが、今回の作品も、女の人たちの着るカーディガンの「色」が登場します。
彼女たちは境遇も、年齢も、生まれ育った環境も、性格もすべて異なる3人の女の人たち。「住むところ」で繋がった彼女たちは、ある同じ店で買った同じ型のカーディガンに気付き、そうしてそれぞれが違う色を選び、違う着こなしをしている様子が描写されます。その場面が、この「待ち遠しい」という作品の持つ社会に対する生きづらさを、一番描写しているような気がします。
「これ」という生き方を他人から提示され、それに従わないとならないことの苦しさ。カーディガンはふんわりした素材でできていますが、あえてそれをジャケットやスーツでもなく、カーディガンで表現されたところに柴崎さんの恐ろしさが見えるような気がするのです。人に突き刺さるような言葉ではまったく書かれていませんが、ずっとその場面が頭に残って離れません。

書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|ロフト名古屋店

知識ゼロでもハマる面白くて奇妙な古生物たち 土屋健 (著)

知識ゼロでもハマる面白くて奇妙な古生物たち

古生物との出会いにぴったり

著者も述べているが、古生物学を楽しむ際には、自分の好きな古生物を見つけて恋することが最も大切で入門の第一歩となる。
私は本書を読んで、デスモスチルスと出会うことができた。
デスモスチルスは柱が束になったような珍しい歯を持つ絶滅哺乳類。
全身復元骨格はカバの姿に似ているがその復元に関しては議論があり、生態が解明されていない。
謎だらけという点が特に魅力的で、これは古生物全体にも言えるだろう。

本書は、デスモスチルスのように古生物に関する面白話や、チバニアンなどの話題になったトピックをどこから読んでも楽しめるように構成してある。
時代ごとに読まなければならない教科書ではないので、古生物学初心者も安心。
化石展示が充実している博物館ガイドもあり、夏のお出かけの参考にもなる。

ロフト名古屋店理工書担当 中村

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ひかりの魔女 2 にゅうめんの巻 (双葉文庫)山本甲士 (著)

ひかりの魔女 2 にゅうめんの巻(双葉文庫)

割烹着のおばあちゃんが目印です!

魔女にはどんなイメージをお持ちですか?
幼い頃にはじめて知ったのはおとぎ話の魔女。おそろしいもの、悪いもの。
それから年を経てさまざまな作品で出会う度に私の中には新たな魔女のイメージが増え、一言では言いあらわせないものになっていきました。そんな私の中の魔女像に新たに加わったこのお方。見た目からして斬新。割烹着の似合う笑顔のやさしい日本のおばあちゃん、真崎ひかりさん。
かつてはお習字の先生、八十歳を越えた今でもボランティアやらなにやらをアクティブにこなす日々を送っています。
そんなひかりばあちゃんに出会ってしまった人たちの視点で語られる連作短編集。
諦めてしまっている人、頑なな人、さまざまな理由で閉じた世界に生きている人たち。ひかりばあちゃんはやさしい笑顔でおいしいお料理で、なによりその人をきちんと見つめて語りかけてくれることで世界を広げるきっかけを教えてくれます。
ひかりばあちゃんの真の影響力のすごさはそこで終わらないこと。人と人とのつながりのやさしさあたたかさを再認識させてくれる作品です。前作『ひかりの魔女』(双葉文庫)とあわせてどうぞひかりばあちゃんの不思議な魅力を味わってください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

白昼夢の森の少女 恒川光太郎 (著)

白昼夢の森の少女

開けても、閉じても怖い

10の短篇が収められた作品集です。はじめに出てくる短篇、「古入道きたりて」は、むしろホラーとは思えないほど、これはもしかしたら単なるいい話なのではないか?と思わせるほどほのぼのとした老婆の語り口が印象的ですが、その中にあっても生と死が当たり前のように入り乱れるさまを読んで、背筋が冷たくなります。化け物や妖怪がいたのだとしても、この話ではむしろ化け物は心のよりどころとして描かれているようにも思います。戦争を生きるということ。「死体を見たわけではないが、彼は死んだのだと思う」という一文があらわしているように、生と死が表裏一体であることを何回も何回も、巧妙になぞっているから私たちは夜眠る前に恒川さんの作品を読もうと思うのかもしれません。目を開けずとも、開けてみても怖い。そういう瞬間が、たくさん詰まった本だと思います。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

私と鰐と妹の部屋 大前 粟生 (著)

私と鰐と妹の部屋

銀紙の輝き

大前粟生作品の、特に女子を見ていると、いつも思い切りが良すぎてすがすがしい気持ちになります。
ふたりのうちの片方を針でめった刺しにする。あいつらの悲鳴をきかせてあげたい。月の上で、父が死んだらいいのかもしれない。ふわふわして、パステルカラーのマカロンを思わせるような話がほとんどだと思うのですが、常にそのような一文が入っていてぎょっとさせられます。たとえて言うなら、マカロンの端に銀紙が常に挟まっているような小説だと思います。近いのは漫画家・小田扉の漫画に登場する、小学生女子が近いような気がします。本気でそのようなことをしようと思ってはいないのかもしれないけれど、誰かに言われるその前に、息つく間もなく、やってしまう女の子が多い。そう思います。
できるかできないかということを考えずに物事を進めようとするひとの姿勢は、ほんとうにうつくしいです。銀紙のように、キラキラしています。それだからこそ、私たちは大前作品を読まずにはいられなくなるのではないでしょうか。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

炎のタペストリー (ちくま文庫)乾石智子 (著)

炎のタペストリー(ちくま文庫)

読み終えたくない物語

魔法を制御できず、森ひとつと山ひとつを焼き払ってしまったのは、エアヤルがまだ5歳のころ。
震えあがる少女の前に現れた火の鳥は大いなるその力を奪い、言葉を残して去っていった。それから彼女は魔法を持たない「空っぽの者」となる。
エアヤルは自らが犯した罪をけして忘れず、村で家族とつつましく生活を営んでいくことを望んでいたが、8年の時を経て、運命はその意思に反し大きく動き始めていた。
国の思惑に巻き込まれ、融通がきかないと、時に扱いづらいものとされながらも、答えを探しつづけた少女はなにを選び取るのか。
丁寧に織り上げられた物語は、その世界が本当に生きている、と思わせてくれるからたまらない。
読み終えるのが惜しくてたまらなかった、至極のファンタジー。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ふたたび蟬の声 内村 光良 (著)

ふたたび蟬の声

なぜわたしたちは名前がついているのか?

数々のコント番組などで活躍されている、内村光良さんの書き下ろし長編小説です。
とにかく登場人物が多い。そして、彼らは血がつながった家族である。読んでいると、ウッちゃんのコントを連想して嬉しくなります。
ある役者の男性の、名前。その名前にこめられた、親がつけた願い。その願いを普段忘れていて演技をする。不倫をしたり、仕事がうまくいったり、家族が亡くなったり、不祥事に巻き込まれたりします。しかし、彼の名前は彼の人生の指針となり、何度か道を踏み外しそうになりながらも、親が彼に込めた願いどおりの生き方を気付かないうちにしながら、彼は人生を全うしていくように見えるのです。それは、コント番組で多くの登場人物に名前をつけ、笑いに観衆をひっぱってゆく内村さんの手法であると思います。
章の名前は、そのとき登場する人物の名前がそのままつけられています。生まれてきたときつけられた私たちの名前は、別のだれかにつけられたもの。自分で自分の名前を付ける人は、改名しない限りいません。
だれかの願いや、象徴を受け止めて生きていくことは苦しいです。自分の名前を重すぎるからと言ったり、名前負けと固辞したりすることも、人によってはあると思います。でも人が映画や、お笑い番組を見るとき、名前の付いたキャラクターに勇気づけられることは星の数ほどある。そのことが常に頭にあって、内村さんはこれだけ多くの登場人物を描いたのかもしれないな、そう思いました。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

カモフラージュ 松井 玲奈 (著)

カモフラージュ

誰かに擬態するのは明日のため

元AKBの人気メンバーとして活動され、現在は役者をされている松井玲奈さんのデビュー短編集です。
どの話を読んでも満遍なく怖いです。秋本グループといえば、乃木坂48のメンバー高山一実さんが執筆した『トラペジウム』がヒットし、「表紙の女の子はどこか私に似ている」と、乃木坂48の西野七瀬さんが発言したことでも話題になりました。しかし、松井さんのこの短編集、絶対にモデルにはなりたくありません。なぜなら、全ての作品に縦横に張り巡らされた、松井さんの観察眼が鋭すぎて、自分や他者の身体に感じる違和感を否応なく何度も突きつけられるからです。このような方がかつて歌い、踊り、握手会でファンと触れ合っていたのかと思うと唖然とします。
傷を隠すための絆創膏。恋人と逢う前に行う歯磨きの儀式。眠っている夫の身体に見つけた桃の様な形状。他人と囲む鍋、メイドとして生きていくために食べなければならない人型のクッキー。誰が考案したのかわからないベーコンエッグおにぎり。私たちの毎日は誰かと触れ合わずには生きていくことはできなくて、しかしそれによって生まれる肉体と肉体の摩擦の一番いやな点を松井さんは正面から描いています。しかし、その摩擦によって生まれるのは絶望ではなく、未来です。
「いとうちゃん」という、メイドカフェで働く女の子の話があります。彼女は地方から、メイドになることを夢見て上京しました。彼女の頭の中には常に、「不思議の国のアリス」が憧れの世界としてありました。しかし「アリス」という名のメイドになることは叶わず、「いとうちゃん」というニックネームをつけられ、彼女はストレスからカロリーの高い賄いやお菓子を食べてどんどん肥えてゆきます。アリスのように別の世界に行きたい。しかし叶わない。太ったことで彼女はメイド喫茶での立場をあやうくしてゆきます。痩せればいいではないか、そう思う人がほとんどでしょう。しかし、結果彼女はそうしませんでした。彼女はアリスが不思議の国、知らない世界へと落下していったように、自分の身体ではなく、考え方を変えることで「違った世界の」アリスになることに成功します。これは、ショービジネスの世界を知っている松井さんだからこそ描けた、唯一無二のアリス論なのではないかと思います。
「好きじゃなくなった時間が長くなったら、私はきっとこの体に新しい好きとか嫌いを重ねて生きていくんだ。」というせりふもあります(「拭っても、拭っても」)。いきものが身近な誰か、憧れの誰かに擬態するのは、決して自分を消しているわけではありません。工夫することで明日の自分を作りだし、生きてゆこうとしているのです。それは姑息な手段ではありません。そのことを思い出させてくれる短編集です。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

九十三歳の関ケ原 弓大将大島光義 (新潮文庫)近衛龍春 (著)

九十三歳の関ケ原 弓大将大島光義(新潮文庫)

弓一筋に生きた97年の生涯

生涯53度の戦場に立ち、93歳にして臨んだのは天下分け目の関ヶ原。3人の天下人に仕え、その弓の腕一つで大名にまで上り詰めた実在の武将・大島光義の半生を描いた歴史小説。

美濃の斎藤家に仕えていた光義ですが、その斎藤家が織田信長に滅ぼされたことにより、大きな転機を迎えます。すでに60歳となっていた光義ですが、その弓の腕を買われ、織田家に使えることとなります。ひたすらに弓の腕を磨き続け、ひたすらに戦場に立ち続ける。衰え知らずの光義は、少しずつ織田家の中で出世していきます。

物語を通して描かれるのが、弓を極めんとする光義の執念。より遠くまで届くように矢羽を工夫し、剛弓を引くための力を身につけるために米俵を担ぐ。自身の最高の一矢を追い続けるその生き様は、どこまでも愚直でありながら、鮮烈な印象を残します。

構えた弓の向こうから天下の移ろいを見つめ続けた、一人の老将の生涯。よろしければご一読ください。

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