サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. 店舗情報
  3. 書店員レビュー一覧

書店員レビュー一覧

丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

うたうおばけ くどう れいん (著)

うたうおばけ

人がおばけになる瞬間

くどうさんは東北に住む歌人。歌人のひとのエッセイってどんなのかしら、と思っていましたが、人や自分を観察するくどうさんの目線がどこから出ているかなかなかわからず、何よりも怖くて、どこから見られているんだ、なぜこんな場面を切り取ってくるんだ、この怖い時間はいつまで続くんだ、と思って、一気に読んでしまいました。まさに、くどうさんというおばけに遭遇した気分です。
例えば、雷のきらめくある天気の悪い日、くどうさんは駅で女の子にナンパをしている男性に出会います。よくある光景だと思います。しかし、くどうさんは男性の口から出た『馬に乗ったことがある』という内容の言葉を切り取ります。そこに雷鳴がのって、くどうさんの目の前から男と女の子は消えてしまいます。
人がおばけになって、人間に釘付けになる瞬間ばかりが集まったようなエッセイ集です。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

阿佐ケ谷姉妹ののほほんふたり暮らし (幻冬舎文庫)阿佐ケ谷姉妹 (著)

阿佐ケ谷姉妹ののほほんふたり暮らし(幻冬舎文庫)

歌って踊れる、ピンクドレスの二人組

歌って踊れるピンクのドレスの二人組、阿佐ヶ谷姉妹をご存じだろうか。
渡辺江里子さん(姉)と木村美穂さん(妹)は顔が似ているということがきっかけでコンビ「阿佐ヶ谷姉妹」を結成。(ちなみに血縁関係はない)
すでに結成から13年たつふたりだが、なんと2017年まで阿佐ヶ谷の6帖一間で同居生活を続けていたそうで本著はその日常を描いたエッセイである。
実はどちらがどちらなのか把握しないうちに読み始めてしまったのだが、読了後にはまるで彼女たちが自分にとってのご近所さん、または遠い親戚だったかのような、親しげな気持ちに包まれていた。
二人のつつましくほほえましい日常はあたたかく、そしてどこか懐かしい。
姉の江里子さんのほうが先に住んでいたのにいつの間にか妹の美穂さんが若干広く部屋を陣取っていたり、妹の美穂さんお気に入りのヤンバルクイナのふきんを姉の江里子さんがいつも床に落下させたままでいるなど、そういったささやかな愚痴も相手への許しが根底にあるからなのか、はたまた言葉遣いが丁寧だからなのか、とにかく読んでいて微笑ましいのである。
本著にはエッセイだけではなく小説も掲載されているが、これもまた味わい深い。
読んでいると鼻歌を歌いたくなるし、きれいなゼリーが食べたくなる。
そして、この混沌とした日々が落ち着いた暁には、いつか絶対に阿佐ヶ谷にいってみようと思うのだった。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

いつでも母と 山口恵以子 (著)

いつでも母と

母と娘の最期の記録。

「女性セブン」に連載されたエッセイに加筆修正を加えたもの。55歳で松本清張賞を受賞。食堂のおばちゃん作家として、一躍、時の人となった遅咲きの山口さんをずっと応援してくれたお母さん。最大の理解者であり、頼れる人であったのだが、お父さんの死をきっかけに体調を崩し認知症が進行。入退院を繰り返し、自宅で最期を迎えるまでの日々が赤裸々に綴られています。今まで普通に出来ていたことが出来なくなり、意思の疎通も難しくなり、てんやわんやの毎日。自分の仕事をこなし、お母さんのお世話に家事全般。山口さんの奮闘に頭が下がります。そんな彼女を支えたのは、医療・介護スタッフのみなさん・兄弟に親戚。そして、大好きなお母さんの最期を、うちで安らかに迎えさせてあげたい。という強い想いでした。見送った今も、すぐそばにいるような気がする、と言います。最後に、老親を抱える身として見倣いたいと思ったのが、自分がきつくても親の前では、笑顔でいよう、と。小さなことですが、とても大切なこと。明るく日々、過ごさせてあげたい。そう、思いました。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

発注いただきました! 朝井 リョウ (著)

発注いただきました!

執念の心意気

企業から依頼された小説や、タイアップの文章。朝井さんが確かにそのような小説や、エッセイをよく書いてはいるな・・・と思っていました。しかし、こうして朝井リョウさんデビュー十周年にあたり、そうして書かれたものをまとめて読むと、朝井さんのサービス精神というか、一見このサービス精神に見える朝井リョウさんの、「依頼者を見据え、文章に落とし込んでやろう」とするところの執念が恐ろしすぎて、なんて作家さんだと思い、ゾクゾクしてしまいます。巻末で触れられていますが、企業が関係する作品の登場人物には、その企業の会長や社長の名前をすかさず使用。企業の社員ウケだ、と、朝井さんは書かれていますが、執念から来る心遣いです。恐ろしいです。
朝井さんの小説では、登場人物は様々なことに気付きます。鈍感な登場人物というのは、あまり出てこないような気がします。それはまさに朝井さんの分身であるからだし、そうして執念でつかみとられた眼差しを読者が「快」と受け取るから、企業は朝井さんに文章を依頼するのでしょう。収録された作品を読んでいくうち、その思いはますます強まります。もはや作品集ではなく、怪談集、ホラー本です。
商品を売り出すキャンペーンの商品として「小説」を選ぶという心意気、すごい、と朝井さんは言います。私は朝井さんの心意気こそ一番すごい、と思う。読めば読むほど元気になれる、恐るべき本です。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ピエタとトランジ 完全版 藤野可織 (著)

ピエタとトランジ 完全版

うっとりした気持ち

中学生や高校生の時、友達の存在というのを思い出すと、とにかくすごく大きかったな、と思います。この小説は女子高生ふたりが、スプラッタ事件に巻き込まれていくという構造をとっていますが、ちょうどその、巻き込まれる寸前に、ピエタが友達のトランジを、ファミレスの毒々しいみどりいろのメロンソーダごしに見る場面があります。ゆっくりと目を開けるトランジ。その描写がものすごく時間をさいて行われているのですが、殺されそうになる前の瞬間ということとは別に、ピエタは、そのことを一生、忘れないような気がするのです。藤野さんが描く、そのような瞬間が大好きです。
日常がそのようなキラキラした瞬間から成り立っていて、しかしそのことに気づくことの出来ない場面もあって、その後に普通に殺されたり、進学したり、学校に落ちたり、仲違いして一生会わなくなったりすることがある。しかしそのような場面があったことを私達はすっと覚えているし、藤野さんは、こうしてずっと文章に書いてくれるのだと思うと、トランジを見ているピエタのように、ものすごくうっとりした気持ちになるのです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい 大前粟生 (著)

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

自分の、他人の、綿のような部分

人は人に傷つけられることがありますが、自分の言った言葉に傷つきもします。
この物語には、ぬいぐるみサークルに所属する七森という男性が登場します。彼は、ぬいぐるみを「作る」ために、サークルに入ったのではありません。ぬいぐるみに「自分の嫌だと思った」ことを、話すために。人を「自分の嫌な体験で」傷つけないために、サークルに入ったのです。しかし彼こそ、誰よりも、「自分の言葉に自分で傷つく」タイプの人間であるかと思います。七森がわざわざ髪を金髪に染めたのは、自分の外見が突飛になることで、自分の発する言葉や他の部分が誰かを傷つけないように、という思惑からです。しかしそうすることで彼は同時に自分のお腹の中の綿を引きずり出し、それを自分でも確認している。心からそう思います。
人間は人間を故意にでも傷つけますし、故意でなくても、無意識でも傷つけます。
ただ、「傷つくのではないか、傷つけられるのではないか」私達が身構えたときに、思ってもないような答えを返してくる人間が存在します。七森が好きな麦戸ちゃんもそうです。「湯気で、目と鼻がましになる(なんか湯気の出るものを食べに行くことで)」という言葉。麦戸ちゃんは、七森の前で、しくしく泣いていた。その後に彼女が放った言葉が、これです。誰も傷つけていない。建設的でさえある。
七森や他の部員も、麦戸ちゃん自身も、自分のそういう「思ってもないような部分』を見るために、ぬいぐるみサークルに入っているのではないかと私は思います。ぬいぐるみから引き出した綿は、真っ白く、ほとんど汚れていない。きれいなものを見て、元気になるために、ぬいぐるみに話しかけているような気がするのです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

御社のチャラ男 絲山秋子 (著)

御社のチャラ男

奥田民生の曲にありそうなタイトル!

とある会社のチャラい部長と、その彼を取り巻く様々な人たちの独白により構成されている。
 どの会社や組織でもありそうな人間関係、悩み、夢や希望が語られているが、それがとてもリアルに、ときにおかしみと切なさを持って胸に迫ってくる。
誰でも1人や2人、自分のまわりにいるチャラ男を思い浮かべることが出来るのではないだろうか。
そんなチャラ男を考察し距離感をはかってみると、鏡のように自分がみえてくるかもしれない。そんなことを思わせる小説である。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)有栖川有栖 (著)

濱地健三郎の霊なる事件簿(角川文庫)

有栖川有栖の新たな探偵

〈霊(くしび)なる〉とは〈不思議な・霊妙な〉という意味だという。
本作『濱地健三郎の霊なる事件簿』はタイトルのとおり心霊探偵・濱地健三郎のもとに持ち込まれる不思議な事件にまつわる短編集だ。
超自然現象が絡む依頼を解決に導く濱地は古い映画から抜け出したような佇まいの年齢不詳の紳士。助手の志摩ユリエは好奇心から心霊探偵事務所に就職した物好きなところのある女性。依頼人が古びたビルの2階にある探偵事務所を訪れるところからはじまる探偵譚には胸をおどらせるミステリ愛好の方々も多いのではないだろうか。

濱地は幽霊が視える。幽霊に語りかけ、諭し、怪事の真相を探り解き明かす。自分の現状が理解できず困惑しているもの、思いに囚われて頑なになっているものを行くべき所へ導き現実の世界では事件を解決する。

探偵小説の醍醐味のひとつ、探偵と助手のちょっとテンポがずれた絶妙なやりとりも愉しくひとつひとつの作品の最後の一文の余韻がたまらない。一息に読んでしまうのもよいが、作品ごとに趣向もちがうのでぜひ一作ずつゆっくり読んで味わってほしい短編集。

書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|ロフト名古屋店

日本の水生昆虫 中島 淳 (著)

日本の水生昆虫

これさえあれば日本の水生昆虫はバッチリ

本書でまず驚くのは、掲載種の多さ。
2019年11月末までに日本から記録された真の水生昆虫(ほぼ一生を水面や水中で暮らす)のコウチュウ目とカメムシ目の485種・亜種のうち、480種が収録されている。
ページはオールカラーのうえ、生きた昆虫の姿をとらえた写真を採用する。
模様や色が変化してしまう標本写真とは異なり、いきいきとして鮮やかで美しい水生昆虫が見られるとあって、虫好きにはたまらない。
また、科の区別には章末の検索図がたいへん役に立つだろう。
読者がなるべく容易に種を識別できるようにと、特徴とカラー写真を交えた検索図が作り上げられた。
著者陣の水生昆虫への愛とこだわりが随所に光る昆虫図鑑だ。

ジュンク堂書店ロフト名古屋店
理工書担当 中村

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

やがて忘れる過程の途中 アイオワ日記 滝口 悠生 (著)

やがて忘れる過程の途中 アイオワ日記

贅沢な日記

米国アイオワ大学に世界各国の作家や詩人が集まり行われる滞在プログラム「IWP」。それに日本から参加した小説家、滝口悠生さんの日記です。
滝口さんは日記の中で、ケンダルという人物の会話を通し、自分の小説には否定や逆説が結構登場するが、自分が文章を書くときの推進力になっているのかも、と自覚します。翻訳を機に気付かされる自分の小説の特徴。しかもそれは、インターネット上や手紙を通してではなく、リアルの口語体験からなんです。
日記には一緒に食べた食べ物のことや、隣りにいた人のウィッグをかぶってあそんだこと、日差しの強さや雨の様子なども描かれています。ある出来事を日記に書いてしまったら、もうそのことは小説のようには書けない気がする、と、滝口さんは書いています。
ほんとうに贅沢な日記だと思います。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

呪われた詩人たち ポール・ヴェルレーヌ (著)

呪われた詩人たち

あなたの「あの」詩人の像は?

19世紀半ばから後半にかけてのフランスの詩人たちを、同時代に生きた大物詩人が語るという内容。こんな名プロデューサーみたいな仕事をしていたのが、あのランボーとの三角関係やピストル事件で名高い、ヴェルレーヌだったなんて!
19世紀、詩人になるということはとてもハードルが高く、庶民にとっては難しいことでした。そんな中、「呪われた」という言葉を使ってでも、ヴェルレーヌが人々にきらめくような才能を逐一伝えて行きたかった、その様子がありありと描かれています。
取り上げられているランボーの詩も、この時点ではわずかしか世の中に出ていませんでした。ヴェルレーヌが使ったランボーの容姿に対する、褒め過ぎともとれるような称賛、それは後の我々の「ランボー像」を左右することになったのかもしれません。
新訳は倉方健作さん。専門はヴェルレーヌを中心とする近代詩ですし、19世紀の出版人と作家たちについての訳注も素晴らしすぎます!詩をこれから勉強しようとする若い方にぜひ、手にとっていただきたい書籍です。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

雲神様の箱 (角川文庫)著者:円堂 豆子

雲神様の箱(角川文庫)

続巻求む!

毒をはらんだ霊山に移り住む古の民である土雲族の娘、セイレンは双子の妹として産まれたことで災いの子として実の母からも忌み嫌われ孤独に育つ。
自由に山を下りることも許されなかった彼女が唯一必要とされたのは、いずれ一族の長となる姉の代わりとして差し出されるその時のみだった。
優しく無邪気な姉だけがセイレンの味方だったが、一族の意向の前にはあらがうことはできずに、ある日姉の身代わりとなり若王雄日子の守り人となるべく山を降りることが決まってしまう。その不遇な生活の中でも「山から下りずに、必要とされてそこにいたかった」と胸を痛める少女の姿はとても切ない。
ただこの物語の主人公はけして悲劇のヒロインでは終わらない。
ふつふつとわきあがり消えることのないやりきれなさ、怒りを力にしながら、相手から目をそらすことをやめない。もしかしたらやめることをしらないだけかもしれない。
偽ることをしらず、不器用なほどに心根がまっすぐな土雲族秘伝の技を持つセイレンと、そんな彼女を守人として自分のそばにおくことを決めた雄日子の底知れなさがこの物語の面白さを加速させていく。
雄日子の魅力はまだまだ明かされていない。続巻が待ち遠しい古代日本ファンタジー。

書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|ロフト名古屋店

若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし 更科功 (著)

若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし

美しくロマンチックな生物学講義

「若い読者に贈る」ということばから始まる書名だが、年齢が若い読者限定の本ではない。著者曰く、「自分が若いと勝手に思っている読者に」のが正確な表現で、生物学への好奇心さえあれば何歳でも楽しく読める本だ。

まず生物とは何かを考え、それを理解するために科学の限界にも触れる。続いて実際の生物や進化、多様性についての章にすすむ。終わりには花粉が起きる理由、がんやアルコール、不老不死の話など私達に身近な話題が生物学の最新知見をもって解説される。

本書の魅力は、著者が繰り広げるたとえ話の巧みさにあるのだと思う。読んでいて、腑に落ちる瞬間が何度もあった。生物のシンギュラリティを解説する章は、農作業ロボットのたとえ話のおかげですんなり理解できたし、場面を想像するだけでも面白いのでぜひ読んでいただきたい。

ジュンク堂書店ロフト名古屋店 理工書担当 中村

書店員:「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|ロフト名古屋店

脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流 堅達 京子 (著)

脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流

脱プラスチックの潮流

EUをはじめ、世界中で脱プラスチックの動きが広まっている。本書はその理由と現状を解説するもので、世界に遅れをとる日本への警告の書とも捉えられるだろう。

すべてのプラスチックが悪ではない。過剰包装等の使い捨てプラスチックの使用を減らし、効率的にリサイクルする構造が必要だ。
しかし従来のリサイクルビジネスは、もはや行き詰まりを見せている。
中国がごみの輸入を禁止し、東南アジアの国々も追随するかのように輸入禁止を決定した。それによって行き場のないプラスチックごみが、各国であふれている。
世界を席巻する脱プラスチックの流れは環境意識から生じるだけでなく、ごみ処理が緊急課題であるからだと著者は言う。

世界はプラスチックに対するパラダイムシフトを商機と捉えている。
「循環経済」の実現に向けて各国は戦略を強化し、挑戦のスピードは加速するばかり。
懸念を抱くのは日本の脱プラスチック政策だ。
ビジョンの達成期限が遠く具体的な対策や計画実行のスピードに欠けるのではないか、日本は本気でプラスチックごみ問題に取り組むのか、世界からの視線は厳しい。
日本人は「環境先進国ニッポン」というノスタルジーに思考停止していないかという著者の指摘は、読む者に突き刺さる。

ジュンク堂書店ロフト名古屋店 理工書担当 中村

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

太陽のシズク 大好きな君との最低で最高の12ケ月 (新潮文庫)三田千恵 (著)

太陽のシズク 大好きな君との最低で最高の12ケ月(新潮文庫)

三田千恵のすゝめ

個人的に注目している作家・三田千恵の新作が、新潮文庫nexより刊行された。

三田千恵が得意とするのは、中高生の日常に紛れ込む不思議と、物語を大きくひっくり返す大胆な仕掛けだ。その2つの要素のバランスの取り方が絶妙であり、読みやすさと驚き、どちらもしっかりと味わうことができる。

本作のヒロイン・理奈は、「宝石病」という不治の病を抱えた高校生の少女だ。本作で描かれるのは、理奈が過ごす最後の十二ヶ月。転校先の高校で出会った、運命の恋人と無二の親友との愛すべき日々であり、難病物の小説として、十分に面白いものに仕上がっている。

しかし、それだけで終わらせないのが三田千恵だ。物語全体に施された仕掛けと、それが明かされる最終章。そこで読者が目にするのは、「未来に進む」ための物語だ。

青春小説の爽やかさと大胆な仕掛けの切れ味。三田千恵の作品を是非一度ご覧頂きたい。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

希望という名のアナログ日記 角田光代 (著)

希望という名のアナログ日記

角田光代さんの最新エッセイ集。

ご本人曰く、「地味でアナログな日々のエッセイ」(笑)とのこと。ここ10年くらいで、いろいろな雑誌に掲載されたエッセイをまとめたもの。1<希望>を書く。2 旅の時間・走るよろこび。3 まちの記憶・暮らしのカケラの3章。再録だが、実にうまくまとめられていて、それぞれの章で、それぞれが楽しめる構成となっている。さすがです。小学生の頃より作家に憧れ、努力し続けた日々。大好きな旅の記録。マラソン大会で感動したこと。(私の大好きな『なんでわざわざ中年体育』に詳しい)ネコとの穏やかな毎日などなど。ちょっと、面倒くさがりでアナログで他人と比較しない、自分らしさを持ち続けている角田さんが見えてくる。そして、同世代ゆえに、共感できる金言がたくさん、詰まっていた。年を重ねることで変わっていくものがあり、「自分を知っていれば揺らがない。暮らしをたのしむ、ということは、私でいることをたのしむということ」なのだと。若い頃と同じように生活することが大変と感じるようになった私にとって、心強いおコトバである。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

駒姫 三条河原異聞 (新潮文庫)武内涼 (著)

駒姫 三条河原異聞(新潮文庫)

こころつよくうつくしい少女の物語

不条理な戦国の世の物語。
最上義光の娘駒姫は十五。その美しさから関白秀次の側室に望まれ都の聚楽第へ。しかし嫁ぐ直前、秀次は天下人豊臣秀吉に謀反を疑われ自死。遺された妻子には非情な「三十九人全員斬殺」が宣告される。駒姫はまだ秀次に嫁ぐ前でありながら側室とみなされ処刑を待つ身となる。

父義光をはじめさまざまな者たちが駒姫を救うべく奔走するも、駒姫の状況は変えられない。読み進めるほどに秀吉の狂気がおそろしくなる。対してこの過酷な環境にあって駒姫の聡明なこころの強さとやさしさはわずか十五の少女とは思えないもので、父母に宛てた手紙には胸打たれる。
史実をご存知の方は駒姫の行く末を思い読むのをためらってしまうかもしれない。たしかに読後やるせなさはあるがそれよりも駒姫の心根の美しさが心に残る作品。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

トヨトミの逆襲 梶山三郎 (著)

トヨトミの逆襲

大変革が来ている!

前作は日本最大のあの自動車会社をモデルに「99%実話」と話題になったが、その「トヨトミの野望」は創業家をめぐる人事の話が強かった印象がある。それはそれで会社内における創業家一族の結束力、絶対的権力が窺い知れ面白かった。
今作ではCASEなど100年に一度ともいわれる自動車産業をとりまく大変革の中で、自動車会社がIT産業などと駆け引きしながら、どのように生き残るために戦っているかがよく分かる内容になっている。
前回同様人事をめぐる権力闘争の話も面白いが、自動車会社が持つ危機感、今後の舵取り、そして日本の製造業の矜恃など読みどころが多彩にあり、飽きることがない。
自動運転など新しい自動車が、今後われわれの生活をどのように変えていくのか、興味深く楽しみである。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

荒城に白百合ありて 須賀しのぶ (著)

荒城に白百合ありて

色をかぞえながら読む

幕末の話です。薩摩藩士の岡元伊織は、安政の大地震の日にひとりさまよい歩く青垣鏡子という少女と出会います。
須賀しのぶさんの小説の読み方として、とにかく色彩を数えながら読むという読み方がありますが、今回の本はそうして読んでいると凄いことになりました。
冒頭の死装束の白。母の顔色の白、大地震の日に鏡子が押しつぶした金魚の赤、(赤とは書かれていませんが浮かんできます)地震の町を鏡子がさまよい歩いた日の、上気した鏡子の頬色。そうしてなによりもいちばんにうかんでくるのは、地震の災禍の火の燃え盛る赤、そうして戦禍の中で伊織と鏡子がふたたびめぐりあったときの、燃える会津の町並みです。
色は時折、言葉よりも執拗に人の胸に迫ってきます。結婚式の白、葬式の黒、そうした決まり事はあったとしても、それをふちどる色彩の数々は無限だと思います。ぜひ、色を数えながら読んでほしいです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

四隣人の食卓 ク ビョンモ (著)

四隣人の食卓

他人を他人として俯瞰する

国家が建設したのは少子化対策の切り札となる集合住宅。その小さなコミュニティにおける、四組の夫婦たちの人間模様が描かれます。
「良い社会を」つくるための共同体は、少しずつレールからはずれてゆくように思えます。それは、夫婦たちがいずれも独立した「個」であり、「共同体」に対し、確固たる問いをひとりずつ持っているから。その問いが少しずつ他人へと投げかけられ、夫婦たちがかしいでゆくさまは、どんなミステリー作品よりもおそろしく、私たち日本の「共同体の中でも」おこりうること、なのではないでしょうか。

読後感は不思議と明るいです。一人の女性の言葉があるからです。「女性にはこの食卓を長いあいだ、朝夕眺めて暮らしていく自信があった」
その言葉が暗い未来を暗示していたとしても、「俯瞰できる人」の存在は、お仕着せであるコミュニティにおいて読者に、限りない安心を生むような気がします。

100 件中 1 件~ 20 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。