文教堂 市ヶ谷店書店員レビュー一覧1ページ目
文教堂 市ヶ谷店書店員レビューを10件掲載しています。1~10件目をご紹介します。
検索結果 10 件中 1 件~ 10 件を表示 |
書店員:「文教堂 市ヶ谷店」のレビュー
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機龍警察 月村了衛
日本SF大賞&吉川英治文学新人賞受賞作
かつて、これほどエキサイティングな警察小説が存在しただろうか?
リアルな警察描写と機甲兵装という近未来的なエッセンスを加えることで、SF警察小説というものに仕上がっている。かといってそれ一辺倒ではなく、人間関係などが複雑に絡み合う緻密なドラマが展開されている。
月村氏は幻冬舎から出版された『土漠の花』が大ヒットし今注目度が高い作家のひとりである。
また『機龍警察 完全版』も発売されましたので、そちらもおすすめです。
(評者:文教堂市ヶ谷店 福田洋介)
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出ない順試験に出ない英単語 普及版 中山 (著)
エキサイティングでワンダフルな著書
かつて、これほどエキサイティングでワンダフルな著書が存在しただろうか?
私の記憶からは導き出すことが困難だ。
その片鱗は、表紙からいきなりうかがい知ることができる。
「素敵な有刺鉄線(barbed wire)ですね」
「ありがとう。自分で編んだんです」
私はいままで有刺鉄線を見て、素敵だなどと感想を述べたことはなかった。
だが有刺鉄線とて、誰かがまごころをこめて編んだものなのだ。
当然、見せていただいたら感想を口にするのが最低限の礼儀であろう。
こんなことも知らなかったなんて、自分自身が恥ずかしい。
このように、とてもためになりつつ、さらに英語が身についてしまうという奇跡の書なのだ。
ぜひ手にとって読んでいただきたい1冊である。
(内容には暴力的な表現や性的な表現が含まれております。ご注意ください。)
(評者:文教堂書店市ヶ谷店 学参担当 関根秀樹)
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製造迷夢 新装版 (徳間文庫) 若竹 七海 (著)
渋谷区猿楽町署の刑事・一条風太は・・・
渋谷区猿楽町署の刑事・一条風太は、とある事件をきっかけに、モノに残っている残留思念を読むことができる井伏美潮と出会う。超能力の類を信じない一条は最初のうちは反発するものの、徐々に心を開き、二人は数々の事件の謎をといてゆく。
少しこわもての男刑事と不思議な能力を持った少女のコンビが奇妙な事件をといてゆく連作ミステリ、というとそれだけでサクサクっと読めてしまいそうなライトな印象を持ちがちだが、そんな軽い気持ちで本作を読んだら痛い目にあうだろう。
ネタバレになるので多くは語れないが、一人称の上手さがこの小説の面白さの一つだ。油断して読み進めていくと、見事に騙される(その一人称が誰なのか推理しながら読み進めていても騙されたが)。
また、各章を読み終わるごとに残る何とも言えない後味の悪さや、特殊な能力を持つ美潮とそれを持たない一条の苦悩から、事件の謎がとけたからといって全てが解決するわけではないという現実を思い知らされる。
刑事ものの要素と超能力の不思議さを融合させるエンターテインメント性を持った小説でありながら、人の心の闇の部分をところどころで匂わせる、いい意味で怖い小説であった。
(評者:文教堂書店市ヶ谷店 文庫担当 吉永文)
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オードリー・ヘップバーン 上 バリー・パリス (著)
米国映画協会 (AFI) の…
米国映画協会 (AFI) の「最も偉大な女優50選」では第3位に選ばれ、日本でも広く愛されているオードリー・ヘップバーン。
彼女の幼少期から、銀幕の妖精といわれた最も輝かしい時代、そして後年国際連合児童基金(ユニセフ)において世界の恵まれない子供たちのために従事する姿。病...死までを、綿密な調査をもとに克明に描いた書である。
映画スターとしての華々しい活躍の裏で、一人の女性として葛藤し苦しむ姿が垣間見られ、彼女をとても身近に感じることができる。
一方で、生涯を通じて見せる慈しみの心は、彼女が銀幕のみならず現実社会においても妖精だったのだということを実感できるであろう。
ファンの方々はもちろんのこと、その他の方々もぜひ手にとっていただきたい1冊である。
『年をとれば、きみは二本の手を持っていることに気づくだろう。自分自身を助ける手と、他人を助ける手と』(本編下巻より抜粋)
(評者:文教堂書店市ヶ谷店 関根秀樹)
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聖なる怠け者の冒険 森見 登美彦 (著)
舞台は京都…
舞台は京都。物語はとある宵山の一日に起きた、狸のお面をつけた正義の味方「ぽんぽこ仮面」をめぐる出来事を描いている。ただし主人公はぽんぽこ仮面ではない。某化学企業の研究所に勤める青年である。
本書の帯にはこう書かれている。
「いまだかつて、これほどまで動かない主人公がいただろうか」
そのキャッチコピー通り、とにかく主人公の小和田君は動かない。それどころか他の登場人物が駆け回っている陰で座布団に埋もれて眠ってさえいる。そして彼は平然と「僕は人間である前に怠け者です」とまで言う。自分の周りで様々なことが起きるが怠け者であるせいかあまり動じない。怠ける為には全力を尽くす単なる怠け者でしかないように見えるが、人が良く、場の雰囲気を和ませる呑気さを持ち合わせているため、周りの人々に愛される。そしてそれを自覚している青年だ。しょうがない奴だなぁもう!とにやにやしながら読み進めてしまう愛すべきキャラクターは森見氏の作品ならでは。これは主人公だけではなく他の登場人物も然りで、小和田君の先輩とその彼女や、探偵とその助手、アルパカ似の謎の男などみな個性的で読んでいて飽きない。
本書は、賑やかな宵山に癖のある登場人物たちに加え、狸の神様や無間そば、天狗ブランなどの不思議な小ネタをごちゃ混ぜにぎゅっと詰め込んだおもちゃ箱のような作品だ。それでも根底にあるのは誰もが持っている怠け者の精神。怠けてもいいよね、人間である前に怠け者なんだもの。と思わせてくれる小説である。
(評者:文教堂書店 市ヶ谷店 吉永文)
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奇跡 ジミー・ペイジ自伝 ジミー・ペイジ (述)
「レッド・ツェッペリン」、私は…
「レッド・ツェッペリン」、私はこの名前を聞くと心踊らずにはいられないくらい好きな、ロック界における最高峰のモンスターバンドで、その中心人物であり、ギタリスト&プロデューサーであるのが、この本に書かれている「ジミー・ペイジ」です。
この本が決定的であると言えるのは、マスコミ嫌いで長年メディアとの距離を置いてきた彼が、デビュー前の若かりし頃から、解散後30年以上経つ最近の話まで、50時間以上にもおよぶインタビューが記載されており、私自身も初めて耳にするような内容、伝説的なロックバンドの当時の破天荒な偉業の数々や、数多の名曲のレコーディングに関する事柄まで詳細に語られているからです。
「奇跡 ジミー・ペイジ自伝」を読めば、ファンなら新しい発見があると思うし、ファンでなくても、この不世出の天才が創り上げた名曲の数々を必ず聞きたくなるでしょう。
(評者:文教堂書店市ヶ谷店 実用書担当 藤澤雅樹)
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完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯 フランク・ブレイディー (著)
冷戦下、長きにわたり…
冷戦下、長きにわたりチェス界のトップに君臨し続けたソ連を破り、国家の威信をかけて世界の頂点に立ったチェスプレイヤーがいた。
その名は『ボビー・フィッシャー』。
伝説的な名を刻むクイーンを捨て駒とする大胆華麗な「世紀の一局」を13歳で達成し、14歳で全米チャンピオンになったフィッシャー。
アメリカの神童と呼ばれた彼はいかにしてチェスと出会い、その後どのようにして世界チャンピオンになったのか。そして世界チャンピオン以後の彼の激しい奇行、その生涯とは。本書は、天才チェスプレイヤー『ボビー・フィッシャー』の生涯とその評伝である。
チェスに対するフィッシャーの強い探求心、情熱はチェスが解らない者でもチェスを、そしてフィッシャーを魅力あるものに変えていく。
「神童」「天才」と彼が言われ続けた所以は天賦の才だけではなく自分への決して揺るがない自信と強い信念、そして並はずれた努力の賜物ではないかと感じる。
その反面、彼の自信と強い信念はフィッシャーの人生においては彼を取り巻く人達、環境を、そして彼自身をも生涯苦しめるものとなる。
フィッシャーの人生は常に光と影が織りなす万華鏡のようであり、それはまさしく白と黒の盤からなるチェスそのもののように感じる。
チェスでも人生でも生涯フィッシャーは戦い挑み続けた。
『ボビー・フィッシャー』の中には妥協という言葉が一切存在しない。
その生き様は私達に『挑む』という信念を教えてくれる。
(評者:文教堂書店 市ヶ谷店 中村彩乃)
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植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書) 田中 修 (著)
「植物はすごい」。タイトルを…
「植物はすごい」。タイトルを見て真っ先に、何が? どこが? という疑問が浮かぶと思います。
植物たちがもっている秘められた「すごさ」、葉っぱの緑の輝きや、花の美しさに目をとられていると、つい見過ごされがちな「すごさ」に本書では着目しています。
自らが繁栄していくために、からだを守る知恵と工夫、環境に適応し逆境に抗して生きていくための、しくみの「すごさ」を、具体的に個体名を挙げて、わかりやすく紹介しています。なるほど、そういうことなのかと、雑学・うんちくのレパートリーに加えたくなる植物のすごさの発見を、本書を読み体感していただきたいと思います。
著者は、植物たちの生き方に思いをめぐらせて欲しい。本書が、その「きっかけ」になることを願っています。植物のことなど何もしらない私は、桜やひまわりなど、目で見てキレイだと思う程度でしたが、なるほど本書を読んで植物たちの生き方の奥深さに、驚きと感動を覚えたのであります。
ぜひ、オススメしたい一冊。難しい専門用語などは殆ど書かれておりません。肩の力を抜いて気楽に楽しんでください。
(評者:文教堂書店市ヶ谷店 文芸書・新書担当 迫新一)
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歓喜の仔 上 天童 荒太 (著)
多額の借金を抱えたまま…
多額の借金を抱えたまま突然姿を消した父。植物状態の母。親という支えが機能しない中で生きるのは、高校を辞め昼夜問わず働く長男、学校でいじめにあいながら母の介護をする次男、人には見えないものが見える末っ子の妹。借金を返済するため、そして生きていくために兄弟は暴力団組織から覚醒剤のアジツケの仕事も強いられ、がんじがらめの日々を送っている。
物語では父・母の過去と兄弟たちの世界、そしてリートという少年の世界が交差して描かれる。日本ではない国の紛争地域で生きるリートは、現実世界の過酷な生活から誠が目をそむけるために空想された少年で、もう一人の誠でもある。このリートの話は物語上、必要のないものにみえるかもしれないが、読み進めていくと徐々に誠とリンクしていき、リートは一人の人格として、誠の親友、そして戦友のような存在になっていく。この物語にとって、彼はとても大切な存在だろう。
読むのにはなかなか覚悟がいりそうな、救いようのない世界に思われるが、それと対比した子供たちの描き方はやはり「永遠の仔」著者である天童氏だけあってとても巧い。どんなに過酷な世界にいたとしても、家族と共に生きていく姿、そして幼いなりにも全力で家族を守ろうとする姿は美しい。
(評者:文教堂書店市ヶ谷店 吉永文)
書店員:「文教堂 市ヶ谷店」のレビュー
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悪の教典 上 (文春文庫) 貴志 祐介 (著)
著書が映像化されることも多い貴志祐介氏の作品
著書が映像化されることも多い貴志祐介氏の作品。本作も11月に映画公開予定である。インパクトのある黄と赤の表紙の上下巻を書店で見かけたことのある方も多いはず。
舞台は都内の高校、主人公は英語教師・蓮見(通称ハスミン)。ルックスが良く爽やかで、生徒思いの人気の教師である。というのは表向き。本当の彼は共感性が欠如しているため、円滑に学級運営を進める為なら殺人を含むような罪まで平気で犯すかなり危ない教師。そんな彼がある理由から、文化祭前夜にクラスを巻き込む大量殺人を決行する。まるで害虫駆除でもしているかのようにいとも簡単に生徒たちを殺していく描写は、不快感や恐怖感を覚える隙もないほど淡々としている。それゆえ、残忍で非倫理的、そう分かっているはずなのに、ページをめくる手は止まらず一気読み、さらには頑張れハスミン!と応援までしてしまう。
作中にはハスミンのほかにも問題のある教師が多く登場する。現実の教師でも、結局はただの一人の人間であるし、悪意の一つや二つは持っているだろう。しかし昔教わった優しかった教師たちが、実は裏では凶悪なことを考えていたりしたのかも…などと考えると少しゾッとする。ハスミンのような教師だけには、願わくは現実世界では出会いたくないものである。
(評者:文教堂書店 市ヶ谷店 吉永 文)
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