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ディープな沼にLet's ダイブ!

人ならざるものの世界へ。夏に読みたい人外BL

高校教師×マッドサイエンティストが繰り広げるゾンビBL

「人ならざるもの=人外」をテーマに今回は書かせていただくのですが、外は大変な猛暑。暑さでうんざりする今日この頃ですから、少し肝の冷える作品をご紹介したいと思います~。

「スリーピングデッド」(CannaComics)は、朝田ねむいさんが描くなかなかダークなゾンビBL。ストーリーとしては、真面目で人気者の高校教師・佐田先生が夜間の見回り中に不審者にナイフで刺され死んでしまうところから始まります。そして見知らぬ部屋で目を覚ました佐田は、自称科学者の間宮という男に出会い、自分が死にそして間宮の実験によりゾンビとして生き返った事実を知ります。まさに狂気のマッドサイエンティストが生み出したゾンビという「これだよ、これ!」な展開ですね。そしてゾンビとなった佐田は「同種の死骸」、つまり人の血肉しか食べられない体となってしまい、自分が死んだ時に同じく殺された女子生徒を半ば強制的に食すのがこちらのシーン。今までの人間としての全てを捻じ曲げられたような表情は印象的でした。

人間のゾンビ化に成功した間宮のマッドサイエンティスト具合はなかなかのもので、実験と称して麻酔無しで内臓を引きずり出す場面などはかなりのスプラッター要素です。ふと「これBLだよな?」と思ってしまいますが、これもスキンシップ。これもイチャイチャ。ということで自己完結。

その後、物語は佐田の食糧問題に発展し、自分たちで人を殺して調達するというとんでもない方向に向かっていきます。同時に佐田が人の心を失っているのか、間宮がまともな感情を持ち始めたのか、最初は全くかみ合わなかった2人のやり取りは徐々にかみ合い始め……。

異常な関係性はさらに歪に、だけど2人の距離は近づいていきます。そして上巻のラストでは衝撃の展開が待ち受けていて……。

本作が連載中の「オリジナルボーイズラブアンソロジーCanna」ではついに最終話が! 下巻の発売が待ち遠しい作品です!

ちなみにこの連載でゾンビBLを取り上げるのは2回目ですね(前回のゾンビBL紹介記事はこちら)。もうこの際ですから恐らく私はゾンビに対する何らかの癖があるんだと公言しておこうかと思います(笑)。

孤独な2人の魔女狩りからの逃避行ラブ

BLの魅力の1つはその世界観やキャラクターのバリエーションが豊富なことでもあると思います。学園ものやオフィスラブといった定番のシチュエーションから、異国のファンタジーやオメガバース、人ならざる者・人外の恋など、多種多様な楽しみがありますよね! 今回は「人外BL」をテーマに、こちらの味わい深い作品を紹介させていただきます。

黒井よだかさん「魔女と猫」(海王社)

ひとくちに「人外BL」といっても、登場キャラクターが獣人、天使・悪魔、ゾンビなど、さまざまありますが、この作品では魔女とその使い魔がメインです。パッと見は人間なので、人外初心者の方にも楽しんでいただきやすいと思います♪

運送会社で働く須藤は、夜は裏社会の“運び屋”として、金のために淡々と仕事をこなす日々。そんな彼の気になる存在、それはアパートの隣人・宇野でした。いつも素っ気ない態度で挨拶もろくにできずでしたが、“運び屋”の仕事でケガをしたときに手当てをしてくれたことをきっかけに交流が生まれます。ある日、ヤバそうな人に絡まれている宇野を助けたことで瀕死の重傷を負ってしまった須藤は、宇野と“契約”を結ぶことに。実は魔女だった宇野と肉体交渉を持つことで須藤は宇野の使い魔となり、こうして魔女狩りからの2人の逃避行が始まるのです――。

使い魔にはいろいろな種類があって、須藤は「猫」の力を得て夜目が利いたり、敵陣には嗅覚の鋭い「犬」の使い魔がいたりと、異能同士の戦いも見ごたえがあります。そして、執拗に追いかけてくる魔女狩りサイドにも、何が何でも魔女が必要な理由があって……。果たして2人は自由を手にすることができるのか!? 海外ドラマを観ているかのようなドキドキの展開の連続に目が離せません!

アクションシーンも見どころですが、やはり心を掴むのは宇野と須藤が互いを救いあう存在だったということ。魔女狩りによって家族を失っている宇野。誰とも関わらずに、真っ当に生きることを胸に、これまでたった一人で耐えてきたことを思うと胸が痛みます……。そんな中、偶然、そして不可抗力で須藤を使い魔にしてしまうことになりましたが、結果的にはずっと孤独だった宇野を救うことになって本当に良かったと思わずにはいられません。須藤も仄暗い過去を持ち、自身の異常性を理解し、人生を諦めたようなところがあったのですが、宇野から求められることで変わっていく姿にジーンとさせられました。

ラブなシーンも盛りだくさんです。魔女と使い魔という関係から、魔力の供給のために交わる2人。その契約という関係性がいいスパイスとしてありつつ、数を重ねるたびにしっかり愛も育まれていくのが伝わってくるのがいいです。ツンツンしてそうだった宇野の見せるかわいさや、2人の相性の良さが最高。特にお気に入りは、背の高い須藤に抱きかかえられながら、足を宙に浮かせてするキス。切なさとキュンで溢れかえりました……!

魅力的なキャラクター、ハラハラが止まらないラブストーリー、美麗な絵柄、三拍子揃って満喫できました。この先の2人もまだまだ見たいし、使い魔の能力も他にもありそうですし、続編やスピンオフに期待をしたくなる作品です♪

BLことはじめ(好書好日)一覧

BLことはじめとは・・・BLの世界を知りたい、読んでみたいという入門者に向けて、朝日新聞社「好書好日(BLことはじめ)」にて毎月さまざまな切り口でおすすめのBL本を紹介している連載企画です。

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