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on BLUE10周年記念 紗久楽さわ先生「百と卍」入門おしゃべり会

海外向け配信サイト「futekiya」から見た日本のイベントとは!詳細イベントレポート

3月28日に、『百と卍』の作者・紗久楽さわ先生のオンライントークショーが開催されました!本イベントはon BLUE10周年を記念して開催されたもので、2月25日から3月25日までの間にアニメイトオンラインで「百と卍」の単行本を購入した先着420名が参加権をゲットしていました。

今回のトークショーの司会は紗久楽さわ先生の担当者・ももんがさんが担当されていました。トークショー開催前の挨拶で、紗久楽先生は「このようなトークショーに呼んでいただいた時は江戸時代や男色文化の話を中心にしてきましたが、せっかく4巻も出てキャラも増えたので今日はキャラやストーリーの話をいっぱいしたいと思います」とおっしゃっていました。

トークショー前半ではQ&Aに答えてキャラにまつわる話をし、休憩を挟んだあと2部でアナログのライブドローイングを行う旨が視聴者に伝えられたあと、ZOOM上で視聴者参加クイズ用の投票機能のテストが行われました。テスト用の質問は「百と卍」の愛称についてで、正解は「ももまん」でした!

第1部(Q&Aコーナー)

Q&Aコーナーで取り上げられた最初の質問は、紗久楽先生が江戸時代が舞台のBLを描こうと思ったきっかけについてでした。主な理由は「BLを読んでいて『侍や忍者が出てくるBLはあるけど、江戸町人メインで生活感が溢れる作品がないな』と思ったので書きました」ということでしたが、なんと雲田はるこ先生に「江戸BLを描いてほしい」と切々と言われたのもきっかけの一つだったとか…!

次に「ももまん」の話やキャラの着想について尋ねられた紗久楽先生は、「BLファンの方は多分最初から江戸時代になじみがある人が少ないと思ったので、江戸の三男(火消・与力よりき・相撲取り)のひとつで一番美男子と言われている火消、それに陰間など、BL読者が好みそうなキャッチーな要素を引っ張ってきたら主人公が元火消と元陰間になりました」とおっしゃっていました。先生曰く、「卍さんはキャララフ当初から全BLファンを魅了するようなキャラにするつもりで作りました。歌舞伎に出てくる色男・美男子の殺人者などの少し悪い役を見ていると「この人に殺されたいな」という目線で見てしまうので、そういうイメージで…。読者の皆様には想定通りの反応をしてもらえてありがたいです」とのことでした。百のキャララフは今より素朴でぼんやりした感じだったそうで、「漫画の中の普通の人」というイメージでキャラ作りを行ったそうです。「キャラの目を全員違う感じで描いているが、巻が進むにつれて読者さんの反応もあってか百はかわいくなっていっている」「紫の瞳だと可愛さと色気が両立できるし、可愛い色合いにも落ち着いた色合いにも合わせられるので百のキャラデザをした昔の自分に感謝している」とおっしゃっていたのも印象的でした。また、過去の漫画と異なり「ももまん」を描くにあたってリアルにモデルや参考にした人は特にいないそうですが、「こういう性格のキャラはこういう顔がいいな」というのはあるので千さんの顔立ちはデビルマンっぽくしたそうです。

キャラの名づけについて、卍(=本名は「万次」の表記になる設定)については「最初から『卍』という記号で考えていたが、本名っぽくなかったので漢字を当てた」とのことでした。百樹とさむるの名前の元ネタは江戸時代の戯作者(小説家)、山東京伝さんとうきょうでんとその弟の山東京山きょうざんで、彼らの本名が醒と百樹だったから、ということで引っ張ってきたそうです。他の登場人物の名前も数字からとられていますが、十五夜さん・十六夜さんは月の名前からとったので数字が入っていることに2巻が出るあたりまで作者自身も気づかなかった…というこぼれ話を聞くことができました。

ここで、百の好きな食べ物についてのクイズが視聴者に出題されました。選択肢は「てんぷら」「うなぎ」「おだし」「梅干し」の4つで、正解は「てんぷら」でした!(うなぎは卍と千・おだしは醒・梅干しは卍の好物でした。)

「百樹の陰間時代において安らぐ瞬間や思い出はあったんでしょうか」という質問に対して、紗久楽先生は「作中で描いてはいませんが、あの状況であれだけほんわかした性格でいられるということは、辛いことも多かったとはいえそれなりに安らぎはあったのではないでしょうか」と答えていました。百樹はあまり売れていない子という設定で基本的に暇だったのですが、もしかするとそういう瞬間にやすらぎを覚えていたのではないか…との事です。また、「百にぞっこんだった客も1-2人くらいはいたんじゃないかと思いますが、百さんは自信がないから気づいていなかったしアプローチされてもきっと疑っていたでしょう。」「百さんは陰間の暗い部分を担ったキャラなので心の痛む描写が多いですが、十五夜さんのような華やかな一面も陰間にはあったと思います。」という情報もありました。(なお、百さんが醒と暮らしていた頃の様子は4巻の描き下ろしで見ることができます!)

卍が百樹を連れて帰ろうと思った理由に関しては「お互いの第一印象」「単純に好みだったから」という回答がありました。先生いわく「1巻が出たときは続きが出るかわからなかったので『馴れ初めは次の巻で!』などと言っていましたが、描きたいエピソードがどんどん増えてしまってまだそこまでエピソードの順番が来ていない状況です。書く予定はあります…!」との事でしたので、futekiya読者の皆さんも是非楽しみにしていてください!

また、「新章では卍さんにスポットが当たる」というのも要注目なポイントです。卍さんの怖いものについて、紗久楽先生は「彼はお坊ちゃん育ちだしミミズにビビってたし色々怖いものはある」とおっしゃっていました。このあたりの話は5巻以降に出るかもしれません。ワクワクが止まりませんね!

ここから先では、主人公ふたり以外のキャラのこぼれ話もたくさん聞くことができました。千が筋肉質(&雄っぱいがムキムキ)な理由は「12歳~13歳くらいで家を飛び出してから肉体労働が多かったから」で、鍛えたというよりは仕事とともに筋肉ができあがったという感じだそうです。彼が火消しになったのもその流れだったとか。16歳~17歳で家を飛び出した卍との対比が興味深かったです!

千を慕う船頭・きざしのコンセプトは『とにかく儚げできれいでつかめない人』だそうですが、「私の絵は良くも悪くも表情が付きやすいので最初はそのように描くのが本当に難しかった」と先生はおっしゃっていました。最初は綾波レイのようなイメージにしつつ、千を追いかけるにつれて表情がつくよう意識していたそうです。兆の目元を描く際は「まつげをバサバサにしつつキリッとさせる」のがポイントになるとのことです。

億政と兆の決定的な違いは性格や育ち方で、その差は彼らの表情を見るとはっきりする…とのことでした。また、兆という名前は読者さんからのファンレターから採用され、数字の意味のほか、漢字の意味自体にも含みがあるのだそうです!

「自分の陰間に「満月」という名前をつけたりで十五夜に未練たらたらな十六夜ですが、次にチャンスがあったら彼とちゃんと向き合いますか?」という質問に対し、先生は「わかりませんが、もう一度なにかがあったとしたら「もう一度俺のところに来いよ」とか言うと思います」と答えていました。「十五夜は百をどう思っていますか?」という質問には「あまり興味なかったと思います」と前置きしたうえで「十五夜は売れっ子で店にあまりいないだろうし、モブ陰間みたいな子はいっぱいいたのでわざわざ下っ端の百を覚えることはなかったかもしれません。ただ聡明な人なので「醒のこういうところ好かんわ」などという、百に対しての評価は何かしらあったでしょう」と解説されていました。

また、視聴者アンケートの結果に沿って「十五夜・七松のその後」についてのお話も聞かせていただけました。「複雑な二人ですが、生きやすさなどを考えて「夫婦」と名乗って生活しているのではないでしょうか」「七松が自信を持てる日が来るか来ないかはわからないですが、きっと疑心暗鬼ながらずっと十五夜についていくでしょう」など、ここでしか聞けないエピソードが聞けてfutekiyaスタッフの我々もワクワクでした!

火消し四天王についても、「一番モテるのは誠実な綱。季吉すえきちはスレンダーだが痩せの大食いかもしれない。金ちゃんに今は恋人はいないが、いい男なのできっとそのうちできる」などの小ネタをたくさん聞かせていただけました。男前なサブキャラがたくさんいるのも「ももまん」の魅力のひとつですね!

紗久楽さわ先生の漫画の描き方

次は、紗久楽さわ先生の漫画の描き方についてお話を賜りました。先生の作業環境はご本人曰く「しっちゃかめっちゃか」していて、漫画は線画をアナログで描いたのちトーンをPCで貼って納品したりしているそうです。また、カットによって様々な画材を取り入れているのも先生の絵の特徴です。

以下、1枚目のカットは『線画・半纏などはアナログ・調整はデジタル』、2枚目は『フルデジタル』、3枚目は『キャラはデジタル・背景はアナログ(墨絵)』で作画されたそうです。

また、先生は「ももまん」を描き始めた最初は日本の浮世絵っぽい絵を意識したのでキャラクターに光や影をあまり入れなかったものの、最近のイラストは影や光を多用して立体感を出すよう意識している…との事です!

「ももまん」作画のこだわりについて、先生は「柄のサイズで印象がだいぶ変わるため、卍の襟の格子などはできる限り自分で手描きしている」とおっしゃっていました。醒の危うさや繊細さを表現するため、醒の服の縞もアシスタントに任せず全部自分で描かれたそうです…!!また、キャラの着物の柄は浮世絵から着想を得ているものの、そのまま漫画に落とし込むと画面がうるさくなりすぎるので全体のイメージは歌舞伎の世話物の着こなしを参考にしているそうです。

先生はご自身のペンネームの由来にするほど好きな「カードキャプターさくら」で「キャラクターもお着替えするんだ!」というのを学び、服によってイメージが変わるのを漫画に落とし込んでいるそうです。5巻で百と卍がかなりときめく格好をする流れがあるので、ぜひ楽しみにしていてほしい…という情報もありましたよ!

第2部(ライブドローイング)

休憩を挟んだあとは「ももまん」アナログイラストのライブドローイングが開催されました。アナログイラストの制作に関する貴重なご意見をお聞きしたり、キャラクターのさらなる裏話を聞かせていただいたりしながらペン入れを進めていただきました!

ペン入れ開始後、まず火消し四天王の名前の裏話を聞くことができました。彼らの元ネタは平安時代の源頼光みなもとのよりみつが従えた四天王で、卍さんは源頼光イメージだそうです。金太郎は日本の童話の登場人物として有名なので可愛い感じで、綱(渡辺綱)は鬼の片腕をとった人なので卍の片腕のような人物になったとのことでした。

今回先生がライブドローイングで使ったペンはZEBRAの「硬筆」と描かれた小回りのきく筆ペンでした。普段は目を書くのに丸ペンを使っているそうですが、今回は筆ペンを…とのことでした。「ももまん」の原稿は殆どが上記の筆ペンで描かれていますが、ものすごく太い線は太めの筆ペン、豪快にかすれさせたり滲ませたりしたい場合は普通の絵筆を使っているそうです。また、普段は鉛筆で書いた下書きをなぞるものの、今日は見やすいようにトレース台を使用してペン入れを行ってくださいました。

作品制作に使う紙について、先生は「カラー絵には画仙紙という水墨画用の紙を使っています。自然に和風な線になってくれるし、浮世絵師の下絵に近い感じになりますよ」と説明されていました。漫画の原稿は細い線が出ないといけないので普通の原稿用紙を使っていますが、墨の吸収度合いが丁度いいICというメーカーのものを愛用されているそうです。

「ももまん」の影が薄墨で描かれている理由については「スクリーントーンを使うとドットのせいで着物の柄がぼやけてしまうから」と説明されていました。雲田はるこ先生の薄墨を使った原稿を見ていいなと思ったので、真似していいか聞いた上で薄墨を採用されたそうです。

アナログでの作画ミスについては基本的に描き足したりしてごまかしているものの、墨を引きずったりしてしまった場合はデジタルで修正しているそうです。筆の質感をデジタルで描く際はクリスタの筆っぽいツールの筆圧を自分好みに調整して使っているとのことですが、「ももまん」を描き始めた頃はクリスタの機能が充実していなかったので自分でやるほうが早かった…とおっしゃっていました。さまざまな画材を駆使した大胆な作画メソッドは紗久楽先生ならではですよね!

作業BGMに関する質問に対し、先生は「最初の方は音楽を聞いてキャラの感情に集中しないと表情がわかりませんでしたが、最近はけっこう他の人と雑談しながら作業したりYouTube・アニメ・ドラマ・映画などを見ながらでもできるようになりました」とコメントされていました。

「ももまん」がon BLUEに最初掲載されたのは2015年5月でしたが、当時は最初はアングラかつ重厚な連載が多かったため、ゆったりした漫画を描きたいと希望を出して今の形になった…ということでした。紗久楽先生いわく、「友人の雲田はるこ先生の作品もon BLUEで連載されていたので一緒に載れて嬉しかった」とのことです。(なお、on BLUEの編集部が紗久楽先生に声をかけたのも雲田先生がきっかけだったそうです。漫画家さん同士の仲良しエピソードって貴重ですよね!)

ももんがさんと紗久楽先生の出会いのきっかけは、学生時代に江戸時代の勉強をしていたももんがさんが「江戸時代といえば紗久楽さわ先生だから」ということで会いに行った事だそうです。ももんがさんは先生のことをon BLUE編集部に入る前から知っており、個人サイトにメッセージを送って返事をもらったこともあったそうです!紗久楽さわ先生の基本スタンスは「江戸時代を布教したい」というもので、江戸時代を好きになってくれる人や江戸時代がテーマの作品を作ってくれる人が増えたらいいなぁと思っているので、今でもTwitterなどでマメにファンと交流されているそうです。

今回のライブロドローイングで描いてくださったイラストの完成版がネットプリントで配布決定!ぜひ最寄りのコンビニで印刷してください。

ライブドローイング終了後

ライブドローイング終了後、紗久楽さわ先生おすすめのon BLUE作品・「PERFECT FIT」(たなと先生)についてお話を伺いました。

「PERFECT FIT」、そしてたなと先生の作品全般における紗久楽さわ先生おすすめポイントは登場人物の「男の個性」が素晴らしいことです。BL漫画の登場人物は片方がフェミニンな感じになりやすいのですが、「PERFECT FIT」の受けキャラ・真下くんはしっかり男の子みがある感じなのがたまらないのだとか。また、攻めの田中先輩が真面目そうなのに夜は遊んでいるところや「つよつよ攻めxちょろい受け」という構図が素晴らしい…というコメントもありました。紗久楽さわ先生の漫画が好きな方には絶対刺さるはずなので、よろしければみなさんもチェックしてみてくださいね!

実は今回のトークショーは紗久楽さわ先生のお誕生日当日に開催されていたので、サプライズとして百のチャーミングな絵柄のケーキが先生のもとに届けられました。更に、たなと先生ご本人が「スタッフ田中」としてトークショーに紛れ込んでいたことも発表されました…!!

たなと先生から見た「ももまん」は、「江戸という時代のことをすごくわかりやすく面白く届けており、更に萌えとエロがどっさり詰まった素敵な作品」とのことでした。また、紗久楽先生の漫画は画面の熱量がものすごいため、スランプに陥ったときはコミックスを見てモチベアップしている…という胸アツエピソードも披露されました。

たなと先生イチオシの「ももまん」キャラは主人公二人…ですが、「3-4巻で千さんがすごくアツくなってる」との言葉もありました。火消しの中では季吉さんのファンで、七松さんのこともとても好きだそうです。

楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、気づいた頃にはトークショーの終了時刻がやってきていました。最後のメッセージとして、紗久楽先生は「素敵な誕生日にしていただけて嬉しかったです!on BLUEさんのトークショーは他にもたくさんあるので、是非みなさんも是非いろんな先生のトークショーを聴きに行ってみてください!」とおっしゃっていました。

紗久楽さわ先生、ももんがさん、たなと先生、素敵な時間をありがとうございました!

(ライター:推花)

©紗久楽さわ/祥伝社 on BLUE comics

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