紙の本
短編より長編が向いていると再認識
2015/08/22 18:15
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
青山文平の作品としては少し物足りない感じがする。時代背景などはしっかり書かれていて質の高さを感じるのだが、ストーリーがあまりよくない。読後の満足感がこれまでの作品ほど高くはなかった。そもそもこの作者のじっくりした粘りのある書き方は短編より長編に向いている気がする。長編だとその細かい考証や丁寧な描き方によって話の奥行が深まるが、短編だとそれが生かしきれない印象を受ける。今回の作品も、題材はそれぞれにいいものを扱っているので、できたらこれを長編、せめて中編くらいの長さで読めたらよかったなと思う。
もっともこういう辛い評価をしてしまうのも、本格時代小説を書く作者、という期待と信頼があるからなのだが…。
紙の本
きっと新感覚の時代小説。
2018/11/15 23:36
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史小説とは、史実を元にして、あやふやな部分に
肉付けをして活写するものと思っています。
これに対して時代小説とは、舞台装置をその時代に合わせた、
史実に残らない自由な物語と思っています。
でも自由とはいえ、その時代のもつ雰囲気ってあると思うのですね。
この小説は、その固定的な思い込みを、いい意味で
裏切ってくれました。
直木賞受賞ということで手にしました。
歴史・時代小説は数えるぐらいしか読んでいないため、
期待と不安で読み始めました。
結果的に自分の趣味とずれた部分はありますが、
新感覚の時代小説だろうとの印象を受けましたので、
そこをお伝えしようと思います。
庶民的な武士というと言葉がおかしいのですが、その他雑兵の
武士たちが嫁をもらった時のあれこれを書いた作品です。
武士といっても、江戸の太平の世の中です。
仕官して禄を戴けるかどうか、高いお役目を得てお目見えの身分に
なれるかどうかといった、小役人たちが主役です。
天女様と評判の女性と結婚したり、つゆかせぎというちょっとした
娼婦まがいの日雇い女と出会ったり、左遷された先に住んでいた
気性の激しい女とやり取りをしたり。
意外なのは、女たちはいずれも町人という設定なのです。
名もない女たちがたくましく生き、のほほんとした小役人どもを
尻に敷き、振り回すのです。
女は分からん、怖いといい、男所帯の平穏さに心安らいでいます。
そもそも小役人とはいえ、町人に近すぎる感じに違和感が
あるのですが、お武家様ではない等身大感を出すことで、
現代の読者にピントを合わせています。
これまでの時代小説の女たちは、男を立てる形で、表には出ずに
たくましく生きるという描かれかただったと思うのです。
この作品では、女たちを全面的に押し出して、
男目線でやきもきする様を描いています。
時代小説風の現代小説のように感じました。
紙の本
出来不出来
2016/02/06 22:49
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作の「つまをめとらば」は、子供の頃から親しい年配男2人の女性感、夫婦感といったところか。下働きにきた佐世に注目。ただ、6編全体、文章にリズムがないため読み辛い。最初の「ひともうらやむ」は、後半が粗く、ち密な物語が望まれる。直木賞受賞に際しては、山本周五郎、藤沢周平の流れと紹介されたが、むしろそれは、先に同じ賞を獲った葉室麟氏で、青山氏はかなり劣る。
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江戸の武家の妻に関わる短編集。
読んだ感想は「女って怖い」。そして怖いながらもたくましく魅力的だなぁと。男の都合の良いような妻なんて存在は居ないのかもしれない。
そして本のタイトルにもなっている「つまをめとらば」を読むと、笑いがこみ上げてくる。そうだよなぁと。
好きな作品は「ひともうらやむ」、「乳付」である。
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直木賞候補作。
前回の『鬼はもとより』もそうだが、時代小説の中の多少ニッチなテーマを描いている。
自分には少し物足りない。
青山文平の王道の時代小説を読みたい。
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時代小説6編から成る短編集。すべての作品がそうであるとは感じなかったけど、物語の影の主役は女っていう触れ込みになっている。それにしても登場する女たちがみな強いこと強いこと。っていうか本当にこんな強かったのかいなこの時代の女って。そのあたりに若干の違和感を覚えたけど、男から見た女のイヤ~なところ、何を考えているのか分からない不気味なところ、そしてそんな女に翻弄される男の姿なんかは現代でも通じるものがあると思った。
個人的には全6編の中で「ひと夏」がハラハラドキドキ感があって一番楽しく読めた。と同時に、読了後に物足りなさを感じたのも事実。啓吾の成長物語として、短編ではなく長編で読みたかったのは私だけではないと思う。
ところで最終話の表題作では主人公と友人がそれそれ戯作と算学を会得しているけど、これって別の作品の登場人物とタブらせてるってことなのかなあ。
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第154回直木賞受賞作
普段時代小説は全く読まないし、苦手な分野なのですが、全然堅っ苦しくなく難しくもなくとても読みやすい。
表題作のつまをめとらばよりも、最初のひともうらやむのが面白かったです。
短編集なのですが、女は強いな、と。あらゆる意味で、ね。
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#読了。第154回直木賞受賞作品。初読み作家。短編集。
江戸時代の武家の男たちと、彼らを取り巻く女たちの心情を描く。どの編でも、女たちの強さと対比した、男の弱さ、もろさが滲み出ている。現代にも通じる話しかと。
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妻と夫の関係とは、と色々な形があるものと思わせる本格派な時代物でした。戦国とは違い、江戸時代ともなるとあまり派手な印象はありませんが、大人向けの読み物としては非常に味があるのではないでしょうか。
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受賞作は長編かと思っていたが、短編だったのか。
この時代の人は女性のことを本当にこんな風に見ていたのだろうか?と思わせる箇所がいくつかあった。
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第154回(2015L)直木賞
短編集
・ひともうらやむ ★★★★
持つべきものは良き妻。おんなは強い。
・つゆかせぎ ★★★★
母は強い。
「あなたはお父様が御国を逃げたわけじゃないことを分かってる。一茶と同じように、新しい場処へ踏み出したことを分かってる。そして、自分だけがどこにも行こうとしていないこともわかってるの」
・乳付 ★★★
男の仕事は妻に支えられてこそ。
・ひと夏 ★★★
お勤めとは大変である(無欲)
・逢対 ★★★
お勤めとは大変である2(無欲)
・つまをめとらば ★★
女は怖い。男は妻次第。
3+
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初の青山作品であった。
少々下級の武士が主人公だが、彼を取り巻く女たちはなかなかのツワモノ。
いろいろな状況の中で(やっぱ おんなは強いわ)という作者の声が聞こえてくるようだ。
人それぞれ 好き好きはあるだろうが、「乳付」と「ひと夏」は心の揺れが感じられ、楽しめた。
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非常に読みやすかった。描かれている女性が皆潔くてたくましい。子を持つ母はこんなにも強いのか。男性はそんな女性の手のひらで転がされてる様子がちょっと情けなくて、愛おしくて笑ってしまう。
「乳付」がお気に入り。悋気すると素直に言える人でありたい。
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話の組み立ては良いのだけれど、なぜかもう一つ何かが足りない感じ。迫り来るものがありませんでした。とりあえず、直木賞受賞ということで、おめでとうございます。
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悪くはないけど、スッキリもしない読後。不幸にはならないけど、とびきり幸せにもならない。日々をこういうものと受け入れ生きていく夫婦、男、女。勿論それぞれに波乱や事件、思う所はあるのだけど、だからと言って抗うわけではない。思い返すことも後悔も、全て全て「そういうもの」と受け入れる短編集のように思えました。妻をめとる選択も、めとらない選択もあるわけで、登場する6人はそういう人生を選んだ、ただそれだけの事。女は逞しく、弱く、したたかで優しい。女によって少し変わる人生。人生の転機にその女がいた、というお話でした。