紙の本
食卓をどこへいざなうか
2017/12/05 21:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
それぞれの料理研究家の生い立ちや幼少期や成人後の食体験、食に対する考え方が、紹介する料理に方向性を与えているところが興味深かった。日々の食卓を豊かにするために、レシピを書く側の志向と読み手の悩みが時間の流れとともに変化しながら手を取り合ってきたことがよくわかる。
個人的には、きっとこれからの家庭料理は、もっとシンプルな方向へ行くのではないだろうかと思う。一食あたりの品数を減らし、調味料の種類を減らし、使う食材の種類を減らしたら、冷蔵庫も台所もすっきりするじゃないか。最後に紹介されていた高山なおみの言葉「レシピは料理家のものじゃなく、生活をしているみんなのもの。毎日食べるごはんがおいしすぎるのは、体にも気持ちにも、毒だという気がします」に、世の中のうまい料理作れ圧力に辟易している人がたくさんいると感じた。安く、安全で、温かいものが食べられれば良いという発想が浸透してほしいなぁ。
紙の本
新しい切り口の現代女性史
2015/08/20 10:33
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:HIDE - この投稿者のレビュー一覧を見る
小林カツ代さんの著書には結婚した当初、教えられることが多かったので題名にひかれて購入。
この本は料理研究家を通してその時代の女性について考察していて、おもしろかった。
電子書籍
料理研究家という人々
2019/05/17 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性が女性として社会に進出していくことの意味を考えさせてくれる本。料理研究家の女性たちの列伝を通じて、日本社会の変化も読むことができる好著。
紙の本
料理研究家を研究
2016/10/25 19:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Pow - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの二人以外にも、多くの料理研究家について書かれています。
こういった切り口の本は珍しいのでは?
楽しく読めました。
投稿元:
レビューを見る
料理についてもほとんど知らないし料理研究家と呼ばれる人たちも名前ぐらいしか知らない。でも、ここに書かれている人たちは料理研究家としても個性的だけどその時代ごとのニーズとともにあり時代の変化とともに求められるものも当然ながら変わっていく。その流れがとてもわかりやすく書かれていた。戦争で一度断絶したものや世代ごとに違う価値観や食文化が今にどう繋がっているのかというのは僕たちが生きているこの世界の変容そのものだった。欲望する世界と求めらる人たちは呼応しているんだなと思う。
投稿元:
レビューを見る
料理研究家という職業が成立してから現在までについての概説、着眼点もタイトルもいいですね。とくに江上トミや飯田深雪といった黎明期の人が興味深かった。自分が多少なりとも知っているのは「オレンジページ」創刊以降の人たちだが、著者の評価はおおむね納得がいく。たいへん読みやすくわかりやすいのだが、活躍期が長い人たちなので、「時代」とからめて書くところがいささか牽強付会に感じるところも。「クックパッド」以降、料理研究家という職業が変質していくのかもというところもあるが、現時点のまとめとして新書一冊で書いてもらったところが、なによりいいところ。あと、個人的には、「料理研究家」というポジションでは村上祥子を絶対に外せないと思っているので、そこにはぜひ触れてもらいたかった。
投稿元:
レビューを見る
女性と社会の変遷を、料理研究家のキャラクター移り変わりから読みとくアプローチ。充分な情報量、仮説にも無理はみえない。料理研究家の特徴を饒舌に語るよりも、ビーフシチューのレシピを引用し比較する企画が効いている。100冊はあるだろう我が家のレシピ本を改めて読んで、つくって、みたくなる。
一代ブームになった高峰秀子や向田邦子を完全にスルーし、職業料理研究家にしぼったのも良かった。続編で、有名人の家庭料理をテーマに一冊書いてほしい!
投稿元:
レビューを見る
戦後の代表的な料理研究家たちを主に時系列で(「和食指導」者たちの章は別立て)、それぞれが活躍した時代背景とともに紹介し、それぞれのスタイルと彼女たち(料理研究家は、やはりというかなんというか、ほとんど女性)が世に出た必然を語る本。
料理が一部の女性の「教養」だった時代から、冷蔵やバイオテクノロジーなどの技術や物流システムの発達で食材が豊富になり便利になった反面、多くの女性たちが毎日の献立に悩むようになった高度成長期、女性の生き方が多様化した現代まで、女性がどんなふうに毎日の料理や暮らしと向き合ってきたのかを俯瞰します。
タイトルに名前が踊る小林カツ代さんと栗原はるみさんはそれぞれ自身のことを、かたや「家庭料理のプロ」、かたや「主婦」と自任します。その思いの違いはどこにあるのか。
著者は栗原はるみさんを「女性のヒエラルキーのトップ」といいます。それはなぜか。
それぞれの料理研究家のレシピの特色を、ビーフシチューや肉じゃがで比較する、という趣向もよかったです。面白くて読み始めたら止まらない一冊でした。
著者があとがきで「料理研究家とその時代を研究」しているうちに、「女性史としての側面」が強いものになったと書いていますが、まさにその通りのイメージです。
最終章では平成の男性料理研究家も登場します。これも時代ですね。
投稿元:
レビューを見る
着眼点が面白い。女性の生き方の移り変わりを、料理研究家の分析から考えてみる。言われてみれば、なるほどなあという目の付け所だけれど、なかなか思いつかないだろう。その時代時代で、人気のあった料理研究家にはどんな特徴があったのか、どこがうけていたのか。一人一人の背景にも踏み込み、暮らしや女性の意識の変遷との関わりで論じられている。
特に、表題にもなっている小林カツ代さんの章が読みごたえがあった。小林さんについては、さして意識していたわけではなかったけれど、なんとなく好感を抱いていた。見栄え重視ではない実質的な「おかず」を手早くおいしく作る、という小林さんの料理について、「家事をへらしたい、でも、ちゃんとつくって家族に食べさせたいというアンビバレントな気持ちを抱く主婦に処方箋を示した」と書かれていて、ああ、そこが良かったのだなと腑に落ちた。
まったく、家事、特に料理については、実に「アンビバレントな気持ちを抱」いてしまう。義務として、または愛情の名の下に押しつけられるのはごめんだ。一方で、家族においしいものをしっかり食べさせたいなあという気持ちも大いにあって、やりがいを感じる。そこにこそ喜びがあるとは思わないが、煩わしいものとしてパスしようとも思わない。宙ぶらりんな感じで気持ちの納まりどころを見つけられないけれど、ま、それは仕方ないかと思っている。
特にはっきり示されているわけではないけれど、この論考もこれまでのフェミニズム研究の流れを踏まえたものであるのは間違いない。本書ではやや批判的に言及されているが、上野千鶴子先生の功績は実に大きく、「家父長制と資本制」はやはり名著だとあらためて思った。
投稿元:
レビューを見る
まってました、本邦初の料理研究家論。朝ドラ「ごちそうさん」モデルはだれか(いるのかどうかとずっと疑問だったけどなんと!)を枕に、草分け・江上トミと飯田深雪から本格西洋料理の入江麻木と木戸崎愛、時代下って有元葉子、時短料理で常識を覆した(しかしきわめてまっとうな)小林カツ代、カリスマ主婦栗原はるみ、土井勝親子、辰巳浜子・芳子などの和食指導系、そして平成の男子ごはん、ケンタロウ(カツ代息子)・栗原心平(はるみ息子)・コウケンテツまで、時代や社会背景、女性の生きかたの変化まで目配りして系譜をたどった読み応えある一冊。
こどものころはじめてであった『くまのプーさんのお料理読本』、いまでも宝物にしている『赤毛のアンの手作り絵本』、雑誌『頓智』でおぼえた小林カツ代流肉じゃが、本棚に並ぶ『ごちそうさまを聞きたくて』『あなたのために いのちを支えるスープ』など、なるほどそういう流れの中で登場したのか、と興味深く読んだ。主な料理研究家の「ビーフシチュー」のレシピを比較できるのもおもしろい。
けっきょくどの料理研究家も、それぞれの時代の中でみんなが発信しているSOSを上手にキャッチして解決策を提供しようとしていたのだな。それは、食事の支度が当たり前に身についた習慣だったかつては、異国の本格料理だったり専業主婦の求める献立を日替わりにするためのアイデアだったりしたけれど、一人暮らしか結婚を機に初めて台所に立つ現代は、本格派でも創作派でもなく、パーティーやもてなしの非日常のごちそうよりもむしろ日常のお料理のハードルを下げて楽に続けるためのレシピが必要されているわけだ、とわかった。
今回は出てこなかったけれど、女優・作家の料理本やテレビの料理番組の人気者などについて、いつか続きが読めたらと思う。
投稿元:
レビューを見る
料理に興味を持ったのが最近のため、知っている料理研究家に限りがある。
そんな狭かった視野を一気に広げてくれたのが本書。
時代背景を踏まえた歴史解説はとても勉強になった。
投稿元:
レビューを見る
料理研究家の人達は、豊かさに触れて育ってて、恵まれた環境だからセンスを育てられたんだと思った。それに加え、情熱という才能。
投稿元:
レビューを見る
ハンドル名からもご察しの通り
料理が好きである。
食べるのも作るのも好きである。
そのためきょうの料理のような番組にはよくお世話になっている。
テレビの料理番組の音声が聞こえてくると
その音声から利き料理研究家ができるほどである。
この本のようなことを いつかは書いてみたいと思っていた。
このような 女性の社会進出とかの視点ではなく
彼ら彼女の調理から見える価値観のようなものを書いてみたいと今でも思っている。
そんな私がこの本を読んでおもしろくないわけがない。
名だたる料理研究家も 料理を習熟しようとする努力の末に今日があるのだが
それは主婦や料理研究家の初期だけではなく
実はずっと続くのである。
不断の努力によって支えられている。
一方 フランスやイタリアや中国の家庭料理をみると
範とする伝統的な調理法があり、それに近づけるという手法が多い。これは様々な外国の料理研究家の料理をみてきたから確かである。
日本は明治維新以来そして戦後さまざまな生活文化を受け入れてきて咀嚼し、自家薬籠中の物としてきた。
それはオリジナルの調理法を日本人の口に合うように勘案されてきたからである。
このとき ビジネスとして レストランや食材として提供する流れとこの本で取り上げられているような家庭での翻案や実践という二つの流れがある。
馴染みのない調理法や食材を家庭に導入するにあたり、呂理研究家の果たした役割は大きい。
このような家庭料理におえる水先案内人を数多く 排出することに日本文化の特質をみる思いがした。
投稿元:
レビューを見る
題名に著名な料理研究家二人の名前を冠しているが、この二人だけではなく、日本の一般家庭における料理を牽引してきた(特に戦後)料理研究家とその背景にある女性の社会的立場の変遷、それに伴う日本の家庭の食生活の変化を著している。
料理研究家といえば、私が家庭をもち、毎日の食を作っている中で本当にいろいろな方たちのレシピ、そして料理研究家自身の人となりを参考にさせていただいてきている。
しかしそれも時代と共に変化していることがこの本を読むとわかる。戦後すぐには食材料も限られ、しかしその中で自由に献立を考えられる、また西洋へのあこがれを食生活にも反映したものが望まれた。時代と共に食材も豊かになり、メニューも豊富になると多国籍な食が現れる。
またそればかりではない。女性の立場の変化にともなってーーたとえば戦後サラリーマン化家庭の増加で核家族のなかでの専業主婦、その後女性の社会進出による共働き家族等ーー家庭の食が大きく変化していることがわかる。料理研究家はその時代その時代のニーズに合ったレシピを提供し、またあるときは自身の生き方をも表しながら、私達に「食」を提示している。
私がお世話になった多くの料理研究家の方たちの背景、日本の食文化の変化、女性の立場の変化を私自身が生きてきた時代と照らし合わせながら読むことが出来、とても興味深い一冊だ。
投稿元:
レビューを見る
各国の料理が日本にいても食べられて、コンビニ弁当やスーパーのお惣菜で日々食べつなげられて、安く飲み食いできるガード下のお店なんかもあり、本当に便利な時代に生きているわけだけれど、それが果たして幸せなことなのかと考えてしまう。
色々な時代変遷の中で、家族の食を守ってきた女性たちの姿や、それを手助けする料理研究家たちの歴史は、とにかく興味深かった。
もっとちゃんと料理しようと思わされる。