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- トークイベント 第1回
「人生は50歳から」──結婚は素敵、でも人生は決まらない:『働く女性に贈る27通の手紙』トークイベント
小説家の小手鞠るいさんと、ライターや編集者として活動する望月衿子さんによる著書『働く女性に贈る27通の手紙』の出版から1年。
この本をきっかけに、hontoではスピンオフ企画として「『働く女性に贈る27通の手紙』Web往復書簡」と題した連載もスタート。全18回を通じて読者の悩みや不安に寄り添ってきました。
その締めくくりとして、9月11日にトークイベントを開催。会場には30代から40代の女性を中心に、約60人の参加者が集まり、お二人のお話に耳を傾けました。
小手鞠るい(こでまり・るい)
1956年生まれ。アメリカの東のほう在住。出版社の編集職、学習塾の講師、書店でのアルバイト、出版社の営業事務職などを経て、渡米後、小説家に。「書けるものならなんでも書く」をモットーにして書いている。手紙が大好き。恋愛小説、歴史小説、エッセイ集、児童書など多数。好きな動物はライオンとパンダ。
望月衿子(もちづき・えりこ)
1978年生まれ。東京の西のほう在住。出版社で雑誌編集を経て、独立。女性誌を中心に編集に携わった後、男女問わず生き方や働き方をテーマに取材執筆する。ライフエッセイや実用書のブックライティング実績多数。日頃のノンフィクション系執筆は「望月衿子」とは別名で活動中。好きな動物は猫と熱帯魚。
パートナーの成長をすぐ隣で──結婚には、映画や小説では得られない感動があった
最初のテーマは「結婚」。Web連載中に読者から宛てられた質問をきっかけにトークがスタートします。
──(質問)どうしたら結婚しないという選択に自信を持って生きていけますか?
小手鞠るいさん
小手鞠るいさん(以下、小手鞠)「私は結婚していますが、自分個人としては結婚してよかったと思っています。
夫と知り合った時、私は28歳で夫が22歳でした。それから今に至るまで、22歳の人間一人の成長をすぐ隣で見られるというのは、この上なく面白いことです。
もし、これから結婚しようかどうか迷っている人は、そういう視点で結婚を捉えると面白いかもしれません。どんなに素晴らしい映画や小説でも得られない感動を得られます。
でも、私の場合は寂しがり屋な性格もあって、今の夫と結婚しましたが、そのパートナーが猫だっていいわけだし、もちろん一人で暮らすことも、同じように素晴らしいと思うのです。
みんなの話を聞いていると、早い段階で結論を急いでいるような感覚を受けます。『30代になったから結婚しなければいけない』といった風に。
でも本当は、それぞれ自分の好きな年齢で結婚すればいいし、相手がいないのに結婚のことを考えてもしょうがないでしょう? どうしても結婚がしてみたい、ということでなければ、結婚したいと思えるほど素敵な人がいた時に初めて意識すればよいものではないでしょうか」
小手鞠さん「人生は50歳がスタートライン」
ここから、結婚の前提となる、「人生」の捉え方に話が移ります。
望月衿子さん
望月衿子さん(以下、望月)「小手鞠さんはよく『私の身近には、結婚しているかどうかにかかわらず、輝いている人がたくさんいる』と話してくれますよね。
私も仕事柄、いろいろなライフスタイル、年代の方々のお話を聞く機会に恵まれていますが、本当にその通りだと思うんです。やっぱりいろいろな先輩に会ってみるというのは大切なことなのかもしれません。
小手鞠さんのお話を聞くと、いつも歳をとるのが楽しみになります」
小手鞠「私自身も、歳をとるのは怖かったですよ。私たちが生きてきた時代は『30代で人生終わり』みたいな、社会的な圧力が今よりもずっと厳しい環境でしたから。24、5歳で結婚して子どもを産んでいなければ、不幸な女とレッテルを貼られてしまう時代でした。
そういう意味で、今は、本当に女性にとって生きやすい社会になったなと感じます」
ここで、小手鞠さんは、「参加者にどうしても伝えたかった」というメッセージを送ります。
小手鞠「私は『人生は50歳から』と思っているんです。これは私自身の実感を基にしています。
50歳までは、ある意味で修行期。50歳になって、それまでの積み重ねが現れてきます。私が今63歳ですが、50歳くらいから、それまでの経験が緩やかに花ひらくような流れが来ているんですよ。
今日会場に来ている人の多くは30代~40代だと聞きました。皆さんはまだ始まってもいないんです。50歳というスタートラインを迎えるまでの準備期間と捉えたらいいんじゃないかなと思っています。
せっかくこんな時代に生きられているんですから、自分の目標をもっと先に置いて、50代や60代で自分のなりたい自分になれたらいいんじゃないかしら。20代や30代のたった一つの選択で人生が決まってしまうわけではないんですから。もっと長い目で見られたら今も充実するはずです」
離婚すらも“軽やかに”──「こうしなきゃ」なんてない
ここで、会場に来ていた参加者から質問が寄せられます。
──(質問)私は30代の独身です。結婚は、良くも悪くもイメージしにくいんですけど、友達からは「面白い」とか「楽しい」と聞くので、ぜひしたいと思うのですが、なかなか難しい。チャレンジし続けた方が良いでしょうか?
望月「最近は『マッチングアプリ』が流行っていますよね。つい先日、マッチングアプリで結婚したアメリカ人のカップルに取材をする機会がありました。
どうやら、出会う前から価値観や趣味を知ることができるので、アメリカではとても浸透しているらしいんです。
そのお二人はビジネスパートナーとしても密な関係を築いていて、結局3年ほどで離婚しましたが、その後もすごく仲良しなんです。彼女に離婚したワケを聞くと『これから先、同じようにたくさん出会いがあることを体感できたから、何度でもチャンスがある』と言うんです。彼女は、経済的に自立もしていましたから、ある意味“軽やかに”離婚を決断しているように思いました。
私たちはみんな「こうしなきゃ」という価値観がいつの間にかに自分の中に刷り込まれています。でも、周りを見渡してみればもっといろんな選択肢があるんだって考えてもいいのかなって思うんです。その上で私なりに質問にお答えすると、求めるならチャレンジし続けるのがいいと思います」
小手鞠「私も自分からアプローチしました。今の夫とは、出会ってからすぐにくっついちゃったんですよ。直感というかね。そういう出会いもあるので、じっくり付き合ってその人のことを知らなきゃ結婚できない、みたいなことではないみたいです」
結婚をすること、しないこと──。ここに、正解を見つけることは難しいでしょう。だからこそ、その選択の後ろ側に社会的な圧力がないか、いつの間にか狭い視野で選択肢を捉えていないかを確認することや、人生というより大きな枠組みの中の一つの選択肢として考えることが大切になります。
自由なものの見方が、より良い選択をするきっかけになるようです。
Books
- 紙の本
働く女性に贈る27通の手紙
Profile
小手鞠るい Rui Kodemari
1956年生まれ。アメリカの東のほう在住。出版社の編集職、学習塾の講師、書店でのアルバイト、出版社の営業事務職などを経て、渡米後、小説家に。「書けるものならなんでも書く」をモットーにして書いている。手紙が大好き。恋愛小説、歴史小説、エッセイ集、児童書など多数。好きな動物はライオンとパンダ。
望月衿子 Eriko Mochizuki
1978年生まれ。東京の西のほう在住。出版社で雑誌編集を経て、独立。女性誌を中心に編集に携わった後、男女問わず生き方や働き方をテーマに取材執筆する。ライフエッセイや実用書のブックライティング実績多数。日頃のノンフィクション系執筆は「望月衿子」とは別名で活動中。好きな動物は猫と熱帯魚。