ブックキュレーター哲学読書室
心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
心が病み、また癒えるそのプロセスは、いま医学的見方を超えて、人の暮らしや生き様に深く関わるものとして見直されつつあります。20世紀のフランス哲学も、この関わりを問うことで思想を発展させました。「心」をより豊かに再考する手がかりがきっとそこに見つかります。【選者:上尾真道(うえお・まさみち:1979-:滋賀県立大学非常勤講師)】
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ラカン真理のパトス 一九六〇年代フランス思想と精神分析
上尾 真道(著)
フランスを代表する精神分析家ジャック・ラカン。彼にとって「精神分析」とは、科学的医学が進歩し、社会適応の勢いが強まる時代にあって、その「外」に「精神分析家」という新たな人間を見出そうとする冒険でした。そんな彼の思想から浮かび上がる「心」の機微を、ぜひ本書で確かめてください。
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精神医学と制度精神療法
ジャン・ウリ(著) , 三脇 康生(監訳) , 廣瀬 浩司(訳) , 原 和之(訳)
心の治療という繊細さとたくましさが要求されるこの領域では、ラボルドクリニック(田舎の古城を改造した実験的精神科施設)の院長だったジャン・ウリの思想が、私たちを鍛えてくれます。ラカンの精神分析をはじめ様々な哲学を自家薬籠中のものとした知性による、具体的な実践哲学の記録です。
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後期フーコー 権力から主体へ
廣瀬 浩司(著)
狂気や精神医学について思索を重ねたフーコー。なかでも73年の『精神医学の権力』講義は、精神医療場面の医師-患者の対話的関係の分析から、「出来事としての真理」の問題を抽出する重要な転回点でした。本書はこの講義の分析から出発し、その問題に貫かれた後期フーコーの哲学を明らかにしています。
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泣く子も黙る『アンチ・オイディプス』!二〇世紀最大の哲学的スキャンダルとも呼べる本書は、精神医療の新たなプログラムでもありました(「唯物論的精神医学」)。精神分析のエディプス主義を超えて、哲学者ドゥルーズと分析家ガタリの二人が開いた「心」の新たな展望は、まだまだその意義を汲み尽くされてはいません。
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新たなる傷つきし者 フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える
カトリーヌ・マラブー(著) , 平野 徹(訳)
最後に現代の議論を。神経科学の大きな発展に加え、いたるところにショックが拡がった世界のあり方が、「心」という前提をすっかり変えてしまっているとしたら?新たに開始すべき臨床倫理を、フロイト‐ラカンを乗り越えつつ呈示するマラブーの議論は、今もっとも真剣でスリリングな問題提起のひとつです。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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