ブックキュレーター哲学読書室
ラディカル無神論をめぐる思想的布置
「神の記憶を持つラディカルな無神論」という言葉を基本線にデリダを読解したヘグルンドの『ラディカル無神論』の翻訳が出版されました。それにあたり、同書といくつかの本を紹介することで、「ラディカル無神論」を巡る布置の概形を描くことを試みました。【選者:吉松覚(よしまつ・さとる:1987-:パリ西大学博士課程)】
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ラディカル無神論 デリダと生の時間
マーティン・ヘグルンド(著) , 吉松 覚(訳) , 島田 貴史(訳) , 松田 智裕(訳)
スウェーデンの若き俊英がものした、卓抜なデリダ論。デリダの「政治・倫理・宗教的転回」に対して、神をも脱構築可能なものだとする「ラディカル無神論の論理」を軸に、「転回」説に反駁していく。ヘグルンドの論ではこの「ラディカル無神論の論理」こそが初期から一貫する論理構造であることが示されていく。
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デリダとの対話 脱構築入門
ジャック・デリダ(述) , ジョン・D.カプート(編) , 高橋 透(ほか訳)
ヘグルンドが『ラディカル無神論』において批判的に参照する、「神学的デリダ」読解の代表格・カプートによるデリダ論。巻頭にはデリダを交えての脱構築を巡ったパネルディスカッションを付している。『ラディカル無神論』との併読で立場の違いを見ると、双方の位置づけもさらにわかりやすくなるだろう。
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脱構築とプラグマティズム 来たるべき民主主義 新装版
C.ムフ(編) , J.デリダ(著) , R.ローティ(著) , S.クリッチリー(著) , E.ラクラウ(著) , 青木 隆嘉(訳)
デリダとレヴィナスを結びつける代表的論者のクリッチリー、『ラディカル無神論』第5章でデリダと比較されるラクラウ、ラディカル・デモクラシーを標榜するムフ、大陸哲学から分析哲学まで幅広く論じるローティ、そしてデリダによる、国際哲学コレージュ主催のコロックの記録。それぞれの立場の違いも明瞭に比較できる。
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有限性の後で 偶然性の必然性についての試論
カンタン・メイヤスー(著) , 千葉 雅也(訳) , 大橋 完太郎(訳) , 星野 太(訳)
カント以来の広義の超越論哲学における「相関主義」に反駁して話題となった著作。メイヤスーとヘグルンドは一見して論点を共有しているように見えて、両者の思想は大きく異なる。相関主義批判への超越論哲学からの応答も含め、両者の差異については『ラディカル無神論』日本語版付録で詳細に論じられている。
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免疫の意味論
多田 富雄(著)
ヘグルンドが直接論じているわけではないが、『ラディカル無神論』の理解を深めてくれるに違いない一冊。世界を代表する免疫学者が、免疫学的自己/非自己の問題、そしてデリダ&ヘグルンドが重要な隠喩として用いる自己免疫性の問題を丁寧な語り口で論じてくれる。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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