ブックキュレーター哲学読書室
「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
実在論の復興として特徴づけられる現在の哲学の状況について、ここ数年の翻訳・紹介ラッシュによってようやく日本語でもその概要を把握することができるようになりました。『四方対象』の翻訳を機に、主に大陸的伝統から主要著作を紹介します。【選者:岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-:慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程/非常勤助教)】
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四方対象 オブジェクト指向存在論入門
グレアム・ハーマン(著) , 岡嶋 隆佑(監訳) , 山下 智弘(訳) , 鈴木 優花(訳) , 石井 雅巳(訳)
思弁的実在論(SR)の旗揚げ役の一人であるハーマンのオブジェクト指向存在論(OOO)の主張を完結にまとめた一冊。著者独自の観点からではあるが、フッサールやハイデガーの哲学、機会原因論、汎心論、ジジェクやSRの各論者の思想など、幅広いトピックを扱っており、現在の様々な立場を俯瞰するための最初の一冊として有用。
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実在への殺到
清水 高志(著)
SRやOOOにとどまらず、プラグマティズム、人類学の存在論的転回、セールや西田の哲学等、様々な議論を動員しつつも、それらを単に整理・総合するのでなく、「一」と「多」をめぐる著者自身の新たな思考が展開される。今世紀初頭の哲学的実在論の復興の一つの到達点として読まれるべき著作。
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実在論を立て直す
ヒューバート・ドレイファス(著) , チャールズ・テイラー(著) , 村田 純一(監訳) , 染谷 昌義(訳) , 植村 玄輝(訳) , 宮原 克典(訳)
大陸・分析双方の伝統に通じた英語圏の哲学界の重鎮二人が、デカルト以来の認識論的枠組みを批判しつつ、メルロ=ポンティ、ハイデガー、ウィトゲンシュタインらの哲学を元に、新たに実在論を提起する。哲学史の伝統を軽視しがちなSRやOOOからはあまりに早計に棄却されてしまう現象学に端を発する実在論的な展開が把握できる。
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神話・狂気・哄笑 ドイツ観念論における主体性
マルクス・ガブリエル(著) , スラヴォイ・ジジェク(著) , 大河内 泰樹(監訳) , 斎藤 幸平(監訳) , 飯泉 佑介(訳) , 池松 辰男(訳) , 岡崎 龍(訳) , 岡崎 佑香(訳)
後期シェリング哲学を軸に、分析哲学からフランス現代思想に至るまで、幅広い守備範囲をもつ気鋭マルクス・ガブリエル初の邦訳書。主体抜きの存在論と存在論に対する認識論の優位性という哲学の二つの傾向を共に批判しつつ、ドイツ観念論の観点から提起される「新実在論」の主張を伺い知ることができる。
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有限性の後で 偶然性の必然性についての試論
カンタン・メイヤスー(著) , 千葉 雅也(訳) , 大橋 完太郎(訳) , 星野 太(訳)
前世紀までの多くの哲学を相関主義というラフな形で総括してみせることで、英語圏の若手大陸哲学者を中心に様々な議論を呼び起こし、SRブームの火付け役となった著作。現在では、哲学史家や分析系の論者にも言及され始めており、問題設定を引き受けるにせよ批判するにせよ、実在論を語る上で必読の一冊。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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