ブックキュレーター精神科医・大学教員 松本卓也
臨床から〈つながり〉を考えるためのブックガイド
かつてフロイトは、「神経症は人を非社交的にする」と言いました。実際、臨床の場面のなかでも、病気で状態が悪いときには他者との〈つながり〉は失われがちであり、病気の回復につれて〈つながり〉も回復していくという経過がしばしばみられます。そのような、臨床と〈つながり〉の切っても切れない関係を深く理解するための書籍を紹介します。
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人と人がつながる、という話は素朴なものと考えられがちです。しかし、中井久夫の手にかかるとたちまちその複雑性が取り出されていきます。イトコやおじおばという斜めの関係が父子・母子関係の否定面を和らげるという指摘や、サザエさんやドラえもんの家庭に対する考察など、目からウロコが落ちること請け合いです。
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日本を代表するカウンセラー、信田さよ子が依存症臨床との出会いから現在までの軌跡をつづった連載をまとめた著作。アルコール依存症、薬物依存症などに対するグループカウンセリングは、個人対個人でおこなわれる個別の心理療法とは違う変化を可能にします。集団がもつ不思議な力を考えるためのヒントがここにあります。
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もっとも、つながりには肯定的な側面があるだけではありません。SNSなどのつながりが氾濫する現代において、私たちの精神はどのように変化しつつあるのでしょうか?そのような臨床と社会・政治の交点に、「ポスト精神分析的人間」という言葉をキーワードに現代ラカン派の視点から光を当てています。
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現代における〈つながり〉の問題を考えるためには、どうやら臨床だけでなく、社会・政治をはじめとする他分野の知を協働させる必要がありそうです。本書は、哲学・政治・精神分析という三つの異なる分野の研究者たちが行った〈つながり〉についての共同研究の成果です。
ブックキュレーター
精神科医・大学教員 松本卓也1983年高知県生まれ。高知大学医学部卒業、自治医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。専門は精神病理学。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。著書に『人はみな妄想する──ジャック・ラカンと鑑別診断の思想』(青土社、2015年)、『享楽社会論──現代ラカン派の展開』(人文書院、2018年)など。訳書にヤニス・スタヴラカキス『ラカニアン・レフト──ラカン派精神分析と政治理論』(共訳、岩波書店、2017年)がある。
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