ブックキュレーター哲学読書室
大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
「言うまでもなく人生全体は崩壊の過程である」(F. S. Fitzgerald)。これは文字どおりに捉えるべき言葉です。始まりもなく終わりもなく、希望もなく絶望もないと言う「ない」づくしの生の哲学ではなく、始まりも、終わりも、絶望も、望みも「ある」、人生の哲学のための五冊を選びました。【選者:小倉拓也(おぐら・たくや:1985-:大阪大学特任助教)】
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出生外傷
オットー・ランク(著) , 細澤 仁(共訳) , 安立 奈歩(共訳) , 大塚 紳一郎(共訳)
フロイトの破門された弟子であるランクは、抑圧の起源を去勢の脅威にではなく出生に求めました。突飛にも思えるランクの理論は、後のクラインやラカンの成果となる豊かな概念群を踏まえて捉え返すことで、「生まれてきたことをどうするか」という問いに私たちが立ち向かうとき、大きなヒントを与えてくれるかもしれません。
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熱のない人間 治癒せざるものの治療のために
クレール・マラン(著) , 鈴木 智之(訳)
カンギレムは「健康」を、既存の正常性を乗り越えて新たな規範を打ち立てる可能性と定義しました。しかし、健康をどれだけリベラルに定義しようとも、病む身体は、規範化の可能性それ自体を掘り崩し、決して治癒などしません。本書は、そのような「治癒せざるもの」の(不)可能な「治療」という困難な問いを突きつけます。
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痴呆老人からみた世界 老年期痴呆の精神病理
小沢 勲(著)
痴呆とは、一方では、思考や観念の受動的な解体ですが、他方では、当の解体した思考や観念によって世界を構築し、生きていく、行為でもあります。このことを本書は、綺麗事では済まない痴呆の苦しみを透徹した眼で捉えながら、しかしその苦しみとともにあるいくばくかの望みを手放すことなく、教えてくれます。
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カオスに抗する闘い ドゥルーズ・精神分析・現象学
小倉 拓也(著)
出来事、出会い、生成変化の肯定の陰には、底知れぬ否定性を抱えたドゥルーズがいました。本書では、生まれ、病み、老い、死んでいく、言うまでもない崩壊の過程としての人生のなかで、耐え難い苦痛や不安に震撼しながら思考を紡いだドゥルーズに向き合いながら、その絶望と望みとを描き出すことを試みました。
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シネマ 2 時間イメージ
ジル・ドゥルーズ(著) , 宇野 邦一(訳) , 石原 陽一郎(訳) , 江澤 健一郎(訳) , 大原 理志(訳) , 岡村 民夫(訳)
感覚運動図式の崩壊を言祝ぐかのようなドゥルーズは、しかし、身体が不随意の消尽したものとなることを恐れました。聖骸布に抱かれた種子がいつか発芽するのを信じるように、身体が与えられるのを信じることを要請するとき、ドゥルーズは死を超えるものを、文字どおりの「奇跡」と「復活」を信じていたのかもしれません。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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