ブックキュレーター哲学読書室
現代フランス哲学のなかに息づくドイツ哲学
20世紀以降のフランス哲学の成立において、いわゆる3H(ヘーゲル、フッサール、ハイデガー)をはじめとする近現代ドイツ哲学の輸入が決定的な役割を果たしたことはよく知られています。そこで、その輸入過程を教えてくれる重要な本をご紹介します。【選者:峰尾公也(みねお・きみなり:1986-:早稲田大学非常勤講師)】
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コジェーヴ、イポリットの両輪に導かれ、フランスの地で「死」と「欲望」の哲学者という一面をのぞかせたヘーゲルは、サルトル、ラカン、バタイユをはじめ、多くのフランスの哲学者たちの思想的基盤をなしてきました。本書はバトラーの博士論文ですが、フランスでの特異なヘーゲル受容の流れを知るのにも適しています。
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「他者」の思想で知られるレヴィナスの哲学は、その血肉をユダヤ思想から、その骨格をフッサール現象学とハイデガー存在論から得ています。『フッサール現象学の直観理論』や本書を読むと、フライブルクから持ち帰った成果をもとに彼の哲学の骨格ができあがっていくその過程に立ち会うことができるでしょう。
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『存在と時間』刊行直後からすでにハイデガーの名はフランスで轟いていましたが、同書の内容はほとんど知られておらず、まともな翻訳もありませんでした。そうした状況のなか、フランス語で読めるほとんど唯一のガイドブックとして長らく機能してきたのがこの本です。フランスでのハイデガー受容に関心のある方はぜひ。
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アラン研究の第一人者によるカント哲学の入門書。原著初版は1947年刊行なので、フランスでかなり長く読まれてきた本と言えるでしょう。フランスではカントについて学校でどのくらいのことを標準知識として教えられるのかを知るのに役立ちます。これのおかげでカント嫌いがだいぶ緩和されたので、苦手な人に薦めたい一冊。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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