ブックキュレーター哲学読書室
ベンヤミンの問いを受け継ぐために
ベンヤミンが危機と向き合いながら繰り広げた批評的な思考は、言語、芸術、歴史をその可能性へ向けて根底から問うものです。翻訳とともに語り出される言葉を、技術と結びついた芸術を、想起から紡がれる歴史を、彼の問いを受け継ぎながら考える手がかりとなる五冊をご紹介します。【選者:柿木伸之(かきぎ・のぶゆき:1970–:西南学院大学教授)】
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まず、ベンヤミン自身が書いたテクストを読んで、あるいは以下にご紹介する論考を読んだ後でそこへ立ち返って、彼の問いを掘り下げることが肝要でしょう。幸いなことに、言語哲学、美学、歴史哲学に触れたベンヤミンの主要な著作の日本語訳を、一冊の文庫本で読むことができます。懇切な訳注は、読解の助けになります。
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ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む 言葉と語りえぬもの
細見 和之(著)
ベンヤミンが残した最も濃密なテクストの一つを丹念に解きほぐし、言語が中動態にある媒体であり、何かを語るとはその名を呼ぶことであるという彼の洞察を生き生きと伝える一冊です。翻訳を証言と結びつけながら、詩的言語の可能性を見通すあたりには、ベンヤミンの思考の潜在力を汲み出す一つの方向性が示されています。
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〈救済〉のメーディウム ベンヤミン、アドルノ、クルーゲ
竹峰 義和(著)
知覚を解放する媒体を映画に見るベンヤミンの美学が、アドルノの美学と対話し続けたことを考えさせる一冊です。両者の「死後の生」を、クルーゲの映像作品に見る議論も刺激的です。本書によるとこの三者は、近代の過程で抑圧された可能性が救い出される場が、技術的に構成された作品のうちに開かれることを洞察しています。
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堕ちゆく者たちの反転 ベンヤミンの「非人間」によせて
道籏 泰三(著)
ベンヤミンはクラウス論のなかで、この作家の破壊的な引用の技に「非人間」の像を見ています。人間的なものの崩壊の果てに浮上する復活の寓意としての「非人間」。そこへ向かう思考が『ドイツ悲劇の根源』から貫かれていることを示す本書は、「人間」が問いただされている時代にベンヤミンを読む意味を考えさせてくれます。
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断絶からの歴史 ベンヤミンの歴史哲学
柿木 伸之(著)
革命と救済を追求するベンヤミンの歴史哲学が、近代の歴史の犠牲になった者の伝統の断絶を省みながら、非連続的に構成される歴史の可能性を探っていたことを、ハイデガーなどとの対照のなかに浮き彫りにしようとする一冊です。ベンヤミンの歴史への問いを、「残余からの歴史」へ向けて受け継ごうとする議論も含まれます。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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