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ストリート・コーナー・ソサエティ みんなのレビュー
- W.F.ホワイト (著), 奥田 道大 (訳), 有里 典三 (訳)
- 税込価格:4,180円(38pt)
- 出版社:有斐閣
- 発行年月:2000.4
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コーナー・ボーイズの青春物語
2001/03/01 18:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけのこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた社会学の古典(原著1943年刊)であり、社会調査における参与観察法のお手本とされる書物だ。もっともいまや、あまりにも教科書中の古典として名声が確立してしまい、新しい訳書が出たところで逆に敬遠されはしないかという不安もある。
だが、じつのところこの本は、コーナー・ボーイズとカレッジ・ボーイズ(下記参照)がボウリング大会で対決したり、ヴィーナス・クラブのお高くとまった女の子たちとデートしたり、はたまた、やくざと政治家が牛耳るおとなの世界で挫折も経験したりと、まことに《ポップでカジュアルな》アメリカン・グラフィティなのだ。社会学のお勉強というより、まずはなつかしい青春小説をひもとくように読んでほしい。
ストーリーはつぎのようなものである。坊ちゃん育ちで世間知らずのハーバード大学特別研究員、ビル・ホワイトが、スラム街の研究のため、イースタンシティ(=ボストン)の一角を占めるイタリア系移民の街コーナーヴィルを訪れる。ここで彼は、街かどにたむろする若者たちのリーダーであったドックという男に出会う。
この街には大学に進学する青年(カレッジ・ボーイズ)と、地元で就職する青年(コーナー・ボーイズ)の二種類の若者がいて、おたがいに派閥を作って反目しあっていた。コーナー・ボーイズをひきいるドックは、カレッジ・ボーイズにも顔がきき、二つのグループを橋渡ししようとボウリング大会を企画する。カレッジ・ボーイズを大差でうち負かしたこの試合をきっかけに、コーナー・ボーイズのあいだでひとしきりボウリングが流行する。
やがてコーナー・ボーイズは、上流社会にも出入りしているヴィーナス・クラブの女の子たちをボウリングに誘って遊ぶようになった。なかには自動車でデートに連れ出す連中もいた。ところが、もてる奴もいればもてない奴もいて、こうした男女交際の深まりは、コーナー・ボーイズに深刻な亀裂をもたらすことにもなってしまう。もっともそれも青春の1ページで、彼らはみんな、幼いころから慣れ親しんだ仲間たちと若さを謳歌していた。
しかし、そんな日々にもやがて終わりがくる。30歳になったドックは仲間にすすめられて州議会議員の選挙に立候補しようとする。その気にさせられたドックもはじめは地区をまわって子分を増やしていったが、そのうち失業中の身の上では選挙運動にも限りがあることを思い知らされる。仲間たちはドックから離れていった。おとなになるということは、そういう挫折を味わうということでもあるのだ……。
『ストリート・コーナー・ソサイエティ』とは、このようなドックとコーナー・ボーイズの青春物語であると同時に、たぐいまれな分析の冴えを示す社会学でもある。個人の出世を追求してやがてはコーナーヴィルを出ていくカレッジ・ボーイズと、仲間たちとの義理と人情の関係をだいじにするコーナー・ボーイズとの対比を出発点に、ビル・ホワイトの考察はアメリカ社会における共和党と民主党の支持基盤の違いにまでおよぶ。街かどから国政レベルまで、アメリカ社会の構造が透けて見えてくる社会学的スペクタクルは、ぜひとも本書を最後まで読みとおすことで実感してもらいたい。
なお、初版の刊行から50年——1981年の第3版と、93年の第4版で追加された文章も、過ぎた日々をふりかえる老教授といった風情で味わい深い。コーナーヴィルの街はどう変わったか。ドックはあれからどうなったか。そういうところも、まるで映画のエピローグのようである。
【たけのこ雑記帖】
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