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煙突掃除の少年の運命
2002/10/16 20:28
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投稿者:Yan - この投稿者のレビュー一覧を見る
19世紀のスイスでは、山岳地帯の貧しい農家からイタリアへ、煙突掃除夫として
子どもが働きに行かされました。
そこで行われた、激しい労働と差別。
病気になっても医師に見てもらうことなく死んでいく子どももありました。
「黒い兄弟」とは煙突掃除の子ども達のグループのこと。
ふるさとのスイスに帰れる日を夢見て互いに励ましあい、助け合うのですが、
町の不良グループとけんかしたり、死んだアルフレドの葬儀を自分達の手で行います。
親方の仕打ちにがまんできず、逃亡を企てる時、不良たちは同行して、手助けもします。
かつて、このような悲惨な労働が日本だけではなく、外国でも行われていたことを知って、人の歴史は弱者の犠牲の歴史だということを改めて感じました。
ジョルジョの長い旅
それは、煙突掃除夫だった彼が、悲しいこと、苦しいことを乗り越えて、
大人になり幸せになって故郷に帰るという文字通り長いお話です。
Yanのホームページ
復刊の待たれていた名作。1995年にTV放映されたアニメ「ロミオの青い空」原作。150年前に煙突掃除夫として売られた少年たちの友情。
2002/11/27 21:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
TVアニメの世界名作に選ばれる児童文学というと、出版後まずは100年以上経っている本という印象がある。だが、作者紹介によればドイツ生まれのリザ・テツナーは、1933年ナチスの政権掌握とともに、その自由弾圧的な思想に抵抗してスイスに亡命。第二次世界大戦中である1941年に、本書を出版したとある。まだ、できて100年に満たない新しいお話であるのに、堂々の古典然としていることに驚かされる。
それと同時に、スイス国立図書館の古い記録から見つけた報告をもとに、自分が生きる時代から100年以上昔に売り買いされた少年たちの物語を書こうとした作家の意識に、なるほどと納得させられる。
貧困であれ、戦争であれ、先天的な感染症であれ、受験地獄であれ、大人の都合に振り回されて「遊び」を奪われる子どもは、いつの時代にも存在する。理不尽に「自由」、つまり「責任を伴う選択をしながら生きる権利」を剥奪される人間の存在というのは、悲しいかな、歴史上普遍的なものであるのだ。
スイスのティチーノという山奥の地方に住む貧しい農夫たちは、自分の子どもをミラノの煙突掃除夫に売っていたことがあるというのが、報告書の内容であったと作者はまえがきに記している。ぼろをまとい、厳寒の冬の日にも靴がないまま往路を歩いて、「煙突掃除! 煙突掃除!」と叫ぶ。灰塵まみれで煙突をよじ登るタフな仕事だ。
買われてきた子どもたちは、小船に積み込まれてマジョーレ湖を渡ったが、そんな1隻が転覆して16人の子どもが溺死したという事件が、その記録にあったらしい。
この実話が、『黒い兄弟』上巻の骨子をなしている。
では、なぜ、小さな子どもでなければいけなかったのか。抵抗がありつつ子どもを手放した親の事情としては、不作による貧困ゆえ、食い扶持減らしということが挙げられる。買う方の事情としては、狭い煙突をよじ登っていくのは、やせて身軽な少年がいいわけである。したがって、太ってはいけないということを、ろくな食事しか与えないことの言い訳にする。このあたりの需要と供給の事情は、物語を読み進めていくうちに明らかになっていくのだが、子どもでなければつとまらない職種というもの存在に愕然とさせられる。
少し外れるが、同じ出版社で出ている図書に『ちいさな労働者』がある。ルイス・ハインという米国の写真家が撮影した作品で構成されたものだが、これが「子どもの人権」確立に貢献した。炭鉱夫や紡績など、小さな手を欲した労働が他にもあったのである。
上巻では、生まれ故郷の村で、貧しいながらも心豊か、愛情豊かに暮らしている少年ジョルジョの生活がまず、描かれている。ふれあう動物の種類、自生する植物などを楽しく追いかけていくが、彼の一家を窮地に追い込むのもまた自然。家族を襲った不運を何とかするために、ジョルジョの父親は辛い選択を余儀なくされる。
疫病神のように現われた人買いによって、ジョルジョがミラノに連れて行かれる行程は上記の記録の通り。しかし、苦労をともにする友人ができることが、せめてもの救いだ。
多くの世界名作同様、一難去ってまた一難。その災難を何とかしのぎながら、懸命に生きようとする少年の姿に、思わず声援を送りたくなる。
男の子の友情
2004/09/26 13:22
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投稿者:まさみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の魅力はやっぱり、題名とストーリー設定だと思う。
1830年頃のスイスでは、貧しい農民たちが、8歳から15歳になる子供たちをミラノの煙突掃除夫に売っていた。子供たちを運ぶ船が途中で難破し、生き残った少年は、20人中4人だけ。その少年たちがミラノで再会し、他の煙突掃除見習いの子供たちと「黒い兄弟」という秘密結社を作り、仲間たちは秘密と友情を誓い合い、お互いを助け合って生きていくことを約束する。
かっこよすぎる! 主人公のジョルジョが黒い兄弟の仲間に入る儀式を行う場面が、この長い物語の中での一番の名場面だと思う。女の子の友情も捨てたもんじゃないけれど、男の子の友情もほんとにかっこよくてステキだ。素直に、そのことをうらやましく思った。
アニメ「ロミオの青い空」を見てたときから思っていたけれど、アルフレッドはやっぱり魅力的だ。意外と登場シーンは少ない。それなのにこんなにも読者の気持ちをひきつけて、好きにさせてしまうなんて、彼はなかなかの少年だと思う。
覚えておこうと思ったことは、実際に当時のスイスでは、貧しい農夫たちが子供たちをミラノの煙突掃除夫に売っていたことがあるということ、子供たちはボロボロで寒さに震え、食べ物もろくに与えられず、「煙突掃除!」と叫びながら一日中歩き回らなければならなかったこと、そして子供たちを運ぶ船の一隻が転覆し、16人の子供たちが溺死した事実があるということ。絶対に忘れないでおこう。ジョルジョやアルフレッドは、本当にいたのかもしれない。