正義と真実とは何か
2014/01/16 01:10
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投稿者:畑中イッセイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
安部医師は一審無罪、検察控訴の二審中に他界されました。この本は、安部医師の弁護団の執筆です。正しいことを、正しい手順にしたがって、着々と改善していった。
薬害エイズとは、安部医師たちの努力で加熱製剤が市中に出回った後も、非加熱製剤の認証を取り消さなかった厚生省と販売を継続した薬品会社によるもの。では、なぜ、厚生省は非加熱製剤の認証を取り消さなかったのか、本書では、そこまでは触れていません。
安部医師の活動と安部医師無罪の証拠を提示したこと、マスコミによる誤った報道の恐ろしさを伝えています。それは現在の魔女狩りではないのか。
エイズという悪魔がいて、悪魔の手先を魔女として処刑した。安部医師が魔女だと訴えた訴え人こそマスメディアです。彼らは訴え人の栄誉に浴する。弁護士の緻密な調査でそれが事実に反することを知っても、民衆が騒いでしまうともう訴え人は後には引けず、それまでの主張を繰り返した。
マスコミの善意とは何か。人間の理性とは何か。晩年、安部医師はマスコミと見るや暴力的になってしまったそうです。そしてそのまま他界した。
安部医師の名誉回復のための一冊です。そして、現代マスコミの欠点を突いている書籍となっています。
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非加熱製剤によって多くの人がエイズを発症した、いわゆる薬害エイズ訴訟において殺人罪で起訴された安部英被告の弁護士が、裁判の真相を語る。
非加熱製剤は血友病患者の生命とQOLを劇的に引き上げたこと。当時、国際的に非加熱製剤の危険性についてはっきりとした知見はなく、その段階で非加熱製剤を禁止することはとうていできなかったということ。安部医師の起訴は不当であり、いわばスケープゴートをつくるための国策捜査であったことなどが、わかりやすく説明されています。
安部医師を殺人者に仕立てることで、誰が得をしたのか。そこを慎重に見極めなければならないと感じる。彼を殺人者とののしり、名をあげた小林よしのりや櫻井よしこ? ただ「片付けてあった」だけのファイルを「隠蔽されていたものを発見した」と騒ぎ立ててヒーローとなった菅直人? その先棒をかついだNHK? もちろん、悪玉と善玉によるわかりやすい筋立てで満足し、安心したがった私たちにも、返す刀が返ってくるだろう。
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この本は、マスコミや某人物に
果敢に立ち向かっています。
この2つは被告の方を完膚なきまでに
心を打ち砕きました。
だけれどもこの方の
生き様を見たら…
そんなことをする人とは言えないことが
分かるはずです。
彼はきっと
未知の分野の犠牲者だったと思います。
今こそ対策があるけれども
その当時はそれさえもできなかった…
本当に不運だった、としか言えません。
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HIV/AIDSという病気がよく分からなかった時代の話。安部先生は、非加熱製剤をむしろ早く終了させるべきと考えていた様子。
おそらく晩年の認知症の経過もあって、より攻撃的に見えた部分をマスコミが取り上げた影響もあったんだろう。まさにスケープゴート。
この本は読みにくいです。僕には。弁護士先生の語り口が(おそらく職業的性格によって?)無駄に冗長であるようにおもうんだけど、どうでしょうかね。
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内容には賛同します。
ただ、あまりにも「弁護士が書いた文章」という感じで、論理的だが単調で、読み物としては読みにくいです。せっかく意義ある内容が一般書籍として出たのだから、もう少し読みやすくしても良かったのでは、とも思います。
文句が先に出てしまう人間ですみません。
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まだブクレポを書いていないが「731 石井四郎と細菌戦の闇を暴く」という本を読んだ。その最後のほうで、製薬会社で成功したかつての部下に石井が職を求めて相談にいく記述がある。その会社の名前はミドリ十字。かつて薬害エイズ事件で槍玉にあがった会社だ。石井部隊出身者が起こした会社だなんて、創業時からいわくつきじゃないか、と思っていろいろ検索していたら、この本がヒットした。
正直びっくりした。この本の記述を信用するなら完全な冤罪だ。血友病患者のために心血を注いできた安部医師に対しての名誉棄損も甚だしい。櫻井よしこの「エイズ 血友病患者の悲劇」という本も昔に読んだ。こちらの本では良心を金で売った鬼畜医師のような扱いだったと記憶する。
争点は当時の治療において、血友病患者に非加熱製剤を投与することによりエイズ感染への危険性を認識できていたかどうか、だ。
結論から言うと、できなかった。そもそもエイズがまだアメリカの同性愛者の中に広まった恐ろしい病気くらいの認識しかない人が大勢いた。日本国内ではいまだ感染者は報告されていない。エボラ出血熱の騒動を思いだせばわかるが、たとえ恐ろしい病気でも風土病くらいにしか捉えておらず、危機感を持っていない医師ばかりだった。
そんな中でも安部医師だけは危機感をつのらせていた。
有名な「毒かもしれないと思って投与している」という発言は、安部医師がエイズに感染することを予見していたにも関わらず、非加熱製剤の投与を製薬会社に便宜を図るため止めなかった証拠として報道された。検察やマスコミによって真意は捻じ曲げられた。
真実は、非加熱製剤の使用によりエイズに感染する可能性に対して、上記のような楽観論ばかりが大勢を占め、危機意識の欠如した医師たちに対しての怒りから発言だった。
つまりは、エイズについてほとんどわからない状況下で、患者に感染する恐れの有無も全くわからない中、ほっとけばそのうちわかるでしょう、という無責任な医師たちに対して、お前たちは非加熱製剤が毒かもしれないということがわかっているのか、という追求だった。
薬には効用と副作用がある。非加熱製剤の投与になってから血友病患者の方々の生活は劇的に変化し、自宅での投与も可能になった。一般の人とほぼ変わらぬ生活スタイルを手に入れることもできるようになった。(加熱製剤と非加熱製剤の違いによる治療法と患者負担の差異は雲泥の差があった)
その効用(薬の効用だけでなく負担の激減)と副作用(まだ国内患者は報告されず、原因も感染経路も不明な未知の病気に感染する可能性)を秤にかけたとき、それは効用の方が優先される。いまでこそエイズの研究が進んで全容がわかってきたが、当時はアメリカのウイルス研究の権威でさえ、なんだかわからなかったものを、専門外の安部医師がわかるわけがない。
患者にとってエイズの感染は悲劇だ。しかしその責任は法律的にも道義的にも安部医師にはない。おそらく本人も患者やその家族と同じく心を痛めたに違いない。
取材カ���ラを蹴飛ばした場面が繰り返し映像として流され、横暴とのイメージが強調されたが、当時の安部医師は痴呆症を発症し、感情の抑制がきかなくなっていたらしい。
事実に反し扇動報道ばかりするマスコミに対して、自分なら病気でなくてもカメラくらい蹴飛ばす。
残念なことは、大手マスコミはこぞって、櫻井よしこ側に立ったので、この本を出版したのは小さな出版社だ。推測だけれど大学などの教科書にでも採用されない限り5000部も世に出ていないだろう。
名誉回復がなされる可能性は低い。
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一審無罪を勝ち取ったものの、一審中に亡くなってしまった安倍医師の名誉回復本。マスコミと検察の思い込みにより如何にして無実の人が陥れられていくのかがよく分かる。いくら人間のやることで間違いはあるとはいえ、血友病患者のために尽力してきた医師を陥れてしまう様子は、怒りを超えて、悲しみを感じる。