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身体を蝕んでいく過酷さ。
しかし心は折れていない。
隙あらば蜂起する闘争心はある。
心を蝕んでいく社会。
無気力で体力だけが有り余る。
それでは己の本能や欲望を満足させることにしか働かない。
2008.08.15.読了
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新潮文庫の100冊キャンペーンで購入。前編『蟹工船』後編『党生活者』から成る。小林多喜二といえばプロレタリアート!プロレタリア文学に染まり労働運動に参加し官憲にしょっぴかれて殺されてしまった方です。
蟹工船では「社会の下積みになっている労働者大衆の非人間的な生活とその自然成長的な闘争」が描かれており、登場人物の個々人のキャラクターに迫る描写は少ないながらも労働者全員が徐々に全体として一貫した行動を起こしてゆくようになるのが特徴かも。(自然成長的な闘争─ストライキとかね)。その様子がま〜た不気味なんだ・地下で脈打つように、おのれの生命を守るために静かな抵抗を繰り広げる労働者たち。生への必死の執着が生々しい。
党生活者─(私は蟹工船よりこっちのが好き)─は作者の死の前年に書かれたもの。近代的な軍需工場の計画的な闘争運動を綿密に描いてる。あー、そうか、労働運動ってこんなふうにメンバー同士で連絡とりあって、ビラ配ったり警察から逃れたりしてたのね、とゆう内容のことをコト細かに書いていきます(これは作者自身の体験記みたいなものなんだけど)。蟹工船と異なるのは、一人称の主人公とそれをとりまく少人数のメンバーが物語の中心をなしているところかな。私はコッチのが深入りしてしまうねえ。それにしても当世の社会運動って個人的生活の負担が大きすぎてビックリですね。メンバー間の連絡とりもつだけでマル1日かかったり…と。今のご時勢なら「メール」とか「ケータイ」であらゆる問題も一発解消ですよね。
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現代社会との比較をしながら読むのが面白いというのには同感。そこで何を感じるかは本人の資質もだけど、本人の置かれている分野と関心を持っていることに大きく影響するような気がします。文学が政治や出世と大きく結びついて思想として存在していた頃ならではの香りがします。
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最近、昭和以前の古典的文学の復刻版が流行で、とりわけよく売れているといわれる本書です。
この作家のこういう本があるということは、中学だったか、高校だったかの教科書上での知識として知ってはおりましたが、実際に内容を目にするのは初めてです。
その時代、共産党のシンパでもないかぎり、こういう書を手にすること自体、かなり勇気が必要であっただろうし、確かに共産党の宣伝本と言われれば、その通りの内容でした。
最近の流行は、格差社会に通じるところがあって。。。という紹介記事をどこかで読んだ記憶もあったのですが、現在の生活水準に照らして読んでみると、格差社会の問題とは質の異なる問題で、共産党も、そういう苦しい時代があったことは気の毒に思ったけれど、今となっては、格差社会だからとて、こういう書を読んで、教化される面は皆無でしょう。
むしろ、日本赤軍なんかの方向に走った、その兆候のようなところがすでに見え出しているところ(党生活者)の印象の方が強かったですねぇ。
(2008/8/28)
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過酷な条件化で働かされていた人々が迷いつつも自分たちの主張を唱えるためたちあがっていく。
あまりに過酷な状況が書かれているので、こんな状況だったら乗組員たちが反発するため立ち上がることなど普通のことでありたやすく結束できるものであると思ったけれども「国のため」と諭されてきた人々が、我慢の心の美しさを信じていた人々が立ち上がることは決して簡単なことではなかったのだなということが伝わってきた。
人の生き方や道徳心を動かすことの難しさ、苦しさを感じた。
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親に進められて読んだ蟹工船、
プロレタリア文学と聞いただけで
難しそな印象を持ち読むか悩んだが、
読んで良かったと素直に思う。
現在の労働問題と似ているところもあり、
正直将来が不安になった。
私も大人になったら見えない敵に怯えながら
働かなくてはならないのだろうか、
蟹工船には乗りたくない。
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とりあえず、話題になっていたので・・・
最悪な労働条件・労働環境の中で、何人もの仲間が死に、麻袋に入れられて海に放り投げられる。
使い物にならなくなったら、「はい、おしまい」って確かに現代社会にも見られる光景なのかも?
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流行りに乗ってみました。が、これほんとに共感呼んでんのかな。有名な作品ではあるけど。プロレタリア文学ってつまり左翼文学のこと?ちょっと無理。
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小林多喜二はとにかく優れた作家だ。冒頭で根元まで吸われて跳ね落ちていくタバコがすべてを暗示している。労働者を酷使する浅川でさえも、実は単なる雇われ者で、いつでも職を失い得るということも、彼は書き落としていない。
でも、やっぱりプロレタリア文学で、どうしても共産主義の宣伝色が濃くて、もうこれ一冊でおなかいっぱいな気分だ。小林多喜二にプロレタリア色のない小説があるかどうかはただいま調査中。
私自身別に共産主義に共感しないが、命の危険を冒してでも自らの思想に基づき、全ての私生活を犠牲にして行動するっていうところは、ある意味すごいんだと思う。
彼はこんな小説を書かなければよかった。しかし書かなくてはいられなかった。そうしてでも言いたいことがあった。「党生活者」を書いた翌年の1933年、彼は運動中に警察に逮捕され、自らが「蟹工船」の中で描いたようなひどい暴行を受けて、帰らぬ人となった。
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表題作のみ読みました。
全編に渡るプロレタリアっぷりに腹一杯。しかし読後感は悪くないというか。
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荒木宏文主演のブックトレイラーを見たら、読みたくなった。歴史的名作。
ブックトレイラーで知ったことだがこの作品発表の4年後、小林多喜二は治安維持法違反の疑いにより逮捕され、拷問により死ぬ。
人間という動物の生々しさ、力強さと悲しさがひしひしと伝わった。
蟹工船という作品だけでなく小林多喜二という人物をふくめて、これが日本の歩んだ歴史であり現実だったということをわたしたちは知っておくべきなのだろう。
そして、果たしてやはり、歴史は繰り返すのか。
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海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。"国策"の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る「蟹工船」。近代的軍需工場の計画的な争議を、地下生活者としての体験を通して描いた「党生活者」。29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。今でいうワーキングプア。
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プロレタリアがどうこうとかそれ以前に
表現がリアルすぎて自分の足が壊死しそうだった。
あんまいいイメージがない。
党生活者の方が面白かったな。
彼らのリアルな生活・運動が見れて。
とりあえずリアルだってことだー
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ブームが去りつつある中で便乗して読みました。『党生活者』では、運動している姿の描写を想像し、太宰治と被せてみたりね。
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読んでいて、体が痛くなるような話だった。蟹工船ではひどい扱いのために身体精神とも壊れてゆく従業員。党生活では終わりのない不安と、刑務所、拷問と裏あわせの生活。政府に噛み付くにはそれなりの覚悟が必要なんだな。
どちらの話も、ストライキを起こそうとして失敗してしまう。そして、未来の成功を予言して話は終わる。まさに彼の活動そのものを物語にあてはめたよう。
特に記憶に残ったのは、
「やれやれ、じゃない。やろうやろう、だ。」とか、どうして特に熱心だった9人を目立たせてみんなでひとつにならなかったのだろう、みんなでひとつになれば捕まえようもなかったのに、と思うところ。