紙の本
示唆に富んでいる現実主義
2010/10/17 14:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
識見・達見である。日本の現状と問題点を的確に見通している。イタリアに在住し「ローマ人の物語」というローマ史、世界帝国史を書いていたからであろうか、冷徹とか透徹というほど客観的、冷静に国際政治における現在の日本の実情を捉えて、意見を述べている。高尚な理想は理想として尊重しても、いろいろな利害が絡み合い衝突する国際政治の現実にどう対処するのか。示唆に富んでいる現実主義である。
世界帝国史を学ぶということは、現代の社会や政治情況を的確に分析し、把握できるようになる方法でもあるようだ。個人の能力にもよるという制約があるにしても。世界帝国史には多民族、多文化、多宗教の人々をどのようにまとめていくかという手法が豊富に備わっているものなのであろう。中国史、ローマ史、オスマン帝国史を学ぶ必要性をあらためて認識する。
紙の本
選挙に行く前に
2010/07/08 08:35
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
月刊誌「文藝春秋」に連載されている人気時事エッセイである。本書にはそのうちの、2003年6月号から2006年9月号分までが収められている。
ちなみに2003年といえば、小泉純一郎総理の頃で、念のために書きとめておくと、与党といえば自由民主党の時代である。ここから7年の間に、日本のリーダーは現在の菅総理まで含めて5人も変わっている。
本書のなかで塩野七生はこんなことを書いている。「危機の時代は、指導者が頻繁に変わる。首をすげ代えれば、危機も打開できるかと、人々は夢見るのであろうか。だがこれは夢であって現実ではない」(「継続は力なり」)。
この文章が初出誌に掲載された内容から推測すると、2003年の9月前後の文章だと思われるが、当時小泉総理の人気は絶大なるものがあったように記憶している。それなのに、塩野がまるでその後の政治の世界を予言するような文章を書いていたことに驚く。
総理が変わるたびに、一時的に与党の支持率があがる。それは、もちろん、期待をこめた数字であるが、その後のおそまつな政治のなりゆきに支持率は下降をつづける。そして、また、総理を変えることで、支持率をあげる。
なんだかすべてが選挙のための人気投票としか思えない。
政治家は選挙に明け暮れ、本来の政治ができていない。政治のできばえの評価ではない。
先に引用した文章は予言めいて刺激的だが、それよりももっと重要なことがその前に書かれている。「誰が最高責任者になろうと、やらねばならないことはもはやはっきりしている」と、塩野はいう。
いまの日本がやらねばならないことは、大きな観点でいえば分散されることはないはずである。
それなのに、政治の争点がはっきりしないのはどういうことだろうか。
やらねばならないことの自分たちの立ち位置を明確にすることで、支持率が落ち、選挙に戦えなくなるからだろうか。これではまるで仕事もせずに給料をさげるなんてとんでもないといっているダメな労働者と同じである。
政治家だけが問題ではない。彼らを変えうる力をもっているのは、有権者である私たちのはずである。
より正しい判断を選択できるよう、本書を読んで政治とは何か、リーダーとは何かを考えてみるのもいいにちがいない。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
投稿元:
レビューを見る
・事故反省は絶対に一人でなされねばならない。決断を下すのも孤独だが、反省もまた孤独な行為なのである。
・拝啓 小泉純一郎様
・紀宮様の御結婚に思う
・情報に接する時間を少し節約して、その分を考えることにあてては
投稿元:
レビューを見る
ローマの歴史は政治を学ぶには恰好の教科書だ。
著者は、イタリアに住みながら、日本の政治状況を考えると、ローマ帝国の衰退期に似ている。
著者は政治の専門家ではないが、核心をついている部分が少なからずある。
投稿元:
レビューを見る
なぜ日本にはカエサルのようなリーダーが現れないのか
2000年に及ぶローマ帝国。
そして中世ルネサンス期の栄華と衰退を
知り尽くした著者だから語られる、
危機の時代を生きるためのヒント。
~本著より引用~
【目次】
第1章
危機の時代は、指導者が頻繁に変わる。
首をすげ代えれば、危機も打開できるかと、
人々は夢見るのであろうか。
だがこれは、夢であって現実ではない。
第2章
自己反省は、絶対に一人で成されねばならない。
決断を下すのも孤独だが、
反省もまた孤独な行為なのである。
第3章
歴史に親しむ日常の中で私が学んだ最大のことは、
いかなる民族も自らの資質に合わないことを
無理してやって成功できた例はない、という事であった。
透徹した歴史観から紡がれる、
国家・政治への提言。
政治に興味なくても読んでみることをお勧めします。
経済評論家や、コンサルタント出身の冷徹な分析・提言ではなく、
そうした論理性に加え、歴史の重みを感じさせるような言葉。
自分の生活に役に立たなくたっていいじゃないですか。
心に、言葉を染み込ませるだけでも十分価値あり。
投稿元:
レビューを見る
『文藝春秋』の連載をまとめた新書。
2003年~2006年に連載されていたものなので、今の時点で読むと違和感を感じたり「塩野先生の提言とは真逆に進んじゃったなぁ~」と思う箇所もありますが、スパイスの効いた文章で面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
何年か前に書かれた原稿だが、今の日本に通じるところが多い。著者は今の日本のこの状況をどう思っているのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
民主党が大敗。再び、ねじれ国会へ。
与党も野党もどうでもよい。
何一つ決められずにこの国が停滞することが最大のリスク。
「世界の中の日本はどうあるべきか」という視点で物事を考え行動できる政治家はいるのだろうか?
そんなことを思わせる本でした。
投稿元:
レビューを見る
読後には以下の要素を感じた。
・常に冷静であり、現状分析は自らに不都合なものであっても冷徹に行っている。
・目的の達成に直結する思考法を提案している。
・普遍的な思考法を発信している。
投稿元:
レビューを見る
独自の歴史観で、ローマの物語やヴェネチアの物語で読み応えのある作品を出している作者による、現代国際政治批評、と書くと非常に堅苦しく聞こえますが、実際はユーモアや批判精神あふれる、気軽に読める作品です。
日本や世界の現状は、かつてのイタリア(ローマ)を中心とした地中海世界の歴史を例に出してみると、同じような問題や流れを辿っているようだ。特に日本は、ローマ衰退・滅亡期の状況に似ているのだという。
この作品の連載は5年以上も前に行われたものですが、その時から、現在の日本の状況(政治・外交)は何も変わっていないんだなと痛感させられました。
歴史的な観点から見れば、日本は海洋貿易で確固たる地位を築いて生き抜いていったヴェネチアを見習うべきなのでしょう。しかし現状は、現実に目をそらし、当たり障りの無い、子供に語るような理想を信じて衰退への道を突き進んでいる。
歴史は繰り返す。今ならそれを回避し、さらなる繁栄の道もある。でも、それはかなり難しいのでしょう。作者のように、本当に歴史から謙虚に学ぼうとする人(特にリーダー層)が多ければ日本人は変わることができるのでしょうが、今は「明治維新」の偉人の業績や評価をなんとか自分にダブらせようと、虚栄心や自己顕示欲を肥大化させてばかりいる年寄りや中年ばかりなのですから、この国は・・・。
投稿元:
レビューを見る
現代日本と国際関係を、古代ローマや現代イタリアとの比較から考える塩野さん独特の切り口が面白かったです。
日本の資源は人材だけど、まったくと言っていいほど生かしきれていない。それどころか海外流失まで起こしている。
誰が日本のリーダーになるべきか、考えてみましたがやっぱりまだわかりません。
【2010.07.04】
投稿元:
レビューを見る
文藝春秋の連載。タイトルほどメッセージ色は強くなく、ローマが何故長年栄えられたのかという視点から、日本が国際政治の中でどのように行動すべきかを書いた本。
外国人から、日本はルールがとても強い国だと言われた経験が少なくない。法律が「人間に合わせて作られたルールで、不都合なルールは直せば良い」という考え方に対し、日本人はユダヤ教の律法などの「神がルールを作り、人間の都合で変えてはいけない」という考え方が強いという説明は、なるほどと思う
投稿元:
レビューを見る
本の内容はともかく、新書であれば雑誌の内容をそのまま流用していいというものではない。この本はここ10年ぐらいの雑誌連載を抜粋したものと思われるが、その時のそのままの記事を載せるはどうかと思う。少なくとも今の時代にあわせて、再編される壁ところではないだろうか。文春新書の儲け主義と捉えられる。
この本について話題を戻す。塩野七尾さんの意見は革新すぎないか?組織で戦う日本人に、強烈なリーダーシップは必要ない。今の時代にあわないかも会いれないが、日本にカエサルは必要ないと思う。
塩野七生さんの本は、ローマ人の物語の内容が引き合いに出されるが、私の勉強不足で知らないことも多かった。ローマ人の物語は読んだことあるし呼んでいるが、高引き合いがローマ人・・だけだとちょっとどうかなと思う。その分塩野さんの本は偏りがちであることを念頭に読む必要があるのであろう。
投稿元:
レビューを見る
■概要
古代ローマはじめ歴史に精通し、イタリア生活の長い著者が
主に日本の政治についてあれこれ語る本。
■活かせる点
自分の政治リテラシーの低さを感じました。
社会公民の教科書でも読み直そうかなと。
(さわ)
----------------------------------
■概要
作家さんではありますが、雑誌の企画でカルロス・ゴーン氏と対談してみたり、各界の社長が集まるパーティーで講演したりと、ビジネス界のリーダーにも少なからず影響を与えている塩野七生さんの本です。
本書のタイトルに「リーダー篇」とありますが、
どちらかというと政治的リーダーについてのお話。
ビジネスに展開しようとすると、頭の中で一捻りが必要な本ですね。
■活かせる点
人間への興味・関心や洞察力の大切さを教えてくれます。
例えば、小泉内閣の郵政民営化選挙も、見る人が見るとこう見えるんだなぁと、感心させられる本でした。
あと、塩野七生さんの本をまた読みたくなりました。
というより、「ローマ人の物語」のラスト3巻あたりから読んでいないので、
ちゃんと読みます。
(あし)
投稿元:
レビューを見る
現代のあらゆる事象をローマと結びつけて自論を語るのが新鮮。
ローマ帝国、そしてカエサルについて深く知りたくなってきた。
「ローマ人の物語」読んでみようかな。