紙の本
日本の小説の中に、こんなにカッコイイ女探偵がいたなんて!
2006/03/07 22:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
この探偵ときたら!クールでドライ、やることはしっかりやる、情け容赦なし、と、まぁ、実にカッコイイのである。心に秘めた熱いものを、大きな哀しさと虚無で覆い隠し、凄惨な事件にもしっかりと立ち向かう女探偵・笹野里子。イヤな予感がしながらも、何かにひかれるようにして、事件に選ばれてしまう里子なのだが、暗いばかりではないのも魅力。依頼人とのやりとりや会話は、潔く、客観的で、ユーモラスでさえある。そして、自ら言うのが「明朗会計のぼったくり探偵」。
お楽しみは他にもある。作者の別の小説「月夜の晩に火事がいて」のちょっと頼りない山浦歩探偵が、心許した同業者として登場したり、里子に惚れている遠藤警部との会話も愉快。起こる事件は、ひどく凄惨なのだが、こうした登場人物や会話が、里子の人物像に深みと魅力を与え、お話に惹きつけられるのだ。
強くて粋な女探偵だが、投げやりとも言える虚無感は、亡くなった夫が原因なのである。その夫の事故死をめぐっても、煩悶させられる。山浦歩もそうだが、突然、配偶者に先立たれた者の戸惑いと哀しみ、空しさを作者は、哀切なまでに描く。
夫の残した拳銃を、ここぞというときには、ぶっ放すハードボイルドさ。「どうしようもない男」と思いながらも、その夫の好きだったショパンのマズルカを口ずさむ…。こんないい女が主人公なんだもの、おもしろくないはずない!どんどん、続編を書いて、歳をとってますます魅力的になるだろう女探偵を描いて欲しいものだ。
電子書籍
女探偵のハードボイルドもの
2012/12/27 14:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:LEGEND - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ミミズクとオリーブ」が気に入って他の作品もと思って読んだのがこれだったので、ギャップにびっくり。夫を不慮の事故で亡くした主婦が、夫の仕事を引き継いで拳銃を隠しもって探偵業をする、最後は殺し屋と対決、という、何かちょっと昔のアメリカ映画とかでありそうだけど、日本じゃまずないでしょ、という感じの設定。でも根底の”人間の素”みたいなところは、「ミミズクとオリーブ」で持ち込まれる”事件”と同じテイストかも。
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夫の残していったものは、滞納した事務所の家賃とリボルバー、そして苦い思い出だけ。
夫のあとを継ぎ、私立探偵となった笹野里子の活躍を描く、ハードボイルド連作集。
さすがは直木賞作家。
こんなにカッコイイ、女性ハードボイルドは久々のヒットです。
いや、満塁ホームランかもww
気になったのはリボルバーの弾はいずこから??
位なものでw
続き!!としばらくジタバタしそうです。
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これぞ女性版ハードボイルド。たしかにカッコいいのだけれど、かなりハード。ええ、ここまでやっちゃうのっ!? と正直びっくりしました。しかしこんだけカッコいい女性が、なんでそんなしょうもない男と結婚しますかね(苦笑)。
お気に入りは「氷の炎」。やりきれない物語なのだけれど、この冒頭と結末には非常な美しさを感じました。
「月夜の晩に火事がいて」のあの人も登場してますね。必見。
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「雪のマズルカ」芦原すなお
ソフトボイルド。ライラック。
@電子書籍8冊目。
夫に先立たれた女探偵のドライで冷徹な事件簿。
芦原すなおさんはこういったものも書くんだーと思いつつ、
やっぱし物語の色がワンクッションあってソフトだなあという印象。
探偵小説としてはリアリティにかける短編集でしたが、
サクッと読めていいかんじでした。(3)
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解説にもあったのだけど、日本の小説で女性探偵が主人公でハードボイルドというのは珍しいと思う。
そういえば大薮春彦で読んだかも?ぐらい。「女豹シリーズ」は女殺し屋だったから、思い違いかもしれないし。
今まで読んできた芦原すなおとは一風変わった作風で、でもところどころ芦原風な表現もあって。
なんだかそれがこの作品を中途半端にしているような気もする。もっとぎりぎりまで削いだハードボイルドでもよかったんじゃないかと思う。
でもそうするとこの作品を葦原すなおが書く意味もなくなってしまうよなぁ。難しい。
主人公は魅力的だし、周りも芦原ワールドの住民で且つこの世界に違和感のない配置になっているのはよかった。
続編があれば読んでみたいかも。
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最高! 好みの1冊に久々のヒット。
女性私立探偵のハードボイルドもの。短編が4作。
解説の方によると、これまでの日本ミステリで「女性私立探偵ハードボイルド」というのはほとんどなかったそうだ。だからこの『雪のマズルカ』の登場には、思わず諸手をあげて「これよ!」と叫んだという。同感。
著者の芦原すなおさんの作品は、『ミミズクとオリーブ』や『嫁洗い池』などを読んできた。専業主婦が、持ち込まれた事件の話を聞いただけで謎を解いてしまう。あとは美味しい料理を食べる、という軽めの安楽椅子系ミステリだった。
ところが本書では、作風がガラッと変わる。夫の死をきっかけに、保母を辞め、私立探偵になった笹野里子。現在41歳。気に入らない依頼者にはお帰りいただく主義。ジムで格闘技を習い、部屋では4キロの鉄アレイで鍛えている。仕事にはリボルバーを携帯し、いざとなれば躊躇なくぬく。迷わない。そんな具合でストレートにカッコいい。テンポよく、スピード感ある展開。主人公の心の葛藤も適度に織り交ぜ、ほど良い固さに茹で上がっている。
続編はあるのか? ぜひ読みたい。
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久しぶりの芦原すなおだったけれど、完全に期待を裏切られた感じ。
ハードボイルドと銘打っていて、文章も意識した感じだが、そのためかえって筆者の良さを消し去ってしまっていると思った。更に、人物造型、特に主人公に無理があり過ぎる。
「青春デンデケデケデケ」から何年経っただろうか。あの、ユーモアとペーソスがあふれる雰囲気を期待するのだけれど。
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探偵小説だからミステリなのかもしれないけど、ミステリというよりハードボイルド。
かなり沸点が低い女性が主人公の話。
あんた、何をやって暮らしているの? と訊きたくなるのは探偵物全てに共通するのかもしれないが、全編を通してキャラクター性は悪くは無いと思うものの中途半端感が漂う。
多分、この話って女性向けっていうより男性向けに書かれているんだろうと思われる。それでいて、女性っぽい淡泊感が漂っていて今一突き放した視点で読んでしまう。
それでいながらも、のめりこまされる話の作り方の上手さがあって、理解できないまま最後まで読まされてしまう巧みさに驚かされてしまう。
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いやぁ、ハードボイルドだわ。主人公が直感に従って事件を解決してしまうのでミステリー要素はあまりありませんが、それを補って余りある主人の魅力が売りですね。
文章のテンポもいいので、さくさくと楽しく読める1冊でした。
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芦原すなおさんのミステリー小説はほんの少ししか読んでいない
そして、読んだ本が結構ほのぼの系のミステリー
なので、女性探偵のハードボイルドぶりに度肝を抜かれました
クールなんだよね、とっても
楽しみなシリーズです
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あらすじ(背表紙より)
夫が残したものは、滞納した事務所の家賃とリボルバー、そして苦い思い出だけ。夫の跡を継ぎ、私立探偵となった笹野里子の活躍を描く、直木賞作家・芦原すなお初のハードボイルド連作集。非行女子高生の行状に迫る表題作ほか、「氷の炎」「アウト・オブ・ノーウェア」「ショウダウン」を収録。最強(最驚!?)の女探偵がたどりつく衝撃の結末とは。
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つい最近、愛読していた『ピアノの森』が遂に最終回を迎えた。
日本人初のマズルカ賞。
ただそれが頭によぎったので読んだ。全然、全く、関係ないのだけど。
それでも、面白かった。
短編で1話読み切りみたいな感じで、テンポ良くて。
あっと言う間に読めた。(今、2冊目読んでるけど)
知り合い及び家族又は本人。
彼女の旦那のような最期は迎えたくないし。
知りたくない。
無理なこじつけよ。
ただの性癖が産んだ事故だと思うのだけど。
本当にあった○○な話の雑誌に投稿するくらいの最期だった。
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探偵、笹野里子が主人公の4編の短編集。
サラリと読めるし、
情景描写もイメージしやすいし、
笹野のキャラクターも
そのキャラクターが織りなす会話のやり取りも
テンポよくするする読めてよかった。
笹野が躊躇なく撃ち殺した時はびっくりしたが。
他にもシリーズが出ているみたいだから読んでみようと思った。
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女探偵が主人公の、究極のハードボイルド。
笹野里子は、女性を同乗させ自動車事故死した夫の後を継いで探偵となる。
実にタフでクール、おまけに超がつくほどのヘソ曲がり。依頼人から話を聞いても、少しでも気に食わないところがあれば、「お気に召さないのでしたら、どうぞよそへ」と断ってしまう。
依頼者の代理人が迎えにいくと言っても、「知らない人にはついていっちゃだめと、母から言われた」と返す。
そうした受け答えがいちいち小気味よい。
調査を引き受ければ、必ず落とし前をつける。
そのためには、引き金もためらわずに引く。
こんな女探偵を、ワタシはもう一人知っている。
若竹七海さんが描くところの、葉山晶だ。
この二人が大好きだ。