紙の本
初めて時代小説を読む人、読み始めてみようとしている人へ
2013/03/12 23:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:赤林 裕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
詳しいレビューがあるため、内容にはあまり触れない。しかし、表題作や他の作品もページ数は60程度であるので、変に長い小説よりも読みやすいかもしれない。また、作品全体としては、登場人物に後ろ暗い部分があり、それと向き合っていく姿が印象的な話となっている。
紙の本
藤沢作品
2019/02/17 06:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤沢周平の処女作品。随分と推敲を重ねたようだが、その後につながる作風は生きていて十分楽しめる。同時に黎明期である新鮮さも感じる。
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後味の悪い、苦い物語が多かった。「蝉しぐれ」で藤沢修平の世界観が好きになっていなかったら、ちょっとキツかったかも?主人公の男たちより女性の方が印象に強く残ったなぁ。
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「暗殺の年輪」はさすがにすごいと思う。それより前はあまり好きではないかも。後年の方が好みなんだろう。
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重苦しいのとは違う。人生ってこうなのかな、翻弄されてそれでも足掻くものなのだな、と響く話ばかり。表題作よりも「黒い繩」があまりに哀しい。
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84歳のハッピー・バースデーと言えないのが残念な藤沢周平は、1927年12月26日山形県生まれの時代小説作家。15年前に69歳で逝去。
この本を読んだ時の衝撃を、今でもはっきり覚えています。
ええっと、たとえて言うなら、心地よいボディブローか痛快なアッパーカットか、ううん、ちょっと違うというか、そうであるようでないような、ひょっとして何気ない会話を交わしていたらいきなりクロスカウンターを食らうようなとでもいうのか、ともかく油断して無防備でいるこちらの全躯に、思いもかけない圧倒的な力技で真正面から真剣でズバッと斬りつけられそうになった感じ、でもよけるでもなく、このまま斬られてもいいわって感じ。ダメ、やっぱりうまく言えません。
しかも、なんとこれは、いったいぜんたい、時代劇というよりまさしく全篇ハードボイルドではありませんか。
何といっても文章がいいのです。私にとてもフィットする、私の言葉の感覚や文の運びやボキャブラリーに通底する文章で、読んでいてカタルシスを感じることができるものなのです。
それほど熱心にではありませんが、今まで一応の著名な時代小説は、村上元三『真田十勇士』や山本周五郎『樅の木は残った』、山手樹一郎『又四郎行状記』や吉川栄治『鳴門秘帖』、村山知義『忍びの者』や野村胡堂『銭形平次捕物控』、中山義秀『戦国無双剣』や中里介山『大菩薩峠』、山田風太郎『伊賀忍法帖』や白井喬二『富士に立つ影』、座頭市の生みの親である子母澤寛『新選組始末記』や柴田錬三郎『眠狂四郎無頼控』、池波正太郎『鬼平犯科帳』などなど手当たり次第に読んできましたが、このときほどズッシリと手ごたえのある感触を感じたことはかつてありませんでした。
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封建社会を生きる人々と武士の息苦しさが生々しく描かれている時代小説。精密だしおもしろいので、年老いたときに読んだらもっとはまるだろうな。
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藤沢周平初期短編5作品。
解説を読んで知りましたが、自分としては文壇初登場の「溟い海」と第2作の「囮」が中でも面白かったです。
どの作品も悲劇的な最後ですが、落ちるところまで落ちた悲劇な終わり方ではなく、わずかな救いを感じさせるのも絶妙なところです。江戸時代の情緒をしっとりと感じさせてくれる鮮やかな筆致と、ぐいぐい物語にのめりこまさせてくれるストーリー展開が大きな魅力です。
「黒い縄」は女性視点での町人物。離縁された?女性の心の移ろいを細やかに描写した作品で、ミステリーの常道ともいえるストーリー展開が楽しめる。
表題作「暗殺の年輪」は直木賞受賞作で、自らの生い立ちに桎梏を持つ青年武士の葛藤と決断までの過程を描く。これもストーリー展開と青年の心理の揺れ動きと魅力的な女性陣の登場が楽しませてくれる。
「ただ一撃」は、剣術物として疾走感のある作品。最もはらはらして読んだ作品で、舅と魅力的な嫁との掛け合いも面白かった。
「溟い海」は葛飾北斎が下り坂になり安藤広重に嫉妬する様を、サイドストーリーを絡ませながら、その葛藤を巧みに描いた作品。ストーリー展開とその終わらせ方も含めて面白かった。
「囮」は下っ引きの張り込みを中心とした物語で、主人公の下っ引きの本職である版画工房での出来事とあわせ、巧みなストーリー展開と主人公の張り込み先である犯罪者の情婦との絡みが面白かった。
一慨に女性の描き方も上手く、大いに魅せられた作品群でした。
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単行本刊行1973年。全5編中直木賞受賞作1編と直木賞候補作3編を含むなんとも贅沢なデビュー短編集。 内容的には葛飾北斎のことを書いた「溟い海」や海坂藩作品の第一作で直木賞受賞作「暗殺の年輪」など本当に質の高くてバラエティーに富んだ作品集であるが、私がもっとも印象に残ったのは唯一直木賞の候補に上がらなかった「ただ一撃」、この作品は展開もさることながら作中に出てくる“三緒”という嫁が本当に健気で物悲しいのです。 とにかく各編、重苦しくて哀しいけど素敵な女性が描かれています。
各編の女性たちを読み比べるだけでも価値のある作品集だと言えます。ズバリテーマは“女心”。ただし初めて藤沢作品を手に取られる方や時代小説初心者には他の作品の方が良いような気がします。 物悲しいと言えば全五編に統一されたモチーフというかデビュー時の藤沢さんの特徴だと言えそうです。 藤沢氏の作品は端正な文章で読みやすくわかりやすいというのが通説ですが、この作品集に限って言えば少し難解な部分も含まれていて他作よりも何回も読むことによってより味わい深いものとなるでしょう。最初から凄く高い位置を極めていたんですね。
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短編小説集ですが、新聞の書籍紹介欄で葛飾北斎の小説があるとあったので借りてみました。藤沢さんの小説を読むのは初めてなのですが、タイトルどおり暗い小説を集めたものなのか、藤沢さんの小説が全般的にそうなのか。「暗い」とか「救われない」ってイメージの短編集です。
肝心の葛飾北斎の話も「人間の内面」に焦点をあてたわけですが、画業とはあまり関係ない話だったので面白いものではなかったな。というのが感想です。個人的な趣味があわないな~。という小説でした。
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情念と女性がテーマの短編集。
情景描写と心理描写が精緻に描かれている。
一つ一つの短編を読み終えると、その^ どこか物憂げな展開に、心の一部に穴を開けられたような感じさえした。
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いずれの短編も、面白い。出てくる人物の魅力と、ストーリー展開に、魅了される1冊。藤沢周平、また読みたい。
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父の仇と母の恥を雪ぐ「暗殺の年輪」、冤罪で追われつつ真犯人を追う若者とそれを救おうとする若後家の切ない思いが哀しい「黒い縄」、老年を迎えた北斎の若い広重に対する嫉妬の思いが生き生き描かれる「溟い海」、老武芸者と息子の嫁の心の交流が美しく描かれた「ただ一撃」など。老境を迎えた男性の枯れた心境と不幸を背負った可憐な女性がいつもながら素晴らしいです。
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直木賞受賞の表題作をはじめ、5つの短篇を収録。「暗殺の年輪」も悪くはないが、やはり篇中の白眉は「ただ一撃」だろう。武骨で巨漢の猪十郎の存在感も十分だし、なによりこれに対する、隠居の身の範兵衛が兵法者として復活してゆく姿と、一瞬の立ち合いは読みごたえがある。物語の主軸を支えるのはこの二人だが、実は真に藤沢周平らしさが出ているのは刈谷家の嫁、三緒の造形だ。つつましく、いじらしく、聡明でもあり、さらには感情も溢れるほどに豊かだ。剣豪小説のように見えながら、彼女の存在こそが作品にふくらみと陰翳とを与えているのだ。
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海坂藩ものの第一作「暗殺の年輪」には、「蝉しぐれ」などの後の作品のプロトタイプを思わせるものがあるが、全体に”暗い情念”が横溢した短編集。「ただ一撃」が好物。