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人の愛情と憎しみを描き、登の推理が冴えわたる6話
2010/01/18 19:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
この獄医立花登手控シリーズ第三弾では、全体的に立花登の推理が冴えわたっているようである。
ただ勘のほうはあまり当てにならないようで、『片割れ』では思い切り勘違いをし、しかしそれが事件の展開と解決をみるという、ユニークな作品に仕上がっている。
また登の柔術は本巻でも健在。
『奈落のおあき』では、おあきを救出する登の柔術による格闘シーンは迫力がある。
『秋風の女』
女牢に新しく入ったおきぬはしたたかで、牢の下男をしている佐七をたぶらかして、貢がせているようである。
おあきの言うことを信じ、可哀想な人だと純粋に思い込む佐七。
登が心配し説教するなか、佐七はおあきに頼まれて使いに出た。
登が佐七の危機を救い、著者はおあきを嫌な女から少しだけ救っていて、結末が気持ちがいい。
『白い骨』
登の見立てでは、先は長くないが威勢がいい辰平。独り身だと言っていたが、女房子供がいると登に打ち明けた。
出牢後、登が見つけてやった妻と暮らし始めた辰平は、しばらくして殺された。
十七年も姿を見せず、殺される前にひょっこり姿を現した夫辰平を思う妻の思いは、とてもやさしい。
『みな殺し』
牢内で芳平が殺された。折檻ではなく、密かに殺された様子に登は疑問を持った。
牢の外では、ひんぴんに男たちが変死し、死人たちにつながりはありそうで、何も浮かんでこなかった。
なかなかつながらない連続殺人の糸に緊張させられ、死ぬ間際の男から得た一人の男の名から急展開していく様子に、これまで溜まった鬱憤が晴らされるかのようにスッキリする。
『片割れ』
登が叔父の家で、稀に見る悪相の男の金瘡を手当てした数日後、小伝馬の牢に夜盗の片割れで、金瘡を持つ男が入牢してきた。
登は、まだ逃げ回っているらしい片割れの夜盗に、叔父の家を訪ねてきた悪相の男の顔を重ね合わせた。
稀に見る悪相の男が事件解決に一役買ったようでもあり、登といとこのおちえの関係にも一役買っているようでもあり、悪相の男から始まる話は、ほのぼのとしたラストを迎える。
『奈落のおあき』
登は牢に用があるというおちえの友達おあきに会った。伊勢蔵といういい人が牢に入っているという。
同じ牢の嘉吉が登に黒雲の銀治という盗人の話をした翌日、嘉吉は殺された。
嘉吉の死からつながる黒雲の銀治を追っていく捕り物が面白い。
そして男運がないおあきは不憫である。
『影法師』
おちせは加賀屋伝助を刺して入牢した。しかし刺された本人伝助の嘆願によって百日の刑で済み、やがて出労した。
牢を出た日、恋仲の杉蔵は現れず、加賀屋の駕籠が現れておちせを押し込めようとした。
登はすんでのところでおちせを助けたが、その後おちせの行方が分からなくなっていた。
おちせが母の死に不審を持ったことから始まった事件は、ミスリードを誘う構成で先の展開を読ませず、杉蔵の少し気弱なおちせを心配する様子で幕を閉じる。
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獄医立花登手控えの第三弾。
この第三弾では、自らやっかいごとに首をつっこんで解決してゆくようなる登。医者としての性分か、正義感か。ものごとをうやむやにできない性格なのか。
おちえとの仲も進展あり。
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シリーズ物を途中から読んだのだが,まあ面白い。主人公がちょっとスーパーマン的ではあるが,味わいがある。
2012/07/28図書館から借用;直ぐに読み始め;途中中断しながら08/03読了
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第1巻第2巻に続き、第3巻を14年ぶりに再読し、獄医立花登の世界にどっぷりとつかってしまっている(笑)
囚人の頼みごとを聞きながら、様々な事件に遭遇する主人公は、時には清濁併せのみ、人情味あふれる解決をする。
牢獄及びそこに収監されている犯罪者の話が中心のため、ともすれば暗い話となるところを、寄宿先のおじの家での出来事やユーモラスなやりとりが、このシリーズを魅力的にしている。
従妹のおちえとの関係もますます進展しそうで、最終巻でふたりは結局どうなるのか、すっかり忘れてしまっているので、再読しなくては。
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獄医シリーズの第3弾。
1、2巻はさほど印象に残るシーンもなく読み終えてしまったが、この巻はなんともいえない切なさが感じられた。
罪人となってしまった人々の悲哀が胸に迫る。
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娘の病を治したお礼にと、登に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢の中で殺された。大胆な殺しの後、ゆうゆうと出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆ける―。家では肩身の狭い居候だが、悪事には敢然と立ち向かう若き牢医師・立花登が、得意の柔術と推理で事件を解き明かす。
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獄医立花登手控えシリーズ第3巻。《奈落のおあき》従姉妹ちえのグレ仲間で登に好意を寄せていたおあきをたどる編、《白い骨》入牢中の鋳かけ屋嘉吉が、登に頼んだ娘の重病を治してもらったお礼にと、未解決の3年前の1家7人殺しの情報をもらしたのだが、その直後牢の中で巧みに殺されてしまい登は、犯人を追って江戸の町を駆けることになるのだが…。叔父の代理を勤めさせられ世話になる叔父一家に不満を持っていた登が、心身共に十分に成長し起倒流の柔術の技と冴える推理で、捕り物に人情とミステリを上手く絡める次巻で完結は残念。
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1982年に、NHKで、放映されていたなんて、知らなかった。
やはり、藤沢周平氏の本は、面白い。
獄医 立花登が、得意の柔術と、少しのお節介の人情味のある人柄が、事件を解いて行く。
家では、肩身狭い居候で、叔母にこきつかわれる所が、強い腕を持った主人公の良さを引き立て、面白さを増しているのだろう。
昔、藤沢周平に傾倒した自分が、よみがえって、又読みたくなった小説であった。
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さあ3作目。かなりこなれて来た感じ。おちかといい雰囲気やんか! あと1冊でどうまとめるのか楽しみ ^_^
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内容(「BOOK」データベースより)
娘の病を治したお礼にと、登に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢の中で殺された。大胆な殺しの後、ゆうゆうと出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆ける―。家では肩身の狭い居候だが、悪事には敢然と立ち向かう若き牢医師・立花登が、得意の柔術と推理で事件を解き明かす。大人気時代連作第三弾。
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1、2巻に比べるとちょっとまとまり過ぎて
事件のインパクトに欠ける気がするが
立花登の益々活動的な事件への探求心は
中々爽快で事件の哀れさも少し薄まる。
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主人公が江戸時代の牢獄医という設定から、暗くて陰惨な話が中心だろうとイメージしていたが、読後感はカラッとして明るい。
おもわずニヤッとするやりとりがたくさん出てくる。
この設定から、こういう楽しい読物を創り出すのは、作者の力量というほかない。
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「獄医立花登手控えシリーズ」全四巻の第三巻です。
起承転結に当てはめれば「転」のはずですが、むしろ少々中だるみ感が有ります。
不良娘だった従姉妹のおちえもすっかり大人しく、悪く言えば平凡になり、口煩かった叔母も登に頼る事が多くなって、そのぶん登を大切にするようになって、なんだか淋しい(笑)。登の身辺が波立たなくなると、どうしても捕物要素頼りになってしまいます。
代わってと言えば変ですが、おちえの友達が活躍。「片割れ」ではおちえの最近の友・おちかのとんでもない悪相の亭主が捕物を惑わせ、「奈落のおあき」では昔の友で登に懸想するおあきの転落が描かれます。
とは言え、単純明快な捕物に仕立てること無く、そこに僅かな苦みや哀しみを上手く混ぜ込むとことろは流石です。
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2002年発行、講談社の講談社文庫。6編。今回も面白い。ちょっと抜けた感じの終わり方のがなくて、きっちり解決するものばかりなのは若干残念。急転直下に完結するパターンが多い。テレビ化の主役の中井喜一のインタビューがあるが、テレビ番組化には良い題材だったのだろう。あと1巻だが、友人たちやおちえとの関係はどうなるのだろうか。
収録作:『秋風の女』、『白い骨』、『みな殺し』、『片割れ』、『奈落のおあき』、『影法師』、他:「中井貴一インタビュー」、「年譜」、備考:1982年11月講談社より刊行、