アニメ・マンガ・ゲームと風太郎
2003/05/26 02:23
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投稿者:コウヘイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ワイドショーで『魔界転生』が映画化されるのを知ったのであるが、そこでは窪塚の主演と深作の旧作にばかりスポットが当てられていて悲しかった。俄か風太郎ファンの私が言うのもなんだが、せめて浅田次郎程度には、風太郎についても紹介してほしいものである。
不遇の作家・山田風太郎だが(こんな物差しを使うのもなんですけど、高校の国語便覧には載ってない。『戦中派不戦日記』、立川文庫の流れを汲む「忍法帳」、「くノ一」イメージ…どれも日本文学にとって重要でないのだろうか?)、『魔界転生』が日本の(広義の)物語空間に与えた影響ってのは小さくないと思う。ちょっと若い人に身近な所を掘り起こして見よう。
言わずもがなのことかもしれないが、まず、ゲームの『魔人転生』って影響受けてるだろう(笑)。天草四郎が妖術使いの悪役でラスボスってのは、映画版が直接的な影響を持ってるんだろうが、まぁ風太郎の手柄。だからゲームの「侍スピリッツ」は、強豪剣士の対決という意味も併せて、かなり風太郎的であろう。
アニメ脚本家会川昇は確か「風太郎ファンがアニメ業界に多い」云々のことを朝日新聞に書いていたのを私は見たことがある(記憶違いかもしれないが)。大体彼の参加したアニメ『ヒヲウ戦記』って、風太郎の臭いがする。坂本竜馬≒(原作版)柳生十兵衛=飄々とした朴念仁キャラ、という見立てはそれほど大外れでもあるまい。あと桜田門外の変で井伊直弼が「カラクリ」を使って暗殺された(笑)っていうのも又、風太郎忍法の奇想に通じる(石子賢リメイクの方が直接的影響力ありか?)。こういうキャラ、ハッタリの仕方ってアニメやマンガによく見られるものだ。
とりあえず、重苦しく暗い文学とは違うので、若い人にこそ読んで欲しい。いい意味で「マンガ的≒大衆文化的」なので、風太郎が角川ファンタジー文庫読者層を奪ってくれたらいいなぁと思う。
忍法魔界転生!甦った7名の魔剣士&幕府転覆を狙う黒幕。対する柳生十兵衛&柳生十人衆。
2003/01/05 15:41
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投稿者:uwasano - この投稿者のレビュー一覧を見る
島原の乱(1637年)の首謀者である妖軍師・森宗意軒は、西洋黒魔術と忍術を融合させ、忍法魔界転生をあみ出した。生に対する執着心の強烈な者が死ぬ時、女体を使って甦らせるというものだ。これにより蘇生したのが転生衆で、天草四郎・荒木又右衛門・田宮坊太郎・宮本武蔵・柳生但馬守宗矩・宝蔵院胤舜・柳生如雲斎の七名である。彼らは由比正雪と組み、紀伊大納言徳川頼宣を御輿としてかつぎ、幕府転覆を計る。陰謀に気付いた柳生但馬守宗矩の長男・柳生十兵衛三厳は、柳生十人衆とともに魔剣士達と戦う…
白土三平や横山光輝の忍者漫画や、小池一夫原作の時代漫画では、「忍術には科学的根拠が必要」という思想に貫かれていた。柳田理科雄氏が著作でつっこむような、細かく見ると駄目なシーンは多々あるのだろうが、おおむね科学的根拠を土台とした忍術だった。ところが、この小説の「忍法魔界転生」はどうか? 黒魔術と融合することで、何でもありになっている。すべては、柳生十兵衛と魔剣士達との戦いを描くため、科学を無視したという感じだ。そしてそれは大成功だった。奇抜な魔界転生のシーンなど、ヌメヌメした感じが「エイリアン」等のSF映画の原点になっているのでは? と言えるほどよく出来ている。
物語の主軸である黒幕による幕府転覆の野望もいい。現実の由比正雪の乱(慶安事件)も、紀州徳川家と偽って江戸城に潜入し奪取する計画があったらしいので、黒幕に紀伊大納言徳川頼宣がいても筋が通る。紀州家は、この後、八代将軍吉宗、一四代将軍家茂と、将軍を出しているわけだから、頼宣が将軍を目指しても全くおかしくない。上巻で十兵衛がその名前を出した老中・松平伊豆守信綱が、下巻で本当に頼宣の前に出張ってくる展開もすぐれている。幕閣を揺るがす大事件という展開が興奮する。私の好きな怪獣映画でよく出てくる「怪獣の存在に対応する日本政府首脳」に通じるものがある。
講談社文庫下巻の日下三蔵氏による解説「忍法帖雑学講座6」でこの作品の漫画化・映画化作品の紹介がある。ここに掲載されていないもので、とみ新蔵氏による漫画『魔界転生』(リイド社)があり、これはかなり原作に忠実であった。 とみ新蔵作品には、柳生如雲斎の息子が活躍する漫画『柳生連也武芸帖』(リイド社)もある。
また、1981年の深作欣二監督の映画はお馴染みだが、2003年、平山秀幸監督により再映画化される。深作映画を超えるのは難しいだろうが、楽しみではある。
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バジリスク 〜甲賀忍法帳〜 より数十年後。
隻眼の剣士 柳生十兵衛 はダークサイドに堕ちた 大僧正・天海 の分身との死闘を終え、柳生の里で休んでいた。
だが、そこに新たな魔の手が忍び寄ってくる。
邪悪なネクロマンサーの手で復活した剣豪・武蔵、妖術使い・天草四郎、最強の槍使い・宝蔵院らのゾンビ英雄軍団との決戦が始まったのだ。
戦え、柳生十兵衛!
孤剣にて、ことごとく英霊を打ち倒せ!
強敵を下そうとも、十兵衛に休む暇は無い。
能のパワーでタイムスリップし、徳川家康の秘密を探りだすのだ!
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ぞくぞくする描写の連続。ある種の人が読めば、不快極まりないと怒り出すだろうが、本質を捕らえていると思う。
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(上下2巻、読み終えての感想です)
かつて読んだことがあるはずなのだが、映画(昔の方)の印象も強く、何かおどろおどろしいもののような印象が強かった。もっとも同じ作者の「忍法帖」シリーズはおどろおどろしいのが魅力で、それが読みたくて読みふけっていたこともあるのだから、それはそれで良いのである。
ところが今回改めて読んでみて、びっくりするほどさわやかな印象を受けて驚いた。もちろんエロチックなシーンや凄惨なシーンはたくさん出てくるのだが、主人公である柳生十兵衛のいたずらっぽい魅力がいいし、なんだかんだ言いながらも、剣による戦いをメインに押し出している感じが、気持ちがいいのだと思う。忍術じゃこうはいかないはずだ。
それにしても、かつて見たジュリー天草のあの映画はなんだったんだろう。まったく別物としか思えない。まあ、あの映画も楽しかったんだけど。今度の映画はどうなのだろうか。天草四郎をメインに出しているあたり、やっぱり別物かなって気がするけど。
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せがわさんによるコミカライズ版に触発されて、久々に。
相変わらずのテンポの良さで、上下巻と一気読み。
主人公は、柳生十兵衛とその仲間たち。
敵対するは、とある忍法で転生した、7人の武芸者。
その名は、、荒木又右衛門、天草四郎、田宮坊太郎、宮本武蔵、
宝蔵院胤舜、柳生但馬守、柳生如雲斎と、錚々たる名が連なっています。
彼ら、史実では実現できていない武芸者たちの戦いが、
山田さん好みの「魔人」との設定をクロスさせて描かれていきます。
メインで戦うのは十兵衛ですが、真っ向勝負に終始しているわけではなく、
わずかながらでもの、地の利、人の利、天の利をとって戦っていくのも、また。
決して完全無欠の主人公として描かれてはおらず、
物語の設定では、武蔵が最強の剣腕を持っているような感じに。
対する十兵衛は、武蔵も含めてどのようにして勝利するのか、、
それだけでも、ページを捲る手が止まりません。。
初めて読んだのは中学化高校の頃でしたが、理屈抜きで面白い、
エンターテイメントとはこういうことかとあらためて。
これが1960年代に書かれたというのが、凄いとも。
個人的には『甲賀忍法帖』との双璧の忍法帖です。
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6月19日に、吉祥寺の前進座に。お芝居観に行く前に図書館で借りて、上下巻とも読了!読み進むうちに、そこに引き込まれ、自分も巡礼姿で一緒に旅をしていたような。様々な大切な事、思い返すような、不思議な時間で魅了され。頭の中で描いていた世界を、次の日舞台で具現化して頂き、それぞれをより深く味わう事が出来た。
やはり、もう一度じっくり読みたい。
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再読。言わずと知れた忍法帖、伝奇小説の金字塔。奇抜な着想、妖しくも美しい世界、そのどれもが素晴らしい。
なによりも魅力的なのは、宮本武蔵、荒木又右衛門、天草四郎……忍法「魔界転生」により死から甦ってきた転生衆。序盤の大半を彼らの転生に費やす構成がサスペンスを盛り上げる。
戦いの激化を予感させつつ〈下巻〉へ。
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6年前くらい前に1回と、最近また読んだ。
深作欣二の方の映画も見た。
タイトルは初めこれじゃなかったらしいが、こっちにして正解。
伝奇ものはやっぱり面白いなあ!
なんで今でも流行んないのかな?
山風がやり過ぎちゃったのかなあ。
歴史はさして詳しくないんですが、
山風のおかげでちょこちょこ知れました。
まさにエログロナンセンスの極み。
これだけあっけらかんと女性が道具にされてるのに嫌悪感を感じないのは、
十兵衛サイドの三女子の愛らしさでしょうね。
正雪の怪人ぷりが良い。
魔人が全て大人物なのも良い。
これはほんとに面白いなあ!
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さすが山田風太郎というべきエンターテイメント作品。
有名剣豪たちが色欲と力に染まって歪み、黄泉の世界から復活。
それに対峙する柳生十兵衛との死闘。
時代劇版スーパーヒーロー大結集であり、夢の対決を叶えてくれるというツボを心得たストーリー!
闇堕ち設定はいつの世代でも読者の心をくすぐるという好例かと思います。
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柳生十兵衛が、よみがえった名剣士、田宮坊太郎、宝蔵院胤舜、天草四郎、荒木又右衛門、柳生如雲斎、柳生但馬守、宮本武蔵と闘う幻想的剣豪小説です。とにかく上巻は異常な事態が起こっていく過程、十兵衛が事件にかかわる過程など、異様な迫力に満ちていてとても面白いです。
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熱いバトル漫画!…じゃなくて小説。忍術ってすげー
転生は簡単にできるものではなく、本人の転生したいという執念が必要。生きているうちに術をかけないと駄目なのか。剣豪達が服従させられたり邪悪に染まっていくというのは、強キャラを尊厳破壊する快感がちょっとある。
格好いいですね、柳生十兵衛。上巻でまだ一人しか相手にしていないのに、彼はこの先どうなってしまうのか。
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小学生の頃に映画を見た覚えがある。断片的にしか覚えていないけど、天草四郎時貞、沢田研二の首が印象的だった。そちらと設定は共通だけど、登場人物は少々違う。ラスボスも違う。
転生衆の禍々しさに対して、柳生十兵衛と柳生衆の、お気楽とまでいったら悪いけど、事の重大さがどこまでわかっているのか(いや、転生など当初はわかるはずもないのだが)、その対比がすごい。
もともとは「おぼろ忍法帖」という名前だったそうで、忍法帖シリーズだけど、やっぱり「魔界転生」でよかったと思う。忍法の出番は多くない。転生衆との戦いも、基本は剣の戦いである。名だたる剣豪たちの夢の戦い。登場人物の心のゆらめき。ここまで読んできた忍法帖とは趣が異なるが、しかし十分に堪能できた。
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初読は映画上映1981年のころなので、40年以上前。
映画の印象が強く、小説はあまり覚えていなかった。
40年以上ぶりの再読、おもしろかった。
上巻は、魔界転生衆の一人しか戦っていないが、あまり超人ではなく、対抗する十兵衛も人間技範疇なので興ざめせずに読めた。