紙の本
青春群像の詩
2010/11/21 08:48
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
パレード 吉田修一 幻冬舎文庫
殺人事件が始まる推理小説だと思って読み始めました。違っていました。高校生の頃に読んだ推理小説小峰元(はじめ)著「アルキメデスは手を汚さない」のパターンかと予測しましたが、やはり違っていました。青春群像小説と思って読み続けました。違っていました。「詩」でした。読んでいると胸が重苦しくなってくる作品です。人間生活の悲哀があります。どこに行っても、どこに居ても同じ。新世界なんてないという行き詰まりを表した作品でした。
21歳大学生杉本良介の「桃子」と名付けた愛車中古マーチは10km走る前にエンストしてしまう。俳優の恋人である大河内琴美23歳無職は、売り出し中の若手俳優丸山君からの電話を待ち続けるだけの毎日。相馬未来(みらい)24歳は売れないイラストレーター、住所不定者18歳小窪サトル(こくぼ)は男娼、主人公らいしいけれど存在感の薄い伊原直樹28歳は、映画配給会社勤務。彼らが2LDKの賃貸マンションに同居しています。
10年前の本です。580円のコンビニ弁当は高い。ネットの「チャット」とか「BBS」いう言葉はなつかしい。同居する5人には家族関係もなければ恋人関係もありません。家賃分担のルームシェアです。されど交流はあります。彼らは仲間を欲(ほっ)しています。擬似家族。擬似きょうだい。そして、各自には、表と裏の心理があります。
サトルが指摘するように、他の4人は、だらけた生活です。自分を甘やかしている人たちです。小説の構成は5人がひとりずつ語っていく形式です。個性がひとりずつ詳細に記述されるので、読みながらだと、総合的な合体感がありません。前半部は文章がリズムにのってうまく流れている印象がありますが、饒舌(じょうぜつ)で、作者は自分に酔っています。それでも時間移動の文章さばきは上手です。この本を読むと自分が20代になった気分になれます。
紙の本
パレード
2022/12/04 12:59
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じシェアハウスに暮らす、5人の若者の群像劇、のはずだった。あまり他人に興味がなく、トラブルなく住むために、表面的には皆馴染んで上手くやっている。オープンで、あっさりした関係、と思っていた。
が、このラストは何? 油断していたら、急に空気が変わった、という感じ。
皆、仮面を被っていたのかな、と思ったが、そんな風でもない。ごく自然に? うーん、それもなんだか怖い。よく分からないし、あまり深く考えたくないな、と思ってしまった。
紙の本
めくるめく視点
2016/05/31 00:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wktk - この投稿者のレビュー一覧を見る
共通したことなのに主人公によって見え方や捉え方が各々違うのが観点として面白かったです。個人的にはこういう生活はしたくありませんけどね(笑)
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ドラマ化して欲しい小説?1。
どんな怪奇現象よりも人間の心の闇が一番恐いんだと思わせられた小説。吉田修一さんの作品の中でこれが一番好き。
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同じマンションで奇妙な同居生活をする5人の男女の話。
各人の視点からの同居生活が各章で書かれている。
途中までよかったんだけどなぁ〜。最後の章でガッカリ。
あんな終わりじゃつまんない。月9だった「東京湾景」の作者。
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冴えない大学生。
芸能人と付き合っている女。
自称イラストレーターの女。
男娼の男。
映画配給会社勤務の男。
接点のなさそうなこの五人が、一つ屋根の下「上辺だけの付き合い」を続けていく。
そういうお話。
吉田修一さんというと「パークライフ」で芥川賞を受賞した作家さんで、著書はあまり多くありません。
ので、全部読んでは見ているのですが、良作あれど、傑作無しという印象でした。
でも、この「パレード」は傑作を飛び越え名作。
なぜこの本が文学史に名を残さぬのだろう!
と今声を大にして叫びたい。
川上弘美さんが、まさに私の心境を解説で書いてくださっているので、今更何を言う事も無いのですが……。
ただ、やはり「怖い」です。この本はとんでもなく怖くて、しかも「愛しい」です。
この本の世界から抜け出せなくなるかと思いました。
涙が出ない打ち震える感動、というのを、初めて覚えました。
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都内の2LDKのマンションで共同生活している20代の男女のお話。お互いに深く干渉しない彼らの生活スタイルは同世代の自分にもシンクロする部分があって「そうそう、そうんなんだよね」と読みながら共感してしまうところが5ページに1度くらい出てくる。共感できる「何か」を言葉にするのってすごいなぁ、とこの小説を読んで思った。久しぶりに引き込まれた。 ちなみに個人的な直樹のイメージは伊藤英明(笑)。
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ルームシェア小説の金字塔!
友達と共同生活したら楽しいんじゃないかなんて一度でも考えたことのある人は是非!
人間て怖ろしい生き物です・・・でもルームシェアって面白そう。
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先ほど読了!なのよねぇ。このお話しは好き嫌いが分かれるでしょうねぇ。
あたくしは好きです。淡々と自然と曖昧模糊な心の機微が書かれてるです。
それも同居してらっしゃる5人がリレー形式で。最後「お?お。おお!」なのですよ。
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年齢も職業もバラバラな5人の男女の同居生活の話。各人の一人称で描かれている所は変わってて面白いと思います。それぞれ個性的で、友人同士の同居なんて考えられない私には、とても新鮮でした。それぞれのエピソードは面白く、それからどうなるの?っていう感じだったのですが、最後の最後で、怖いのです。何がどう怖いかはネタばれなので書けませんが、このラストはあまりに唐突な気がしてしまいました。途中面白かっただけに残念。でも、他の作品も読んでみたいと思いました。
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物語は同棲する5人の人物の視点から語られます。それぞれの人柄が出ていて、本人の考えている姿と、他人から見た姿は違うものなんだと思わされました。共同生活は楽しそうだな〜なんて考えながら読んでいましたが、ラストで衝撃です。もう1度読み返さなければいけなくなりました。こわいって言うレビューが多いみたいですが、今の人間関係ってこういう感じが多いんじゃないかな。
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著:吉田修一
芥川賞作家らしい。
これまた知人に推薦されて読みました。
まず文を読み進んで感じたことは、
この作者の文はかなり”巧み”である。
なにか抽象的なことの具体例がコミカルだったり、
具現化するのが難しく、
痒いところに手が届かない的なことを、
すっきりと表現している気がした。
この本で一番気に入ったチャラはやっぱし。
桃子でしょう。
あの、すぐに知らない人にお知りを触らしてしまう、箱入り娘。
(これだけを読んだ人には変態極まりなく聞こえると思われますが・・・)
しかし、最初はこういったコミカルな感じだったけど、
だんだん、状況が変化していく。
そして最後には状況が変化していってるように見えていただけで、
ほんとは何も変わっていたわけではなく、
鋭く恐ろしい結末に。
意外でした。
結構楽しめる一冊です。
(ちょっとコワイところもありますが・・。)
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これは意外によかった。冷静と情熱っぽいアプローチか?と思ったけど、これはこれでうまいなぁといった感じでしょうか。いつかもう一回読む。
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ある日見知らぬ男女4人が共同生活を送り、そこでチラチラ見える変な影、みたいのは、実際に感じだら面白いだろうな〜と。
買うまでの本ではない。
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色々な意味で怖い小説、と聞いてワクワクしていたせいか、ラストはあまり迫力を感じずに終わってしまった。でも、今もう一度読み返せばそんな風には思わないという確信もある。たぶん期待しすぎていただけであって、もう一度読み返したい小説一位。個人的にはサトルと未来が好き。サトルは四人の共同生活を「お友達ごっこ」ともっとも的確な言葉を使って見下していたのだけど、ラストでの直輝を励ましているシーンを見て意外に優しいんだな、って好きになった(笑)未来は終始女優のりょうさんを投影して読んでたなー。もう一度読了したとき、改めて感想を書き直す予定。