紙の本
そんな志麻子ねーさんが、私はとっても大好きです。
2004/09/29 14:38
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投稿者:purple28 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぼっけえ、きょうてえ」を読む以前から、岩井志麻子には馴染みがありました。というのも、地元テレビ局の情報番組に出演していたのですよ。底抜けに明るい志麻子ねーさんと、あの“麺通団”団長・田尾さんが、いいコンビで絶妙なトークをかましてました。
そういう志麻子ねーさんを知っていながら、敢えて言いましょう。あなたはどこへ行こうとしているの、と。志麻子節炸裂の1冊。でも、これも“事実”なのです。
岩井志麻子といえば、「ぼっけえ、きょうてえ」。ホラーというイメージが強いかもしれないけれども、私的にはホラーというより、“明治の貧しい岡山”というキーワードがすぐに浮かびます。明治だからこそ、貧しいからこそ、岡山だからこそ。時代・経済・環境がそろってこそ、生み出される物語に深みと影が増すのです。
所は岡山市、とある貧しい長屋の一室。男娼の兄は夕方になると身支度を整えて出かけていく。それを見送る妹との2人暮らし。両親が亡くなり、貧しい農村を捨ててきた2人だが、ことあるごとに思い出す歌がある…。(「魔羅節」)
表題作を含め全8作を収録した短編集なのですが、タイトルを書くのもはばかられるようなものばかり。カバー裏の一節を引用してみますが、
「血の巫女・岩井志麻子が、呪力を尽くして甦らせた、蕩けるほど淫靡で、痺れるほど恐ろしい、岡山土俗絵巻」
ここで注目したいのは、“呪力を尽くして”というところではなく(笑・てか、志麻子ねーさんならありうる)。“甦らせた”という部分ですね。
幕末から明治初頭にかけて、それこそ怒濤のような時代の流れに乗って、というか、乗れた人はそれはいい生活をしてるんでしょうね。大半の人は、その流れに身を任せるだけだったのだろうと思われます。なすがまま。どうにかなってみないと分からない、というのが正直な気持ちでしょう。しかしながら、乗ることもできず、身を任せることもできなかった人たちはどうなったでしょう。取り残され、誰にも省みられず、きっとずっとそのまま、蚊帳の外に置かれたのではないだろうか、と。
そこで何があったかなんて、歴史の表舞台には出てこないんです。それを、呪力で(笑)甦らせたんですね、この人は。ちょっと呪いのパワー強すぎですが。どんなに卑猥なタイトルだろうと、どんなにエロくてグロかろうが、私は岩井志麻子の描くこの手の話に惹かれます。それがいつもの、四畳半一間、主人公3人のストーリーであったとしても。いや、だからこそ、好きです。
「紫微の乱読部屋」
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短編集。ねっとりとした闇と血と汗がどの作品からも匂ってきます。
朝の通勤に読むとさわやかさが一気に生臭さに変わること請け合い。(2003.3.4)
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貧乏と残酷なエロスと。この「ぼっけぇきょうてぇ」もだけど、このパターンが多いなぁと。短編集の1つ1つのタイトルがおもしろい。魔羅節、金玉娘、おめこ電球。おめこ電球がよかった。誰がどれで結局あぁこれがこうだったのかと惑わされたのがよかった。
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言わずもがな岩井志麻子。
あえて文庫版を選んだのは、あとがき(?)が久世光彦による「志麻子の行方」があるからです。
岩井志麻子と久世光彦。この二人の文章が一気に読めるなんてなんて豪華。
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岩井志麻子さん、スゴすぎ。これは特にエロでグロな短編を集めてるのかな。どの作品も貧乏で陰鬱で悲惨で底なしの闇。津山30人殺し事件をモチーフにしたといわれる岩井さんの著書『夜啼きの森』も読んでみたい。次はそれかな。
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『ぼっけい、きょうてい』で岡山を舞台にした、陰鬱で、どこか夢物語のようでもある世界を確立した岩井志麻子による、同じく岡山に纏わる短編集。俗世から見放されたような村に根付いた、時代錯誤な土着の風習に翻弄されながらも、それに抗うことをしない登場人物の残酷な生と性が悲しい。『anan』でエッセイを持っている人物の小説とはとても思えないほど、陰惨な気持ちになれましょう。さっと本を開いて『乞食柱』、『淫売監獄』、『きちがい日和』などの題を見ただけですっかり憂鬱な気分です。中身を読むと少なくともその日は再起不能になるでしょう
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久しぶりに手にとってパラパラめくると
安っぽいおしろいの匂いが鼻につく
岩井志麻子の淫靡で陰鬱な短編集
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『魔羅節』 (岩井志麻子)
『ぼっけぇ、きょうてぇ』(※)で山本周五郎賞を受賞した岩井志麻子の新刊文庫。岩井志麻子は『ぼっけぇ』以来、岡山を舞台とした怪異小説を書き続けているが、いずれも読後感は怖いというよりひたすら暗い。岡山に行きたくなくなること間違いなしの逆村おこし小説家である。今回の短編集もその例に漏れないが、今まで「貧」「苦」「霊」「岡山」の4ワードで表現されていた世界観に今回は特に「淫」が加わった。最近流行の作劇上のタブーのためのタブーではなく、「もう勘弁してくれ」感漂う禁忌を描いている。
同作者は『岡山女』とか、どうもネーミングセンスに欠ける感があるが、何に開き直ったのか、この本では「乞食柱」、「金玉娘」、「おめこ電球」とすべての短編のタイトルに放送禁止用語が舞い踊っており、なんか一周回って面白い。
ちなみに本書に収録された短編「きちがい日和」の主人公は名前が「ヤヨ」っていうので、高橋ヲタは読むといいです。まぁ、ヤヨさん陰所いじられまくりですけど。
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p.204 短編「片輪車」の一文~『涼しき道というんはな、極楽に行く道のことなんじゃ』『涼しき方、に居るんじゃろ。うちのお母ちゃんも』
p.206『死にそうな人や、死にたい人にはな、お父ちゃんの(人力)車は片輪に見えるそうじゃ』
p.211 『誰もおらん、車夫の引いとらん(人力)車がはしるんじゃと』『しかもそれにゃあ片輪しか無いんじゃ』
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やっぱり、岩井志麻子様だ、裏切らない。何がいいかというと、他を寄付けないサザンの桑田節の様な圧倒的個性。志麻子様はこの本で3冊目だけれど、少しづつ楽しみながら全作読破したい。この本の短編8作に共通している物悲しく、猥雑なそれでいて生きることをあきらめない少女たちはどのお話でも美しい。
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「魔羅節」というタイトルにふさわしく、淫靡な世界が広がった一冊。
官能的なシーンはたくさん出てくるのに、彼女が描くとグロく陰湿で恐怖になる。
一気に読むとちょっと飽きてくる感じはあるが、読みやすくて面白かった。
岩井志麻子は、民話を題材にしたような物語と、貧困とヒトの醜さを描き出すのが本当にうまい。
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岩井志麻子の魔羅節を読みました。放送禁止用語の言葉狩りをしている人たちが目をむきそうな小説でした。使われている言葉は確かに過激ですが、私たちが小さい頃は普通に使われていた言葉なので違和感なく物語の世界に入っていくことが出来ます。ぼっけえ、きょうてえと雰囲気は同じですが、この短編集のほうが血のにおいがぷんぷんと匂ってくる感じがします。
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「片輪車」。作者の頭の中で浮かんだ情景を描いたのだろうか。真実っぽくて鳥肌がたった。12.10.21
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現実か夢か幻か、生きているのかいないのか、作者は巧妙にその混ざり合った中ほどに読者を誘う。程よい倒錯が、この作品群をうまい味付けに仕上げている。どぎつい言葉が散見される割に、そのどぎつさとはかけ離れた巧妙なプロットでなかなかの作品に仕上げている。
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妙なものを読んでしまいました。
タイトルが放送禁止用語なので…ラスト2話がなんだか好きでした。
それよりなによりくぜさんの解説。「それが風の強いある日、「ぼっけえ、きょうてえ」という奇妙な本を抱えて現れ、低い声で〈志麻子〉と名乗った。一目で、私の娘だとわかった。」ひきこまれました。