嘘つきマルコと著者からの挑戦
2007/06/29 16:03
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
よく知られることに『東方見聞録』は
マルコ・ポーロと牢獄で知り合ったルスティケロの
口述筆記による旅行記である。
日本では『東方見聞録』と訳されているが
原題は”La Description du Monde”「世界の記述」。
またその写本として”Il Milione”「百万」が有名。
その本のなかの記述が当時のヨーロッパ人には信じられず
マルコ・ポーロはウソツキだと思われていた。
というのも有名ですね。
さらにマルコ・ポーロはアジアで見たものを
「百万」という数を用いて表現したので
「百万のマルコ」と呼ばれていた。
いまの日本でも「百万回言っても聞かない」などといいますね。
あるいは「嘘八百」とも。
本書ではそのルスティケロが
マルコの語る珍しい話を聞く場面を再現。
そこに貧しい若者4人を登場させ
さらに話はマルコの謎かけとなり
若者たちに挑戦している。
もうひとつ、マルコの話は作者の作り話というのも
さらなる読者への挑戦である。
また、とんちや謎かけによって退屈な牢から
5人の心をマルコは連れ出していく。
物語の力といえば、マルコの語りも定型で
その枠組みは昔話へと聞くものをいざなう力がある。
「私——すなわちマルコ・ポーロは、
かつて十七年の長きにわたってタタール人の偉大な王、
大ハーン・フビライに仕えていた。」
と始まる。それは、
「むかしむかし、あるところに……」
という定型が日本人にとって懐かしく安心でき
ワクワクとした気持ちにさせるのと
同様の効果がある。
しっかりとした枠組みのなかにもかかわらず
しかし物語の自由さは奔放でまぶしい。
黄金の国ジパング、大ハーンとの騎馬戦、
猿から言葉を聞き出す、美しい皇女との戦いなど
中央アジアを縦横無尽にマルコの話は駆け巡る。
物語の力と自由を感じる連作短編。
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チンギス・ハーンに仕えたマルコ・ポーロの回顧録という形式で、早い話がバカミス短編集。それまでの歴史偉人シリーズを期待して買ったが、その点やや肩透かしだった。決してつまらないという意味ではないけれど。
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ベースとなる枠組の中で、典型的な起承転結ストーリーが展開される。謎の提示は唐突で、結果が先に明かされるため一瞬きょとんとするが、読み慣れるとその不思議な間が魅力的に思えてくる。「なるほど」と唸らされる、とんちのきいた解決まで実にテンポよく進む。ノスタルジックな刑務所、マルコが語る壮大な話、固定されたキャラクター──ショートな短編集でありながら、作中の雰囲気がとても気に入った。ラストも手際よくまとめてあり、久しぶりに心地よい読後感だった。
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マルコ・ポーロが語る壮大なほら話。謎と結果が唐突に示され、そこから謎を解いていく形になる。短編らしく簡潔で、味気ない気もするが、それが面白い気もする。(2007/08/23)
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囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。
そこへやってきた新入り囚人、「百万(ほら吹き)のマルコ」ことマルコ・ポーロ。彼は自らの体験した不思議な物語を語りはじめる。囚人たちは知恵を絞って、その不可解な物語の謎を解こうと試みるが――。
ひとつひとつの物語はごくごく短い、短編連作集です。
ミステリというよりはパズル。
世界史でおなじみ、マルコ・ポーロを主人公に据えているのですが、どこからどこまでが史実で、どこからどこまでが仮想なの?と思わせるような、すみずみまできちんと同じ空気がゆきわたっている世界観が魅力です。
世界観がしっかりしているから、多少パズルがズッコケでも、あまり気にならずにさらさら読めます。
そして、この作品でなにより印象的なのは、マルコ・ポーロのまなざしのあたたかさ。
最後の最後のシーンにまで、マルコの大きなあたたかさと茶目っ気が満ちていて、なんだかふわんと穏やかな気持ちになれます。
毎日お風呂で一章ずつ読んでいたのですが、囚人たちと同じく、退屈を忘れて楽しめました。
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(収録作品)百万のマルコ/賭博に負けなし/色は匂へど/能弁な猿/山の老人/半分の半分/掟/真を告げるものは/輝く月の王女/雲の南/ナヤンの乱/一番遠くの景色/騙りは牢を破る
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マルコ・ポーロが主人公の、ファンタジー風ミステリ、といった印象。
マルコが見たり遭遇したりした様々な国の出来事を、数人であーでもないこーでもないと議論する過程が面白い。また、その出来事がそれぞれの国の風習や掟に沿っているため、突飛であったり飛躍していたりしていても、最後には納得のいくようにできている。
がちがちの本格というわけではないが、非常に魅力的な作品になっている。
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1298年から〜マルコ・ポーロがジェノヴァの牢獄内で、退屈している戦争捕虜仲間に外国で経験した面白い出来事を語り、その一部を秘めて煙に巻く。
一同が頭を捻った後で謎解きになる。
17歳で父と叔父と共に船出し、大ハーン・フビライに信頼されて重く用いられたマルコ・ポーロ。
百万野郎といった言い回しでほら吹きという意味になるらしい。
わかりやすく、ほら話的な楽しさもある短編集。
ジパングでは黄金を他国のいかなる物とも交換してはならないという掟があった。どうやって巨万の富を得たのか…?
大ハーンの馬に三番勝負で勝った方法は?
セイラン島で三人の王子の中から交渉相手になる跡継ぎを決めるため、猿と話が出来るといったわけは?等々。
金の国ジパングには行ってないくせに〜。
作者は1967年生まれ。2001年デビュー。
2002年から書き始められたシリーズの短編集、文庫オリジナルで2007年発行。
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「あんたの話でここから連れ出してくれ」戦争捕虜として牢の中に閉じ込められ退屈を持て余した5人は東方を旅しフビライハーンに仕えたというマルコの不思議な話を聞いてしばし謎解きに熱中する。毎回推理つき?連作小説。
あとがきによれば「東方見聞録」の内容に必ずしも忠実ではないらしい。マルコを上回る「ミリオーネ」?
市立図書館借用 20090818
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2009年版『このミステリーがすごい!』第2位。
少しおカタイイメージだったけど、割合軽妙な文体だった。
連作短編集(一作が約20P)というのも読みやすさの一因かと。
古典論理パズルがモチーフになっており、千波くんシリーズ(高田崇史)に
似ているな、と思ったり。
謎の提供の仕方が、マトリョーシカのような入れ子構造なのが面白い。
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B
牢獄にいるマルコポーロがチンギスの時にいた体験談を意味深に囚人たちに語り、それを囚人たちがわいわいと話て、最後にその話のおちを喋る短編話。
毎回テンプレされた形が愉快だった。
最近、この作家に注目。
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2009/12/31 Amazonより届く。
2022/4/1〜4/3
ジェノヴァの牢屋で退屈な日々を送る囚人たち。そこに新入りの「百万のマルコ」こと、マルコポーロがやってくる。彼の一見荒唐無稽と思われる謎の話に囚人たちは自分達の境遇を忘れて楽しむが、肝心なところがいつも謎のまま残されている。囚人たちは真相を推理するが・・・。トンチの効いた連作短編集。
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小話的短編集。個々のネタはわりかし小粒だし、ちょっとそれはこじつけじゃないか? と思えないこともないけれど、飄々とした印象で気軽に楽しく読める一冊。
お気に入りは「雲の南」。何ともぞくりと来る一話。そしてこれが一番ミステリ的で、面白い謎だったなあ。
それにしてもマルコ・ポーロって……いったい何を勘違いしてたんだろうなあ。黄金の国ジパングって。それが最大の謎(笑)。
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途中まで読んで終了。
どの話もパターンを踏襲していていいのだけども、いかんせんどれもなんだか聞いたことがあるような話。短編として週刊や月刊誌で読むのならいいけれども、1冊の単行本になるとなんだか飽きてしまう感じ…ということで最後まで読み終わらなかった。
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3月10日読了。戦争捕虜達が閉じこめられている牢に新しく入れられた捕虜、マルコ・ポーロ。退屈しのぎに彼が語る体験談は、いつも謎を残して終わってしまう。捕虜達はそれぞれ知恵を絞って推理をするが・・・という、ミステリーというより「頭の体操」的クイズ風の短編集。そういうものが好きなヒトにはお勧め。本格推理ものが好きなヒトにはツッコミどころ満載なんだろうけど(笑)