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アリストテレスの哲学書を読みたくなって、その予備段階として読んだ本。
2009/08/01 11:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
アリストテレスの哲学書を読みたくなって、その予備段階として読んだ本。
ギリシャ哲学は、ソクラテス、プラトン、アリストテレスとつながっていると思っていたのですが、思想的にはかなりの違いがあります。
特にプラトンの弟子であったアリストテレスは、プラトンの死後、師の哲学をそのまま受け入れるのではなく独自の展開を試みます。
それが最も顕著に表れるのが、「真理とは」という問いに対する答えの導き方。
プラトンは、あるものについての真理を「イデア」という現実を超越した絶対的な存在に答えを見出しました。
アリストテレスは、その考え方を否定しています。
彼にとっての真理の存在は、すべて現実世界にあるとしているのです。
つまり、現実世界に存在するものの中に内在しているということです。
哲学の目的は、真理への探究。
一見、現実世界から離れた学問と思いがちですが、彼の思想は現実からすべてを説明しようとしているのです。
物事の本質を考える機会がめっきり減った現代人には、そういう思考の時間も必要だと思いました。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
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2006/10/30。ちくま新書は、値段も手頃で理解しやすい。値段関係なく、ちくま新書以上に、手軽に深い専門知識を得たいのなら、講談社メチエもお勧め。
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めも)
・問答法的推論(非形式的推論)の有用性 67
論証は真である命題すべてを結論付けられない。
ある命題を証明するためには、その前提となる命題が真である必要がある。さらにその前提そのものを証明するためには、さらなる前提が真でなければならず…このように前提を考えていくと、必ず「最初の証明」に行き着く。アリストテレスが論証と呼ぶのは、そのようなそれ以上証明することができない最初の証明のことである。論証の前提となる命題自体は証明できない。/
問答法的推論は、論証の前提となる事柄を論じることができるということである。
これ自体は「証明」ではなく、前提の蓋然性を示すものにすぎない。したがって、それが確実な命題であるためには、問答法の手続きだけでなく、直観や知性が前提の真実性を認める必要がある。
・推論 syllogismos の三分類 65
推論―何らかの事柄を出発点として結論を導く論理的手続き
1.「論証」―学問的で厳密
2.「問答法的推論」
3.「論争法的推論」…詭弁、誤った推論
・noesis noeseos (self-contemplative thought) 192,193
「質料をもたないもの」(知性によって知られる)を認識する思惟は、思惟されるものと同一。
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[ 内容 ]
プラトンとならぶ古代ギリシア哲学の巨人アリストテレス。
彼はのちのヨーロッパ哲学に影響を与えただけではない。
いわゆる三段論法を中心とする形式論理学の基礎を築き、具体・抽象、普遍・個別、可能・現実といった概念を創始して、近代自然科学の発展をささえる知の総合的な枠組をつくりあげた。
われわれがさまざまな事柄を考える際の思考法そのものに関わる問題を、彼はどのように追求していったのか。
本書は、そのねばりづよい知の探求の軌跡をたどるアリストテレス再発見の試みである。
[ 目次 ]
序章 アリストテレス再発見
第1章 知への欲求
第2章 論理学の誕生
第3章 知の方法
第4章 自然と原因
第5章 実体と本質
第6章 現実への視点
第7章 生命の意味
第8章 善の追求
第9章 よく生きること
終章 アリストテレスと現代
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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アリストテレスの体系をプラトンと比較して書いてあり分かりやすい。全ての物事の原因に神を考えている点や生きる目的としての徳は愛である点などがキリスト教と親和性が高い原因であるのだろう。入門書として読むのに良い。アリストテレスの現代的な意義は彼の思考のプロセスをトレースすることにあると書かれている。
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理論と実践、正義と善、幸福と政治、そういうことについてもう一度アリストテレスに立ち返ってみよう、ということで読みました。ただ論理学のところはもうちょっとわかりやすく説明して欲しかったなあ。
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オフィス樋口Booksの記事と重複しています。記事のアドレスは次の通りです。
http://books-officehiguchi.com/archives/3983132.html
紀元前の哲学者であるが、現代でも注目されている哲学者のひとりである。私の研究分野とアリストテレスとの関連する点として、「政治学」「正義」「哲学」「倫理学」が挙げられる。読者の研究分野と問題意識に応じて、アリストテレスを通して知識と教養を得てほしいと思う。
最後に、入門書だけでなく、専門書を読みたい人は終わりに読書案内があるので、参考にしてほしい。
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アリストテレスの哲学の入門書。論理学、形而上学、自然学、倫理学の全般にわたって、わかりやすく解説している。
アリストテレスが難しいのは、なぜそのように考えなければならないのかが見えにくいからではないかと、個人的には思う。本書は、「私たちがさまざまな事柄について考える際の思考法そのものにかかわる問題を考えさせてくれる」ところに、アリストテレスの哲学の現代的意義を認めるという視角から、アリストテレスがさまざまな問題にどのように取り組んだのかを解説しており、彼の発想の理由を見てとりやすい記述がなされている。
とはいうものの、やはりアリストテレスを新書で解説するのは難しいという感想を抱いたのも事実だ。たとえばプラトンであれば、「イデア」という中心概念によってその思想を統一的に理解することが可能だろう。これに対して、アリストテレスの「実体」(ousia)という概念には複雑な論点が入り混じっており、それによってアリストテレス哲学の全貌を見通すことのできるような視点を与えてくれるわけではない。
ある文脈では、実体には質料としての実体と、形相としての実体、そして両者から成るものがあるとアリストテレスは述べている。だが別の文脈では、本質、普遍、類、基体という4つのものが実体と呼ばれうるとされている。本書では、こうした複数の視点の共存は、「私たちがさまざまな事柄について考える際の思考法そのもの」に関わっていることが明確に述べられている。私たちは「ある」という言葉をさまざまな仕方で用いており、その多様性はカテゴリー間の区別であったり、可能性と現実性の違いであったり、「それ自体である」か「付帯的にある」かの違いだったりする。こうした「私たちがさまざまな事柄について考える際の思考法そのもの」の多様性を明確にすることで、私たちが世界や事実を理解する仕方を解き明かしてゆくことが、アリストテレスの思考法の際立った特徴になっているのである。
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「万学の祖」と呼ばれるアリストテレス。現代文明の多くの礎を築いたとも言える。現代人は思弁的すぎるように思う。今一度アリストテレス先生のように、この世界そして現世の人々をよく観ようとすると意思を示すべきかもしれない。
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こちらも10年前に読んで以来、久しぶりに引っ張り出してきた。アリストテレスは形式論理学を作った人であり、本来ならもっと尊敬すべきなんだけど、私は理念先行のプラトンの方が好き。だって、アリストテレスは完全に科学者/技術者なカテゴリの人なんだもん(昔はそんな区別はなく、学問をする人はみんな「哲学者」だった)。もっとも、プラトン的な合理主義では「カネにならない」のが大問題なわけであるが。。。(プラトンの合理主義は、日本語でいうところの効率的合理主義とはまったく異なり、まさに「理想的な理」に適っているということ)
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書名の通り、アリストテレスの入門書である。しかも、(専門家から見ればどうだか知らないが、素人の僕から見れば)この種の入門書に期待される諸々の基準を十全に満たした内容と見える。簡潔な文体で、アリストテレスの様々な業績を解き明かしていく。
ざっくりとした印象だが、アリストテレスは物事をやたらと分類するのがお好きなようで、この点現代のいわゆる「学者肌」の人物と通じるところがある。というか、実際のところ、彼が実践した分析思考という学術研究のアティテュードが現代にいたるまで引き継がれてきているというのが本当なんだろう。なにしろ彼は「万学の祖」と呼ばれる人物である。
それはともかく、彼はいろいろと分類し、その過程でいろいろと概念を発明している。したがって、本書にもそのような概念があちこちに出てくる。これらについて、逐一丁寧な説明はなされるものの、読み進めていくうちに説明された内容を忘れてしまったり、他の概念と混同して訳が分からなくなってしまったりというのは初学者の常である。というか僕がそうなりがちなのだが、その際には巻末についている索引を利用して、該当語句の初出箇所に立ち戻ってみるといいと思う。
新書に索引がつくのは珍しい。詳細な出典一覧もそうだが、大変配慮の行き届いたつくりだと思った。
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アリストテレスの思想のつまみぐい。それぞれピックアップしてまとめてくれているので、頭の整理に役立ったような気がしますが、ふりかえってみると、特に印象がなかったりするのも事実。まあ、悪い印象はないので、極端に間違ったり偏ったりということはなかったんでしょう、きっと。(2014年5月5日読了)
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アリストテレス。その膨大さ、翻訳の難解(であろう)さにビビって、評判の良いこの入門書から入る。
プラトンの思索の深さは、対話篇という方法に宿っている。
アリストテレスの深さ、広大さは、どこからくるのか?それは観察と情報収集という方法に根付くのだろう。
カテゴリーにしろ論理学にしろ、アリストテレスの独自さの根っこには、膨大な情報に立ち向かう方法からうまれてきたのかな、と思わせるものがある。
それを支えているのは「やむにやまれぬ知ることへの情熱」でしかないものがある。
また、未完で終わった(ように残ったものからは見える)体系も、膨大な情報量と情熱との前に時間が足りなさすぎたようにも感じる。
イデアを批判していることは、例えば、知識は経験を経て得られるものということ。イデアがあるのであれば、それは感覚や経験から直接、観想されるのではなかろうか、と。いや、知識はあくまで抽出されるのだ。つまり、帰納法的なものなのかな、と、理解した。
論理学を創始したこと、また、論理学に使う名辞をアルファベット表記したことには恐れ入る。
ゲーデルが自己言及させた方法も、ここに始まるのだ。
と、同時に非形式論理も扱っている。
具体的、というのを、形相と質料のそろったものとし、そこから形相だけを分離して考えることを抽象という考え方は目から鱗だ。抽象化というのをここまでわかりやすく説明したものはないだろう。
プラトンをこの世界の事物をそれ自体として自足したものと考えずに、その外にイデアを想定したのと対照に、アリストテレスは明らかにこの世界のなかで考えることを前提としている、という対比がとても面白い。アリストテレスはものの本質を個別的な実体に内在するものと考える。イデアは個別的な実体にはみえない。ラファエロの絵はこの対比としてみてとれる。
面白かったのは、アリストテレスがやはり体系としては未完ともみえる対立を残してること。立場による、というような相対性にいること。
これはカテゴリーなどのような厳密さを追求した結果、厳密さが伴わずにはいられない矛盾、限界への発見に基づいたのではないか。
結果的に複数の視点が共存していることこそ今日的には重要な点となるようにも思える。
可能的なものと現実的なものとの区別も面白い。可能的なものが、プロセスを経て、現実性のものになり、現実性のものが実施される、その実施、行動、活動にこそ幸福が宿る、というのは、サン=テグジュペリを読んだあとだけに、まさしく!となる。
アリストテレスの天動説があったからこそ、それを否定するものとして、コペルニクスがありえたわけである。
アリストテレスが種というものを定義して、それを、固定した形相を受け継ぐもの、としたからこそ、種の起原としてダーウィンは種の進化を唱えることができたわけだ。
すべての学問がなんらかの善を目指しているのだが、善そのものを目指すことはない、というのも、プラグマティックと言っていいのか、素晴らしい最高のプラトンへの回答でもある。
相対的であること、保留されてること、帰納的であること、プラグマティックであること、広大であること、創始者であること、プラトンの対立者であること、アリストテレスの重要性はなかなか説明しきれないことがこの本だけでめちゃくちゃわかった。
さぁて、気を引き締めて、アリストテレスに入るか。
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先日読んだマルクス・ガブリエル「新実存主義」でも言及されていたアリストテレス。2,400年の時を経た今もなお哲学・自然科学の分野で参照され続けるには絶対何か理由があるはず。それが知りたくて、「魂について」(邦訳題は「心とは何か」講談社学術文庫)の予習としての意味も込めて本書を購入。
アリストテレスはよく言われるように、経験から得られる知識をもとに普遍的な原因や原理(アルケー)を知ることを最上とした。有名な三段推論法も、プラトンのイデア批判も、全て世界の事物の存在を前提とした「経験主義」ともいえるプリンシパルから生じている。しかし著者によれば、アリストテレスの経験主義は単なる事実の知にとどまるのではなく、事実の原因やその背後の原理を探究することを要求するものであったという。確かにこう考えれば、実用的な知(製作知・実用知)よりも、知ることそれ自体に意味があるような知(観想知)を上位に置くというアリストテレスの態度がよく理解できる。
「心とは何か」を読んで驚いたことの一つに、人間の感覚機能についてのアリストテレスの描写が、今日の常識と比べて全くといっていいほど違和感がないことがあったが、本書に紹介されているイデア批判を読んで得心がいった。アリストテレスは対象の経験から遊離した本質の存在を認めず、あくまで感覚された具体の中に本質を求めていたのだ。畢竟、アリストテレスが五感を重視しその発現過程の探究に力点をおいたのも理解できる。
また以前読んだ「アリストテレス・生物学の創造(アルマン・マリー・ルノワ著、みすず書房刊)」で論じられていたアリストテレス的目的論の根拠は、本書でもやはり生物種固有の機能の世代間維持、すなわち形相の維持にあるとされている。その形相も、個別と普遍を架橋するというその本質からして、やはり経験による個別の実体の把握を経なければ把握されないものなのである。
全編を通じて、ブレのないアリストテレスの像を得ることができた。
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入門書として、よく構成されている。記述もできるだけ誤解のないように配慮されている。
哲学書を読む中で、しばしばアリストテレスの概念が引用され、なんとなく理解してきたことが本書ではっきりとした輪郭をつかむことができた。それも彼の発想の源までたどる説明をしてくれたおかげだ。
刺激は少ないが、主要な概念をきっちりと抑えることができる、事典的な効果をもった本である。