紙の本
文豪の作品を敬遠している人に特にお勧めの、優しい再生の物語
2012/04/15 23:24
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちゃき - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても瀬尾まいこ作品らしい、優しい再生の物語。
肩肘張らない文学の楽しみ方を教えてくれる素敵な本です。
正しくあることこそが美徳だと信じていた清は、その真っすぐさが仇となり、
ある出来事をきっかけに、友人も、それまで彼女にとってすべてであった
バレーボールをも失うこととなる。
目標を失くし、流されるまま高校の講師になった彼女は、
赴任先の学校でどういうわけか運動部ではなく文学部の顧問になる。
部員はたった一名、2年生の垣内君のみ。
海にほど近い小さな街で、やる気のなかった講師を続けるうちに
気付き始める「正しさ」よりも大切な「優しさ」。
清よりもいい加減な性格のはずの弟が、
切花をより長持ちさせることを不思議に思う清に言う。
「結局は水清ければ魚棲まずだよ」、と。
正しくあること、それ自体には何の問題もない。
けれど、清廉潔癖な人は時に他人を息苦しくさせる。
それどころか、正しさを振りかざして人傷つけてしまうことさえある。
そのことが理解できなかった以前の清より、奥さんがいる人と恋愛したり、
いい加減な授業をしてみたり、生徒の垣内君に無茶振りしたりしている
清の方が、人として好意が持てはしないか?
もちろん彼女の根っこにある真面目さがあってこそ許せる
いい加減さだということも確かなのだけれど。
ほんの少し自分を甘やかしてやることで人に対しても寛容になれるのなら、
きっとその方がいいのだろうなと私は思う。
喪失からの回復と再生という、メインのストーリーもさることながら、
文学を楽しいものとして紹介しているところがこの本の大きな魅力だと私は思う。
国語の講師のくせに、文学になんの思い入れもない清と、
本来、体育会系のはずなのに、文学に情熱を傾ける垣内君。
この二人の教師と生徒の立場がまるで逆転したような会話によって、
一般的に小難しいと思われがちな文豪の作品を、
肩肘張らずに楽しめる本としてごく自然にアピールすることに成功している。
元々、学校で強制的に読まされた夏目漱石も太宰治も森鴎外も、
本と名のつくものは大抵喜んで読んでいた私だけれど、
それでもこんな風に文学作品を語ってくれる大人がいたら、
敷居が高そうな作品にも、もっと果敢にチャレンジしようと思えたんじゃないかと思う。
私も清みたいに、川端康成で爆笑したり、
夏目漱石で怖くて眠れなくなったりしてみたい。
私が国語の先生なら、この本を教材として使いたいなと思う。
読書があんまり好きではない人にこそ読んでもらいたい、そんな一冊です。
紙の本
この本を
2021/11/08 16:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おどおどさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んだ時、「はだしのゲン」って第二章?もあるのか…とびっくりして、慌てて図書館で借りようとしたら、なかったみたいですね。
でも自分は図書館が大好きなので、スラスラ読んでしまった。また図書館で、この本を借りて、また読みたい。
紙の本
やっぱり瀬尾まいこ!
2015/09/20 20:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プアリリレフア - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の本当の気持ちを抑えて生きている「私」とただ一人の文芸部員「垣内君」の会話は、やっぱり瀬尾まいこ!「私」が過去の出来事から解き放されて再生していく様子が熱くなく描かれているのが心地よい。
「先生の明日と明後日がいい天気であることを祈ってます」なんて、垣内君、センス良すぎるよ。
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初めて読んだぞ、瀬尾まいこーーーー!!!
図書館大好きのため、タイトルに惹かれて購入。
うまい!さすがだ。
本職が教師だけあって、学校描写が上手い。
この人も青春を書かせたら上手いな。
作品に優しい時間が流れている。
おもしろかった。
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駅の待ち時間用にキオスクで購入。人物に感情移入しにくかったが読んでいく間にだんだんおもしろくなっていった
筑摩出版は少しくせがあるけどやはりおもしろい。
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垣内君に惚れた。
かっこよすぎる。
最後の演説?は微妙だったけど。
温室デイズと同様に学校モノだったけど、
こちらは主人公が学生でないからか、
あまり抵抗なく読めた。
また読みたい。
もちろん垣内君に会うために。笑
浅見さんが好きじゃない。
自分の経験からの偏った好き嫌いで申し訳ないけど、
やっぱり浅見さんは好きじゃない。
ごめんね、浅見さん。
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出会いが別れを呼ぶ。
別れは出会いを呼ぶ。
単純なことなのに、なぜか胸が熱くなった。
無意識のうちに過去の自分と重ねていたからかもしれない。
人のことを一生懸命考えているふりをしていた高校時代。
あの時読んでいたら、きっとあの結果は違っていたかも。
自分の当たり前はきっと誰の当たり前でもなくて。
自分の正義を振り翳してあの人を傷つけたあの言葉も。
幼さゆえの過ちとはいえ、今もまだ消えずに残っていて。
ふとした瞬間のフラッシュバックが恐怖を引き起こす。
直接的、間接的に関わらずとも人を傷つけた経験がある人は。
同じ過ちを繰り返したくないからこそ、臆病になる。
傷ついた2人が傷を舐め合うように見えなくもないけど。
適度な距離感が描かれていてとても気持ち良かった。
過去のトラウマは今も無意識の中に深く刻み込まれているけど。
ようやく冷静に向き合える時期がきたのかもしれない。
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とても切ない物語のはずなのに、どういうわけか、読み終ると妙になごんでしまいます。
瀬尾さんの本はいつもそうです。
そしてその雰囲気がとても好き。
「先生の明日と明後日がいい天気であることを祈っています。」
というお手紙の文章が大変気に入りました。
《所持》
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のんびりした小説だな、と思った。
あえていいなって思ったのは、
学校が海の近くっていうところ。
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『幸福な食卓』と『天国はまだ遠く』を読んで以来の瀬尾まいこさんの作品。
タイトルが気になってて、文庫になるのを待っていました。
図書館ってロマンチックではないですか。
『耳をすませば』を思い出します。
地元を離れて、国語の講師になった清(きよ)。
文芸部の顧問になり、たった一人の部員である図書館の神様、垣内くんと過ごすなかで、
不倫やら過去のトラウマやらから解き放たれる物語。
うーん。
前に読んだ2作と雰囲気が同じだった。
で、その2作とも主人公が好きじゃなかったのだけど、
今回もそんな印象でした。
読みやすいし、それなりにおもしろく、さわやか。
川端康成の鼻血の話なんか、純文学を読みたい気持ちにさせられました。
それに、高校生とは思えない落ち着きを払った垣内くんや
姉思いの優しい弟もまあまあ魅力的。
ただ、主人公がどうしてか好きな感じじゃない。
でも、リアルにステレオタイプな女性ではある。
学校の図書館に行きたくなったけれど、
行けないので、代わりに中野の図書館に行った。
文学は、いいよ。
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始めは、清の教師としての姿勢や文芸部に対する考え方に反感を持ったけれど、読む進めていくにつれ、話に引き込まれていきました。
解説にも書いてあるけれど、狎れあわない、でもどこか深くてつながっている、垣内くんと清の関係が素敵です。
そして、お話のなかに出てくる文学を、実際に読んでみたくなりました。
最後の「文学なんてみんなが好き勝手にやればいい。だけど、すごい面白いんだ」には賛同。
垣内君のノートの詩も素敵。
「雨って、昔自分が流した涙かもしれない。心が弱くなった時に、その流しておいた涙が僕達を慰めるために、雨になって僕達を濡らしているんだよ」
「先生が先生になるなんて、喜ばしく思います。先生の明日と明後日がいい天気であることを祈っています。」
―こんな手紙、もらってみたい!
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自分にはその気がなくても人を傷つけていたり、攻撃的になっていたりすることってあるのかもしれない。
自分にとって当たり前に感じることも、他人にしたら当たり前でもなんでもないこと、価値観って人それぞれだよなって思った。
つらいことがあって、それまで正しいと思ってたことが全部覆されてしまう感覚はイメージできる。つらいだろうなって。
図書館での毎日が淡々としてるけど、生きているっていうのを感じることができて、不思議に心に残る本だった。
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瀬尾さんの作品の特徴は全体があっさりした雰囲気なのに、それだけでは終わらないところ。読後、どっしり。トン、と背中を押す。すごい。
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すごく瀬尾まいこさんらしいなあと思う。好き。
日常には切なさがあって、だけどその状況を悲観するかどうかってその人によって違う。
みんな過去にはいろいろある。
それを言いふらすこともないんだろうし、
それこそ言うべき時を知っていることが正義なんだろうなあと思った。
下手に難しいことばを使わないところが好きです。
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軽やかで、元気になれる本でした。
中学校の先生である主人公が、
「本<スポーツ」と生徒の垣内君に押し付ける最初のあたりは、
個人的にはかなり腹ただしいのですが、あっさりと流す垣内君は中学生なのに大人です。
楽しく読みながら、もし主人公と垣内君が恋仲っぽくなる展開になったらいやだなあ…と心配していたのですが、杞憂でした。
むしろあっさりすぎるくらいそんなの一切なく、とても楽しく読みきることができました。
何でも恋愛にむすびつけるのではない、この距離感が好きでした。