完訳 ハックルベリ・フィンの冒険(下) ――マーク・トウェイン・コレクション(1) みんなのレビュー
- マーク・トウェイン (著), 加島祥造 (訳)
- 税込価格:715円(6pt)
- 出版社:筑摩書房
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紙の本
名作
2020/12/13 20:04
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
積読だったのを読み始めてとてもおもしろく読んだ。作中『黒んぼ』という言葉が頻出したり、父親がハックを殴ったりで、そうした部分を敵視する向きもありそう。でも良い意味でアメリカらしい大らかさ、それに語りにも躍動感があって純粋にわくわくとさせてくれる。ハックは飲んだくれの父にひどい仕打ちを受けながらもそれに負けず屈託なく生きる。友情を大事にする気のいい少年で気持ちいいやつだ。それに逃亡奴隷のジムとのやりとりも良く書けているしその人間性を次第に認めていく過程も自然にごく自然に描かれている。時代の制約で逃亡奴隷を助けることに良心の呵責も覚えるところも隠さず語られる。途中から道中を供にする悪役の「王様」「公爵」も、その報いなのか哀れな末路にはあっても愛すべき人物。ここには世界の厳しい面も描かれていて綺麗なばかりの童話的なものではなく、いくつかの死が当然のように織り込まれているのでちょっと驚かされる。
終盤のご都合主義なところは確かにある。ジムが捕らわれたのがトムの親戚の家だったなんて、もう少し何とかならなかったのか。トムの空想癖も少なからず煩わしく、さっさとジムを開放しないのはページ稼ぎではないかとも思った。でもそうした欠点も全体を通じて致命的なほどではないと思う。なんと言ってもハックの語る物語はすがすがしい。川下りというモチーフは後世のいくつかの小説にも出てくるが、この小説もその原型のひとつだったのか。どのみち名作という誉れにふさわしい。
紙の本
ハックが教えてくれた、本当の自由
2002/01/05 16:19
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投稿者:樹崎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、小学生のときに、「トム・ソーヤの冒険」の続編として、今度は、ハックが、どんな冒険をするのだろう…と、期待に胸を膨らませながら、読み始めたのを覚えています。初めは、「トム…」に比べると、ハックの一人称ということもあり、地味で、(テーマが大きすぎて)つかみ所が無く、単純明快な「トム…」の方がお気に入りでした。けれど、歳を重ねて、何度も読み返すようになったのは、この作品。物語の中で、ハックが一生懸命考えていた問題は、自分自身にも問い掛けるものがあったからなのでしょうか。
「トム…」で、大金持ちになり、ワトソン夫人に引き取られたハックですが、酒乱の父親に連れ戻され、これ幸いとばかりに、汲々とした文明生活を抜け出して、筏でミシシッピー川を下るという大冒険に出かけます。相棒は、逃亡奴隷のジム。ミシシッピーの大自然の中を、自然児ハックが、何物にもとらわれず、自由奔放に生きる姿は、眩しくて、大きな憧れを抱きました。
ですが、そんなハックにも、黒人奴隷の逃亡を助けることは、卑しい悪事だという認識があって、ジムを奴隷制の無い自由州へと逃すことに、罪の意識を感じて、苦しみます。冒険の中で育まれていく友情。ハックには、なぜ、ジムが他人の所有物であるのか、分からなくなってきます。そして、ジムを人と意識する自分も、普通ではないかもしれない…と、真剣に悩んで、神様に懺悔したりするのです。
当時のアメリカは、黒人奴隷制度を認める州と、廃止した州が混在する状況で、作者自身、こうした制度に批判するものの、完全に否定しきれず、最後の最後で、トム・ソーヤを登場させ、冒険物語のラストとして締めくくっています。
社会秩序や通念の道徳が、必ずしも、正しいとは限らないものです。おかしいことはおかしい、逆に、正しいことは正しいと、自分で決断できる自由を持つこと…確かに、自然児でない我々には、とても難しいことかもしれません。けれど、ハックの冒険のように、ちょっと困難だけど、朗らかで気持ちのいいもの…やはり、そういうものには、憧れるのです。
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