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山風は人の上に忍者を造らず人の下に忍者を造らずと言えり
2004/07/08 21:39
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投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「てめぇら、人間じゃねぇ!」
この台詞は、非道い所業を行った相手に対して向けられる。人の道に外れた事をしたお前が、自分と同じ人間であるはずがない。そう非難しているのだ。さて、山風忍法帖に登場する忍者達に対しても、やはりこの台詞を言いたくなる。但し、今度は文字通りの意味で。
なぜならば彼等は交合によって性を変えるわ、斬られても手足どころか首まで再生するわ、果ては、男が女の体内に収まり一瞬の間に女の中で再び零才から現在の年まで成長するという驚くべき技を持つわ…、実に変貌自在な身体を持っている。絶対同じDNAを持っているとは思えない。だが、精神(こころ)はどうだろうか。
一人一人が超絶の技を持っているのだから、彼等だけで軍団を作ってしまえば、そこいらの大名にすぐに取って代われる一大勢力になると思うのだが、なぜか彼等はお仕え専門である。『忍者野晒銀四郎』の野晒一族のように、一族の者が失態を犯したとなれば、皆で腹を斬るというのは当たり前。部外者から見ればどんなに理不尽でも、彼等は鉄の掟と主君の命には逆らわない。そして『忍者野晒銀四郎』の場合は「忍法生死人(いきしびと)」、『忍者梟無左衛門』では袋返しという自らの命をとことん危険に晒す忍法にも果敢に挑む。強い精神力と、自在な身体。二つをあわせ持つ忍者達には、同じ忍者はさておき、一般人は彼等にかなうまい。ところが予測は外れた。『忍者鶉留五郎』では、「俺が心血注いであみ出した忍法に歯の立つ奴が、またとあろうとは思われぬ。世に恐ろしいものは何もない」と言い切って、勇んで飛び出した鶉留五郎が、暗殺相手の大名を見て竦む。一体何が、留五郎を怯ませたのか? 『忍者帷子万助』で帷子万助は、自らの命を3年縮める「枯葉だたみ」に成功し、師匠の娘であり婚約者の危機を救った。これからやっと幸せになれるという所で、彼は二人に別れを告げる。「えっ、忍者がそんな事で?」 答えを知って意外に思うか? 否であった。想像を絶する技をして、外見を変えて、とても人間のように見えない彼等の精神(こころ)は、とても人間らしく身近なものに思えた。逆に、野晒銀四郎を利用する主君の愛妾・おゆうの方と家老の酒井内蔵、「忍者枯葉塔九郎」で塔九郎の頼みをきくふりをして自分だけいい目を見ようとする筧隼人。彼等こそに、この台詞はふさわしい。
「てめぇら、人間じゃねぇ!」
「忍者枯葉塔九郎」を水木しげる氏が漫画化した山田風雲斎が登場する「大いなる幻術」、プレ・『魔界転生』の森宗意軒と由比正雪のコンビが暗躍する「忍者仁木弾正」、大丸呉服店が変身ルームと化する「忍者枝垂七十郎」、エッセイ「『甲子夜話』の忍者」を含む全12編収録。
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