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乱視読者の新冒険 みんなのレビュー

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みんなのレビュー4件

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紙の本

精読者は濫読者を馬鹿にする傾向がある。とくに、小説を書かない大学系の文学者にそれが多い。若島もその域を出ていない。読書の楽しみに上下はないのだが…

2005/03/19 22:07

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

若島は1952年京都生まれで、1975年京大理学部卒業、1980年同文学部卒業、現在京大大学院文学研究科教授というから、途中、理学部→文学部という大転換こそあるけれど、一度として京都を出たことはないであろう、ある意味、京都生まれの人にとって王道を行くような人生を送っている(と傍目には見える)。著者略歴に載っている著作・翻訳の数はかなりなもの。

で、若島が転向?したことは第1部のなかの「にゅるにゅるの話」で早速「数学をやっていたころには、まわりの人間がみな天才に見えたし、事実ほんとうに凄い奴もいた。ところが文学研究ではそういう奴についぞお目にかからない。(中略)文学の世界では、頭のいいことが必ずしも喜ばしいことではないのである」といった不穏なことばで説明される。

この第1部でいいなあ、と思ったのは、わが国では死と共に忘れ去られたかの感が強いけれど、現代イギリス文学を語る上で欠かせない作家グレアム・グリーンへの言及「物語との旅」「グリーンの演劇的瞬間」で、思わず私も『叔母との旅』をもう一度読み直したくなったほど。

第2部では、「小春姐さんへの手紙」だろうか。いかにも、若い人の美しい女性に寄せる思いが伝わって心地よい。さすが京都だと思う。そして、第4部への伏線となる「教壇に死す」だろうか。わたしはナボコフを殆ど読んでいない為、ここにその名前が出てきて、ほー、と思ってしまう。

第3部は、いかにも元数学者らしい、といえるけれど、冒頭「失われた町」で語られるジャック・フィニィ、その限界といった部分は、彼の作品を読んでなんとももどかしい思いを抱いたことがあるだけに、思わず肯く。そして、ジョイスとの比較。こう書かれたら『ユリシーズ』を避けていることができなくなる。

第4部は、『ロリータ』あるいはナボコフ論とでもいえばいいのだろう。ここで、私と若島、或いは一読者と学者の本の読み方の差がはっきりとする。若島は『ロリータ』を繰り返し読むことで、発見を積み重ね、その世界の虜となり、一読して筋だけを追ってしまった人間に、読む楽しみをしらないかのようにマニアックな読み方の楽しさを教える。まさに学者の文章である。

世の中には深く読むことではなく広く読むことで得られる悦びがあろうとはご存知ないらしい。どちらが上ではない。ただ、若島の文を読みながら、併行して読んでいる瀬名秀明『科学の最前線で研究者は何をみているのか』のなかの信州大学助教授である菊池聡との対談「人はなぜ「あんなこと」を信じてしまうのか」の中の一文「もともと人間の心には、関係のないところに関係を見つけ出してしまうという心理的なメカニズムがあるのです」がやけに気になる。

ナボコフの一文一文に関係を持たせ、伏線を韜晦を見出す。見出せない人間は、読書の素人であるかのようにいう。評論にそのような一面があることは否定しない。しかし、それはそうすることを飯の種にする御仁に任せよう。その気になれば関係なんてそこにだって見出せる、ちょうどノストラダスムのように。しかし、それに囚われない人間もいて、その気軽さ(気楽さ、ではない)も極めて重要なのだ。

最後の「リチャード・カウパーのために」にも、そういった学者らしい若島の発見が披瀝されるが、いままでその論法に慣れ親しんでしまった私には、そうか、でも荒俣宏のほうがもっと楽しく出会いを描くのになあ、と思うだけである。ちなみに、若島があげるSF作家としてのカウパー、多分夫の書斎のどこかにサンリオSF文庫の一冊としてしまわれてはいるのだろうけれど私には初めてきく名前。まして父上の名前など英文学の専門でもない人間にはチンプンカンプンだろう。

いずれにしても、学者らしい文章で、特に『ロリータ』を様々に検索する部分などは、まさに理学系出身の研究者でなければ思いつかない、あるいはやろうとはしない試みだろう。

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2010/12/29 01:33

投稿元:ブクログ

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