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ちょっと変り種。主人公が基本的に傍観者なので。忍者対忍者も、間に赤穂浪士挟んでやってるからちょっと変わってる。
それがいいほうに行ってるかは微妙だけど…
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史実と、荒唐無稽と言ってもいいくらい想像力を働かせたフィクションを絡め合わせた物語はさすが。読み始めると辞められない。相変わらずの登場人物の「使い捨て」はものすごいけど。
主人公の持つ虚無感が一種異様である。冒頭と末尾を飾る「刺身」のすさまじさ。にもかかわらず、その主人公が狂おしいほど求めているのが「愛」であるのが哀しい。「忠臣蔵」という建前というか理屈(たとえば「忠」とか呼ぶ)ものへのアンチテーゼとして、はっとするような光を放つ、哀しい虚無である。
投げ捨てるようなラストシーン。とても印象的だ。
2007/7/11
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『拙者、忠義と女は大きらいでござる』
風太郎忍法帖第七作。
忠臣蔵に忍法争いを絡めるだけでも奇想天外ですが、その舞台設定も想像を超えています。
浅野家の浪士達の討入を阻止するため、忍者を放つは吉良家ではなく上杉家。主君「上杉綱憲」により主導者の討伐を命じられた「能登忍者十人衆」vs 家老「千坂兵部」により浪士討伐を阻止し色仕掛けにより浪士を骨抜きにするよう命じられた「能登くノ一六人衆」と伊賀忍者「無名綱太郎」。何とも複雑な構図です。
さらに、主人公の綱太郎は、風太郎忍法帖屈指の強さを誇りながら、忍法争いには積極的に参加せず、くノ一の補助と監視に徹するという、これまた異色な設定。
忠義と肉欲の間で揺れ動く浪士達の葛藤はもちろん、
忠臣蔵のテーマである「忠義」に投げかけられる疑問も印象的です。
世にもてはやされる忠義とその裏で生じる犠牲。
何が正しくて何が間違っているのか?
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女体刺身!!
史実が基なので謀略の結果は見えているのですが、無明綱太郎のラストは虚無的で余韻を残します。
「忠臣蔵」という有名な「忠義」をテーマにした事件に、女と忠義を嫌う無明を絡ませたのがおもしろい。
気高き武士道を貫こうとする男達を、あの手この手で堕とそうとする女忍者達は淫乱で壮絶でした。
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相変わらず奇想天外で、馬鹿馬鹿しい。今回は無明綱太郎という主人公の忍者の造型が抜群に良かった。再登場しないかな。
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忠臣蔵か、と思いながら読見始めましたが大分雰囲気が違います。すごくよく考えてストーリーを構成しているなぁ、と素直に感心してしまいます。個人的には主人公の思考の動きがちょっと解せませんね。なので、最後の終わり方もちょっと納得いかないですね。
前作もそうですが、よくもまぁ、一人一人違う忍法を考えるものだと思う。
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忠臣蔵の赤穂浪士たちを阻止するために上杉家に依頼され、様々な罠を張り巡り画策する無明網太郎と能登の女忍者たち。
相変わらずハラハラドキドキ感がすごい!
一巻よりも更にグロテスクな描写が多いのでちょっとオエッとなったものの、忍法バトルのやり取りがおもしろすぎて一気に読んでしまった。
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相変わらずの面白さ。
ぶっ飛んだ忍者が出てくるという
風太郎パターンは同じなんだけど
ついつい読んでしまう中毒的小説。
堅い小説読んだ後にはこういうのお勧め。
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これは面白い。仇討ちから脱盟した赤穂浪人達の物語と捉えれば、井上ひさしの「不忠臣蔵」に匹敵する程の面白さ。快男児然として登場した綱太郎の、終盤に向かうにつれてのあまりの変容ぶりに驚く。
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相変わらずの面白さ、解説の馳星周氏の言葉の通り「読み出すと止まらなくなる」
元禄赤穂事件を題材にし、赤穂四十七士の討ち入りに至るまでの裏模様を描いている。発端と結末の史実を変えることはない、忍法帖の特色としてその紆余曲折を、虚実合わせて描き、歴史の裏に埋もれたであろう(全くの創作かもしれぬが?)人々(忍者等々)を、誰に偏るでもなく冷徹な視線で描く。その視線からこそが物語中において、強烈な叙情を持って読者に語りかけてくるに容易いのだ。
今作において赤穂四十七士の有名人物も多数登場するが、メインとなるのは「主君の仇をなす血の盟約」から脱盟した者達であった。松の廊下にての刃傷沙汰により浅名家は断絶、赤穂浪士は仇討ちの機を窺う…一方、吉良家が頼る上杉家では、赤穂浪士討つべし!なる勢力と、討たずに仇討ちを阻止すべし!という勢力の内紛が起こる。それぞれに能登忍者、能登くのいちがつき、当の赤穂四十七士のあずかり知らぬところでの忍法合戦が繰り広げられるのだ。くのいち側に主人公無明綱太郎がつき、決して討ち果たすことなく、くのいち忍法にて浪士を骨抜きにし、さらに命を狙う能登忍者から、浪士を影ながら守らねばならない!というハンディキャップマッチとなる。
登場する忍法がぶっ飛んでいるのは毎度ながらも楽しい、中途で脱盟した実在の浪士達がくのいち忍法に篭絡され打ち果てていく姿はまた哀しい。無明綱太郎はオブザーバー的役割でくのいちの補佐もするが、裏切った時の制裁役も兼ねており、「忠」を忌み嫌う虚無の忍者である。その虚無が「討ち入り、仇討ち」の虚無と重なる時、凄惨極まりなくも胸を打つシーンが登場する。
最後の脱盟者となった毛利小平太の章である。くのいちの手引きで、浪士達の妻、妹、娘、女達の悲惨な状況を知らしめられる。いずれも悲惨極まりない最下層の売春婦と墜ちており、性病に侵され、精神すらも病んだ女達を目の当たりにした小平太は心を変える。首魁大石内蔵助を自ら討ち取り、仇討ちを終わらせようとするのだ。しかしながらそれを阻んだのは墜ちた女達であった。彼女達が大石にかけた言葉は今作の中でも特に、さらに言うなら忍法帖の全てにおいても心に残った。「…首尾よう御本懐を……かげながらお祈り申し上げるまする。……」
小平太をして、仇討ちの虚しさを説いておきながら、手のひらを返したように仇討ち為すための犠牲となった女たちによって、それを正当化して見せた。この場面において風太郎氏の歴史観を垣間見た気がした。解説にもあった通り、善も悪もない、ただ人の心のままに歴史は動くのだと。
史実は変わらないのでその通りの結末なのだが、ラストにおいては無明綱太郎の心はさらなる虚無に晒されることとなり憐であった。にしても無明綱太郎強し!忍法帖シリーズにおいてもトップレベル、ライバルはおげ丸か?いや最強の術は甲賀弦之介の瞳術か?こういう楽しみもまた忍法帖なるかな。
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亡き主君の無念を晴らす仇討物で日本人が大好きな忠臣蔵。その忠臣蔵に材をとり、大石内蔵助率いる赤穂浪士、彼らの命を狙う吉良の刺客、そして色仕掛けで仇討を放棄させようとする女忍者たちの三つ巴の闘いを描きます。忠臣蔵というタイトルですが、見どころは討ち入りではなく、浪士をめぐって争われる忍者同士の奇怪な忍法合戦です。
女忍者の罠にかかり仇討の盟約から一人また一人と離脱していきますが、"忠"にも”義”にも無縁の僕からすると、脱落した者たちのほうに同情してしまいました。忠臣蔵というと赤穂浪士たちがやたらと称揚されますが、家族までを巻き込み不幸にしてしまう武士の道徳に、著者は疑義を呈しているよう。
史実についてはよく知りませんが、仇討を期待する世間が公儀を動かし、浪士たちの不穏な動きを見て見ぬふりした、ということもあったのでしょうか。そこまで読んでいたとすると、やはり大石内蔵助はただものではないですね。
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前作(甲賀忍法帖)に比べると、スピード感が若干弱いか?
忠臣蔵をベースに、能登忍者と能登くのいちの対決を描くが、主人公の無明綱太郎が別格過ぎて、なんというかもったいない。
そして、切ない。
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ネタバレ 「週刊漫画サンデー」連載。忠臣蔵が物語の基軸になるエロティック伝奇時代小説。作品の構図は、エロティック忍術を使うくの一軍団が、赤穂浪人を狙う上杉綱憲配下の忍者軍団と戦う一方、浪士らをその忍術で性的に籠絡するというもの。高田軍兵衛ら脱盟者を物語の核とする点は、面白い目の付け所。が、物語の対立構図が米沢藩の内部抗争劇で、忠臣蔵としては判りにくい。ただ、忠臣蔵でありながら、忠義と女が嫌いという主人公(理由も納得できるもの)を配し、浪士への冷ややかな目線と忠義への皮肉を伏流させたのは戦中派の著者らしい。
上野介は登場せず、松の廊下刃傷事件も情報伝達されるだけ。という意味で忠臣蔵を斜めから見た作品であり、普通の忠臣蔵では飽き足らない人向けかも知れない。1998年刊行(初出1961年)。
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忍法の発想がぶっとんでいる。特に歓喜天はすさまじい。私は忠臣蔵をよく知らないが、面白くよめた。
千坂兵部が女忍者をもって仇討ち防止と能登忍者が赤穂浪士を殺害するのを食い止めるのは、はじめから成功を信じていなかったのではないかと思われる。この役割だと女忍者が相手の忍者より相当強くないとできない。それなのに人数も少ない。結局綱太郎が一人で相手の忍者を倒している。
死んでいった大勢の忍者はひとえに綱憲の復讐心の元に死んでいった。これは忠義の元に死んでいったわけである。綱太郎が忠義も女も嫌いと語って終わる。虚しい終わり方だった。
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ものすごい調理技術を持つ忍者(←かなり違っている)が、捻くれてドイツもコイツも死ねばいいのに、と暴れる話。いや、やはりちょっと違う。多対多、男対女の能力バトルではあるのだけど、主人公は片方の陣営の見張り役であり、見張りが必要なだけあって、登場する女たちはけっこうコロッと男に転んでしまう。忠臣蔵、と銘打っているだけあって、舞台は浅野内匠頭率いる四十七士を巡っての、吉良側の味方同士の駆け引きなのである。
「女と忠義が嫌い」という主人公。ところが実のところ、どいつもこいつも忠義野郎ばかりで、主人公はションボリと去っていく。忠義というのはかくも面倒くさいものか。僕も割と嫌い。