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紙の本
物語と記憶と愛情
2002/06/08 22:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語とは記憶である。記憶とは印象の残搾だ。では愛情は?
薄井ゆうじの作品では、恋愛に近い感情がおおきな比重をもって語られる。けれども、直截的に「恋愛小説」のレッテルを貼るのも、なんか違うような気がする。たいていは「風変わりな」という形容詞をつけくわえる。あるいは、無理に特定のジャンルに分類するような真似をあきらめる。
この物語も他の薄井ゆうじ作品とおなじく、不思議で、切なくて、暖かい。
この小説では現実ではありえない奇妙な三角関係が語られる。一人の少女と二人の男。だが、二人の男はどうやら同じ人物の過去と現在(あるいは、現在と未来)らしいことがだんだん明らかになっていく。
強引、というか、非現実的な設定だが、小説を読んでいる最中はぜんぜん気にならない。いや、この設定が独特の「味」になっている。例えば三十代の主人公が過去の自分、十代の自分のアパートを訪ねるシーンがある。この時のスリリングさは、ほかの小説では体験できない。
過去の記憶と現在の状況が交錯し、話しのゆき先がまったくみえない。
そして、ラストの見事な着地ぶり。
素直に、面白かったです。
紙の本
この人にしてはちょっと物足りない
2002/02/28 23:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しっぽ - この投稿者のレビュー一覧を見る
薄井ゆうじは好きな作家のひとりだ。
現実の世界の中に一つだけ異質なものが紛れ込むところから彼の作品世界は拡がっていく。他の作品では、それは例えば両性具有だったり、世界的な大魔術師だったり、身長が伸び続ける男だったりする。そんな非現実的なものを長い作品の中できっちりとリアリティーをもって書いていくのはとても難しい。薄井ゆうじはその辺りをきちんとクリアできている。だからこそ異質なものの存在が、現実の中にあるいろいろなものを逆に鮮やかに浮き彫りにすることができるのだと思う。
さて、この作品。どことなく演劇的な構成のようなきがする。別に物語の中に劇団や芝居の話が出てくるからではなくて。それは物語のところどころに雨が降るからだ。芝居の暗転や場転の音楽のように雨は降る。それによって視点が変わっていき、読む方はここちのいい戸惑いの中に放り込まれる。
一人の男の青年時代と中年時代が同じ瞬間に生きているのがこの物語の異質なもの。中年の男が書いた一本の戯曲の上演と、彼の死んだ妻の若い頃の姿をもった青年の恋人の少女とをめぐって二人はお互いを意識しあい、お互いの中に自分にないものを認めてぷつかりあう。
途中までは最高におもしろかったんだけど、最後は少しはぐらかされたような気分でした。それも中途半端にはぐらかされた感じ。話の中でどれほど遠くに飛んでいってしまっても、最後にはきっちり現実世界に着地させるのがこの作者のうまいところなんだけど、今回はちょっと失敗ではないかと思います。それでもきっちり読ませる面白い作品ではあります。
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