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日々さまざまな大学生協繰り広げられていること。
2005/11/04 00:47
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネット上で話題となった、農工大学生協での「一言カード」のやりとりの単行本化である。ネット上のやりとりをすぐに単行本化するあたり、講談社のどじょうすくいのうまさが際立つが、実際、読んでみるとなんてことはない。大学生協に寄せられる数々の要望と、それに真面目に答え続ける一生協職員のやりとりである。その要望は、時には生協という枠からあふれて、「今年も中日は優勝しますか?」となることもある。それでもなお、機転を利かせつつも真面目に答え続けるのが「生協の白石さん」なのである。
ところで、「一言カード」とは、たいていの大学生協で、組合員参加の重要なツールとして実施されている。一方で、「脱線」も少なくなく、それぞれの大学生協で「名物回答者」がいることだろう。それだけに、なぜ、いま、「白石さん」が受けてしまったのか? 白石さん自身も首をかしげるように、大学にも大学生協にもかかわったことがある私にも、正直言ってよくわからない。
新聞等の論調では、「脱線ぶりの要望」と「生真面目な回答」という組合せに注目しているようだが、実際には,そんなにとんでもないものではない。むしろ、白石さん自身は、そうしたやりとりの面白さだけが突出し、本来の一言カードの趣旨からはずれてしまわないように、自戒しつつ回答を書いている。ウケねらいの要望に、ウケねらいの回答ではいけないのである。
ただ、そんな面倒なことをこねくりまわさずとも、こうしたやりとりが、日々さまざまな大学生協で繰り広げられていることを想像すると、どこかちょっとホッとする。世間だけでなく、法人化だ少子化だと、大学自身もだんだんと世知辛くなっているようだけれど「がんばれ、大学生と大学生協!」
人との出逢いこそが人生の醍醐味だってことに、やがて彼ら学生も気づくことでしょう
2006/01/13 07:28
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
どの大学生協にも客である学生が生協事務局に対して要望や質問を書き込む一言カードがあるものです。こんな雑誌を仕入れてくれないか、あの商品は使い勝手が悪いのでこの商品と入れ替えてほしい、といったそのリクエストに対し、応じられるか否かを事務局職員が書いて掲示板に貼り出します。
東京農工大学の生協で一言カードに書き込みをする学生も当初は品揃えに関する質問と応答が事務的に行われること以上は期待していなかったのかもしれません。しかし、生協職員の白石さんは、ユーモアと機知に富む返答を書いてくれたのです。
Q:愛って売っていないのですか…?
A:どうやら愛は不売品のようです。もし、どこかで販売していたとしたら、それは何かの罠かと思われます。くれぐれもご注意ください。(56頁)
一休さんの頓智問答のようなこのやりとりが、やがて一冊の小粋な本になったというわけです。
以前、「JAL機の懲りない人たち」(伊集院 憲弘/講談社)で、ファーストクラスの6歳児にカキ氷を作れとせがまれた話や、妊娠中であることを隠して登場した中国人女性3人のエピソードを読みました。パーサーだった著者がいやな顔ひとつせずそのひとつひとつに対処していく姿に頭が下がったものです。「お客様は神様」という言葉の実に厳しい現実を垣間見ました。
しかし、本書の白石さんと東京農工大の学生の間には、そこまで峻厳な「顧客と店員」といった主従関係はありません。もっと緩やかでどことなく温もりがあり、そしてまた客である学生たちが店員の白石さんから、人生を肯定的に見つめるコツを指南されているといった趣があります。だからこそ学生も一定の節度をもって質問を投げかけているようです。
社会に出てから学生たちは人生の折々に小さな宝石のようなその名回答を思い出すことでしょう。白石さんとの出会いが持てた彼らがうらやましくなる一冊です。