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団鬼六作品としては〇、SM小説自体がマンネリに終わった過去の遺物
2023/02/09 16:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北国の老犬 - この投稿者のレビュー一覧を見る
若い時はSM雑誌で団鬼六作品を読んでいた。
当時はインターネットもない時代で男主人がレジにいる小さな本屋の怪しげなコーナーで雑誌を買い倒錯的な世界を堪能していたものだ。
光陰矢の如し、懐かしさと探求心?もあってあらためて団作品を数冊読んでみた。おそらく本作が最後になるだろう。これ以上のものは期待できない。
本作が団鬼六の最高傑作であると評する人は多い。表立って反論する気はないが、この歳になって言えることは、団作品は結局のところ何を読んでも同じということだ。
女主人公の名前と家柄、出自、責められる女の数、時代設定、悪党の素性、そして責め技と道具の種類、これらが狭い範囲で変化しているだけ。しかも話の筋書き、場面々々のプロット、女の被虐振りと悪党の残忍さ、決して女に手を出さないラスボス、救いがたい責めの挙句の処刑等々、作品ごとに何も工夫がない。
加えて文章も同じ表現がハンコを押したように何度もしつこいくらいに繰り返される。例えば女体を表わすのに、荒縄で締め上げられた形の良い乳房だのなめらかな腹部だの婀娜っぽい太ももだの絹のように盛り上がる漆黒の繊毛だの、ほかの表現が出来ないのかというほどの稚拙さだ。
SM小説が低俗下品と扱われるのは当然として、3~40年程度でAV等の映像媒体に市場を奪われ廃れてしまったのは有能な作家が育たなかったからだ。団鬼六の亜流は多いが親分そのもに文才が無かったのだからSM小説の末路は当然の成り行きだった。文章表現なら千草忠夫のほうが巧さを感じるがこれとてマンネリを突き破るような才能は見せることが出来なかった。また、SM雑誌では時代物であれば山崎無平、小妻容子、前田寿按などによる魅力的な挿絵が淫猥な想像力をかきたてる種火になっていたのだが、単行本や電子本ではそれらが無い。これも魅力半減の理由だろう。
本作は団鬼六の狭い世界観に依った作品としては量も質も充実しているので高評価とするが、他ジャンル小説家の才能と比べれば何とも情けない作品である。この大衆サブカルチャーのSM小説に銭を払って作者に飯を食わせたのは我々読者だが、作者にもっと才能があればと悔やまれる。これが私の団鬼六評価の結論だ。
寅さん「男はつらいよ」シリーズでさえ10本続けて観たら飽きるさ。
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