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「イノベーションとは何か」というタイトルでありながら、書かれているのは「イノベーションを阻害するものは何か」である。
かつては日本的な産業的・経営的な構造がイノベーションに有利だったが、現在では行き詰まりを見せている。
本書では、その打開策は与えられていないが、妨げているものは明らかにされる。
その際に用いられるのは、経営学だけではなく、政治学、経済学、心理学といった幅広い手法だ。
本書で取り上げられるのは主にIT企業だけれど、基本的な考え方はあらゆる業界に応用ができ、自分の周りのイノベーションを妨げているものが一体何なのか、多面的に捉えることができるだろう。
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過去の事例を示しながらイノベーションとは何かを語っているのは、他の本と同じ形ではありますが、自分にとって身近な話題が多くわかりやすくて面白かったです。「日本企業が優秀な人材と要素技術を持ちながらイノベーションを生めないのは、過剰に空気を読むコンセンス型の企業文化がフレーム転換を阻害し、初期のうちにあきらめる擬陰性を出していているため」「官民プロジェクトはその欠陥をさらにあっかさせ、時代遅れのプロジェクトに多くの企業を巻き込んで役に立たない『実証実験』を繰り返すだけ」「著作権よりビジネスモデル」
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イノベーションとは何かという問いに対して十の仮説を行動経済学とゲーム理論を基にIT業界の中心とした数多くの事例(これだけでもソフトバンクの例などとても面白い)を挙げ検証する。
前述の十の仮説を引用する。
1.技術革新はイノベーションの必須条件ではない。
2.イノベーションは新しいフレーミング(市場の見方)。
3.イノベーション成功の法則は無いが失敗には法則がある。
4.プラットフォーム競争で勝つのは安くてよい商品とは限らない。
5.「ものづくり」にこだわる限り、イノベーションは生まれない。
6.イノベーションにはオーナー企業が有利。
7.知的財産権の強化はイノベーションを阻害。
8.銀行融資によってイノベーションは生まれない。
9.政府はイノベーションを生み出すことはできないが阻害する効果は大きい。
10.過剰なまでのコンセンサスを断ち切ることが大切だ。
1~7までは十分に検証されたと思うが8~10はあながちそうとも言えないのではないだろうか。8はイノベーションを目的に創業するのであればリスクが高すぎて無茶と言えるが、一定の実績のある企業であればそうとは限らない。9は本書でTRONの失敗を挙げているが、間接的でオープンな働きかけ(最近はこのアプローチが多い)による支援効果はあるのではないか。10は6とも通じることだが要はトップの意志の問題だろう。
IT業界的には新しい技術に拘り「技術革新」を第一に考える傾向があるが、ヤマト運輸のように顧客の対象への視野を広げる等も重要ではなかろうか。
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かなりわかりやすくて読みやすいので、本当にすぐ読めます。ところどころに入っているそれもアップルやソニー、任天堂などのケーススタディも◎。
池田さん自身が電子書籍のベンチャー企業を立ち上げていることもあり、後半電子書籍の話が掲載されていましたが、それも分かりやすく興味を持ちました。
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“スティーブ・ジョブズはマーケットリサーチをしない。アップルのマーケットリサーチは、彼の右脳で発想されて左脳で実行されるのだ。-ガイ・カワサキ”・・・しびれます。
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筆者のアカデミックな知識と、情報通信業界の実務的な知識が良いバランスで記述されている。ただ、イノベーションとは何か?に対する答えは不十分。
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読み始めは分かりやすく面白い内容が続いた.
後半になると少しめんどくさくなったが,言っている内容はなるほどと思うないようであることは間違いない.
~主に前半で気になったところ抜粋~
特許は技術開発の手段であり、技術は経営の手段である。
技術の新規性と収益は無関係である。
既存技術を組み合わせて高い付加価値を生む。
ITの最大のメリットは新しいサービスを実現すること
ITやサービスで競争優位の源泉になるのは、プラットフォーム競争で顧客とフレームを共有する言語ゲームであり、そこで勝敗を決めるのは客観的心理に近いかどうかではなく、いかに多くの人々と言葉を共有するかである
むずかしいのは新しいアイデアを開発することより、古いアイデアから逃れることである。
イノベーションが失敗しないための条件
1.要素技術はありふれたもので、サービスも既にあるが、うまくいっていない。
2.独立系の企業がオーナーの思い込みで開発し、いきなり商用化する。
3.企業がひとつだけなので標準化は必要なく、すぐ実装できる。
4.一企業の事業なので、政府は関心を持たない。
5.最初はほとんど話題にならないので市場を独占し、事実上の標準となる。
おもちゃは必需品じゃない、なくなっても困らないものだから性能とか品質より、おもしろいかどうかである。
水平思考とは、既存のものを今までとは違う角度から考える。
ソフトウェアは基本的にサービスを実現するものなので、ユーザーの要求に応じて多くの機能を実現し、そのイノベーションも急速だ。
ここではOSのように標準的なプラットフォームを握ったものが勝つので、標準化をめぐるプラットフォーム競争が重要になる。
すべてをオープンにしてもビジネスとしては成り立たず、どこをクローズドにするかの戦略がビジネスの成否を決める。
プラットフォーム自体はなるべくオープンにする一方、それに付随するサービスで収益化する仕組みを作っておく必要がある。
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本書は、様々な組織において、どうすればイノベーションが生まれるのかを、行動経済学という観点で考察したもの。
結論を簡単にまとめると以下。
1、重要なことは技術ではなくビジネスモデル
2、重要なことは仮説をたて、市場の見方を変えること
3、大企業が役員の合意でイノベーションを生み出すことはできない
4、優れた規格が競争に勝つとは限らない、大切なのは「突然変異」
5、「ものづくり」にこだわる限りイノベーションは生まれない
6、イノベーションはオーナー企業が有利
7、知的財産権がイノベーションを阻害する
8、銀行の融資によってイノベーションは生まれない
9、政府がイノベーションを起こすことはできない
10、過剰なコンセンサスを断ち切ることが重要
各章の焦点があいまいで、とても読みづらい本でした。
ただ、内容は、今後の世の中を生き抜く組織を作るためのヒントとして、参考にしたいと思うことも多くありました。
特に大事だと思うポイントは以下。
・人は絶対量ではなく変化率に反応し、利益より損失を大きく評価する傾向が強い
・物語は複雑な事実を単純化し、神話や民話のような記憶しやすい形で口伝によって広がる。そのメカニズムは理論による説得とは違い、むしろ伝染病に似たパターンで広がる。
・長期記憶は連想で成り立っているので、人々はランダムな出来事を記憶するのは苦手だが、ひとつながりの物語は覚えやすく、多くの人に広がりやすい。だからイノベーションを広めるためには、それが必要だと思えるような魅力的な物語が必要だ。
・本来、情報とはパーソナルなものである。日本の和歌も日記も、全て個人的なメッセージだった。それが大量生産されるようになったのは、個人の嗜好に合わせて情報を生産することが困難だという20世紀までの技術的制約によるものだ。そうした制約が無くなって情報の個人化が可能になった今、J-POPや民放のワイドショーより、ブログやSNSの方が好まれるのは当然だ。
多額の宣伝費をかけて「メガヒット」で規模の利益を得るビジネスは、もう限界がみえており、マスメディアとともに滅亡する恐竜だ。今後のコンテンツ産業のフロンティアは、iグーグルやアマゾンの「おすすめ」のように情報を個人化することだろう。
・製造業では需要の存在は確実であり、供給側の規模だけが問題だったのに対して、情報産業では供給側の設備の規模よりも需要やイノベーションの不確実性が問題になるのである。こういう場合には、あらかじめ特定の目標を設定して大規模な投資を行なうよりも、
多くの「実験」に分散投資し、事後的に見直して失敗したプロジェクトから撤退するオプションを広げることが重要になる。
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「池田信夫blog」でおなじみの著者が、主に日本のIT・電機産業を負の実例として示しながら、イノベーションの何たるかについて語る本。本書でも著者の評論家ぶりが如何なく発揮されており、書いてあることは至極もっともで正しそうに見える。たとえば、「イノベーションは不確定性が強い」「10件の起業のうち1つヒットすればいい方」「イノベーションが必ず失敗する方法はあるが、必ず成功する方法はない」ことについて、最新の経済理論を引用しながら明快な論理で説明している。ただ、これでは「残りの人生を棒に振るリスクを背負ってくれる起業家」が大量に出現しなくてはならないことになってしまうし、日本みたいに生活レベルが極端に高い国でそれを望むことには無理がある。「人材の流動性を高めて再チャレンジしやすい世の中に」なんて言うのは簡単だけど、そのような「改革」を人為的に達成するのは無理でしょう(将来、失業率が急激に上がることで、自然とそのような状態が出来上がる可能性は否定しない)。あと、「変人がイノベーションを生む」という主張により自称「変人」が調子に乗るようなことがあるとしたら、それも何か違う気がする。私のような平凡な一般人は、そのようなことにならないから大丈夫だけど。
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イノベーションとは何かを、トピックとしては網羅的にカバー。しかしながら、やはりイノベーションを体系的にまとめるのは難しいことなんだと実感。行動経済学をイノベーションに応用する切り口は面白いが、スタートラインという印象。
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この本はイノベーションについて書かれた本ですが、巷で見られる成功本とは異なって、10個の仮説を解説しているところに特徴があります。
その中でも、1)技術革新よりもビジネスモデルが重要、2)失敗には法則性がある、3)知的財産権の強化はむしろ阻害する方向である等、という内容は私が常日頃より感じていた事でですが、あまり本では見かけるものではありませんでした。
イノベーションにより改良ではなく、新しいモノ・サービスを作り出す重要性はよく聞きますが、それに至るにはどうすれば良いのかが見えてないのが現状だと思います。池田氏の考え方を理解して私の担当している業務にも生かしていきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・顧客の要望を聞くマーケティングで成功した商品は殆どない、それは顧客は既存の商品を前提にして生活していて、その枠を超えるものを開発するインセンティブがないから(p14)
・新しい事業を起こそうとする場合、まず何を売ればもうかるかというアイディアがあり、その上で収益を上げる方法を考え、技術はそれに適したものを選ぶ、という「ビジネスモデル」がポイント(p15)
・期待値が全く同じ「くじ」であっても、新たに得る場合は確実な利益を好み、失うときは不確実な損失を好む(p24)
・脳が基礎代謝の20%を消費するのは、脳内の膨大な毛細血管に血液を送るためだが、人間の脳の重さはチンパンジーの4倍なのに血流量は2倍程度でエネルギー供給はぎりぎり、なので脳は新しい行動をおこさずに習慣に従って認知コストを節約しようとする(p32)
・天動説のひとつの欠陥は、恒星との距離が正確に測定できるようになり、それば数十万光年の遠いところにあると判明したこと、恒星が天球を回転しているとすると、それは光速よりはるかに速い(それも各々異なる)スピードで運動していることになる(p39)
・ローマカトリック教会が地動説を公式に認めたのは1992年(p39)
・優れた経営と技術をもった企業ほど、生き残ることが難しい、原因は、新たに登場する破壊的イノベーションの単価が安く、技術的にも劣ったものだから(p44)
・イノベーションに成功する法則はないが、失敗する法則はかなり明らか、1)最新のハードウェア開発により不可能だった機能を実現、2)大企業が参入し大規模な実証実験、3)コンソーシアムによって標準化がすすむ、4)政府が補助金が出す、5)新聞が特集を組み、野村総研が予測記事を書く(p52)
・第三世代で国際標準化したにも拘らず、いったんガラパゴス化した日本の携帯は、二度と海外市場に出られなかった、この原因の一つは、キャリアが端末をメーカからすべて買い上げて販売店に奨励金をだす流通機構にあった(p76)
・16ビットになって、OSによってハードウェアとソフトウェアが分離されて、特定のハードウェアに依存しないプログラムが開発されるようになった(p79)
・日本では、PCや携帯電話以外にもガラパゴス化したものが多い、医療サービス・デジタル放送、カーナビ、���ビットカード、電子マネー等(p81)
・すべてオープンにしてもビジネスとしては成立せず、どこをクローズにするかの戦略がビジネスの成否を決める(p86)
・ビルゲイツの優れた着想は、OS/2を共同開発することを下請けから独立するチャンスとして利用し、IBM用と互換機用の2種類のOSを作り続けたこと(p93)
・長期記憶は連想で成り立っているので、人々はランダムな出来事を記憶するのは苦手だが、ひとつながりの物語は覚えやすく広がりやすい(p106)
・ベンチャーと自営業一般とは異なる、アメリカでの自営業比率は7.2%で、下から2番目で、日本(10.8%)より低く、それは90年代よりも低下(p130)
・ベンチャーキャピタルが資金を提供するのは創業企業の 0.1%以下、多くの企業は商業銀行から融資を受けている(p130)
・日本の高度経済成長の原因は、1)人口急増(低賃金、高生産性、若い)、2)技術移転により生産性が急速に上がったこと(p153、161)
・ソフトバンクは、2000年にダークファイバーの開放により、それを借りてギガビット・イーサネットでつなぐ、世界でも例をみないコア・ネットワークを構成して「ヤフーBB」が成功した(p170)
・1998年にアメリカで金融技術に初めて特許が認められて、ビジネスモデル特許が成立しはじめた、これによりイノベーションが進展した形跡はなく、むしろ停滞期に入った(p184)
・著作権の延長で利益を得るのは著作者ではなく、著作物を出している企業(p187)
・日本の書籍の印税は10%、原稿料は400字で5000円程度で、30年程度変わっていない(p189)
・日本発の国際標準になるとされた「TRON」という神話はウソ、実際にやっていたのはパソコンで遅れた松下のみ、USTRが要求したのは、「学校のパソコンに特定規格を強制するのはおかしい」と文部省の主張と同じもの、これは他のメーカが手を引く絶好の口実(p203)
2012年3月24日作成
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イノベーション(改革)とは、優れた技術がダメな経営手法ではうまくいかない。 ダメな技術でも経営手法が優れていればうまくいくこともある。
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イノベーションにおけるビジネスモデルの組み合わせについて様々な事例を用いて説明してあります。もちろん、シュンペーターの解説もあり、さらには政府の役割についても言及してあります。新自由主義の方は納得して読めるでしょう。
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イノベーションが必要だといわれることが多いが、イノーベーションとは何かを教科書的に解説した良書。
内容は、8側面(+終章)からイノベーションを解説して、その具体例として様々な引用から後から考えると必然だったことが、実は当時はそうではなかったことを感じさせることが多い。技術が必ずしもイノーベーションを引き起こしていないことがよくわかる。
どうしてもIT関係の具体例が多くなるが、著者の博識からも経済学や経済理論、歴史的な事実等の引用も多く、単なる技術論、経営論だけではないと思う。しかし、同じような話が続くために、途中であきる人がいることもわかる。
イノベーションに関しての横断的な書籍は少ないので、難しい本ではないので読んでみてはいかがだろうか。
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著者は元NHK職員で経済評論家。本書はこれからの日本企業がGoogleやfacebookのようなグローバルレベルのイノベーションを起こすための課題を提起している。アメリカ発の経済学・経営学の本とは違い、本書は日本の経営活動にフォーカスした内容であり納得感がある。「イノベーションとは”技術”よりも”ビジネスモデル”が本質である。日本は技術大国と言われるが、技術は手段に過ぎない。戦略たるすぐれたビジネスモデルがなければ世界的な成功はないよ。」と著者は言う。現在日本の社会人、これから社会にでる学生さんにおすすめ。日本は悲観することはないと思う。保有する高度先端技術、古き良き伝統工芸・文化、誇るべきサブカルチャーやカワイイカルチャーを戦略的に結合しおもてなしの和のこころを持って世界に向かえば、きっといける。こんなことができる国は他にはどこにもないのだから。