紙の本
夏の間、歌って暮らしたなら、冬になったら踊って暮せ
2012/03/30 11:00
14人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビ局の経営がおかしくなっているという。日本では在京キー局はすべて新聞社の傘下にあるが、テレビ局の親会社である新聞社も経営基盤が揺らいでいるという。これは日本に限ったことではない。アメリカでもイギリスでもフランスでもテレビ局、新聞社は経営危機に陥っており、英タイムズ、仏ルモンド、米ニューヨークタイムズも例外ではない。会社更生法を申請した大手新聞社もロサンゼルスタイムズなど複数ある。どうしてこんなことになったのか。それはテレビ、新聞社の命の綱である「広告収入」がインターネットの登場で大きく揺らいでいるからである。
新聞社やテレビ局のことを「報道機関」という。しかし、彼らは報道番組で生きている訳でもなければ、ニュースを売って生きているわけでもない。彼らは広告を売って生きているのであって、報道は、いわば刺身のつま、撒き餌程度のモノに過ぎない(NHKは別)。その「生きる糧」たる広告収入が激減しているというから、テレビ局、新聞社にとっては一大事である。なぜインターネット広告が優位にあり、テレビ新聞の広告が劣勢にあるのか。それはインターネット広告には「同時性」「双方向性」「データの集積力」という新聞テレビの広告では決して得ることの出来ないメリットがあるからだそうだ。テレビのCMは億円単位。新聞の広告は全面だと数千万円する。これだけの莫大な経費を使いながら、その効果がどれくらいあったのか、実は広告主には良く分からない。それがネット広告だとリアルな数字で分かるのである。これでは新聞テレビはネットには勝てない。最近ではテレビCMでも「詳しくはネットで」と呼びかけるものが増えてきた。新聞テレビの悩みは深い。
もっとも私は、苦境に陥った新聞テレビに同情する気が起きない。新聞社は上場していないので経営内容が分かりにくいがテレビ局は上場しているので経営内容を誰でも見ることが出来る。公開されている数字を見て、私は唖然とした覚えがある。テレビ局はどこもかしこも基本的には高収益企業である。滅茶苦茶儲かっている企業ばかりである。ところが彼らには、会社の数字を見る限り、「ゴーイングコンサーン」という概念がほとんど無いように思われる。普通の会社なら、利益が出ると内部留保に回すか、株主への配当に回すか、設備投資に回すかをまず考えて、次に従業員への配分に回すことを考える。ところが「放送免許」という規制に守られた彼らは、稼いだ収益の大半を仲間内で分けてしまい、残ったお金も「経費」で使いまくり、ボトムライン(純利益)はほとんど残さない。だから自己資本比率も高くならないし借金も無くならない。こういう構造になっているのだ。テレビ局の経営哲学を一言でいえば「宵越しの銭は持たない」。こう思えて仕方がないのである。アリとキリギリスに分ければ、キリギリスの代表みたいな会社。それがテレビ局であり新聞社なのである。だから分厚い広告収入に胡坐をかき、夏の間歌って暮らしていた彼らが冬になったのなら、イソップではないが「冬になったら踊って暮せ」と言いたくなるのである。
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以前、「テレビ番外地」という現・テレビ東京(当時は東京12チャンネル)の開局当時を描いた本を読んだ。瀕死の状態を迎えた民放テレビ局の今後を憂い、大胆な提言をしている。
確かに通販ばかりじゃつまらないですよね。
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確かに著者のおっしゃるとうりなのかもしれないが、これだけコンプライアンスだとか視聴者のいいががりみたいなクレームだとかがうるさくなると制作者側も番組作りには苦労するのでは無いかと思う。結果無難な方向に行ってしまうのではないかと思う。
あえて、無理に減局しなくとも経営が行き詰まれば自然と減っていくと思う。
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時間を水増しした特番、タレントが空騒ぎするバラエティ、増殖を続ける通販番組……視聴者離れに歯止めはかからず、広告費も減少の一途。メディアの帝王は瀕死の状態である。もはや民放ネット局の削減しかない。元民放キー局役員が放つ渾身のメディア論。
刺激的なタイトルだが、それに触れたのは最後の10ページだけ。それもどの局を削減するかは「わからない」。羊頭狗肉本と言われないだろうか。
(D)
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テレビ局、主に東京キー局の成り立ちや経営などについてよくわかりました。
タイトルは、5系列ある民放地上波を3つに削減してはどうか というもの。
まぁ確かに一理あります。
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テレビ局の歴史、特に、1970年代の関西ネットのねじれ現象があったことなど初めて知る事が多く、勉強になる。アメリカにおける現在のテレビ・新聞事情も詳しく書かれており、あらためて日本の問題がクローズアップされている。テレビ局を削減する、という著者の提言も理由が明確でわかりやすい。今後のマスメディアの行く末に興味がある方は、読んで損はない。
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少なくとも3年前まで週末の楽しみは、録画してあった平日のドラマ(2~3本)を見ることでした。ところが昨年(2011)の震災後あたりから、テレビ番組が急につまらないと感じるようになり、また、どの局も似たようなバラエティ番組が増えたようで、テレビを見る時間が極端に減りました。
ドラマがつまらなくなったのは、テレビ広告の減少による製作費の減少にあるのでしょうか。それとも私の趣向が変わってしまったのでしょうか。
この本の著者である石光氏は、かつてテレビ局に身を置いていた人で、テレビ局を統合すべきだと主張しています。特に若者を中心にテレビ離れが進んでいるようで、統合する効果はどの程度か不透明ではありますが、テレビ番組の制作の現状について解説されていた点は、問題点がよくわかりました。
また、テレビ局が必死になって競争している視聴率の誤差がプラスマイナス2.4%もある(p26)は興味深かったです。やはりテレビ局の人には、本来の業務に戻って、良い番組を”自分たちの手で”情熱をこめて作ってほしいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・VTRとDVD再生視聴の時間が、2000年の1週平均43分から、2010年には、2時間8分と伸びている、多いのは20-40代で、10代は男女とも目立って少ない(p28)
・視聴率調査は、小型の受像機やパソコンのワンセグは対象外である(p32)
・TBSの持ち株会社は、2008年夏には、「マキシム・ド・パリ」を持つスタイリングライフ・ホールディングも傘下に収めた(p37)
・テレビ放送が始まった時は平日の夕方は放送はなく、週を通しての全日放送は、5年後の1962年から(p50)
・1973年に朝日新聞は日経新聞が持っていたNET(テレビ朝日)の株式を引き受けて、日経新聞は東京12チャンネルの大株主になった(p56)
・読売新聞ー日本テレビー読売テレビ、朝日新聞ーテレビ朝日ー朝日放送、毎日新聞ーTBS-毎日放送、産経新聞ーフジテレビー関西テレビ、日経新聞ーテレビ東京ーテレビ大阪(p57)
・全米で40を超える新聞が廃刊となった理由は、広告収入の激減(p66)
・2008年3月には、NBC,FOX,ABCの3社は合弁で、無料の動画配信サイト「フールー」を始めた、広告収入は発足1年後でYuTube(15分以内の映像の投稿可能)に並び、2011年9月から日本にも進出した(p77)
・アメリカのドラマがいまだに根強いのは、日本にはハリウッドがないから(p93)
・ホットなメディアとは、文字通り「熱く」伝わるメディアで、受け手は常に受け身の状態で、送り手の情報や感情がそのまま伝わる、ラジオ・新聞・写真が属する、クールなメディアはテレビ(p165)
・通信・放送分野の8法を一体化する「改正放送法」を民主党政権が成立させた、電波法と有線電気通信法のもとにあった放送と通信の6法を、コンテンツ・伝送サービス・伝送設備の3業務に区分して2法にまとめた(p177)
2012年2月11日作成
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#021 テレビ局削減論
テレビ局を減らせ。最近自分が思っていることと同じ主張なので読んでみた。しかも、著者は元テレ東常務と言うではないか。広告収入の低下やクレームを恐れた当たり障りのない番組作りで、どんどんテレビがつまらなくなって、視聴者が減ってさらに広告収入が減る、という負のスパイラルはとめられないところに来ている。ならば一時期の都市銀行のように局を統合して数を減らさないと生き残れないところまで来ている、という趣旨。主張は同意だが、特にこの本だから読める独自論は特になく、せっかく局の統合を提案するなら、どことどこはこういう番組作りがうまいからこうやって統合すれば、などという内部事情を押さえた提言があると尚良かった。また、改正放送法についてほんのちょっと触れているのだが、施行後に解説している文献はほとんど見たことないのでもう少し詳しく説明してほしかった。誰か知っていたら教えてください。
テレビネタはいろいろ追いかけてきたけど、この本を最後にちょっと離れます。
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途中までは同意できるのだが
削減すれば解決するかというとどうなんでしょう・・・
もっとテレビだけでなく経済とか情報とかマスコミだとか
世界的なウネリの中での話だと思います・・・
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昨夜(4/21)の「世界ふしぎ発見」にある映画出演者数名が、告知の為に出演していて愕然。そんな番組だったけ?
通販だけでなく、最近はとにかく番宣・告知がらみが多すぎる。
「見る側も作る側も不幸なこの構造を変えるには、もはや民放ネット局の削減しかない」と著者と言い切る。
テレビの側の人間(しかも元常務)から見た構造上の問題点を指摘。
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昔からそんなにテレビを見る方ではなかったのですが、
ここ数年、ほんとに見なくなりました、、スポーツとニュース位ですかね。
たまに見続けるドラマも、リアルタイムで見ることはまずありません。
これはそんなテレビの現状に警鐘を鳴らした一冊、、になるのでしょうか。
現状の「食ってばかり」「通販ばかり」「どこも同じ」とは、確かに言い得て妙です。
- 公正・中立なジャーナリズムとしての立場を確立しなければならない
そして、問題意識として持っているこの点も、理解できる内容です。
物足りなかったのは、どうして現状がこうなっているのか、まで踏み込めていない点でしょうか。
"権力機構"や"ネット情報"に対峙しうるのは"テレビ"のみとの気炎は頼もしいですが、
最近でいえば、読売巨人の反社会勢力への献金問題などへの追及が封殺されている点など、、
既存メディア(テレビ・ラジオ・新聞)や既存の芸能業界の根っこにある、
"特定勢力"に対する自浄作用が働いていない点には言及できていません。
意識して見ないようにしているのか、本当に知らないのかはわかりませんが、
どちらにせよその点に言及できないと、画餅のまま終わり、衰退していくだけでしょうね。
個人的には、面白いコンテンツが配信される環境であれば、
既存のテレビにこだわるつもりもなく、CATVの形態で十分と、感じています。
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かなり説得力があって面白い
あとは総務省の出方ですねえ
で、やっぱり系列の削減は無理でしょう
4.2点
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どこをどう削減するのかまで聞きたかったなあ。結論に触れた部分が終章のみで少し残念。
個人的にはテレビ離れって言うほどそんなに進んでない気がする…。いわゆる受像機としてのテレビは使わないけど、コンテンツとしてのテレビは全然死んでない、というか、昔とそんなに変わってないのでは。テレビの話題で世間話が盛り上がるし。民放のVODもお金払って見るし。Twitterのバズワードもテレビ由来の言葉多いし。
つまらないとは言っても、視聴者層のレベルをそのまま反映してるだけなんじゃないかなあ、とか。いくら良質な報道番組を作っても視聴者が見てくれないなら意味がない。
貧乏な地方局でも良い番組はこれまでたくさん作ってきたし、単に費用の問題だけではないと思う。
報道の中立性や公平性の確保に関しては同意。しかしそれが必要だからこそ、様々なカラーの放送局の中から視聴者が見たいものを選べるという環境も大事な気もする。
まあたしかに24時間休みなく放送してる必要はないかな
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海外でもネットワークは5つもないから削減というのが趣旨だと思うが、テレビのライバルはテレビで無し、他のメディアになりつつあるのも一つの側面。