紙の本
不思議な感覚
2024/04/14 23:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫本としてはページ数が薄い部類です。また展開を追い掛けたくなる筆致からかスルスルッと読了してしました。作中、詩的な箇所が幾つかあり、そういった点で終始ぎっしりとした文量ではなかったせいかもしれません。
さて本書の感想ですが、不思議な感覚に纏われました。残虐な所業に対し、やるせなさに満ちた可哀想な気持ちで一杯になりました。何故救ってあげられなかったのか・・、何とかして救ってあげたい・・という気持ちを読み手が持つような感覚でした。結果それは叶う事が出来ない訳で、それが何とももどかしい。
本書は人魚と表現される箇所が幾つも散見される為、ともするとオブラートに包まれている感が見出だされる気がしますが、残忍な社会派小説だと感じます。本書の内容のレベルは、フィクションともノンフィクションともつかない、そんな苦い一書かと。
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2008.07.08
驚くほど面白かった!!!
最初は、この人の文体はちょっと苦手かもしれないと思いながら読み始めた。
でも読んでいくうちにどんどん引き込まれてしまって……。
物語の扉には「新聞記事の抜粋」として、鳥取県の海沿いの街で海野藻屑という中学生のバラバラ遺体が十月四日の早朝に発見された、という文章が載っている。その海野藻屑(すごい名前だ)が二学期のはじめ、つまり遺体で発見される一か月前に転入してくるというところから話が始まる。
超美少女の海野藻屑はしかし言動がどうにも奇妙で、自分は人魚の姫だと主張するのだ。
十月のはじめに、十年に一度の大嵐が来る。それまでにあるものを見つけないと、自分は海に戻らなくてはならないのだ、と。
はじめは海野藻屑を煙たがっていた主人公の山田なぎさは、いつしか彼女と心が通じ合っていく……。
「海野藻屑って、ちょっと不気味で、変な子」と思いつつ読み進めていくと、いつしか物語の中に完全に取り込まれて行ってしまう。絡めとられるみたいに。
物語は、時々「十月四日の早朝」の山田なぎさの視点が差し挟まれていて、つまりは冒頭の新聞記事に出ていた海野藻屑の遺体を発見するのが山田なぎさだということなのだけど……
わかってはいる。わかってはいるのに。
その結末に向かって収束していくと十二分にわかっているのに、そうと知りながらアリジゴクの巣に落ちていくアリみたいに(へんなたとえ?)、最後まで読み終えないことには本を置くことができなかった。
彼女は人間だったのか、あるいは本当に人魚だったのか? だから死ななくてはならなかったのか? いつしか物語は日常の裏に潜む狂気をちらちらと表に見せてきて、怖いのに目が離せない。
暗くて、ひどくて、残酷で、逃げ場がない。生き延びた子供と生き延びられなかった子供。最後から二行目、「砂糖でできた弾丸では子供は世界と戦えない」の重み……。
いやはや、驚いた。もしかすると、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を初めて読んだときに匹敵する驚きかもしれない。うまく言えないけど。
よしもとばななの『キッチン』などとはまた別の感じで、小説の力を思い知った気がする。
マンガ化もされてるようです。とにかく読んでみてください。
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赤×ピンク、推定少女などと同じでラノベっぽい女の子が戦う話。でもこれが一番ぐっとくるというか、切なくて可愛くて良かった。文章が上手だから読めるけど、私は最近の小説の方がすきです。
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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない。
そう、藻屑が撃ちだす甘ったるくて
現実感のない弾丸はほんとは
なーんにも撃ちぬけない。
はずだったのになあ。
なぎさの実弾も強くて
崩れないはずだったのになあ。
藻屑の砂糖菓子にやられちゃったのな。
桜庭節全開、
もうほんとに少女文学書かせたら
この人は良くも悪くも桜庭一樹の
硝子細工お伽話になっちゃうねんなー。
あたしはもうこれがだいすきで
中毒な位にどっぷりはまってるけど。
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…解説とかAmazonのコメント見ていると好評価だけれど、本当にそうかな?と思ってしまう内容でした。
後味がすごく悪い。
ものすごく閉鎖的な世界での暴力にはもう飽きた。
西尾維新とか佐藤友哉が全く合わないからだめなんだろうなぁ。
個人的に別にこういう小説が存在していても大石圭と違って全く不快感は無いし、作者も面白がって書いているのはわかるんだけど…。
今後、この作者の小説は読まないと思います。
こんな閉じられた世界でいいのか?小説…としか思えませんでした。
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自分が不幸のカテゴリに属している、と悟っている人間は少なくないとは思いますが、そう感じられるうちは実際さほど不幸ではないかもしれません。
内容も分かりやすく、文章量も多くないので1時間くらいでサラッと読めました。読んだことないけど、ケータイ小説ってこんな感じかもしれない。
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タイトルに惹かれて手に取り、あらすじを読んだら面白そうだったので買ってみました。
読みやすくて、続きが気になってあっという間に読了。薄かったしね。
藻屑が殺されることは最初のページで新聞記事として載っているので、あらかじめ知った状態で読んではいるのですが、やはりドキドキしながら読みました。
そして父親に、バラバラにされて殺されることも分かっている。
あとがきの解説で、オイディプス王を例に出して語ってらっしゃいましたが、確かに同じよう、傍観者である我々はその一部始終が分かっている。
推理するでもなく、山田なぎさの言葉で語られる事実をただ受け止めていく。
藻屑やなぎさは何も知らない、それでも最後には抗おうとする、全てを傍観者は知っている、そこに悲劇があるのだと。
藻屑は異常な父親をただただ信じていつか愛をくれると思っている。ストックホルム症候群。
信じて、「無邪気な嘘」という何の意味もない、例えて言うならば実弾ではなく「砂糖菓子」の、弾丸を撃ち続ける。
答えられたらやばいクイズ、前にも一度やったことがあるのに答えが思いつきませんでした。
なぎさや藻屑を始め、花名島や兄の友彦など、登場人物が丁度いいバランスで描かれており、頭の中で映像化されて、楽しめました。
解説は浄土という言葉を使っていた。
藻屑の死体の描写には浄土の雰囲気が漂っていた、と。
藻屑がもっとなぎさと一緒に居れたら、一緒に大人になれたら、どうなっていたかな。
2人はもっと仲良くなれたかな。
いっぱいいっぱい笑うんだろうな。
生き残った子供だけが大人になれる。
この小説がライトノベルだったのをこの間初めて知ったわけですが、ライトノベルの定義がよく分かりません。
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桜庭一樹の名作といわれてますね。
でも、なんかやっぱり根本一緒じゃないの。
なにを書いても同じなら「私の男」だけでいいのに。
期待はずれ…。
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ラノベだったら絶対に読んd(以下略 推定少女を読んで心の中に引っかかった感触を確かめるために購入。こっちの方が好き。だからもう少し、この人の作品を読んでみたい気もするけれど、その反面どれを読んでも同じなのではないかという気がしないでもない。個性は強烈だと思う。
救いはない。結末が決まっていて犯人もすぐにわかる。後味は最悪だろう。けれど、それが好きな私のような人間からすればこの話はもうそれ自体、甘ったるい砂糖菓子のような話なんだと思う。13歳の、『実弾』のために中卒で自衛隊を志願する冷めた少女・山田なぎさと『砂糖菓子の弾丸』を乱射する自称人魚の転校生・海野藻屑(ちゃんと本名)。三角関係を築くことになるクラスメイトの男の子。なぎさの兄。藻屑の父。それだけ。(この登場人物の構図は『推定少女』に少し似ている)
相変わらず、「オトナ」と「コドモ」の狭間で揺れる少女達の物語。思春期の女の子特有の鬱屈さでその狭間ってなんだろう、って考えて示された一つのKWが「砂糖菓子の弾丸」。けれど、タイトルにもある通り「砂糖菓子の弾丸は、現実を打ち抜くことは出来ない」わけで。私もかつては「砂糖菓子の弾丸」を撃ち続けていたことがあったのだろうし、なぎさのように早く「実弾」を打ちたいともがいていた。だから、この物語をその時に読んでみたかった、と思う。
あー、あと友彦が凄く良い。「なぎさ」、と柔らかく妹を呼ぶ声が聞こえてくるようだった!神のような友彦も、現実に戻ってきた友彦も……うん、こんな兄が私にもいたらなぁ。友彦の語るストックホルム症候群って、藻屑以上に、友彦となぎさのことを指しているのだと思ったのだけれどどうだろう。
相変わらず、桜庭一樹の書く小説は目の前で映像化される。フルカラーで、……どうしてだろう。読みやすい文章=映像化されやすい文章、なわけで、その代表が私は東野圭吾だと思っていて、そうして私は彼の作品好きじゃないんだけど、桜庭一樹の映像化されやすさは東野のそれとは違う気がする。感情とか情景のコアが擬音の使い方や主人公(なぎさ)の視点を通して浮かび上がってくる、ような、感じ。
「好きって、絶望だよね」この台詞にうん、とも違うよ、とも言えない今の私のマガジンに入っているのは実弾なのか砂糖菓子の弾丸なのかどちらなんだろう?
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どうしても本屋で買いたい私はなかなか見つけられず、ようやく購入。
売れてるんだなあ、と再確認してみる。
読了し、桜庭氏の書きたかったことの原点に出会えて、とても嬉しく充実した時間を過ごすことが出来た。
何と言っても、この、まだテーマを消化しきれていない、著者自身もまだ書き切れていない感じがいい。
そして本当の完結に向けて、書かねばならない、追わねばならないという執念さえ感じる書きっぷりが、とても気に入った。
本作や『少女〜』で感じた中途半端な不満感は、後に『私の男』で昇華されている。
私は『私の男』を先に読んでしまっていたので、楽しく読めるかな、とどっか不安だったのだが、そんなことは杞憂だった。
少女たちのささやかな抵抗やヘルプを”砂糖菓子の弾丸”と称しているのが、とても気に入っている。
これは桜庭氏にしか思いつけない単語だろうなあ、という気がする。
さあ、次は『ファミリー〜』を読むぞ。
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実際に読んだのは文庫本の方だったのですが、大きいのも出てたんですね。全体的に可愛い感じで好きです。キャラクターの外見はコミックが一番好きです。
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「友達の死を若き日の勲章みたいに居酒屋で飲みながら憐情たっぷりに語るような腐った大人にはなりたくない」
この文が印象に残ってます。あとからふとじわじわくる作品だと思います。
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読んだ後ここまでモヤモヤするのは桜庭さんだけだなぁと。
これはホント相当キました。切ないし。
会社の昼休みとかに読んだんですが、その後仕事したくなくなりました。
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「好きって絶望だよね」
という帯が気になって手に取った。
『私の男』で直木賞を取った桜庭一樹さん。
確か彼女授賞式の時ハサミをモチーフにしたヘアピンつけてたなぁ。
それから連想するわけじゃないけど、攻撃性のある話。
テーマが刺激的とか描写が酷いとかじゃなくて、もう作品全体が良い意味で攻撃的だ、と思った。
最初は?砂糖菓子の弾丸”の意味が飲み込めず。
最後まで読めば、それはよくわかる。
そして悲しい。
もしもずくみたいな子が砂糖菓子の弾丸を放っていたら
私はきっと切なくて苦しくてもがくことしかできない。
子供だから、というのもあるけれど、結局担任の先生も何もできなかったし、
大人でも、所詮他人だと言う点で何にもできない。
ただ、その弾丸に威力がないのを眺めるしかできない。
悲しい。
『私の男』も読んでみなくては。
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確かに13歳はまだ子供だ。
子供だからその生活から逃げられない。
大人になるまで待つしかないのか?
大人になれぬまま海に帰った人魚(人間としての死)、
不本意ながらそれを見届けてしまった゛あたし゛。
これがライトノベルだったとは驚きだ。
親世代の私が読んでも、
これほど胸を打つなんて。
文字通りの、
砂糖菓子の弾丸で撃ち抜かれたみたいだ。