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夜桜銀次と人斬り竜次
2011/04/10 00:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
夜桜銀次と人斬り竜次という、若くてかっこいい侠客が出てくる。夜桜銀次は、黒門の喜之助が呼び寄せた刺客なんだけど、それでふたりが殺し合ってどちらかが死ぬだなんて、もったいない、銀次は喜之助を裏切って竜次と手を結ぶべきだ、だって、ふたりとも、かっこいいんだもん!
宗哲は竜次とは昔のよしみがある。ひょっとして、両替屋兼生薬屋のおもん婆さんが墓場まで持っていくと誓った秘密の頼みごとを引き受けたとき、実際に手を下したのは……。
あやしい市子(巫子)が出てきて、あやしいお告げをしたり、あやしい山伏が出てきたりする。この時代の人は市子のお告げや山伏の祈祷を信じたという。山伏のなかには、山岳で修業しているうちに、薬用の植物や鉱物に詳しくなって、ほんとうに医術に優れた修験もいたそうだ。胃腸薬の陀羅尼助はそんな修験が編み出した薬だという。なんと!私も、以前、おなかをこわしたときには陀羅尼助丸を飲んでいたものである。
宗哲の医院北村堂に、誤診で息子が重病になったと怒鳴り込んできた男が、医術にも優れた修験の祈祷で息子が回復したと触れ回り、やがてその修験に北村堂の患者を半分もとられてしまった。
次から次へと起こる出来事は、陰に陽に、黒門の喜之助と人斬り竜次との争い、そしてその間でどちらに付こうかと迷う中小の親分たちの争いと、関わっている。宗哲は侠客の世界との関わりは絶ったつもりなのに、何かと声をかけられ、迷惑をかけられる。
宗哲は、一方で、多紀楽真院や森立之という、江戸の医学界のエリートと親交がある。多紀楽真院は遠山左衛門尉とも親しいことになっている。多紀と遠山は、天保の改革が始まったばかりの頃、腐敗堕落して惨憺たるありさまとなっていた小石川養生所の改革に乗り出して失敗するという、苦い経験を共有していた。そのときの失敗は、江戸の侠客のなかでも特に悪名高いダニのような奴と、不届きにも奉行所の与力同心たち一同とが、一致団結して利益や役職を守ろうとしたのが原因であった。
まったく、けしからん!現代で言えば、行政の認可と援助を受けて、貧困で家族のいない高齢の患者を受け入れている病院で、患者を食い物にしているようなものであり、そういう実例、事件が、新聞記事になることもある。
江戸時代の、ダニも憎いが、与力同心どもも、歯噛みするほど憎々しい!この小説には出てこないけど、ひょっとして、遠山奉行に仕えた名与力東條八太夫もそんなひとりだったのかしら。そうは思いたくないんだけれど……。
それから数年たち、水野忠邦は既に失脚して阿部正弘が老中首座となっている現在、ダニは黒門の喜之助を後ろ盾にして、再び町奉行所の与力同心も味方に付けて、悪事を企む。宗哲は、ダニの毒牙にかけられている人々の軍師役となる。ダニは、誰かが思い切って自らの人生を棒に振る覚悟で取り組まなければ退治できない。今度はダニ退治は成功するだろうか?
最近の多紀楽真院は、阿部正弘に提言して、官医は、内科は漢方に限る、外科と眼科は蘭方でもいい、ということにしようとしていた。当時、外科と眼科は蘭方のほうが優れていることは既に明らかだった。しかし、内科は漢方のほうが優れていた。ちょうどこの時期に、官医の松本良甫の娘婿になる松本良順は、多紀楽真院の漢方の試験を受けなければならなくなった。それまで蘭方しか学んだことがなかった良順が、このとき、短期間で漢方をマスターして合格したのは、どうやら有名な史実らしい。
司馬遼太郎の『胡蝶の夢』では、これは、藪医者の癖に根性の悪い多紀楽真院が、松本良甫と良順にいやがらせをしようとしたのを、天才良順がみごとに裏をかいたのだということになっている。
佐藤雅美の『町医 北村宗哲』シリーズの多紀楽真院は、蘭方嫌いではあるが、そこまで無能でも根性悪でもない人物である。そして、良順の家庭教師役を引き受けるのが、我が宗哲なのだ。
宗哲が親しくなった蘭方医たち、林洞海や松本良順も、侠客たちの争いに、ちょこっとだけ関わる。やれやれ。まあ、私は、竜次と銀次の味方だけど……!
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