紙の本
犯罪者も苦しむのかもしれない…。しかし犯罪は苦しみを生む。
2011/11/16 11:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
薬丸作品を読むのはこれが二冊目。
薬丸さんは犯罪に対峙しているように思う。
例えば、デビュー作の『天使のナイフ』のテーマは少年法。
二作目にあたる本書のテーマは性犯罪。
未読だけれども他に刑法39条(心神喪失者と犯罪)や
犯罪者の更生と罰など、
テーマとしては重いものばかり。
しかも、そのテーマに真っ向勝負を挑んでいる。
この姿勢はこれからもずっと変わらないのだろうな。
ポリシーとも言えるのかもしれない。
だからこそ、読むときは多少のパワーがいる。
考えさせられるのだ。
自分が主人公の立場ならばどうするか。
そして自分は、どちら側の人間なのか…。
本書のテーマは性犯罪だ。
それも、幼児に対する。
いわゆる「ペドファイル」だ。
子どもに性的欲求を抱くなんて、
個人的には理解に苦しむ。
しかしそのような嗜好を持った人は実在するようで
現に、事件も起こっている。
子どもに対する性犯罪が起こる度に、
過去に同様の事件を起こした人間をひとりずつ処刑するサンソン。
彼は卑劣な犯罪者たちを憎んでいる。
そして、子を持つ親も然り。
世界はサンソンを受け入れる。
しかし私刑は法的に許されないことだ。
しかし…心情的には?
かつて妹を性犯罪者に殺された刑事・長瀬は
サンソンと職務と倫理の間で苦しむ。
この長瀬の葛藤に、色々考えるところがあった。
サンソンの正体は最後に明かされるのだけれど、
正直、意外だった。
わたしの想像をはるかに超えたところにあった。
読み返してみて、
著者が構成に細心の注意を払っていることに気づく。
巧い。
犯罪者も苦しむのかもしれない。
そんなことを思った作品だった。
他の作品もどんどん読んでいきたいと思うのだけれど、
何せテーマがテーマで著者の姿勢も真直ぐなので
すぐには手が伸びなさそう。
加えて、著者の文章に少し難があるってのもネックなのだよね。
(汲み取れない文章が多少ある)
紙の本
理不尽な犯罪の被害者の心理や苦悩を描く。
2015/09/20 21:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
やりきれないほどの悲惨で、理不尽な(しかし現実にしばしば起こる)犯罪が起こる。それに巻き込まれた被害者遺族の恨み、憎しみ、昇華しきれない苦悩が、加害者を殺したいという気持ちにつながるのをこの作品では否定していない。一歩まちがうと復讐精神になりかねないその心理を、ぎりぎりのところで踏みとどまりつつ、しかし生々しく描くことが作者は非常にうまい。犯人が誰か、事件に関わっていたのは誰か、そういったところも、読みながら固唾をのむ巧みな構成の話になっている。けれど、それ以上に犯罪と人間の関わりについて深く感じさせるところが最大の特徴だと思う。ただ、内容が内容なので大変重苦しい印象は否めない。
投稿元:
レビューを見る
子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が二人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て
投稿元:
レビューを見る
テーマは、性犯罪。
『天使のナイフ』に続いて読んでみました。
『天使のナイフ』の方が好きかなぁ。
投稿元:
レビューを見る
前作と比べ★-1になったのはちょっとどんでん返し的な内容にこだわりすぎた感があるかな?と思ったため。内容は十分面白いですよ。
特に幼児に対する性犯罪のテーマは読者を選ぶかも知れませんが、この内容を選んで書くからにはそういった思考を持つ登場人物の性的感情について描写するのは大切なことだったと思います。少なくともこの小説の内容に関しては。
死刑執行人サンソンの話は以前耳にしたことがあったので、ちょっと興味深くて良かった。
投稿元:
レビューを見る
重いテーマだけれど、言わんとすることが痛いくらいにわかるから、入り込んでしまう。辛いね・・・・
http://smileroom2009.blog92.fc2.com/blog-entry-881.html
投稿元:
レビューを見る
「天使のナイフ」「虚無」など薬丸岳の作品を読んできたが、この「闇の底」もなかなか問題作品だなあ・・。
罪を犯した前歴者・・もしかしたら知らない間に隣にすんでいるかもしれない。確かに更正した人もいるだろうが、何かの弾みで過去の過ちを再び起こすかも?・・・そんな危険が日常にあるということ。
最後のどんでん返しは、ちょっと意外で「やられた~」という感じ。
子どもへの性犯罪・・ドラマ化・映画化は難しいかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
幼女への暴行+殺害という陰惨な話の割にはテンポがあり、えげつない描写も少なくかつ、難しい警察組織の内情とかが省かれているのでとても読みやすい一作。
逆にそれが、重厚なストーリーを求める人にはちょっと足りないかも?
エンディングまで誰が犯人なのかわからせず、またこう終わらせた作者の技には感服。
スピーディーに駆け抜けつつもきちんと抑えられた一作で満足なのだが、もう少し主人公(?)、長瀬の内面が描かれるなどしてもよかった気もするので欲張りに辛口★4つで。
まぁ、ここまで一気に読んでおいて満足したくせに「もうほんの少しだけソースの味が強くてもよかったかなぁ」なんて、あんたゼイタクよっ。って気もしますけどね。
投稿元:
レビューを見る
子供への性犯罪がテーマ。
相変わらず遺族の葛藤を描いた物語
登場人物が警察関係者だったせいか
凡庸なミステリーっぽい雰囲気になってしまったかな。
最後にどんでん返しを狙ったっぽいけど
逆に描写が少なくて物足りないラストでした
投稿元:
レビューを見る
感想はブログで。
http://takotakora.at.webry.info/201002/article_8.html
投稿元:
レビューを見る
粗筋(アマゾンから引用)
子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を、殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が二人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て。
投稿元:
レビューを見る
優等生的なデビュー作から、ここまでダークな作風に転向したのは好印象。テーマと真摯に向き合う姿勢、トリッキーな趣向、救いのない結末は貫井さんを連想しました。ただ、オチが容易に読めてしまうのが残念。
投稿元:
レビューを見る
誰の心にもサンソンはいるんだろう。
復讐と制裁、さらには懺悔。色んな思いが交差する。
「天使の~」に引き続き、重いテーマに真っ向勝負。
引き込まれるように読んだ一冊だけど、ラストはどうなんだろ。
作者からの問いかけにどう答えるかは読者しだい。
投稿元:
レビューを見る
『性犯罪』をテーマにしてる。
テーマに沿っての内容、伝えたい事、展開、スピード感がありとても読みやすい!
ただ犯人がそこそこ読めるかも・・・
投稿元:
レビューを見る
薬丸岳は、犯罪被害者と加害者の心境を、普段敬遠されがちな題材をテーマに、小説にする。
本作のテーマは児童性犯罪。
児童が被害にあう度、サンソンと名乗る犯人が元犯罪者を殺す。
サンソンは悪であるのか正義であるのか。警察官となった被害者の兄、長瀬が葛藤する。