紙の本
一つ一つの出来事が現代社会に与えた影響を探りながら、近代ヨーロッパ史を見直していく画期的な一冊です!
2020/04/22 09:32
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、近代のヨーロッパの歴史を、一つひとつ解きほぐし、個々の出来事はもちろん、それらの蓄積やそれらが与えた思想上、社会上の変化や改革によるインパクトを分かりやすく解説した大変興味深い書です。同書の中で著者は、「現代社会における繁栄も昏迷もすべてヨーロッパの近代史から発している」と主張します。そして、「アメリカ合衆国の独立、フランス革命、産業革命などは、私たちが生きる現代世界に多大な影響を与えた」と言います。では、どのような影響をもたらしたのでしょうか。同書ではそうした点を深く掘り下げながら、ヨーロッパの近代史を見直していく画期的な一冊となっています。
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学習院大学学長(フランス近現代史専攻)の福井憲彦(1946-)による近代ヨーロッパ史概論。
【構成】
1 ヨーロッパによる海外進出の開始
2 世界交易における覇権争い
3 18世紀における社会経済と政治
4 「啓蒙の光」と近代思想の誕生
5 人口増加の開始から「移動の世紀」へ
6 革命に揺れる大西洋世界
7 ウィーン体制と48年諸革命
8 工業化と社会の変容
9 農村のヨーロッパと都市のヨーロッパ
10 科学技術の実用化と産業文明の成立
11 国民国家とナショナリズム
12 植民地帝国という野望の衝突
13 さまざまな帝国主義
14 第一次世界大戦という激震
15 歴史文化の継承と芸術的創造
終章 近代ヨーロッパの光と陰
本書は、2005年に出版された放送大学テキストの文庫化である。
わずか250頁あまりだが、上記構成を見ればわかるように構成として社会・思想分野を中心に論が組まれているため、細かい政治外交史上のイベントの記述にはほとんど触れられていないので、高校生でも難なく読めるぐらいの内容である。
とはいえ、第3章の18世紀農業経済史、第5章の人口論、第9章の農村経済の変容、第15章の世紀末文化のあたりは政治史からは見えてこない内容が多く、面白く読めた。
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現代社会を理解する上で、近代ヨーロッパ史に関する厚みのある知識は必要不可欠であろう。というわけでこんな本を買ってみた。「世界を変えた19世紀」とは銘打っているが、ポルトガルのアジア交易から第一次世界大戦まで、扱う時代は幅広く、レコンキスタを起点とするヨーロッパの膨張から、第一次世界大戦によるヨーロッパの疲弊までが対象となる。語り口はややイデオロギッシュというか、今の価値観で帝国主義を断罪するようなところがある。それはそれで一つの歴史観ではあろうし、そういった歴史観をもとに本が書かれることを否定するわけではない。しかしながら、そういう視点とは別に、帝国主義を生んだヨーロッパの内在論理の変遷を追いかけないことには、「歴史」を学んだことにはならないのではないかと、個人的にはそう思う。ともかく、非常に教科書的な内容の本でした。知識に厚みを出すためには、この本を入り口に、もっといろんな読書経験を積み重ねる必要がありそうだ。余談だが、人口増加や産業革命に関する切り口は教科書の内容を超えており、こちらをもっと掘り下げた本が読みたくなりました。
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まごうことなき良著。古典には劣ると言う意味で★4つ。
表題の近代ヨーロッパについての歴史を、実にうまく顕している。それができるのも、著者の巨視的観点と真実を見抜く真眼があるからだろう。とにかく、全体像を捉えた上での著述であるので、非常に有益な内容となっている。
「全ての学問は未来のためにある」ということを歴史学という観点から見事に体現した著作。名著と言うべき。
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2013.11.5
わかりやすく、読みやすい。
大航海時代から第一次世界大戦のヨーロッパのどの部分を授業で取り上げるかを迷えば、この本を参考にするとよい。少ない事例で、端的にサラッと説明してくれている。複眼的に捉える大切さも何度も強調しており、信頼できる。
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著者があとがきでも書いているように、講談社の興亡の世界史13巻とほぼ同じ構成。ぱらぱらとめくった感じでは、
ホダースの『ジン街』の図版も同じものが使われている。
入門者向けのように思えたので、読まなかった。ただし参考文献は役に立ちそう。
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[広大で深遠な潮流]思想的にも科学的にも、現在の世界の外郭の形成に大きな影響を与えたヨーロッパの近代。それがいかなる力に導かれた時代であったかを明らかにするとともに、今日に残る正と負の側面を多様な観点から捉えた一冊です。著者は、学習院大学長を務められた福井憲彦。
講義用に作成したものを編集したというだけあり、要点がしっかりまとめられた良書だと思います。網羅的である一方、ヨーロッパ近代とは何かという本質的な問題に対しても正面から向き合っており、本書を足がかりにヨーロッパの広大な歴史に一歩踏み出すのも悪くないのではないでしょうか。図や表なども要所要所でわかりやすさを高めるために使用されており、歴史に興味がある方にはもちろん、とっつきにくさを覚えている方にもオススメできる作品です。
ある一つの見方に拘泥してヨーロッパを捉えるのではなく、下記の筆者からの提言に表れるように、著者自身が多面的にヨーロッパを眺めている点にも好感が持てます。時代的にも分野的にも幅広く記述がなされているため、個々のテーマや国・地域に対する深みが足りないと思われる方もいるかもしれませんが、巻末の参考文献も充実していましたので、その点も「抜かりがない」つくりになっているのではないでしょうか。
〜近代ヨーロッパの歴史を捉えるには、捉える側が複眼的な見方を容易してみなければならない。〜
バランスがとれてました☆5つ
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このテーマを1冊でまとめることに無理を感じたが、大きな流れをつかむには勉強になった。
・14世紀にペストが大流行した後、15世紀半ばから17世紀半ばにかけて人口は増加したが、17世紀半ばからは気候の寒冷化を背景として疫病・飢饉・戦争の三悪によって人口は再び停滞した。
・18世紀に北西ヨーロッパで経済成長が始まった要因は、マメ科植物の導入や畜産との併用などによる農法の技術改良によって食糧事情が好転したこと、それに伴って人口が継続的に増加したこと、ギルドなどの同業組合が衰退して職業活動が自由になったこと、経済活動がヨーロッパ外へ膨張したことがあげられる。
・イギリスでは、17世紀にピューリタン革命による一時的な共和体制の実現を経て、名誉革命による立憲王政を確立し、安定した政治体制を実現したことが、経済的に展開する重要な基盤となった。また、オランダでは、スペインから独立して以来、商業に携わる有力者たちが政治的な支配層を形成していた。
・イギリスとオランダ以外の18世紀のヨーロッパは、既存の王権に基づいた政治体制を変更することなく社会経済の動きをあらたにする啓蒙専制の時代になっていったが、中途半端な展開に終わり、フランスでは政治体制が革命的に変化することになった。
・18世紀後半からの産業革命によって、イギリスは圧倒的に有利な立場に立ったため、後発の多くの国家は保護関税体制と政府主導による産業育成政策をとる殖産興業や、生産のための原料と市場を確保するための強兵政策を採用した。
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浅いですなぁ、この内容は。と思っていたら放送大学の講義なんですね。
ただ大学の講義でもこのレベルの内容が結構普通に話されていたりした記憶があって、あかんですよね、こういうのは、正直申し上げまして。大学と名乗るのであるならもうちょっと尖がってもらわないと、という気持ちがあります、当方は。
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「教科書みたいだなぁ。授業で使うように書いたのかなぁ」と思って読んでいたら本当にそうでした。放送大学の教科書的なものであったらしい。
私も別の通信大学のレポートで読みました。
近代ヨーロッパ史を手放しで賞賛するでもなく、全面的に否定するでもなく、多面的に捉え直す。そんな講義になっていました。19世紀って書いてあるけども18世紀途中から〜20世紀初頭を網羅する内容。
プラスの面とマイナスの面と双方に触れ、双方を思考の材料にすること。中々難しいけども、これは歴史に関わらず全てのことに言えるかなと思った。