紙の本
当事者目線と思考で見た戦前政治・外交
2015/07/26 00:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tadashikeene - この投稿者のレビュー一覧を見る
1926年から1945年における7つの転換点を各ポイントごとのキーパーソンの視点(意図と判断)から考察したもの。
いわゆる「軍部の暴走」といった紋切り型のフレーズではなく党利党略や民意を背景とした極端な政党の争い、階層間の思惑、内閣の構造と国家意思決定システムの不備、権力者同士の足の引っ張り合いといった複眼的な視点から日本の進路がどのように定まったかを描き出している。煽り調に陥らず分かりやすくダイナミックに書かれており面白い。
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我々は歴史を振り返るとき、往々にして現代の視点からみてしまう。本書では、当時の指導者が何を考え戦争を選んだのか、出来るだけ当時の視点にたって記す努力をしている。7つの出来事を扱っているため、広く薄くなったきらいがあるが終戦記念日に読む価値のある一冊である。
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戦前の昭和史を人とその行動に焦点を当てて書いている。まるでドラマのように登場人物が生き生きとして、目の前に いるようだ。
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小見出しとはそぐわない内容が多いのではと本質的ではないところに目が行ってしまう。そのほか、いわゆる当時の雰囲気を醸し出ているように感じられるのだが、歴史小説のようで史実感がない。著者の意見を登場人物を通して語る、または登場人物の言動を著者の意見に乗せる手法は新しい試みなのだそうだが、わたしには、はまらなかった。
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本著の白眉は5章「戦争を支持したのは労働者、農民、女性だった」である。現代でも実現しない二大政党制が約100年前には実現しており、そこから第3極としての社会大衆党が台頭してくる過程。それを当時の国民が社会民主主義を要望していた証左とし、結果、総動員体制としての国家社会主義へと発展していったという解釈は全く認識がなかった。
確かに戦争はある種の平等社会をもたらすのかもしれない。その善悪には賛否があるだろうが。
尚、本書の特徴は「作中の人物が見たり聞いたり考えたりした事だけから歴史を再現している」という点であり、歴史の全体像を描いているわけではない事に留意する必要がある。
(そもそも、どう逆立ちしたって全体像など描く事は不可能なんだが。)