紙の本
中国にきびしく日本にやさしい主張 ?!
2008/10/15 21:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
レアメタル (希少金属) を中心に,世界で争奪戦をくりひろげる国や企業をとりあげている.中心はレアメタルの主要な産出国でありながらアフリカなどから輸入している中国であり,低賃金,わるい労働条件,危険など,その悪評が執拗にかたられる.日本では住友金属鉱山が積極的だというが,他国に負けるさまがえがかれている.
末尾では「日本人が [中略] 話し合いを責任を持って行えば,少ない予算で短期間に成果を出せるだろう」と書いている.この主張は理解できなくはないが,欧米や中国との対比はちょっと極端なのではないだろうか.
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資源メジャー(BHP、リオ、ヴァーレ、アングロ・アメリカ)に中国が加わった現状について、第1,2章で述べる。最終章では、著者の持論、スイカ縦割り理論(地理上から見た)や海洋資源の開発可能性、更には日本にも資源教育の復活を、は面白い。「次工程はお客様」から「前工程に思いやりを」は良い言葉。
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【資源危機の原因】
①ここ数年,資源の「爆食」と国をあげて世界の資源囲い込みに狂奔する中国
②国際資源メジャーの喰うか喰われるかの激しい買収合戦と寡占支配の進行
③資源開発が行われる産出国の不安定要因
【日本の状況】
・日本の鉱山会社.住友金属鉱山は,素材産業に流れずに本流を守った.DOWAホールディングスは,都市鉱山のリサイクルに力を入れている.
・日本のものづくり体制.最上流の資源採掘は,国際資源メジャーや資源保有国.原・燃料資源は旧財閥系鉱山会社,鉄鋼精錬はマンモス企業であり,両者とも技術は最高水準.ところが部品製造は大手を支える中小企業群で,技術レベルは高いが脆弱な経営体質.製品製造・組立は世界で名の知れた大手ブランド企業.ものづくりの川下ほど「偉い」のである.
・中国は産・官・民一体となった資源外交攻勢には,国家戦略がはっきり見えている.日本は単発的.
【中国の状況】
・中国の戦略は,鉄道,道路,病院などインフラ整備に対するおいしい援助の見返りに資源開発の権益を取得していくというやり方である.
・中国は,資源外交ツアーに出かけている.温家宝首相,胡錦濤国家主席はすべて技術者で,資源の重要性に関する知識,意識が高い.
・中国はアフリカにUSドルの貸付をおこない,返済は銅,コバルトなどの採掘権益と新たに建設される道路・鉄道の通行料金によることになっている.要するに,中国は,アフリカ諸国を借金漬けにした上で,資源を収奪していくばかりでなく,アフリカ全土10億人の人々に物資を売りつけている.「新しい植民地」という人もいる.
【資源メジャー】
・特徴
①グローバル・多国籍に事業展開している.
②金属鉱物資源開発をコア・ビジネスとしており,下流部門(加工・製造)よりも上流(鉱山開発)を志向している.
③特定の金属鉱種,あるいは燃料鉱物も含め,複数鉱種の上位生産者である.
④大規模な鉱山開発・操業を自らの手でおこなっている.
⑤強力な経営資源(技術・人材・設備資産)を有する.
⑥M&Aによる事業拡大と多国籍化・多鉱種化・寡占化を進め,価格支配力を強めている.御三家は,BHPビリトン,アングロ・アメリカン,リオ・ティント・グループである.
【日本がとるべき対策】
①資源はものづくりのための単なる外部購入資材という意識と認識から早く脱却して,国家として資源戦略を立てる.国際政治・経済・外向のベースを同一スライス内に置く.
②オーストラリアと中国を最重要国とみなす.
③海底資源開発をおこなう.
④都市鉱山の開発(リサイクル).
⑤バイオ・マイニング.
⑥ものづくりの「よい品質の製品をつくるためには,製造設備に合わせて原材料資源を持ってこい」という思想を改める.
⑦資源教育の復活.
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きっかけは前に見たNHKの特集番組で「中国が世界中の金属資源を莫大に消費している」と言う内容を見たからでした。今はまじめに相場動向を見ていないからわかりませんが資源の争奪戦はこれからも続くでしょうね。
これを読んでいるときほどには僕はいまの商品相場の動向を丹念には見ていないので詳しいことはわかりませんが、この本を読んでいた当時の商品相場の価格は上昇の一途を辿っていた。日本経済新聞のマーケット欄にある『海外商品市況』を丹念に読んでいれば、その傾向は明らかである。僕が当時、金属資源の相場を見ていたときに出会ったのがこの本で、世界各国が資源を奪い合っているさなか、「ものづくり大国」を自認しながら何も『資源』というものを国家戦略に織り込んでいない日本に空恐ろしささえ覚えました。
ここに描かれているのは主にレアメタルですが、結構思いもよらないところで使われていることがわかりました。たとえば携帯電話の端末なんかにはこれがないと作れないんですね。それにしても、金融と金属とエネルギーを牛耳ってしまうと、やりたい放題に世界を動かせるんだなぁということを
この本は教えてくれました。ま、あえてどこかどう動かしているのかはあえて書きませんが。
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次行程はお客様から前工程に思いやりを。資源が少ない日本のものづくりの形も変革が必要になってきている。