紙の本
天授の子
2001/03/06 20:25
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投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
川端康成氏の小編をあつめたもの。川端康成氏が養子をもらったことや、昔のことが回想的にかかれている。
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この小説は、表題の「天授の子」のほかに「故園」「東海道」「感傷の塔」が収録されています。
「故園」は、著者の少年時代の回顧録。「東海道」は、京と地方との行き来する有名人を著者なりの解釈で語っています。「感傷の塔」は人間の時間を扱い。「天授の子」は養女の民子と戦後の作家業界の事が書かれています。
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作者が生前に単行本収録を見送った作品を、死後数年後にまとめた作品集。
当時の読者にとっては垂涎の幻の作品たちだったのだろう。
未収録ってことは失敗作なのかといえば、そんなことは全然ない。
むしろ未完であることや、作者の身内を慮ってだろう。
だが川端にとって「小説の完結」って概念がそもそも怪しいし、慮るならそもそもなんで書いたの。
■故園(未完)
1943年連載開始。40代で養女を迎えた顛末を記す。
《私が門口をあけるなり、えらい足音で駆け出して来た子供は怒って顔を真っ赤にして「おそいなあッ」と叫ぶと、両手の握りこぶしを肩まで振り上げて、私を殴るように抱きついた。》
12歳である。
実際の事情はいろいろあるだろうけれど、若い娘の生命を愉しみたいという欲望がなかったとは言えまい。
「古都」の息子の嫁という例もあるし。
で、同時に興味深いのは、養女の境遇に思いを巡らすうちに、自分自身の過去の回想にもなり、全体として「私的記憶論」のようになっていること。
些末な記述だが、「作中人物の私をいやな人間に書」くんだとか。
結構核心的な創作論だと思う。
■東海道(未完)
※1943年「満州日日新聞」に連載開始。
ちょっとハードルが高そうで未読。
■感傷の塔
戦後の作。
戦争中文通をしていた複数の女性読者への手紙、というてい。
これは大変美しい作品だと思う。
■天授の子
「故園」の6年後。
養女・民子の母・時子の危篤に、まずは自分が、続いて妻と民子が来る。
冒頭、語り手・定家(さだいえ)はペン・クラブ会長として広島行き。
惨禍に背中を押される思いがしたと、結構スレスレなことを思いつつ、時子の大阪へ。
ここ実は定家が幼いことに住んでいたあたりなので、自然と自分の少年期も思い出される。
で、民子は6年間実母と交流が薄かったという件。
同時に妻の流産続きの件。
結構入り組んでいる上に散漫な話なのだが、面白い作品だと思った。
てか大いに自分(の身内)を切り売りしてんなー。
◇解説 佐伯彰一
◇覚書 川端香男里(養女政子(=民子)の夫)
◇年譜
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#読了 東海道 川端康成 (「天授の子」所収)
#英語 では Tokaido (The Way East) by Yasunari Kawabata
東海道をめぐる古典文学の話。未完に終わる。実朝と義尚について、川端の筆で読みたかった。